タイトル:【輸送】赤い悪夢マスター:橘真斗

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/06/23 00:37

●オープニング本文


 UPC軍本部の懸念として
 今回大規模作戦で鹵獲したファームライド、
 及びバグアの兵器の入ったコンテナをどうするかというものがありました。
 カプロイア伯爵はそもそも自社で製作した機体であるので、
 カプロイア社にてファームライドを預かりたいという要望がありましたが、
 イタリア半島は取り返したとはいえ、万全の防御体制には程遠く、
 バグアのFRの侵攻を受け止め切れないとい見解があった。

 そしてカプロイア社はついにUPC欧州軍の推薦に応じ、
 ブラッド准将はファームライド及び、コンテナをラストホープへの移送する決断をする。
 多数の傭兵が住んでおり、地下に巨大なKV格納庫を持っている同島はまさに天然の要塞といえ
 地球上でもっとも安全な場所である。

 個々で問題となったのは、どうやってラスト・ホープ島まで同機を輸送するかである。
 現在太平洋上に浮かんでいる同島に、ヨーロッパ地域から護衛隊を伴って運搬するとなれば
 一度や二度の戦闘は避けられまい。
 かといって、FRもコンテナも重要な資財である。極秘で運ぶには余りにもリスクが高い。

 そこで、敵の高性能機が襲来することを覚悟した上での、輸送作戦が展開されることとなった。

●某所 空港にて
『ガリーニンを貸し出してまで運ぶってのもまた厳重だねぇ‥‥品物がアレかもしれないってんだから納得さね』
 ベルディット=カミリア(gz0016)がテンタクルスでコンテナを積み込みつつため息をもらした。
 主な目的は今回も大破したテンタクルスなどのKVパーツの回収である。
 今回の大規模作戦は大成功を収めたため比較的安全にことは進んだ。
『全部積み込み完了、それじゃあ。メルス・メス社経由でラスト・ホープでいいんさね? こっちが便乗する形になったけど助かったさ』
 テンタクルスに乗ったまま現場指揮官に確認すると頷かれる。
 そして、ガリーニンは3つのコンテナを積み込み、依頼でついた護衛の傭兵達と共に飛び立った。
 
『現状大西洋上、異常‥‥何!? 味方機が一機高速接近中!? 機体はディアブロかいっ!』
 またかという嫌な感覚がベルディットを襲う。
『正面からもF−15‥‥援軍? 敵かもしれないさね‥‥まったく、貧乏くじをよく引くよ!』
 しかし、このポジションは挟み撃ちに見えなくもない状況で、赤い悪夢に迫られながら、ガリーニンは飛行を続けた。

●参加者一覧

藤田あやこ(ga0204
21歳・♀・ST
新居・やすかず(ga1891
19歳・♂・JG
藍紗・バーウェン(ga6141
12歳・♀・HD
ユーニー・カニンガム(ga6243
24歳・♂・FT
レイアーティ(ga7618
26歳・♂・EL
九条・縁(ga8248
22歳・♂・AA
黒江 開裡(ga8341
19歳・♂・DF
御崎 緋音(ga8646
21歳・♀・JG

●リプレイ本文

●進路に怪物、退路に悪夢
「鹵獲ディアブロ‥‥もしかしたら我の機体かもしれん。仮に違っても、持ち主の無念、晴らしてやらねばな‥‥」
 藍紗・T・ディートリヒ(ga6141)はガリーニンの後方から迫る敵に対して悲痛な面持ちを浮かべた。
 先の大規模作戦において、ディアブロはその高性能機であるにもかかわらず多くが撃墜されたといういきさつがある。
 今はアンジェリカに乗り換えている藍紗もその一人であり、ディアブロに対する気持ちは複雑なものがあった。
『ディアブロの前に俺達の仕事をやろうぜ、正面のF−15は援軍にしちゃタイミングがよすぎる』
 飛行乗りでもあったユーニー・カニンガム(ga6243)は奇妙なタイミングの援軍。
 進路を塞ぐように飛ぶF−15に嫌な予感を払拭できずにいた。
『如何でも良いけどガリーニンって頭が固いけど何処かうっかりなロシア人っぽい名前だよな〜』
 九条・縁(ga8248)の緊張感のない言葉に一緒に護衛ついている能力者やガリーニンを動かしているベルディット=カミリア(gz0016)も苦笑する。
『気楽なもんさね、とにかく護衛頼むさね』
「カミリア小隊長殿、お久しぶりじゃ。五大湖以来じゃの‥‥このような仕事でなければゆっくり話せるのじゃが‥‥」
 藍紗はベルディットに声をかけたあと、意識を正面から来る2機のF−15へ集中させた。
 識別信号は味方ではあるが、ユーニーの言うように限りなく黒に近い灰色である。
「こちらはULT所属の傭兵隊じゃ、こちらの航行計画に貴殿らの該当はない、速やかに空域を離脱せよ。返答・離脱行動無き場合、敵機とみなし威嚇無く即座に撃墜する」
 藍紗が通信を行い、しばらく待つも返答はない。
「では、参ろうか。『鴇』よ!」
 煙幕銃をガリーニンの進路上に放ち、戦闘が開始された。

