タイトル:希望の風に乗せて祝福をマスター:橘真斗

シナリオ形態: イベント
難易度: 易しい
参加人数: 25 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/06/28 04:40

●オープニング本文


「出遅れちゃったな‥‥」
 一息つきつつ、ライディ・王(gz0023)は本部に依頼を申し込む。
「あ、ライディさん。毎月毎月ご苦労様です」
「こちらこそ、いつもお世話になってます」
 本部のオペレーターとも顔見知りが増えた。
 思えば半年、ただがむしゃらに走って来た様に思う。
 しかし、走った分だけの結果がこうしてでているのが嬉しかった。
「はい、依頼としてはOKです。ジューンブライド企画が多く届いていますけれど、やはりライディさんの方でもやるんですね」
「ええ、僕としても前々から考えていたことですし‥‥」
 そんなことをいっていると、足元から声が聞こえる。
「『じゅーんぶらいど』とは何じゃ?」
 ライディが視線を向ければ、そこには和装の少女がライディを見上げていた。
「えっと、六月に結婚をすると幸せになるっていう欧米の風習かな?」
「なるほどのぅ、ためになったのじゃ。妾は平良・磨理那じゃ。そうじゃのぅ、せっかくじゃから欧米の結婚式とやらを見てみるのもよいか」
 自己紹介をしつつも、自己完結で話をまとめる磨理那にライディは戸惑う。
「僕はライディ・王です。それじゃあ、式場まで案内しますね」
 磨理那と手を繋ぎ、ちょっと兄妹っぽい雰囲気でライディはバイト先の結婚式場へとでかけるのであった。

●参加者一覧

/ 神無月 紫翠(ga0243) / クレイフェル(ga0435) / 国谷 真彼(ga2331) / ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416) / 叢雲(ga2494) / 霧島 亜夜(ga3511) / 緋霧 絢(ga3668) / アッシュ・リーゲン(ga3804) / 葵 コハル(ga3897) / 蓮沼千影(ga4090) / レーゲン・シュナイダー(ga4458) / 坂崎正悟(ga4498) / リン=アスターナ(ga4615) / キョーコ・クルック(ga4770) / 智久 百合歌(ga4980) / ラルス・フェルセン(ga5133) / ハンナ・ルーベンス(ga5138) / 阿野次 のもじ(ga5480) / シーヴ・王(ga5638) / ジェレミー・菊地(ga6029) / フォル=アヴィン(ga6258) / アンドレアス・ラーセン(ga6523) / 不知火真琴(ga7201) / 守原有希(ga8582) / 楓姫(gb0349

●リプレイ本文

●祝う側として
「祝福ですか‥‥お相手が‥‥いる方は‥‥おめでとう‥‥ございます‥‥独り身組として‥‥端の方で‥‥お祝いしてますよ」
 神無月 紫翠(ga0243)が会場につくと、すでに食事を楽しんでいる知り合いが多くいた。
 それらに挨拶をしていると、小さな少女が挨拶をしてくる。
「祝うのならばもっと元気になのじゃ‥‥そちは京都に来ていたものかと思ったのじゃが‥‥兄弟か」
 その少女―平良・磨理那―は着物姿で扇で自らをあおぎつつ紫翠を見ていた。
 知り合いと間違えたようである。
「せっかくの席ですから‥‥まあ、おめでとうといっておきましょう。ごちそうさま」
 国谷 真彼(ga2331)もどこか懐かしむような、悲しむような目で食事を楽しんだりするカップルを見て微笑んだ。
「良いねぇ結婚式‥‥俺達ゃいつになるやら。ま、相手が出来ただけでも、ありがたいモンだな」
「おお、京都に来ておった忍者じゃな。久しいの、恋人ができたのならよきことじゃ。手放さぬよう精進するのじゃぞ?」
 暗い雰囲気になりかけていたときに明るい話題を持ってきたアッシュ・リーゲン(ga3804)に磨理那は挨拶をする。
「姫様に言われちゃ、仕方ないな。がんばるさ」
「国谷さんもひがまないでくださいよ。磨理那様はお久しぶりです」
 アッシュが磨理那に挨拶を返していると、フォル=アヴィン(ga6258)もフォーマルスーツで挨拶を真彼や磨理那交わした。
「『ふぉる』か中国地方で活躍したようじゃな?」
「それほどでもございません。あの、山戸・沖那という少年についてですが‥‥」
「沖那は今屋敷で働いておるの。一度狩りにもでかけているのじゃが、覚醒しても奇妙な部分はみてないのじゃ」
 保護観察をしている少年能力者について聞かれた磨理那はフォルに対してそう答えた。
『ぎょーむ連絡、ぎょーむ連絡。ブーケトス大会を行うので我こそはという猛者、ならびに磨理那ちゃんは中庭へくるよーに!』
 阿野次 のもじ(ga5480)によるアナウンスが会場に響き、ゾロゾロと動きがはじまる。
「それでは妾も行くのじゃ、またの」
 磨理那もトテテテと言う軽快な足音を立てて中庭へと駆け出した。

