タイトル:【IMP】北米学園慰問マスター:橘真斗

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 11 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/10/11 23:45

●オープニング本文


「慰問ライヴですか?」
「ええ、北米への完全進出の足がかりとしましてね。傭兵達総出で出向いてもらいます」
 ライディ・王(gz0023)はラスト・ホープの喫茶店でアイベックス・エンタテイメント社長、米田時雄と打ち合わせをしている。
 今回の募集人数は15人。対バンと呼ばれる複数のアーティストを織り交ぜてのライヴを傭兵だけで行おうという話だった。
「15人んという人数ならライヴにこだわらなくても良くありませんか?」
 しかし、ライディはここに来て米田に対して意見を出す。
「慰問という題目でしたら、何かテーマを決めてイベントをやる形の方が見る人も楽しめるかなと思うんです。これは担当のアイドル達からの意見でもあります」
 アイドルたちと話して、彼女らの意見を尊重したいからだ。
「なるほど‥‥いいでしょう。マネージャーとして君が意見を言ってくれるのは初めてですし、今回は君にプロデュースしてもらいましょう」
 米田はライディの真剣な瞳を見て柔らかく微笑んで眼鏡を光らせる。
 砕けた名古屋弁で依頼を出す気さくなお兄さんという風貌はなく、プロデューサーとしての側面を大きく見せていた。
「ハロウィンも近いですし、テーマはそれでいきたいと思います。場所は学校のようですし、皆さんの気分を盛り上げたり出来るようなものがいいですね」
 米田に認められたことにライディは喜び、自分の考えをとにかく話しだす。
 ライディの初プロデュースイベントが始まろうとしていた。

●参加者一覧

ジーラ(ga0077
16歳・♀・JG
鷹代 由稀(ga1601
27歳・♀・JG
緋霧 絢(ga3668
19歳・♀・SN
葵 コハル(ga3897
21歳・♀・AA
ミオ・リトマイネン(ga4310
14歳・♀・SN
常夜ケイ(ga4803
20歳・♀・BM
雪村 風華(ga4900
16歳・♀・GP
Innocence(ga8305
20歳・♀・ER
加賀 弓(ga8749
31歳・♀・AA
大和・美月姫(ga8994
18歳・♀・BM
白岩 椛(gb3059
13歳・♀・EP

●リプレイ本文

●打ち合わせ♪
「衣装は各自ハロウィンに沿った衣装ってことでお願いします」
 現地の臨時控え室ではライディ・王(gz0023)が集まった能力者相手に説明を始める。
「ハロウィンですか、馴染みが薄いというか‥‥馴染みが全然ないですからいまいちイメージできません」
「とりあえずオバケとかのコスプレしとけば良いって言うからそれでいいんじゃないかな?」
 純和風な生活をしていた加賀 弓(ga8749)と葵 コハル(ga3897)は衣装について頭を悩ませながら話あった。
「あ、MC決まってないなら私やるー」
 ここ最近、MC活動に積極的な鷹代 由稀(ga1601)が挙手をする。
「歌はこの間のライヴで歌えなかった『Brave Spirits』を歌ってみたいよね」
 雪村 風華(ga4900)はライディから貰ったタイムスケジュール表をみながら流れを考えた。
「次回へ持ち越しという米田社長の意向でもありますし、こういう場所ででも歌えるなら嬉しいです」
 作詞者の緋霧 絢(ga3668)も風華の意見に無表情である顔を少し緩めながら答えた。
「あ、あの‥‥『明日への風』という歌を考えてみたのですけど‥‥どうでしょうか?」
 大和・美月姫(ga8994)は控えめにいいながらも歌詞カードを配る。
 IMPのアイドル活動は少ないが自分の曲を歌いたいという思いが強くなり依頼前に歌詞を考えていたのだ。
「バラード調なら、私のギターで伴奏をすれば即興でもできるかもしれません」
 歌詞のリズムをイメージしながらミオ・リトマイネン(ga4310)がスタッフの持ってきたギターを軽く鳴らす。
 アコースティックギターの音色が控え室の中に広がった。
「あたしは『ロック鳥は恋泥棒』って歌を歌う予定〜。サインやツーショット写真もドンと来いで」
「そ、そのタイトルはちょっと‥‥。あとライブ前に勝手にサインやツーショット写真はやらないでくださいね。パニックになりかねませんので」
 常夜ケイ(ga4803)の提案にライディは流石に釘をさす。
「キメラに親を殺されたって方もいますしちょっとこのタイトルや歌詞は避けたいのですみません」
「それじゃあ仕方ないね」
 少し残念にしながらもケイは納得した。
「クッキーとかお菓子を配るのはダメなの?」
「その辺は皆さんからの報酬から一部いただいて手配しています。一部は学校の飾りつけをしてもらうように回しました」
 ジーラ(ga0077)からの質問には企画書片手にライディが答える。
 快く出してくれた能力者も多く、イベントは盛大になりそうだとライディは付け加えた。
「それが届いたら着替えてメッセージカードをいくつかいれようか。サイン付の当たりくじなら大丈夫じゃないかな?」
 風華の提案に皆盛り上がり、デザインを各々に考えだす。
 準備は遅くまで続いた。