●グリフォンとの戦い、そして悪夢の一撃
「再びF−15とまみえることになるというのはうまくいえませんけど複雑ですね、やっぱり」
 新居・やすかず(ga1891)は以前戦った『カヒライス』というTACを持った機体のことを思い出した。
 返答すらないということは以前よりもやる気かもしれないとやすかずは思う。
「気をつけてください、ただの戦闘機より強いですよ」
『ラジコン遊び‥‥しかも、どれだけこっちが疲労しても向こうは痛くも痒くもない。経済的なことで』
 バグアの最近の戦術に黒江 開裡(ga8341)は嫌味を吐き捨てた。
 F−15には藍紗機が空戦スタビライザーを発動させ、ブースト、SESエンハンサーの最大出力で試作G型放電装置の攻撃を仕掛けていく。
『女の恨みは怖いわねー。うちのリカ子はあそこまで無理はさせれないわ』
 藍紗と同じくアンジェリカに乗っている藤田あやこ(ga0204)も同じ光景を見ながら呟いた。
「さすがにあそこまで当てれば‥‥生きてる! やはり敵ですか相手はイーグルではありません、グリフォンです」
 電撃をフォースフィールドが減衰させ、バグアによって改造されたF−15―グリフォン―は装甲などを削られながらもその飛行をやめてはいない。
 やすかずは灰色が黒になったことを感じた。
 縁機が移動しつつ、長距離バルカンを浴びせるも撃墜までには至らない。
『おいおい、ディアブロの攻撃だぞ! ドンだけ固い戦闘機なんだよっ!』
 縁はあまりにも効果のないことに驚きを隠せなかった。
 だが、うろたえるのもつかの間、グリフォンが動きだす。
 その動きはただのF−15を遥かに越えた異様な航空機動‥‥ヘルメットワームのそれに近かった。
 ホーミングミサイルを回転しつつグリフォンから、藍紗と縁を狙い飛び交う。
『ぬぅ、中々やる!』
『結構な威力だ‥‥』
 藍紗機、九条機にあて、グリフォンはガリーニンへと向かった。
『機体は獲れても、培われた技術までは無理だったようだなっ! 本当の飛行機乗りの動きを見せてやる』
 そのグリフォンに対して、ユーニーの阿修羅が綺麗なバレルロールを描きつつ、ホーミングミサイルを放つ。
 優美な煙の線を描きつつミサイルが着弾し、グリフォンの一機は撃墜された。
『行くわよ、リカ子!』
 藤田機も移動して攻撃態勢に移ろうとするも、レーザー砲の射程内にはとらえれず、SESエンハンサーを使うタイミングが取れない。
 代わりのスナイパーライフルD−02が唸りをあげてもうの一体グリフォンに食らいついた。
 それでも物理攻撃に強いのかグリフォンの勢いは止まらない。
『リヒター、エンゲージ』
 黒江機がブーストをかけて、グリフォンに接近し短距離高速AAMを2発はなった。
 改造されたAAMがグリフォンに当たるも、グリフォンは落ちない。
「中々落ちませんね、知覚攻撃の方がやはり有効ですか‥‥」
 やすかずは以前の戦いを思い出し、攻撃態勢をとった。
 だが、そのとき後方の敵であるディアブロがブースターを使った恐ろしい速度で接近してくる。
 翼が鋭利に尖り、そしてガリーリンを大きく斬り裂いた。
『うわぁっ!? くそっ、なんて一撃だい‥‥こんなのそう何度もくらってられんさっ!』
 ベルディットの狼狽した声がやすかずの耳に届く。
 ディアブロがターンしガリーニンを狙い加速した。
「グリフォンに注意が行き過ぎました‥‥仕方ありません」
 悔いても仕方がないが相手のスペックを見誤ったのは事実である。
 やすかず機は煙幕の中ガリーニンの前に立ちはだかりディアブロのソードウィングを受け止めた。
「敵はエンブレムはありません、皆さん‥‥後は頼みます」
 やすかずのその言葉を最後にS−01Hはソードウィングの一撃で易々と斬り裂かれる。
 脱出はできたようだが、赤い悪夢の恐怖が始まった。
 