●結婚前の女達
「みんな〜幸せな花嫁さんになりたいかー」
「「おー!」」
 ラジオの収録準備のための準備時間を稼ぐため、薔薇を彩ったピンク基調のドレスを着たのもじが前座イベントの司会を始める。
「賞品もあるのできばっていこう。男性もいるけれど、夜間刺されない様に注意してねっ!」
 そういって企画原案であり、景品提供やトスをするブーケを用意した”あおぞら花屋臨時店長”ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416)とクレイフェル(ga0435)へのもじはウィンクを飛ばした。
「結婚に障害はつき物だ、そのための試練というものだな」
「大丈夫、1つだけ取れればええねん」
 二人はそれぞれ違った対応を返す。
「片想い解消の為にも、負 け ら れ な い ん だ か ら !」
「誰かが言ってたわ。遊ぶ時は、全力で楽しまなければ損だ‥‥とね」
「1個だけ取れれば良い‥‥と思ってやがったら、妨害が入るとか。ホアキン、全力勝負でありやがるです!」
 参加者であり、ラジオのサブパーソナリティを務める葵 コハル(ga3897)、リン=アスターナ(ga4615)、シーヴ・フェルセン(ga5638)の3人もそれぞれ気合を入れていた。
「よかった‥‥間に合った」
 一足先に記念撮影イベントの主催であるライディ・王(gz0023)と記念撮影を終えた楓姫(gb0349)がウェディングドレスのまま、中庭へ遅れてやってくる。
 楓姫の着ているドレスは純白でスリムに見えるものであり、楓姫の年相応なボディラインを惜しげなく目立たせていた。
「ようし、定員くぎるよ。そしてルールを説明するのDA! 10個のブーケを磨理那ちゃんが投げるので知力、体力、時の運でゲットすべし! 多くブーケを捕った女性には香水が送られます!」
 のもじがノリノリで説明をはじめる。
 隣には磨理那もいて、ホアキンからスイトピー、白薔薇をメインにあしらえたピンクの可愛いトスブーケを預かっていた。
「投げるのじゃ、幸せを自らの手で掴むがよいのじゃ。待っているだけでは幸せを手に入れることはできぬぞ」
 トス前の挨拶を磨理那が行い、集まった女性陣のテンションはさらにあがっていく。
「私も位置について〜」
 そして、そのテンションに煽られたのかのもじまで配置についた。
「よーい、いくのじゃ!」
 気合の入った女性達(2人は男性)の中へ磨理那がホアキンに説明を受けたとおりにブーケをトスをする。
「グラップラーの俊敏さは‥‥覚醒していなくてもあるのよ‥‥」
 リンがホアキンの妨害から見事ブーケを1つ、2つと確保していった。
「少しは手加減しやがれです‥‥」
「そーだ、そーだー。片思いにチャンスをよこせー」
 シーヴとコハルが抗議をすると、リンは寂しそうに答える。
「今日は私も1人‥‥非は私にあるのだけれど‥‥」
 少しの間ができるが、その間にもブーケが宙を舞った。
「負けられるもんかっ‥‥! そこぉっ‥‥!!」
「ブーケをキャーッチ‥‥そしてアターク!!」
 リンが動かない一瞬を狙い、のもじがホアキンを押しのけブーケをキャッチし、シーヴの元へブーケを落とし、コハルは見事キャッチする。
「のもじにはやっぱり、勝てねぇでやがるです‥‥でも、ありがとうでやがるです。1つだけは欲しかったんで」
 シーヴの感動した声に親指を立ててウィンクをしてのもじは返した。
「ドレスはちょっと動きづらい‥‥けど、楽しい」
 楓姫は少し失敗したかなとも思いつつも雰囲気を楽しむ。
「本気で相手をしなきゃ、気押しされそうね‥‥でも負けられないわ」
 苦笑したリンの瞳に真剣さが宿った。
 さらに1つ、2つと合計4つのブーケを手に入れる。
「遠慮が先にでて上手くいかへんな」
 クレイフェルもリンと同じグラップラーではあったが、女性陣の気迫に積極的に動けなかった。
「もういっちょ! いっちゃんは、初めてさんにも優しいラジオパーソナリティなのだっ!」
 半ばリンとのもじの一騎打ちのような状況に陥りながらも、のもじは自分でブーケは確保せず、楓姫にも渡す。
「え‥‥あ、ありがとうございます」
 戸惑いながらも頬を染めて楓姫はのもじからブーケを受け取った。
「もう一個げっとぉっ!」
 コハルも気合を入れて二つ目のブーケを手に入れる。
「残り二つじゃぞ、同時にいくのじゃ! それっ!」
 バスケットに残った2つのブーケを磨理那が同時に投げた。
「ラストなら、遠慮するわけにはっ!」
 クレイフェイルが一息いれてブーケに手を伸ばす。
「よっし」
 押しのけた女性達に謝りつつクレイフェルはブーケを手に入れた。
「これで5つ。トップかしらね‥‥」
 もう1つはリンが手に入れている。
「手に入れたブーケが多いものは妾のところに来るのじゃ。褒美の授与を行うでの」
 磨理那が終了の挨拶を始めているとき、クレイフェルは1人会場の隅へ移動した。
 そこには緋霧 絢(ga3668)がいる。
「え、あの‥‥クレイフェル様? そ、そのブーケは‥‥」
 ブーケを持ちつつやってきたクレイフェルに絢は目を大きく開いたあとい、俯いて頬を染めた。
「あー、なんや緋霧が大会にでようかでないか迷っているように見えたから‥‥余計なことやったら堪忍な」
 クレイフェルは視線をそらしながら頬をかき、手に入れたブーケをそっと絢へと差し出す。
「そ、そんなこと‥‥ありません。あの、その‥‥ありがとうございます」
 絢の震える手がブーケを受け取り、お礼の言葉は喧騒の中へと消えていった。
 