●二人の妖精
「常夜様とはぐれてしまいましたの」
 ティンカーベルのコスプレを着用したInnocence(ga8305)はカボチャクッキーを入れたバスケットを片手にきょろきょろとしている。
 マイクロミニのスカートから完成された肢体を惜しげもなくさらしている姿は学校の中では目立つ。
 
 〜〜♪
 
 笑顔になれば元気になれる♪
 
 笑顔でいれば、皆も元気♪

 笑って踊って、今日の良かった探し♪

 笑って踊って、明日もいいこと一杯♪

 お空見上げてお月様とダンス♪
 
 お手て繋いでお星様とダンス♪
 
 〜〜♪

 
「Trick or concert‥‥あら、Innocenceさんはどうかされたのですか?」
 恥かしさや寂しさを紛らわすために歌っていたInnocenceにチラシを配っている白岩 椛(gb3059)が声をかけた。
 白岩はIMP―主に弓―の手伝いとしてこの慰問イベントに参加中である。
「いつも一緒にいてくださった常夜様とはぐれてしまいまして」
「一緒に探しながらビラやお菓子をくばりましょう」
 緑色の服に灰色のマントのバンシーと呼ばれる妖精姿で白岩はにっこりと微笑んだ。
 叫び声で人を殺すという物騒な妖精ではあるが、白岩からはそういう雰囲気は感じられない。
「よろしくお願いしますの♪」
 Innocenceはそんな白岩に癒され、手を繋ぎながら校舎内を練り歩いた。
「Trick or concertですの」
 軽やかにステップを踏みつつInnocenceはクッキーを配りだす。
 しかし、受け取った男子生徒からじっと見られるとすぐさま頬を桜色にして白岩の後ろに隠れた。
「私の方が背が低いので隠れきれてないですよ」
 年上なのにどこか純粋無垢なInnocenceを微笑ましくみながら白岩は共にクッキーを配りだす。
「あっ、これメッセージカードが入ってる! 『こんな時代だから、いつも笑顔を忘れずにねっ☆ゆきむらふーか♪』だって〜可愛い♪」
 クッキーを受け取った女子生徒の手には風華の作ったメッセージカードが握られていた。
 
