●リプレイ本文
●今、そこにある危機
「ハイスクールはコの字型に設立されていて、体育館にを避難所にしようしていた。コの字中央にタートルワームが配備ね」
高速移動艇で目的地に向かう中、眼鏡を光らせながら水上・未早(
ga0049)はUPC本部で用意してもらった資料に目を通した。
「いったい何の為にこんな所を‥‥」
重要拠点とは決していえない場所の襲撃に夕凪 春花(
ga3152)も首をかしげる。
「理由なんかどうでもいいわ。あたしたちは仕事を片付けるだけ‥‥。ハイスクールの内部と周辺地図のコピーをくばるよー」
棒キャンディを口に咥え、葵 宙華(
ga4067)は学校へ潜入をかける6人のメンバーへ地図を配った。
「トラックは現地で受け渡しみたいだね。先に連絡して移動してもらおうか」
シェスチ(
ga7729)はニット帽を弄っていた手を下ろして地図をじっくりと眺め、進入路を頭の中で組んでいく。
「学校が襲われているか‥‥俺の場合は社会見学中だったけれど、学校自体が壊されているのは嫌だよな。早く避難させないと」
葵に渡された地図を見て夏目 リョウ(
gb2267)は自分に降りかかった危機を振り返った。
「解決しましょう。嫌な思い出を増やさないためにも‥‥」
月神陽子(
ga5549)の言葉にその場にいたメンバーは揃って首を立てに振る。
この事件を解決したいと誰もが思っていた。
●少女の予想
「デュラハンっていう無人機S−01を使っていたり、僕のバイパーも操ったり‥‥オペレーターのお姉さんが見たかもしれないって少女はリリアンなのかも?」
『そうだとしたら厄介なことこの上ないですね。ゴーレムも学校からそれほど離れていないところにいる模様ですから、亀に時間をかけていられません。時にそう思う理由は?』
「乙女のカン♪」
水理 和奏(
ga1500)がアンジェリカに乗りつつ自分のカンを鹿嶋 悠(
gb1333)に話していた。
悠はそんなわかなの明るさに頼もしさを感じる。
年齢では上だとしても、傭兵の実戦経験はわかなの方が悠より上なのだ。
『中和領域展開完了。通信障害はもうないはずだ一気に片そうぜ!』
地上からは宗太郎=シルエイト(
ga4261)のLM−01改が特殊電子波長装置を展開し、戦闘領域に入った事を知らせる。
それと共にタートルワームから対空砲火が飛び出した。
「うあわぁぁぁ!?」
発射される対空プロトン砲をアンジェリカは避けきれず激しい振動がわかなに襲いかかる。
『大丈夫ですか?』
悠の乗る雷電も直撃を受けるが、ダメージは無かった。
「大丈夫、早く降りよう。僕たちが亀の攻撃をひきつけないとね!」
『ええ、そちらは任せます。こっちはこっちでゴーレムとワルツを踊りますから』
レールズ(
ga5293)が皆に連絡をしつつ、ゴーレムへレーザー砲を放ちゴーレムへ肉薄していく。
救出作戦が今、始まった。
●走れ、烈火のごとく
「俺と葵は放送室にいくぜ」
「そいじゃ、後はよろしくー」
リンドヴルムにタンデムし、リョウと葵は校舎の中を走りだす。
「陽子さんたちも潜入に成功したようだから、僕らは僕らで仕事をしていこうか?」
「はい、行きましょう」
シェスチと春花もリョウたちに続いて校舎の中に入っていく。
中庭となるようなところではタートルワームが一機、その巨体を見せ付けていた。
こちらの進入には気づいていないため、潜入は容易にできる。
「私達は傭兵です! 助けにきましたっ。いたら返事をしてくださいっ」
校舎に春花の声が響くと、カタリと物音が返ってきた。
「要救助者か、それとも泥人形か‥‥」
シェスチは警戒を春花に促し、共に覚醒をする。
声を潜めて物音がしたところへ二人が近づいていくと、土色の壁が歪み二人をなぎ倒すような攻撃を繰り出した。
「危ないっ!」
「くぅっ、舐めた攻撃をしてくるね‥‥」
春花は咄嗟に防ぐもシェスチは攻撃を受けて痛みをもらす。
「でも、動きは鈍い‥‥ね。泥は大人しく掃除されてれば良い」
不意をつかれたために攻撃を受けたがじわじわと人の形を取り出す敵にシェスチは小銃「S−01」を撃ち込んだ。
衝撃に泥人形はゆれるがブヨブヨした体に弾丸はめり込んでいく。
「こちらシェスチ。敵は泥のような姿で擬態できる模様。また直接攻撃はあまり効きそうにないので注意されたし」
シェスチは無線で仲間に連絡した。
「もう一体来たみたいです」
「それならそれで引きつけよう。10体という数が変わっていないなら、その方がいいからね」
春花がシェスチと背中合わせでたちながら月詠を構える。
シェスチがS−01をリロードすると覚醒で広がっていた霞が色濃くなった。
●増える敵?