●収録『Wind Of Hope』
「今回はテーマがテーマだし、いい一日になるといいよな!」
 音響準備を終えたアンドレアス・ラーセン(ga6523)が会場のBGMを調整しつつライディに声をかける。
「遅れたでやがるです。ライディの白いタキシード姿はちょっと新鮮でありやがるです」
 シーヴがブーケトス大会で手に入れたブーケをもちながら、収録用のテーブルに腰掛けた。
「さっき楓姫さんと写真をとっていたから‥‥それじゃあ、番組をはじめようか。放送は夜だから先行収録だね」
 パーソナリティの準備とノートパソコンによるメールの整理を終えたライディが番組をはじめだす。
『ライディ・王のWind Of Hope!』
 今回は結婚式場ということもあり、結婚しきでおなじみの曲が流れ出す。
『皆さん、こんばんわ。ライディ・王です。こんな曲が流れていますが、私が結婚するわけではありませんよ』
『サブパーソナリティのシーヴ・フェルセンです。ライディはああいっていますが、タキシードを着ていてかっこいいです』
 放送が始まりいつもの調子で番組が始まった。
 そんないつもの光景にいつもでは見られない人影がシーヴを見る。
(「大兄‥‥邪魔でありやがるです」)
 シーヴの鋭い視線が人影であるラルス・フェルセン(ga5133)を射抜いた。
 そんな視線を受けつつもラルスはにへら〜という笑顔で答える。
『シーヴー。お便りお願い』
『あ、すまねぇです‥‥あ、ごめんなさい。お便り読ませていただきます。今回のメインテーマは祝福です』