●プライスレスサプライズ 
「本日はグリーナ=イェラウェイさんと後輩にあたるアイドルグループ『IMP』の方々を番組に迎えております」
 その日、アメリカのローカルニュース番組にIMPの先輩アイドルであるグリーナ=イェラウェイが登場し、その後ろにジーラ、由希、絢が続く。
「Hi! 今日はある学校で行う彼女達のイベントに友情出演するからその告知に来たの。ハロウィンに合わせて盛り上がるから皆きてね♪」
 グリーナは軽く挨拶したあと3人に説明するよう促す。
(「ほらほら、ちゃんと話さないとダメよ」)
(「そんなこといわれてもいきなりつれて来るのはズルイ‥‥」)
 急なTV出演ということでハロウィンのコスプレなままのジーラは流石に手照れて動けなかった。
「私がリーダーのAyaです。人の心を一つに出来れば、不可能も可能になると信じています。その手段の一つに歌があると思います」
 絢が日本語で話すと、通訳より先に隣にいた由希が流暢な英語で説明をする。
「ジーラです。歌とダンスの楽しいイベントにしたいと思います。校庭でキャンプファイアのようにして踊って盛り上が予定です」
 少しおどろいた顔をする絢とジーラだが、生放送なため堪えてイベントの説明をした。
「能力者の力は子供達を笑わせるためにあるので、前面に押し出します。皆さんよろしく!」
「まだデビューして一年たっていないフレッシュな後輩達を応援してね」
 三人をまとめて抱き寄せたグリーナはカメラに向かって大きく宣伝投げキッスを送る
 それに釣られて3人もそれぞれに投げキッスを送り出した。
 絢が人悩んでいる脇で由希とジーラは済ませる。
「どんなにはなれていてもきっと繋がりますから‥‥仮装は普段とは違う自分をみてもらえるでしょう」
 誰に言ことばかはハッキリしないが絢のそんな一言と共に紹介コ−ナーは終了した。

 ―控え室にて―

「だーっ、緊張した! ただでさえ打ち合わせ抜きの生バンよ? さらしも以前巻いたときより苦しいしさ」
 胸元を開けて由希は風を送りだす。
「由希様は英語が流暢なんですね」
 リラックスした様子で絢が控え室にあるポットから紅茶を注いだ。
「社長にやられた感がかなりあるよねー。というかあたし大学まで勉強してたし‥‥そんな冷めた目で見ないでっ!」
 格好は大丈夫かな? と各自で確認しているところにライディとグリーナの姿が現れる。
「皆さんお疲れ様でした。急な話なのは驚きでしたけれど、トラブルなく終えれて何よりです」
 ライディからの労いを受けているとき、グリーナからは突然参加の説明をはじめた。
「宣伝はヨネダより頼まれていたわー。アメリカじゃあワタシを使った方が出係りには丁度いいといったところね。ワタシも経験したことヨ」
「やっぱりあの社長なのね‥‥手回しがいいというか」
 落ち着きを取り戻したジーラは火照った体をタオルで拭いたり水を飲んだりしてクールダウンする。
「ああっ、そろそろライヴが始まる! 急いでいかなきゃ」
 時計を見たライディが大きな声をあげた。
「Yeah それならワタシが走るわ。番組も終わっているし丁度帰リヨ。ライセンスももっているから」
 ライディからキーを受け取ったグリーナは局の駐車場にとめてあるライディのインディースに乗り込む。
「ああー、それ僕の‥‥」
「Come On! ぶっ飛ばから早く乗りなサイ」
 たじろぐライディをよそにジーラ、由希、絢はグリーナの運転する車に乗り込み走り出した。
「えーっと、僕はどうやって帰れば‥‥たっ、タクシー!」

●モンスター達の学校徘徊
 夕暮れの学校ではハロウィンの仮装をしたアイドルたちが徘徊し、生徒達を体育館へと誘導しはじめる。
「うりゃぁー、怪奇現象DADADA‥‥いたたた、傷に響く」
 誰もいそうもない教室の壁をドンドンドンと叩いていたコハルが急に痛がった。
 出発前の大規模作戦での負傷は未だ癒えていない。
 それでも、コハルは北米進出に答えなければと思って張り切って参加したのだ。
 衣装も怪我の目立たない全身タイツに骨のペイントがされたものである。
「大丈夫ですか? 無理せずに休んでいた方が‥‥」
「シャチョサンが気合いれてくれたんだから、答えないとね。アイドル失格だよ」
 心配して駆け寄る金狼風のコスプレをした美月姫に対し、あくまでも笑顔でコハルは答えた。
「本当に大丈夫? ダメなようなら休憩してちょ。本番はライブだから! ‥‥わんつーすりー、貴方はIMPにラブする♪」
 黒っぽいゴスロリドレスに翼のショールをつけ、ハーピーさながらの姿となっているケイがコハルの分もと振り子を振って学生達を集めだす。
 廊下に響き渡る声と振り子に学生達が1人、また1人と姿を表し近づいてきた。
「さぁ、皆ついてこーい、トリック・オア・コンサート! 体育館まで来ないと悪戯しちゃうぞ〜」
「サインとかは今回やりませんので、クッキーの中に入っているメッセージカードを引き当ててくださいね」
「元気出して行きましょう。ラブ&ファイヤー!」
 3人はそれぞれアピールをしながら、体育館へ長蛇の列になっていく学生達を案内していく。
 ライヴ開催まで、もうすぐだ。
 