「テイクアウトはさせねぇし、無傷で帰れるとも思うなよ?」
レールズ機が戦闘をしているのとは別のゴーレムへ機槍『ロンゴミニアト』を振りかざし、宗太郎は間合いを見ながら攻撃を仕掛ける。
盛大な炸裂音が響き、ゴーレムの装甲は吹き飛んだ。
「そらそら、どうした!」
余裕を見せる宗太郎だが、次のゴーレムの攻撃に驚く。
ゴーレムが光る鉄球を振り回し、宗太郎へとぶつけてきたのだ。
「ちっ、どこからそんなものを仕入れてきていやがるんだよっ!」
回避オプションを使い避けながら、宗太郎は毒づく。
『どうかしましたか?』
「敵はライトニングハンマー見たいな物を持っているぜ、気をつけろよ。直撃受けたらたまらん」
『了か‥‥こんなところに人? 危ないですよ!』
了解と続くはずだったレールズ機からの通信は変わっていた。
そのとき、レールズ機のカメラはKVとゴーレムの戦闘中だというのにハイスクールの方へと歩くゴスロリ少女を捕らえている。
『邪魔を‥‥しないで』
「え? っ!?」
小さく見える少女の声がレールズ機のコックピットに響くと同時にゴーレムがフォースフィールドを全開にしたタックルをレールズに当ててきた。
「まさか、ゴーレムを操っている? 君は一体‥‥」
そう呟くレールズだったが、少女の姿は見えなくなっている。
『大丈夫か!』
「問題ありません‥‥早くこちらを片付けて学校の方へ向かいましょう。嫌な予感がします」
レールズは意気込み、戦闘を続けた。
●喧騒につつまれる学校で‥‥
「助けに来ました。どなたかいませんか?」
陽子と水上は一度校舎の上まで上がったあと下がりつつ教室をあたりながら生徒を探す。
「ああ、助けがきた!」
「よかったー。早くこんなところから出して頂戴!」
ある教室にいくと取り残されていた生徒達が掻けて来きた。
年齢は同じくらいだったが、武器を持っている二人に安心したようである。
「ここには4人、あと16人ですか‥‥校舎内にはキメラもいます。騒がず、私達の指示に従ってください」
水上が生徒達に向けてピシャリといった。
『あーあー、テステス。放送室よりお知らせします。私達は能力者です。ただいま救出活動中なので、あわてず教室にいてください。人がいる教室であることが廊下側なりより分かるよう目印をしていただければ助かります』
「‥‥ということですので、ゆっくり付いてきてください。怪我などはしていませんね?」
葵からの校内放送を受けて陽子が優しく念を押し、移動をはじめる。
その後、同じように教室をいくつか確認して下の階へ降りるとドアにハンカチのようなものが挟まっている教室がいくつか見られた。
「合図を考えてくれたようですね。助かります」
「問題は敵もそれを感じて動かなければいいですけど」
水上の安堵する声に陽子が不安を呟いた。
「きゃぁぁぁぁ!」
そのとき少女の悲鳴が廊下に響く。
陽子の不安が的中していた。
周囲を陽子が確認すると、丁度対面の校舎でゴスロリ服の少女が泥人形から逃げているのが見える。
「校舎内をであるている人がいます。場所は2階の東側です」
無線機で陽子が連絡をするとブォォォンというエンジン音と共に廊下をリョウのリンドヴルムが駆けた。
「行くぞ烈火!」
少女を追いこし、リョウはリンドヴルムを変形させる。
タイヤは回転を止めず、足に回りリョウの体はアーマーに包まれた。
「でぇぇいっ!」
リンドヴルムの出力を上げてインサージェントを使い、リョウは強引に泥人形を吹き飛ばす。
「急いで逃げよう‥‥君は! まさか‥‥ラシェル? 海禅寺・ラシェルかい?」
振り返り、少女の姿を確認すると驚きと共にその名前を呟いた。
●脅威を振りはらい
「こちらの強度で防げるのなら大した相手ではありません。懐に入られた時点で貴方の敗北は決まっていたんですよ!」
五大湖解放戦で脅威を誇ったタートルワームも改造された雷電の前には明らかに分が悪い。
何よりも悠にとってはここであまり射撃戦を続けるつもりもなかった。
レーザーによる刃を繰り出し、タートルワームの砲台を斬り捨てる。
機体の練力を大きく消費するがそれ以上の破壊力を持った一撃だ。
『僕のリカも合わせていくよ! SESエンハンサー起動!』
悠機に合わせて後ろに控えていたわかな機が飛び出し同じく雪村で斬りかかる。
一撃では、落ちないタートルワームに対し、振り返りざまにわかな機と悠機がすれ違うかのように二撃目を斬り結んで倒した。
「やりました‥‥いや、しまった!」
悠は倒すところまできてはたと気づく。
相手は巨大な兵器なのだ‥‥それを破壊するということはすなわち爆発が起きるということだった。
ドドドォーンとタートルキメラが爆破しする。
