タイトル:唸れ! 超機械マスター:橘真斗

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/08/21 03:42

●オープニング本文


「HI! JJ。珍しいじゃないあんたがうちの部門に顔出しするなんて‥‥」
「ああ、ちょっとな‥‥ジャッキーの腕を見込んで話がしたいんだよ」
 高級煙草を胸元に入れたJJがメルス・メル社の超機械開発室に足を運んでいた。
「ワタシにオハナシですカー? ブラザー」
「そのブラザーはやめてくれ。話ってのはこいつだ‥‥」
「コレハーKV用の武装案カー。ウチを頼りに来るとはKV事業も潮時かイ?」
「まだまだ、辞めるつもりつもりはないぜ。ブリッツ・インパクトのアイディアを超機械で再現できないか試したいんだ」

 説明しよう。
 ブリッツ・インパクトとは知覚系ナックルフットコーティングの一環として設計されたKV用スタンナックルだ。
 しかしながら、電力調整が上手くいかずKVを腕を吹き飛ばしたという経歴がある。

「ホー、スタンナックル系カー。イイネェー。ドリルも作っているし一気にやってコーじゃないか!」
 奇妙な口調でジャッキーことジャクリーン=ブランドルはJJの肩を叩き、設計プランをまとめていく。
 ジャッキーの腕は確かであり、持ち込んだばかりのブリッツ・インパクトはあっという間に超機械プランとして再設計されていた。
 
『ブリッツ・ギア

 射程0の手甲型超機械。今までの超機械とは違い、片手で軽量。格闘攻撃として扱うも能力者のAI制御で瞬間的に非物理攻撃を当てることが可能』
 
 
「さ、さすがだ‥‥」
「HAHAHA、これくらいブレックファーストマエヨー。ウチのほうでも用意した超機械がアルから傭兵に一緒にチェックしてもらおうカー」
「それは俺の方でやっておく。ありがとな」
「お礼はタカクツクヨー」
 超機械となったブリッツ・インパクトの計画書を片手にJJはラスト・ホープに依頼を出しに駆け出す。
 その後ろ姿をジャッキーは手を振りながら眺めた。

●参加者一覧

白鐘剣一郎(ga0184
24歳・♂・AA
国谷 真彼(ga2331
34歳・♂・ST
北柴 航三郎(ga4410
33歳・♂・ER
瓜生 巴(ga5119
20歳・♀・DG
銀野 らせん(ga6811
17歳・♀・BM
龍深城・我斬(ga8283
21歳・♂・AA
エレノア・ハーベスト(ga8856
19歳・♀・DF
絶斗(ga9337
25歳・♂・GP

●リプレイ本文

●超機械に魅せられた者
「久し振りだな、JJ。そう言えばプラズマブラスターのその後の進捗はどうだ?」
 白鐘剣一郎(ga0184)はメルス・メス社の研究室に顔をだしつつ見知った顔に声をかける。
「剣一郎! プラズマブラスターは完成して納品までいったが、あとはお上の判断だ。量産できる用意はあるんだが‥‥」
 肩を叩きJJは再会を喜んだ。
 しかし、本題であるKV用武装についての話は口ごもる。
「歯がゆいのは開発者も傭兵も同じですか〜でも、工業高校の教師としては試作品を弄れるだけでもかなり嬉しいです」
 北柴 航三郎(ga4410)が煤けた白衣に優しげな笑みを浮かべてJJに声をかけた。
「科学者ヅラしているのが多くてワタシもウレシイYO」
 JJたちと話をしていると、奇妙な口調をした女性が出てくる。
「ああ、こいつがうちの超機械開発部門のジャッキーだ」
「HI! ジャクリーン=ブランドルNE。今日はコンペに付き合ってくれてア〜リガトゥー!」
 一人一人にハグをしてジャッキーが挨拶をしていった。
「待ってました、ドリル武器! これは絶対に通さないと。今後そんな機会いつになるかわかったもんじゃないし!」
 戸惑ってハグを一方的にされる能力者の中、銀野 らせん(ga6811)はジャッキーに強くハグを返す。
「気合の入りすぎで空回りしないようにしてくださいね」
 瓜生 巴(ga5119)には一目で気合の入っていることが分かっていたので銀野を注意した。