●白き悪魔対赤き悪夢
『予想以上に厄介な敵ですね‥‥緋音君連携していきますよ』
 レイアーティ(ga7618)は相棒にいい白いディアブロを飛ばす。
「え、ええ‥‥わかったわ、レイ」
 背筋に冷たいものを感じつつ、御崎緋音(ga8646)はガリーニンの回避性能の低さを考慮できていなかったことを悔やむ。
(「いざとなったら、盾になってでも止めてみせる」)
 レイアーティ機を援護するように緋音機が飛翔した。
 やすかずを斬ったディアブロを上空から二機が攻め立てる。
 移動力があわないため緋音機が多少出遅れるがタイミングと射程をあわし攻撃を放った。
『一緒にいきますよ‥‥緋音君』
「当たれぇ〜っ!」
 レイアーティ機がアグレッシブ・フォースをこめた試作G型放電装置を二発放ち、残り二発を通常で叩き込む。
 ディアブロにフォースフィールドが生まれるも砕かれ大きく装甲が削られた。
 しかし、その後に続く緋音機の試作G型放電装置はダメージを与えられず、続く短距離高速型AAMにいたっては回避されてしまう。
 だが、ディアブロの注意を惹くことはできたようで、赤い機体は過ぎ去るガリーニンをあとにレイアーティ機たちの方に向いた。
『そうです、狙いはこちらですよ』
 レイアーティがディアブロに向けていっていると、グリフォンが加速してガリーニンを狙いだした。
 だが、ガリーニンへの射線を黒江機、藤田機が塞ぐ。
 黒江機へフェザー砲が放たれ、藤田機へホーミングミサイルが飛んだ。
『ちっ‥‥』
『私のリカ子はこの程度じゃ落ちないわよ』
 耐えきった二人をの背後に溜まる煙幕の雲の中へ、ガリーニンは入り込む。
『今のうちに、消火作業はさせるが敵の攻撃に気をつけるんだよ! ガリーニンの耐久性じゃあ、あの赤い奴の攻撃を耐え切るのは厳しいさね!』
 ベルディットの無線に全員が気持ちを入れなおした。
 
