タイトル:【Pr】コウノトリと鷹マスター:橘真斗

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2007/12/13 02:46

●オープニング本文


 人類のバグアに対する一大作戦がはじまろうとしていた。
 その緊張とは裏腹に、主な戦場とならないところは今後の動きのための布石を投じようとしている。
 メガコーポレーションの一つ、ドローム社もしかりである。
 一大作戦への協力は、UPC軍部への影響力や日本のメガコーポに対する牽制にもなるからだ。
 多額の費用を投じて輸送機を飛ばし、その護衛に精鋭であるUPC大西洋空軍基地の『イーグルドライバー』を呼び出すほど。
 
 しかし、一般兵器はバグアに対してはあまりにも無力であった‥‥。
 太平洋上にて、オーストラリアから来たバグアに対し、苦戦をしいられていたのだ。
『こちらイーグル3、ストーク3のエンジンがやられた。かろうじて飛んではいるが、このままじゃ墜落するぞ』
 F−15が輸送機の様子をリーダーへ報告する。
 相手はドラゴンの頭から羽根をはやし、冷気をはいてくるバケモノ達だった。
「Sit! 貧乏クジをひいたな。イーグルリーダーより各機へ、ストーク3を守りつつ展開っ!」
 F−15の編隊はそろった動きをしつつバケモノたちへ攻撃を仕掛ける。
 数ではキメラに勝ってはいるが、戦力としてはその差は明らかである。
 生物として自由に飛び回るキメラに機械制御の鳥は遊ばれていた。
『こちら、イーグル5、隊長‥‥先に仲間のところへ行って来ます‥‥惜しいのは能力者のカワイコちゃんとデートできなかったことかな‥‥』
 また一機、無敗を誇ったイーグルドライバーが母なる海へと帰っていった。
「ベッカー! くそっ‥‥メーデー! メーデー! こちらUPC大西洋空軍基地のTACネームFantom。救援物資を輸送中にキメラと交戦中。救援求む!」
 イーグルドライバーのリーダーが無線をフルオープンにして通信を行う。
 無敵の鷹がドラゴンの前に誇りを捨てた瞬間だった‥‥。

●参加者一覧

真田 一(ga0039
20歳・♂・FT
雪野 氷冥(ga0216
20歳・♀・AA
水鏡・シメイ(ga0523
21歳・♂・SN
水理 和奏(ga1500
13歳・♀・AA
月影・透夜(ga1806
22歳・♂・AA
武田大地(ga2276
23歳・♂・ST

●リプレイ本文

●運命の転機
「まったく、運が悪いな‥‥」
 TACネーム・Fantomこと、ジェイド・ホークアイ大尉は唸るだけだった。
 F−15に搭載されているバルカンや、サイドワインダーではキメラに致命的なダメージを与えることは困難だ。
『隊長、こんな任務良く受けましたね‥‥』
 無線を通じて軽口を叩く同じ『イーグルドライバー』の声が聞こえた。
 高速戦闘をしながらも話せる余裕があるのは腕のある証拠、もしくは恐怖を忘れたいためかもしれない。
「UPCにとってメガコーポレーションの援助は必要だ。大作戦であればなおさらなっ!」
 たとえダメージを与えられないとしてもバルカンによる衝撃は輸送機や味方機にまとわりつくウィンドビーストに衝撃を与え、離れさせる。
『けど、ジリ貧になっちまいますね』
 残弾数を確認した味方機の一人がそうぼやいた。
「それでも、何とかするしかない‥‥」
 そのときだった、無線にジェラルドに聞き覚えのある声が流れ出す。
『こちらTACネームLunar。これより貴隊を援護する。回避準備されたし』
「Lunar‥‥模擬戦のあいつか!」
 声の主は月影・透夜(ga1806)。バイパーの模擬戦においてジェイドたちと対戦した能力者だ。
 ジェイドはすぐに仲間へ指示をだす。
「イーグルリーダーよりイーグル各機へ、援軍がきた。回避運動用意! ストーク各機は高度を下げろ!」
 すぐにレーダーに6機の高速でやってくる機影が表示された。
 肉眼でも見える距離になったとき、彼らの機体は一斉にミサイルを放つ。
 煙を出しながら飛んでいくミサイル群は、反撃の狼煙のようにジェイドには見えた。
 