●試作試験
「おや、我斬はんと同じ依頼になるとは奇遇やねぇ、頑張るというのも可笑しいけど宜しゅう頼みますぇ」
 赤い西洋風の衣装で京言葉をつかうエレノア・ハーベスト(ga8856)は同じダークファイターで顔なじみの龍深城・我斬(ga8283)に挨拶をする。
「よう。両断剣が乗る知覚武器が今まで皆無に等しかったからな。今回のブリッツ・ギアには期待しての参加だ」
 我斬はそう答え、作られた試作ブリッツ・ギアを片手に装着した。
 外見は手甲そのものであり、スタンガンが内臓されたような作りをしている。
「攻撃能力をオミットしてもいい。潜入にも便利な、片手で扱える超機械を望みたいですね」
 国谷 真彼(ga2331)は試験をする面々に『電波増幅』や『練成強化』をかけた。
「何? ブリッツ・ギアは物理と非物理で攻撃できないのか? 仕方ない、まずはスパイラルを試すか‥‥」
 絶斗(ga9337)は残念な面持ちで片腕用でアニメのような外見をしたドリルをキュルキュルと回す。
「手甲のような形をしているが精密機械ダカラネー。どっちかにしかできないYO」
「残念だ‥‥」
 ジャクリーンの回答に沈んだ呟きを残しながらドリルを高速回転させて絶斗が廃材を貫いた。
 実験場には廃材で作った的が置かれ、それぞれに攻撃をしてみて簡単にチェックくらいはできる運びになっている。
「ほな、うちはこの火炎放射器をためさせてもらいますえ」
 エレノアがフレイム・ウェーバをその華奢に見える外見で持ち上げ、放った。
 豪炎が機械から放たれ、30m先までその火柱が伸びる。
「重いし、勢いもあろうてええやねぇ‥‥けど、ちょっと扱いづらいわぁ」
 長い射程を保つためか、予定スペックよりもエレノアは行動を消耗していた。
「ブリザードの方は今までの超機械の中じゃ1,2を争うくらい重いかもしれません‥‥」
 巨大な扇風機のような超機械を持ち、真彼が発動させる。
 クーラーのような冷気が発生し、すぐに小さな氷塊となってひしゃげた鉄板にぶつかり、それをさらに変形させた。
「そっちも面白そうやね? 真彼はんうちにも貸してくれまへん?」
 エレノアが興味深そうにブリザード・フィンに手をだす。
「俺も‥‥ブリッツ・ギアが使いたい」
「じゃあ、そのドリルと交換だな」
 絶斗も我斬と道具を持ち替え、簡単な動作チェックを行っていった。
 一通りのチェックのあと、休憩を挟んでの総評が始まる‥‥。
 コンペの結果はもうすぐだ。
 