●学生達への慰問ライブ開催
「今日はみんなに幸せを運びに来たよっ! ライヴ本番までもう少しかかるから、まずはハニーフラワーの『駆け抜ける風』を聞いてね!」
 体育館の舞台の上、白い蝶々のような羽に水色っぽいひらひらした服を着た風華が前座がてらに歌を歌いだす。
 まだ、テレビ局へ宣伝に行ったメンバーが帰ってきておらず、グラウンドではミオや有志の学生達が準備をしている最中なのだ。

 ――駆け抜ける風――
 
 ♪〜〜
 
 今 未来が見えなくとも
 今 希望が掴めなくても
 
 諦めないで 進めるはず
 その足がアナタたちには あるのだから
 
 風が運ぶ幸せ    空に映る希望(ゆめ)
 明日(あす)を見つめる瞳  駆け出した未来
 どんな時も俯かず  前だけを見て
 あの光目指して  走り続ける
 
 〜〜♪

 一番を歌いきったところで、スタジオまで出ていた由希、絢、ジーラがステージの上に姿を現す。
「はーい、司会交代! ソロでステージ飾るなんてやってくれるじゃないの」
 開口一番由希は風華を肘で小突いた。
「お待たせしてすみません、IMP北米ライヴイベントをはじめたいと思います」
「あー! それあたしの台詞!」
 グループ名にそった上級悪魔といわんばかりのダークな雰囲気をかもし出す衣装を纏った絢の挨拶に由希が突っ込みをして場を盛り上げる。
 その間に準備を終えたミオたちが戻り、総勢10人のアイドルがステージに並んだ。
「それでは、北米進出第一号としてこれを歌わなくっちゃ始まらない。デビューシングル『Catch The Hope』」
 由稀のMCの終了と共に照明が落ち、イントロが流れ出す。
 暗闇の中アイドル達はステージの上を動いてポジションを取った。

 ――Catch the Hope――
 ♪〜〜
 
 歩き出そう 希望抱いて
 
 この空を 私達の セカイを取り戻そう
 ココロに 未来夢見て


 道は無明 歩みは希望と共に
 その想い ココロの灯 絶やさぬように往こう
 
 
 絶望の先にある 本当の希望求めて
 明日をこの手に Catch the Hope 


 駆け出そう 希望抱いて
 
 この空を 私達の セカイを守り抜こう
 ココロに 未来描いて

 飛び立とう 希望抱いて
 この空を 私達の ミライを守り抜こう
 ココロに 明日信じて
 
 〜〜♪
 
 曲の終了と共に拍手と口笛が響く。
 出だしの手ごたえとしては十分だとアイドル達はお互いの顔をチラチラと確認し、頷いた。
「このアメリカでも受け入れてもらえて嬉しいわよ。このまま飛ばすわよ。続いては新曲を披露するから、覚悟してききなさい」
「コミック・レザレクションのときに発表予定でしたが、今日のために取っていました」
 由希のMCに続いてリーダーの絢が説明を続けた。
「曲名は『Brave Spirits』‥‥皆さんの勇気、私達にください」
 後ろにいたミオが前にでるとその豊満なボディゆえに胸が揺れる。
 そして、息をつくまもなく激しいイントロが流れだした。
 
 ――Brave Spirits――

 ♪〜〜
 
 信じるモノ 貫く その力は BraveSpirit
 愛するモノ 守る その力は BraveSpirit
 
 Braze My Heart! Braze Your Heart!
 Brave We Heart! Braze Your Heart!