いくつもの破片が校舎に飛び散り、窓が割れ、地面が揺れた。
『僕たちは大丈夫だけれど、学校はヒドイ状態だよ‥‥』
『水上です。こちらは被害は辛うじてありませんが、少し脱出には時間がかかりそうです』
「すみません。読み不足です‥‥葵さんがじっとしているよう放送してくれたのが救いですね」
『こちらは春花です。こちらではケガをした生徒が出てしまって、今手当てしています。軽傷程度ですので、問題ないと思います』
通信がやり取りされ、悠は対応に追われる。
『レールズです、ゴーレムの排除は完了しました。トラックを今から向かわせます‥‥あと、ゴスロリ服の少女には注意をしてください。何か嫌な予感がするんです』
「え、ゴスロリ服の少女というのは‥‥」
悠の雷電が校舎の2階でリョウが助けている少女に注目する。
「リョウさん、気をつけてください!」
叫んだのはリョウの後ろに迫る泥人形へか、それとも少女になのか悠自身にもわからなかった。
●再会は最悪の方向で‥‥
「忘れたのか? 同じクラスだった、夏目リョウだよ。この学校には転校してきたのかい? なんにしても久しぶり‥‥と、ほんとにここは危ないんだ、さぁ」
バイザーをあけて顔を見せながら、リョウはラシェルに笑顔で手を伸ばす。
「忘れてなんかいない。会いたかった‥‥リョウ君」
笑顔を返し、ラシェルはリョウの手を掴んだ。
そのとき、悠とわかなからの通信が耳に響く。
『リョウさん、気をつけてください!』
『ゴスロリ少女には気をつけて!』
「女‥‥の子?」
ラシェルは笑顔を消してリョウをジロっと見た。
「伏せなさい!!」
「っと、本当にまずいようだ」
リョウは陽子の声にラシェルの手を引き、リンドヴルムを再びバイク型に戻して走る。
陽子がそのままリョウの背後に迫っていた泥人形を斬り裂いた。
「また‥‥女‥‥」
ラシェルがボツリと呟き視線を陽子に向ける。
「貴方、逃げな‥‥そう、同類でしたか‥‥」
その視線に気づいて、見返した陽子は悟ったかのように言葉を紡ぐ。
『トラックが到着したので、随時逃げていって。人数はさっきの報告とこっちで見つけた分で全員そろったよ』
「水上さんはそのまま生徒を連れて逃げてください。この少女はカウントに入っていません」
葵からの通信を受け、どこか楽しそうな笑みを浮かべた陽子は水上に指示をした。
水上は頷きで答えて生徒を静かに下へ誘導をしていく。
「ラシェルが要救助者のカウントに入っていないって‥‥」
「敵ということです。逃げれば見逃しましょう」
「敵はあなた‥‥リョウ君は渡さない」
茶髪でゴスロリ服という格好の少女からは想像できないような低い声が陽子に向けて放たれた。
「‥‥教えてくれ、あれからいったい、何があったんだ!」
「コノ女を殺してからゆっくり話してあげるね」
リョウには笑顔で答え、少女が手を振るうと教室のドアを破り泥人形が2体でてくる。
「愛に殉じるつもりなら、他者など気にする方が間違っているのです。真に愛を求めるのなら、その想いは愛する者のみにぶつけなさい!」
「他人なんかどうでもいい‥‥だって、リョウ君は能力者だもの。事件を起こせばきっと会える。そして会えたんだもの一緒でしょ?」
陽子の鬼蛍が煌めき、泥人形に攻撃を当てていった。
そんな二人の戦いを見て、リョウは手をだせず言葉を紡ぐ。
「戻って来いよ、君は奴らに利用されているだけなんだ‥‥」
「戻る? どこへ? リョウ君を遠くで見ているだけの日常なんて嫌。リョウ君の傍にいる女の子を認めるなんて嫌」
しかし、ラシェルは壊れた笑いで答えた。
『遠くで見ているだけ』という言葉に陽子の攻撃が鈍る。
その隙を捉えたラシェルが泥人形に指示し、泥人形は床や壁を削って飛礫を投げつけた。
ゴギャと鈍い音が響き、陽子の頭から血が流れ、胴にぶつかった飛礫により吹き飛ぶ。
「陽子さん! ラシェル‥‥ごめん」
リョウは叫んだあと少女に謝り、リンドヴルムにて陽子をつれてそのまま窓から校舎の外へ飛び出していった。
●救助完了
「不幸なんてその辺によく落ちてるもの‥‥自分の舞台だけが悲劇だと思ってもらったら困る‥‥ね」
最後のトラックに同乗し、ガドリングで他のトラックの撤退支援をしているシェスチはリョウから事情を聞いてため息をつく。
負傷した陽子はトラックで横になり、救急セットを持っている春花の手当てを受けていた。
『もうすぐで街だから、気合入れて警戒よろしく。生徒達もやる気があった分早くすんでよかったよ』
一番目のトラックに同乗していた葵からそんな通信が届く。
『はぁ‥‥愛するあまり病んじゃって人類の敵に‥‥ね。けど、選択を間違えたのなら正せば良いんですよ』
レールズは過去に救えた女性をおもいうかべながらそっと呟いた。