 ライディさん、初めまして
 
 無節操な菓子屋と申します

 先ずは会場の、そして番組をお聞きの全ての幸せな一歩を踏み出された皆様にお祝い申し上げます
 
 戦火の耐えぬ今だから、幸せを作っていく皆さんに自分は大いに力を頂いてます
 
 さて、祝福というテーマですが私は友人に祝福を

 自分も手伝っていますが、友人がL・H労働者組合という兵舎を立ち上げました
 
 傭兵生活を通じ売る側買う側が双方利益を得られるよう、より良い関係を築く為陳情の仲立ちをする
 
 簡単に言えば皆の声を聞き、まとめ、伝える兵舎
 
 これだけの事がなんと難しいことか
 
 その困難を承知で、行動した彼が私は誇らしいです
 
 有り難う、そして開設おめでとう

 RN:無節操な菓子屋



『無節操な菓子屋さんありがとうございます。しかし、無節操な菓子屋さんってどんな菓子屋さんなんでしょう?』
『シーヴは労働者組合の方が気になります。現状の改善をしようと動きがあるのはひとつの希望です』
 ライディからの問いかけに意見を述べつつシーヴはライディを見た。
 希望の風のスタッフになってから成長し続けるこの番組を知っているからである。
『この番組のように皆さんに支えられながらも成長していって頂ければ嬉しく思います。次の手紙は僕から短いお手紙を読ませてもらいます』
 それを分かったのかライディは少し照れながらも番組をすすめていった。


 みんなごめん、俺先にしっと団を卒業するよ!
 
 お前らも早く幸せになれるよう、俺からの祝福を!

 RN:元しっと団団員




 ついに独り身を脱出、そんな自分に祝福を
 
 そして、顔見知りの皆にも祝福を

 RN:ミドルグレイ




 このラジオを聴いているすべての人に幸せが訪れますように
 
 PN:Fo




 先日結婚式を挙げた隊長達
 
 そして、新しく絆を結ばれた方達に心からお祝いを申し上げると共に、末永い幸せをお祈り致します

 RN:風桜




 素敵な相手を見つけ、結ばれた知人一同‥‥いえ、結ばれた全ての方達にに心からの祝福を
 
 永遠の愛が続く事を祈っています
 
 これからの長い旅路に、多くの幸があらんことを
 
 RN:執事狐




 『誰に』とも『何に』ともはっきり言えませんが

 大切な存在を愛しんでくれる全てに、感謝と祝福を贈りたいと思います

 RN:猫にまっしぐら



『祝福というテーマであってもいろいろな形がありますね』
 シーヴがそんな感想をもらす。
『元しっと団団員さんのはちょっと嫌がらせのような気もしますが‥‥』
『1つの愛の形です』
 苦笑するライディのコメントにシーヴがぴしゃりと突っ込みをいれ、会場にいるラルス達がその光景を見て微笑む。
『や、やりづらいでやがるです‥‥次のお便りです。はじめましてさんが多いのでまとめて紹介します』
 身内に見られているのが恥ずかしいのかシーヴも頬を少し赤くしながらをノートパソコンに届いているメールを読み出した。



 はじめまして、まっちです。初メールです
 
 今日のテーマは『祝福』ということですが、実は僕先日結婚したんですよね
 
 多くの人に祝福してもらえてとても幸せでした!この場を借りてお礼を言わせて下さい
 
 ありがとうございました
 
 素敵なイベントになって欲しいです! ではでは〜!
 