 希望の光 切り開く その力は BraveSpirits
 明日の扉 錠を開く その鍵は BraveSpirits
 
 Braze My Heart! Braze Your Heart!
 Brave We Heart! Braze Your Heart!

 貴方の勇気 私達にください
 貴方の微笑み 私達にください
 
 それが力になる 私達の心の力になる
 その力は BraveSpirit!

 We Heart is Blaze and We Heart is Brave
 We are BraveSpirits!!
 
 〜〜♪
 
 初披露曲ではあるが、時間をつくって練習をしてきたアイドル達は息のあった振り付けと歌で歌いきる。
 コハルも怪我を耐えて二曲を無事に踊りきったが、息を荒げ不調の色をみせだした。
(「由希さん、外へ移動をさせてー、一度美月姫さんとミオさんのソロを入れる形でー」)
 ライディが小声で由希にいうと由希は小さく頷く。
「前半はこれで終了、これから外にいくよー。トイレとか済ませるのもOKだけどいい席は早く来ないととられちゃうわよ」
「ボクについてきて、案内するよ!」
「さぁ、これからですよ。トリック オア コンサート」
 ジーラと灰色のローブを着てカボチャ型のランタンを掲げた弓が体育館からキャンプファイヤーの用意されたグラウンドへ生徒達を移動させた。
 夢のような時間はまだ終わらない。
 
●明日への風の旅人
 
 ♪〜〜
 
 風はどこへでも向かう 思いを携え
 
 昨日から風は 今日に向かった風

 今日からの風は 明日に向かう風

 そして、風はあなたの未来を運んでいる 希望と共に
 
 空を自由に駆け巡る 思いを携えどこへでも
 
 あなたの思いをどこまでも
 
 〜〜♪
 
 大きな篝火の中、ミオのアコースティックギターと共に美月姫のソロが始まった。
 予定では全員で歌う予定だったが、コハルの手当てをライディが行っているための時間稼ぎのためにやらざるを得ない。
 緊張しながらも自分で考えた歌を精一杯歌う美月姫の表情は真剣だった。
 しかし、歌の途中で歌詞が飛んでしまったのか思うように歌えなくなる。
(「ああ、歌が出てこない‥‥どうしよう‥‥」)
 そのとき、弓が美月姫の隣に立ち自分の曲を歌いだした。
 
 ♪〜〜
 
 時は戻らない 未来は続く

 悲しみも喜びも 明日を作る真実だから

 振り向いてもいいけれど 立ち止まらずに歩こう

 一歩踏み出せば そこに道が出来る

 僕らの歩みが 未来への道となる

 楽しいことも辛いことも 明日へと続く現実

 過去は戻らない 目を逸らさずに 明日を作る真実を

 明日に繋がる希望を紡ぐ道
 
 〜〜♪
 
 初めはアカペラだったが、ミオがすぐに切り替え、メドレーの如く二人の歌はつながり、最後の方は美月姫と弓によるデュオとなって会場を盛り上げる。
 グラウンドには生徒の他にもTVで宣伝したことで集まった人々が各々にペンライトをもって人による輪を大きく作っていた。
「はーい、後半戦いくよー。それにしても、すごい人数‥‥TVの力ってすごいわ」
「貴方達ももっと売れていけばこれくらいは出来るわよ。ファンを後悔させなければね?」
 大勢の人に囲まれて驚いている由希にグリーナがマイクを持って現れる。
 篝火の周りをぐるりと回りながら手を振り、そのたびに拍手と歓声を受けるグリーナを前にアイドル達は実力の差を感じた。
「あたしらも負けてられないわよ。先輩の胸を借りつつ一緒に盛り上げるわ。次の曲は『WILL〜光へ〜』」
 由稀の一声と共に篝火を均等に囲みながらグリーナを含めたアイドル達は柵を隔てた先にいるファンに向けて笑顔を向ける。
 そして、イントロが始まった。
 