●悪夢狙う天使
『違うのならば、まずは進路を空けるのじゃ』
「全力攻撃もいいけど、燃料切れに注意しろよ」
 気合をいれる藍紗に対して、嫌な空気を感じた縁は注意を促した。
 それでも、藍紗機は移動してM−12帯電粒子砲でグリフォンを撃破し、ブースターでディアブロに向かう。
「無茶をするな‥‥いくら、改造してある機体だからって、燃料切れになったら終わりだぞっと!」
 縁もその後をブースターで追いかけ、煙の中にもぐりこみながら長距離バルカンでディアブロを狙った。
 だが、ディアブロはその攻撃をスラスターを稼動させ回避する。
「すばやいなっ!」
『煙幕を放つぞ、気をつけろよ』
 ユーニー機が煙幕の道を作り、待機した。
『‥‥恨むなら敵に捕まった我が身を恨んでくれると助かるね』
 黒江機がブースターで接敵し、アグレッシヴ・フォースもかけた短距離AAMを二発ディアブロへと向けて放つ。
 だが、黒江機がいるのは煙幕の中。
 味方の信号を発するディアブロに一発ははずれ、こともあろうに同じディアブロの縁機へとヒットした。
「おい! 味方にやられたくはないぞ」
 縁が思わぬダメージにあせりの色を浮かべた。
『ですが、敵も大分ダメージを受けているようです。このままならばいけるでしょう』
 レイアーティの通信が入り、縁は一息つく。
 どちらが先にやられるかの勝負となってきた。
 藤田機も移動をしてリロードするのが背一杯である。
 そして、ディアブロが動いた。
『来るぞ、警戒しろ』
 ユーニーが叫ぶと共に上部装甲が開き、そこから250発を越えるミサイルが放たれる。
「K−01かよっ!」
 鹵獲機であることは分かっていた。
 しかし、どのような武装をもっていても対応できるように作戦は組まれていない。
 縁の突っ込みをよそにミサイルがガリーニンを含んだ5機の機体を狙った。
『まだ、落ちるわけには‥‥』
 緋音の怯える声が聞こえ、逃げる姿が映るもミサイルは避けきれない。
 それはガリーニンも、縁も藤田機もだった。
『緋音君!』
 その緋音機を避けきれるはずだったレイアーティがかばう。
 自分を追いかけていたミサイルと、緋音機を狙っていたミサイルを無理やり受け止めた。
 そのため、予想以上にレイアーティ機の損傷が激しくなる。
「ロシア人の堅物‥‥じゃない、ガリーニンの被害は!?」
『後一発がいいとこさね‥‥いざって時のために脱出準備するさ』
 縁は叫ぶが煙の中でも喰らい、ガリーニンを気にするもベルディットからはネガティブな返事が返ってきた。
 そして、通信を聞いたのか再びミサイルが放たれた。
『私は逃げない‥‥ガリーニンを護りきる』
 緋音機が誘導されていくミサイルを受けようと動く。
 声が多少震えているが射線を防ぎひきつけるように緋音機は動いた。
『緋音君、君を落とさせは‥‥しない!』
 同じようにミサイルをひきつけたレイアーティ機が緋音機の前に立ちふさがり、150発近いミサイルを全方位から受けて海へと墜落していく。
 藤田機、藍紗機もこのミサイルを受け大きく被害をだした。
『レイ!』
 しかし、緋音はレイアーティのことが気になり意識が墜落し海に向かった。
「緋音っ! 目を離すな!」
 縁の声と共に緋音は動きだすが、ディアブロからスナイパーライフルRが放たれる。
 ガリーニンは大破して高度を急激に海面に向かっていった。
 エンジンなどは壊され、大きく火を吹いている。
『レイアーティとやすかずはあたいが回収する、上を何とかするさね!』
 落下していくガリーニンからベルディットの声が響いた。
『ここのぉ〜〜〜!』
 緋音機がディアブロに向かってスナイパーライフルG−03を2発うちこむも、それはあっさりと避けられる。
 そして、ディアブロは能力者たちに背を向け飛んでいこうとした。
『ここでなら我の攻撃で‥‥』
 迫っていく藍紗のアンジェリカだが、SESエンハンサーの限界で攻撃にでようとするも、それは味方に止められれる。
「ここまでダメージくらっているんだ。味方2機落ちているところで、すでにキツイぜ。近くの基地で補給を受けて帰ろうぜ」
 縁のスモークが打ち込まれ、逃走路が用意された。
 眼下では巨大な鉄の箱が沈んでいく光景が見える。
『無理なく撤収。脱出ポッドはベルディット小隊長が拾ってくれるのじゃ‥‥』
 積み荷のコンテナは丸々海へと沈み、ベルディットのテンタクルスが脱出ポッドを二人分回収する姿が見えた。
『こちらベルディット。ポッドは回収したさね。今回は撤退さ。援軍が来ても今の状況じゃやられちまう』
 テンタクルスから通信を飛ばし作戦の失敗をつげた。
「犠牲が多く出たが、仕方ないな‥‥なんとか飛べれるからいいが」
 縁はボロボロになった自分の機体を飛ばしつつ、南米のメルス・メル支社へと進路をむける。
 その道は敗戦の道のりの濃いものだった。