 RN:まっち




 みなさんはじめまして

 世界はあまり良い状況ではありません
 
 しかし、今の皆さんのように幸せな事もあります

 幸せは世界を支える事ではないかと思います

 私はこの嬉しい出来事を心から祝福します

 そして、これからもこのような幸せが続く事を切に願っています

 みなさんに幸ある事を‥‥
 
 RN:紅茶娘




 沢山の友達が結婚していく
 
 寄り添って生きていける、そんな幸せを手に入れるヒトが多いということが嬉しい

 神様がいるなら彼らに永遠の幸せを
 
 世界中の恋人に幸多からんことを

 そして、俺にも幸ください
 
 RN:Monte Bianco




 これは祝福ではなく一個人に対してのメッセージです
 
 誰宛かも、申し訳ありませんが伏せさせて頂きます

 貴方が好きです
 
 貴方と同じ時間を過ごす事が私の幸せです
 
 今はこんな形でしか伝えられませんが、いつか貴方に正面から伝えたいです
 
 RN:朱鴉



『最後は祝福ではありませんが、初めて見たラジオネームでしたので読ませていただきました』
『結婚報告から、すべての人の幸せを願うものまで多くのお便りありがとうございます』
『寄り添って生きていけたり、一緒の同じ時間を過ごすことから幸せってあるのだと思います』
 手紙を読み終え、簡単な感想を言い合ったあとシーヴから力のこもった言葉が紡がれる。
『少しでも多くの方がこの希望の島で出会いをしていってもらえたらと思います。そんな皆さんのお送りする一曲。IMPより”Catch The Hope”』
 ライディはその言葉を受け止めながら、アンドレアスに曲を案内してシーヴと共にパーソナリティ席を立った。

●記念撮影
「記念撮影を終えた方はこちらに来てください。お祝いの『ポルポローネ』がありますから」
 叢雲(ga2494)が手馴れた様子でスペインの結婚祝いのお菓子を配っていく。
 ポルポローネはアーモンドが入っている一口サイズのクッキーで、子孫繁栄を意味していた。
「キョーコのその姿、やっぱ素敵だな」
 オーソドックスに黒のタキシードを来た霧島 亜夜(ga3511)が妻であるキョーコ・クルック(ga4770)のドレス姿を見てにやけている。
 キョーコの姿はドレスは白色でAラインのドレスだ。
 胸元はビスチェタイプでスカート部はレースをフレアスカートみたいにいくつも重ねたもので、袖・肩紐のない物を選んでいる。
 手には純白の長手袋をつけその上には結婚指輪の加護の指輪を嵌め、髪は結ばずおろし、ヴェールは腰まで届く長さのをつけていた。
「と、年上をあんまりからかわないで‥‥ほ、ほらポルポローネでも食べよう」
 照れ隠しのように撮影が終わってもらったお菓子を亜夜の口の中へあーんとキョーコは亜夜に食べさせる。
「仲がよいの、ぶい1ぐらんぷりで告白もしておったようじゃから、ここまできて当然かの」
「あーん、むぐむぐ‥‥んくっ! この前は見に来てくれてありがとな! 楽しんでもらえたなら嬉しいな」
 ブーケトスを終えて、アイスを食べつつやってきた磨理那に亜夜が挨拶を交した。
「もうっ、亜夜ったら行儀が悪いんだから」
 亜夜が食べているポルポローネのカスが頬についているのを見つけたキョーコはそれをつまんで食べだす。
「すみません‥‥撮影の準備‥‥なので、移動していただけると‥‥」
 そんな様子に微笑みが起こる中、紫翠が二人に移動を頼んだ。
「あ、あたしったらなんてことを‥‥あ、亜夜。早く行こうっ!」
 顔を真っ赤にしたキョーコが亜夜を引っ張りながらその場から離れていく。
「ライディ‥‥シーヴの格好変でないでやがるですか?」
 入れ替わりに花嫁姿で出てきたのは先ほどまでパーソナリティをしていたシーヴだ。
「いや〜、似合ってーいますよ〜。今日来て良かったですー」
 ラルスが妹の晴れ姿にハンカチで涙を拭うオーバーアクションをしだす。
 シーヴの姿はチュールレース使いの白のオフショルダー・Aラインで後ろにシフォンリボンを長く垂らしたもので、ストレートの髪は緩く巻き、ロングマリアヴェールを被っていた。
 白のロング手袋ではブーケトス大会で手に入れた薔薇とスイートピーのブーケを大切に握っていた。
「大兄様には聞いてねぇです。ライディにはどう見えるですか?」
 上目遣いでシーヴはライディに近寄り、答えを聞いた。
「え‥‥あ、うん、似合ってるよ‥‥それじゃあ、写真をとろうか」
 ライディは少し見惚れていたのかく頭を振ったあと、自らシーヴと腕を組んでファインダーの中へ移動する。
(「きっと笑顔が写れるです‥‥」)
 珍しくリードするライディをシーヴは嬉しく思っていた。
 