●初戦の緊張
 ホーミングミサイルによる弾幕は回避しようとしたキメラ3体にあたり、2体には回避された。
 キメラは弱るも、まだ生きている。
 だが、結果としてキメラを分散させることに成功し、各自一体を相手するという作戦行動は取れることになった。
「うぅ、ナイトフォーゲルでキメラ戦は初めてで緊張する‥‥」
 水理 和奏(ga1500)は鼓動の高まる心臓を押さえようと深呼吸を繰り返す。
『SnowよりKarateへ、緊張しなくても大丈夫。攻撃は最大の防御ってね』
 TACネームSnowこと雪野 氷冥(ga0216)は安心させるようにそういった。
「そうだよね、うん。僕がんばる! Karate、作戦通り戦闘行動に移るよ!」
『NANIWAからKarateへ。自分が援護もすし、自信もってや〜』
 気合をいれる水理にたいして、武田大地(ga2276)のおき楽な関西弁がかかる。
 水理の緊張はほぐれていた。
 やるべきことは、唯一つ。
「イーグルドライバーさんも輸送機も守ってみせるっ!」
 クッと敵をにらむと、水理のKVは呼応するかのように加速する。
 6機のKVはそれぞれの敵を狙い飛び立った。
 
●不安の払拭
「‥‥対応できない護衛など、見通しが甘いにもほどがある」
 真田 一(ga0039)はムスッとした表情で敵を狙う。
 短期決戦のため、ミサイルを受けたウィンドビーストへ飛んでいく。
『しかし、あれですね‥‥まっすぐこれて何よりでした』
 水鏡・シメイ(ga0523)の戦闘行動に移りだしてからの初めの一言はそれだった。
「truthよりrainへ。この状況でそこを心配するのか、あんたは」
 真田はシメイの一言に対して、厳しい突っ込みをいれる。
『いやいや、『我に迷えぬ道なし』が座右の銘ですからね』
 突っ込まれたことなどまったく気にせず、シメイは明るく答える。
 顔は見えないがきっと笑っているだろうと、真田は思った。
「くだらん、というか‥‥一人一体相手のはずだろ、なんで武田とあんたは援護に回ってるんだ」
 打ち合わせではそういう予定だったが、援護役の決定に手間取ったのがここで仇になる。
『まぁまぁ‥‥精鋭部隊であるイーグルドライバーが苦戦した相手なのですから、油断せずに確実にいきましょう』
「truthよりrainへ。弾幕援護を頼む。そして、せめてTACネームで会話してくれ」
 そうこういっているうちにキメラからの攻撃が行われた。
 口から円錐型に広がる冷気ブレスが放たれた。
 そこだけが吹雪のような強力な風と氷が舞う。
「範囲が広いっ!」
 突撃してガドリング攻撃をしかけようと思っていた真田は意外な範囲に大きな回避運動を取り出す。
『rainより、truthへ。では、このまま弾幕をはりますよ』
「任せる」
 真田の後ろにいたシメイの機体が撃って変わって攻めに転じた。
 『rain』というTACネームの由来でもある二連装のガドリングが弾の雨を降らせる。
 チュチュチュンと小気味よいリズムでウィンドビーストに弾が叩き込まれ、位置が固定される。
「トドメっ」
 上昇していた真田が変形した。
 落下と共に加速し、チタンナイフをウィンドビーストの首に斬り込ませる。
「てぇいっ!」
 掛け声と共にブースターの出力を高め、首を掻っ斬った。
『おみごと』
「それよりも、周囲の警戒をしてくれ。速度があがりきらないと墜落しそうだ‥‥」
 変形しなおし、ゆっくりと体勢を立て直しながら真田は一息つく。
 空中の変形はバランスの取り方が難しい、人型から飛行形態になった場合、飛行形態を保つには前方に離陸できるような余裕がなければならない。
 逆を言えば、隙を見せることになる。
『そうですね、他の人たちがあいてをしているとはいえ気をつけませんと‥‥それと、TACネームで呼びあうのではなかったでしたっけ?』
 シメイはそういい、警戒を続けた。
(「やれやれ、キメラ以上にやっかいかもしれないな」)
 シメイの言葉にどっと疲れが押し寄せてきた真田だった。
 
●夜月と氷雪
「何とか一体撃墜か」
 月影は味方の報告を聞きつつ、自分も引き離すようにキメラに戦いを挑む。
 しかし、各自の連携がとれないためか、援護に回るものが多かったり、戦闘行動にまとまりがない。
 あの短期間ではロッテ戦術を計画しなくて良かったのかもしれない。
『SnowよりLunarへ。こちらも敵を引き付けた、一発変形攻撃を試すよ』
「無茶が好きなヤツらばかりだな‥‥」
 模擬戦のことを思い出し、月影は苦笑する。
(「あの頃よりは腕をあげたつもりだ‥‥だが、油断したらアウトだな」)
 目の前を雪野の機体が通りキメラの頭上を取ろうと動く。
 しかし、戦闘機形態での減速は、機体バランスを失わせた。
 一定速度であるからこそ飛べるのであり、その速度を保っていては頭上を捉えるのは不可能。
 逆に落とせば減速ではなく、失速に転じる。
 ふらふらとなる雪野のKVへキメラが容赦なく体当たりを食らわせた。
『くぅ!? だけど、なめんじゃないわよっ!』
 そのまま人型変形を行い口内へKVスピアを突き刺した。
 キメラがもがきゆさぶられる。
 掴みあったまま落下していく雪野達。
 だが、雪野はKVのブースターを最大出力で噴射し、バルカンやガトリングをそのままキメラへ叩き込み、倒すことにいたった。
「LunarよりSnowへ。大丈夫か?」
『なんとかね‥‥だけど、さすがに今回は無茶しすぎたわ。燃料がヤバイわね』
「無理に戦闘せず輸送機の護衛にまわってくれ、残りはなんとかする」
 無茶の代償はでかい。
 そもそもブースターで燃料を大分くっているのだから、仕方ないといえばない。
『SnowからLunarへ。そうさせてもらうわ』
 何とか、再変形し高度を取り戻した雪野のKVは輸送機のほうへ機体を傾けながら向かっていく。
 それを見届けた月影は別のキメラにガドリングをあて、落としていく。
「体に当てなくとも羽根を撃ち抜けば飛べまい。狙いはそこだ」
 額に三日月の紋章を浮かばせながら、月影は銀色の瞳でキメラを狙っていった。