 ――WILL〜光へ〜――

 
 ♪〜〜
 
 希望なんて有りはしない
 
 誰かがそっと呟く
 
 それでも前を向き進む
 
 それしか私には出来ないから‥‥


 たとえどんな辛くとも
 
 絶望が世界を覆っても
 
 私が未来(あす)を切り開く
 
 絆 闇を打ち倒し
 
 光 世界を染めあげる

 たとえこの身が滅んでも
 
 この意思だけは砕けない
 
 〜〜♪

 ジーラやケイは柵のギリギリまで近づいて手を握ったり、一緒に手を叩いたりして盛り上がればコハルも軽いダンスを踊りだす。
 絢と風華が動く翼のギミックを動かし、より一層幻想的な空気を作り出した。
 由希と弓、そしてグリーナは甘く響く大人の歌声で人々を魅了していく。
 Innocenceは歌で、ミオはギターでそれぞれがそれぞれの持ち味を生かしてライヴを盛り上げた。
 離れた場所では白岩とライディがアイドルたちのステージを見ている。
「弓さんの活動を生で見れて、アイドルのお手伝いが出来て本当に良かったです」
「僕も本当にいいステージになったと思っているよ。こうした思い出がずっとずっと生徒達の心に残ってくれたらいいな」
 一般人でも能力者を支えることができ、その逆に能力者だからこそ一般人を守り続けたいという思いがあった。
 忘れられない一夜であり、被災地への希望となればと夜空を見上げライディは思う‥‥。

●宴の終わり
「皆、おつかれー! まずはカンパーイ!」
「「かんぱーい!」」
 ライヴ終了後、着替えを済ませた能力者達はグリーナがお忍びでよく来るレストランに来ていた。
 いわゆる打ち上げである。
「すごく緊張しましたの‥‥でも、楽しかったですの」
 乾杯をしたあとInnocenceは歌いつかれた喉を癒すかのようにソフトドリンクを飲みだした。
「お疲れ様でした弓さん。素敵でした」
「椛ちゃんもお疲れ様です。バックアップありがとうございました」
 ソフトドリンクでも酌をする白岩を弓は微笑みながらそっと撫でる。
 隣ではコハルが怪我を早く治そうと料理をバクついていた。
「まさか、グリーナ様と一緒にTVで宣伝できるとは思っても見ませんでした」
 一口飲み終え、料理に手を付け出した絢がぽつりと呟く。
「ボクも顔から火が出るくらい緊張したよ‥‥」
「社長に聞いたら口利きしてくれてたみたいです。僕にとってもすごいサプライズイベントでした」
 ジーラやライディも予想していなかったことだけに驚きを隠せないといった様子だ。
「いいなー、あたしもTVに映って歌を歌いたかったよー。せっかくだから、新曲をここで披露しまーす!」
 打ち上げの最中にケイが急に立ち上がり即興で歌を歌いだす。
 
 ――ロック鳥は恋泥棒――

 恋に焦がれて君に憧れ
 黄昏に招かれてハロウィン

 集え今宵は魔性の宴、恋に溺れし者共よ
 我と唱えよ成就の祝詞、されば扉は開かれん

 なんちゃってなんちゃって☆
 難しい言葉は要らないの♪

 午前零時の鐘が鳴れば
 夜汽車を目で追う王子様

 私のルージュは魔法のバトン
 青い魔法の月を浴びて
 ウノメタカノメタカノツメ
 爪を研ぎますアクジョの心
 げっチュゲッちゅハロウィーン♪

 騙されないで奪われないで
 振り向かせてあげて
 君の太陽のまなざしで
 
「楽しいコ達ばかりネ。また日本にいったときは逆にワタシの歌でも歌ってもらうのもイイワ」
 ノリノリで歌いだすケイを眺めながらグリーナは微笑んだ。