●『Wind Of Hope』後半戦
『ここからは私、リン=アスターナと‥‥』
『ラジオの前のみんな、こんばんわー。といっても、収録中の現場はお昼で晴れ。晴天に負けずに元気な葵コハルがお送りします』
 ライディが写真をとることを聞いていたのでリンがメインに座り、サブパーソナリティでコハルが席につき曲の終了と共に後半戦が始まった。
『しかし、そのこれ見よがしにブーケトス大会のブーケを並べるのはどーかと思うよ』
『置く場所がなかったから‥‥仕方ないと思って諦めて頂戴ね』
 前半の二人とは違ってやや砕けた雰囲気でリンとコハルの掛け合いが続く。
『おーい、番組すすめろー』
『っとと、ついつい』
『ごめんなさい‥‥久しぶりだったから、調子が出なかったわ。それではお便りコーナーの後半戦に参ります』
 アンドレアスからそんな突っ込みが飛んで、お便りコーナーにようやく進んだ。
 


 自分は不幸を与える存在だと、ずっと思っていた
 
 必死に世界にしがみついていたけれど、そんな必要はなかった

 世界はいつも、優しく祝福してくれていたから

 それを教えてくれた風に感謝を
 
 そして今度は私から、優しい世界へ心からの祝福を

 RN:紅の炎


『祝福というよりは感謝みたいです』
『常連さんですが、発展していってる感じがちょっと羨ましーです』
 コハルが自分の事を顧みて、はふんとため息をつく。
『感謝に近いものは、もう1つ』
 リンは次の手紙を読み出した。



 ぇ〜と緋色の閃光へ

 がさつなあたしなんかと一緒になってくれて本当にありがとう
 
 あたしは今とっても幸せだからその分あなたを幸せにしてみせるから覚悟してね
 
 追伸:まだ傭兵続けたいから子供はもう少し我慢してね♪
 
 RN:戦うメイド



『ラジオの電波に乗せてすごいのがっ!?』
『ここまで告白できるのは、少し羨ましいですね』
『でも、傭兵の女性にとっては一番気になる部分だよね。好きな人と一緒になった後の話は‥‥』
 二人とも女性傭兵であり、この問題を大きく受け止めていた。
 恋をしたあと、どうするのか‥‥。
 この戦いが終わったあとの未来は二人には考えられなかった。
『それでは次はあたしが読みます』
 暗い雰囲気を吹き飛ばすかのようにコハルはテンションをあげる。



 はっはっは! 希望の風の諸君、久方ぶりだ!
 
 世界はラヴ&ピースなどというが、どこに平穏などあろうか!
 
 『ラヴ&パワー、ラヴ&チャージ、ラヴ&デストロイ』でバグアを駆逐せよ!
 
 最後にフラグとやらをおったてまくる輩がいるので、私のRNで祝福しよう!

 危険なフラグくにゃっとまっがーれ↓


『RNはかわってますけど、ある意味おなじみの人です。 このテンションで皆乗り切ろう!』
 読んだあと自分も笑いながらコハルはラジオの前の人々にエールを送った。
 それは自分に対してのものかもしれない。
『そうですね、がんばりましょう。それでは最後に3つほどお便りを読ませてもらいます』
 


 俺を振り回すお転婆な風へ
 
 俺達の祝福の日まで、最後の希望であなたを待つ
 
 RN:青空




 いつか来る日だと覚悟はしていたけれど

 実際に目の前にすると‥‥手放したくない我侭な僕がいる
 
 それでも誰よりも幸せを願うから、悔しいけど祝福してやるコンチクショウ!!

 ――僕の宝物不幸にしたら、狙撃するから

 RN:紫水晶の影




 『告白』のとき皆さんに頂いた祝福を、数十倍にしてお返しです

 頑張る方々へ心からの応援と祝福を

 RN:留守番係の元楽士



『祝福の形はそれぞれってことですね。はじめのは祝福ではないですが、私達が祝福をしたいので読ませてもらいました』
『悔しいけど、祝福するのも男らしいよー。がんばれ!』
 リンとコハルの二人が締めに入りだす。
『さて、皆様とのお別れの時間がやってまいりました。今夜も楽しんでいただけましたか?』
『途中でチューニング変えてないよねっ、よねっ? 久しぶりのあたしの声を聞いてくれたのなら、ありがとう!』
『それでは、次の放送までSee You Again』
 アンドレアスがエンディング曲を流し、収録放送は無事に終了した。