●まぁ、初めから決まっていたようなもので‥‥
「MAX5点でポイントつけてもらうやり方をやったもらったけドー。アットウ的じゃナイカーJJのブリッツ・ギアは」
 ジャッキーが白衣を翻し、コーヒー片手にJJの肩を叩く。
 その言葉の示すとおり、ブリッツ・ギアの性能は広く能力者に認められていた。
「普通に買える代物であって欲しい所だな。勿論、開発陣が流通に関わるなんて出来ないだろうけど其処はそれだろ?」
「そうもいかないんだよ。確かにコストを下げることは出来るかもしれないが、UPC軍に採用すらされないと話にならない」
 我斬の気持ちもJJには分かるが、こればかりは仕方のないことだった。
 どれほどのアイディアがあっても採用されなければ生産ラインに乗せることすら出来ない。
「ソレでもワタシ達にはどこに並べるかの提案が出来るわけでもナイカラネー。採用されて傭兵に出回るダケデモかなりのコトヨ?」
 我斬の言葉に続いてジャッキーもお手上げといったポーズをとった。
「試作品をためさせてもらいましたが、スキルの射程は変わらないんですね。不思議な感じですけれど」
 北柴はブリッツ・ギアをつけながらも代わらない感覚に不思議さを感じている。
「逆をいえば、どんなに射程をもった超機械でも遠くの奴を回復できたりできるわけじゃないってことだ」
「二番手のフレイム・ウェーバの用な範囲型超機械でも一緒ということですか。シチュエーションは選びますが、多数を同時に攻撃できるのは強い。問題は、その間の守りと味方の配置ですね」
 真彼が北柴と同じサイエンティスト目線での意見を述べた。
「あたしは火炎放射器は反対なんだけどな‥‥なんか殺戮兵器みたいで印象悪くなりそうで‥‥。何でドリルが一番じゃないの〜!」
「俺もブリッツとスパイラル以外は興味がなかった‥‥。格闘がメインだからな‥‥」
 サイエンティスト二人に真っ向から対立したのは銀野と絶斗である。
「あと、武器としてじゃなく瓦礫みたいな障害物の排除や掘削等戦闘以外、例えば災害救助にも使い方次第で使える点。あたし達傭兵のイメージアップにも役立てるわよ」
 ぐぐっと拳を強く握り銀野はアピールをした。
「災害救助とかを考えるならビット交換式にしてみたら使いかって良さそうですけれど‥‥。ところでジャッキーは『サラリーマンが地球を守るアニメ』は見た? それを見る限りドリル兵器は腕が壊れそうなんだけど」
 銀野のアピールに巴が乗っかり、スパイラルの採用案‥‥もとい、妥協案をだす。
「プラスドライバーとかマイナスドライバーとかも燃えるわ! うん、悪くない!」
 巴のアイディアに興奮収まらない銀野が妄想に翼を広げ燃え上がった。
「候補を絞らなきゃならない依頼だったが他の武器も決して悪くない、いや良い武器だと思うので今回選から漏れた物も廃案にしないで時期を置いてまた出して欲しいな」
 休憩中だというのに熱くなってきた部屋で炭酸飲料を飲みつつ我斬が二人にそっとささやく。
「そういってくれるとタスカルヨ」
「できるだけ、早く出回るようプッシュするだけしてみるさ」
 ジャッキーもJJも力強く頷いて我斬に答えた。

●浪漫は尽きず
「ド素人のうちが言うのもなんやけど、テーザーガンみたいな武器は無理やろか?」
「スパークマシーンと大して代わらないYO。あれもスタンガンの一種ダカラネー」
 エレノアのぽつりともらした問いにジャッキーは答えた。
 依頼も終わって高速移動艇の着陸しているところまでジャッキーとJJは見送るためについてきている。
「試作型機械剣というのが先日出ていたんだが‥‥あれに近い物をメルス・メスで出す事は出来ないだろうか?」
「というと?」
「店売りでなくて、入手したくてもできないんだ」
 JJにも剣一郎が苦笑しながら新作の提案を持ち出した。
「雪村のようなものはコスト高になるだろうから‥‥ビームコーティングアクスとかあの手なら多少は安くできるかもしれないな。けれど、問題は練力供給源が生身になるのがキツイかもしれないぜ?」
「その上、非物理になるということはファイタースキルの修正を受けられない可能性も高いYO」
 二人の話題にジャッキーが入り込み付け加える。
 ファイターは純粋な物理攻撃で成長を遂げてきたクラスなのだ。
「そうか‥‥難しいな」
 剣一郎は腕を組んで悩む。
「ジャッキー。電磁波シールドとかってできないのですか? シールド型超機械というのも中々面白いと思うのですが」
「技術面としては何とかできなくはナイYO。ただ、研究費がかさむダロウカラきっと高価格。いつかやってみたいケレド」
 レトロSFのようなアイディアにジャッキーは割りと前向きに答えた。
 現実はどうあれ、やりたい、作りたいという『浪漫』は誰しももっている。
 それをかなえる為に一歩ずつ歩いているのだ。