●犠牲と勝利
 水理は武田の支援を受けながら戦闘をしていた。
「重くなりすぎない程度につんでいても、やっぱり回避しづらいっ!」
『攻めな、勝てへんで水理ちゃん』
「そんなこといっても‥‥」
 武田から、ロケットランチャーやバルカンの援護が飛ぶ。
 しかし、水理はなれないキメラとの空戦に翻弄されていた。
『ほれ、守るんやろ。輸送機も、イーグルドライバーの人らも!』
 武田の一声で、水理は吹っ切れる。
 大きく旋回し水理はキメラを正面に捕らえた。
「ミサイルもないし、これでっ!」
 突撃仕様ガドリングが唸りを上げ、爆煙がキメラを包む。
『こいつはおまけや、とっとけっ!』
 武田のロケットランチャーが続けざまに放たれさらに煙がキメラの姿を覆った。
「これで、おしまいかな?」
『LunarよりKarateへ! まだ敵はいきてるぞ!』
「ええぇ!?」
 ほっとしたと思ったら、煙の中からボロボロになったキメラが大き口を開き食らいつこうとしていた。
「あ‥‥あ‥‥」
 その光景に一瞬固まってしまう水理。
 そこへ、一機の機体がキメラへバルカンを浴びせる。
 その攻撃はフォース・フィールドによって軽減されていた。
「え!?」
 水理は目を見開いて、その光景を見つめていた。
 その横を一機のF−15が通り抜け、キメラの口に向かって特攻を仕掛けていく。
『TACネーム、LancerよりKarateへ。悪いね、無線を勝手に傍受していたわ』
 特攻していくF−15のパイロットからか、水理に対して通信が入る。
『俺らは若いのが先に死ぬのがいやなわけよ。一般人が手を血にそめるのもな‥‥俺は模擬戦してなかったけど、能力者にカワイコちゃんがいるってのはよくわかったぜ』
「え、えっと‥‥僕は‥‥」
 水理は自分は可愛くないとそういいたかった。
 男っぽいといじめられていたのだから‥‥。
『声を聞いてる限り、可愛い子だってのはわかった。生まれ変わって再会したらデートしようぜ。じゃあな、生き残れよっ!』
「ま、まって! そんなのないよ!」
 水理の静止もむなしく、F−15はキメラに全速力の特攻を加え、フォース・フィールドを打ち破り倒しきった。
「Karateより、皆へ‥‥敵機殲滅完了‥‥」
 その報告はいつもの水理らしくなく、酷く暗く低いものだったが、それに対して誰も咎めはしなかった。

●戦略と戦術
「Fantomより、能力者達へ。支援感謝する‥‥無事、輸送機を運べそうだ」
 被害はF−15を2機と戦友二人。
 大局的に物をみるのならば、輸送機3機を守りきれたことは大きいことだろう。
 ジェラルドはそう自分に言い聞かせ、努めて冷静に連絡を返した。
『LunarよりFantomへ。すまない、連携が取れなかったこちらのミスだ』
「FantomよりLunarへ。気にするな、それよりもこの短期間で腕をあげたな、驚いたよ。正直」
 ジェラルドは月影からの謝罪を笑って返した。
『karateよりFantomさんへ‥‥ごめんなさい、デートの約束とか守れなくて、僕がもっと大人だったら‥‥』
「FantomよりKarateへ。謝るより、あいつの最後の言葉の通り生き残ってくれ、バグアとの戦いが終わるまでな。小さなレディ」
『はい‥‥』
 力のない返事ではあったが、前向きになる。
 今、世界ではこのようなことが起きている。
 助かったほうが運がいいのかもしれない‥‥数少ない能力者によって、世界が守られているということを改めて知らされた能力者達であった。