●祝福に推されて告白を
「撮る側から映る側になるか‥‥」
 坂崎正悟(ga4498)はホアキンからエーデルワイスのブーケを受け取りつつ相手を待っていた。
「坂崎さん、遅れてすみません。今日はありがとうございます。ドレスを着てみたい私の我侭を聞いて下さって‥‥」
 入れ替わるように控え室でドレスに着替えたハンナ・ルーベンス(ga5138)が慣れない格好で坂崎の前に現れる。
「これは‥‥綺麗だよ。シスター‥‥あと、これはシスターの故国の花だ。気に入ってくれればいいが」
 坂崎が照れくさそうにしながらも、ハンナにブーケを渡した。
「エーデルワイス‥‥花言葉は『尊い記憶』‥‥私の大好きな‥‥故郷の花です‥‥」
 感極まってか、ハンナの目に涙が流れ出す。
 それを見た坂崎はブーケから一輪花を取り出してハンナの髪にさす。
「撮影はあくまで余興だが‥‥今は本気であなたの幸せを祈ることを許して欲しい。再び心からシャッターを切れるようにしてくれて、ありがとう。ハンナ」
 撮られる側となったカメラマンからの言葉を受けハンナは頷き、ファインダーの中へ移動した。
「どうですか? 【AURORA】コレクションで私がデザインしたドレスですよ」
「お、おお! いいなぁ。もう一度式を挙げたいくらいだぜ!」
 着替え終わった智久 百合歌(ga4980)が旦那であるジェレミー・菊地(ga6029)の前に現れ、他の人の写真をとったジェレミーは撮影を中断して百合歌を褒める。
「ジェレミーさんもタキシードがお似合いですよ。バンダナがない姿も新鮮です」
 百合歌もしおらしく答えた。
 ドレスは白の右肩ワンショルダーAラインロングドレスに繊細なレース使いの後ロング。
 そして、ウエスト左、淡ブルーのシルクフラワーにドレープ寄せ、裾に向かって白〜淡ブルーのグラデーションがあしらわれている。
 髪はアップし、ティアラ、ロングヴェール、白長グローブ着用と、モデル顔負けの出でたちだ。
「おおと、せっかくのブーケももたないとな」
 ホアキンにつくってもらった、深みのあるブルーローズをメインに、所々に白いエンジェルフェザーをあしらったクレッセントブーケを渡す。
 そのあと、坂崎ペアと入れ替わるようにジェレミーと百合歌が撮影エリアに入っていった。
「レグもああいう格好どう? 結構、このドレスとかいいと思うんだ! 一杯写真取りたいし今のうちに決めておこう!」
 蓮沼千影(ga4090)が待合時間も惜しいのか【AURORA】ブランドのカタログ片手に相方のレグに見せている。
 その姿は玩具をねだる子供のように見えなくもなかった。
「ちぃも似合ってますよ」
 そういうレグの衣装は正統派でクラシカルな白のAラインドレス、トップスは無地で仕上げた大胆ビスチェラインだ。
 さらに、小さめの胸をカバーするデザインで、ロングトレーンでバックスタイルも綺麗にしあげられている。
「れぐ‥‥すごく綺麗だ。愛してる。ホアキンからもらったブーケもにあうぜ! レグのドレス姿、隣で見られて幸せだぜ、俺。地球に生まれて良かったタァァァ!」
「ち、ちか‥‥そんなこといったら‥‥はずかしいですよぉぅ」
 派手なリアクションをする千影とは対照的にレグは終始小さくなって反応を返した。
 そうしている間に順番が回り撮影を済ます二人。
「レグ、今日はありがとう‥‥ 本当はちゃんと戦争が終わったらって思ってたんだが‥‥もう待ち切れないや、俺」
 撮影エリアから移動し、少し離れたところで千影はレグに呟いた。
 そして深呼吸をし、真剣な瞳でレグを見つめたあと千影は告白をする。
「俺の側に一生、居てやってほしい‥‥俺の、奥さんになってくれませんか?」
 少しの間がありレグの瞳から涙がこぼれた。
「Ja.喜んで、です。ちか‥‥ありがとです。嬉しい‥‥涙が止まらないくらい‥‥これからも一緒に居てください」
「ありがとう! レグッ!」
 千影がレグを抱きしめ、レグは背を伸ばしてキスを贈る。
 そんな二人に周囲から盛大な拍手が送られた。
「俺が‥‥本当に欲しいのは、ちぃ兄のように確かめる勇気かもしれへんな‥‥」
 拍手をしながらクレイフェルは呟く。
 その言葉は拍手の喧騒で誰にも聞こえていなかった。
「クレイフェルさま‥‥あの、その‥‥写真撮影をご一緒できて‥‥えっと、あの、嬉しいです」
 ドレスに着替えた絢がクレイフェルの前に姿を現す。
「め、めっちゃ綺麗、やで‥‥俺が緋霧の魅力をくずさへんか心配な‥‥くらいや」
 いつもの黒ではなく純白のプリンセスラインの衣装で、露出度も高い緋霧の姿にクレイフェルはどぎまぎしながら言葉を何とかだした。
「あ、ありがとうございま‥‥す」
 シルバーベースの大人しいティアラや黒くて退廃的な首輪や手枷などが大人しい白く目立たないものになっている。
 そのためか、緋霧自身も何時にもまして大人しかった。
「ほ、ほな写真とろかっ!」
 どちらとも進まない状況に陥りそうだったので、クレイフェルが緋霧の小さな手を握り撮影場所へ移動していく。
 緋霧はその手を離さないようしっかりと握り返した。
「どこもかしこも幸せそうですね。しかし、この格好は恥ずかしい‥‥」
 不知火真琴(ga7201)はアンドレアスと、叢雲の薦めもあってベビーブルーのAラインドレスを着ていた。
 写真は撮らずに叢雲にだけ見せようと真琴は歩いていく。
「真琴さん、お綺麗ですよ。でも、私よりもあちらの方の相手をしてくださいね」
 だが、叢雲はやんわり断り収録の終えたアンドレアスの方を見て微笑んだ。
「あ、アスさん‥‥」
「お、おう。真琴。きっ‥‥綺麗だ‥ぜ。あと、ちょっと話があるからこっちへ来てくれ」
「いいですけど、何かたらいまわしされているような‥‥」
 真琴がアンドレアスを見つけると、アンドレアスも真琴の姿を確認しシンプルながらもヴェールに包まれた姿に石化したあと感想を述べる。
 そして、チャンスと思いアンドレアスは神父の居ない教会へ真琴を誘い出した。
「それで、アスさん。話ってなんですか?」
 真琴は首をかしげながらアンドレアスを見上げる。
「真琴が、好きだ。気の合う友達で、頼れる妹分で‥‥でも、それだけじゃ足りない。知らないうちに、苦しいくらい‥‥俺ん中は真琴への想いで一杯になってんだよ」
 可愛らしい真琴の姿に挙動不審になりながらもアンドレアスは真紅の薔薇を捧げながら告白をした。
「えっと、困ります。すごく困ります‥‥すぐに返事ができなくてごめんなさい」
 予想外の言葉に真琴は神妙な顔で答え、深く謝る。
「いいさ、聞いてくれただけ今日は十分だ。他の奴にも自慢しにいくか妹分の晴れ姿をさ」
「そ、それも困りますっ!」
 アンドレアスはなんともいえない顔をしたが、すぐにいつもの笑顔に戻って真琴を教会の外へと連れ出した。

●次への希望を届けに
「さて、と‥‥エミタに祝福されし者は、祝福されぬ戦場へと駆りだされる、か」
 多くの笑顔を見届け、重い顔をしていた真彼が動き出す。
「どうした? 暗い顔をしているが‥‥」
 やはり、写真を撮っているほうが良いと普段着に着替え、写真を撮っていた坂崎が真彼の変化を疑問に思った。
「昔の話ですよ。これから出発ですから‥‥」
「おお、それならば祝い物の桃カステラの角をもっていってくだされ。糖分は頭の回転を良くするものですよ」
 真彼の言葉に夕希がカステラの角をいくつか袋に入れたものを手渡す。
「友の幸せを祝えるあなたにこそ‥‥主の御加護とお導きが在ります様に‥‥いってらっしゃい」
 ハンナの言葉に微笑みを返して真彼や依頼に行くものは旅立った。