●リプレイ本文
●Dive In Dark
「準備はできている? 多少、泳いでもいいわよ。時間の余裕はあるから」
暗い闇の中、レオノーラ・ハンビー(gz0067)が用意したボートの中で能力者たちはダイバースーツなどに身を包んでいる。
「結構動きが阻害されますね‥‥ですが、いずれ交戦を行う可能性がある場所は今のうちに見ておきたい、です」
アグレアーブル(
ga0095)はぴったりとしたボンベ付のダイバースーツを身に着けながら、暗視ゴーグルの確認をした。
「イマイチわからないけれど‥‥人間同士の嫌な戦いはさけたい‥‥かな?」
思うことがあるのか、戌亥 ユキ(
ga3014)も装備を終えてでてくる。
「ヒャハハ、この暗視ゴーグルはいいなぁ。ユキちゃんもアグレアーブルも、ボディラインの見える装備にしてくれりゃもっとおいしかったんだけどよ」
すでに川へ身を投げ、OZ(
ga4015)は装備の確認とばかりにレオノーラを含めた三人をカメラで撮影した。
「俺で最後か‥‥ごめんな、いろいろ手間取った」
弾頭矢や無線機、救急キットなどをビニール袋につめてダイバースーツの外で所持してでてきたのは龍深城・我斬(
ga8283)である。
他の能力者たちはすでに着替え終え、泳ぎの練習をしている最中だ。
「私はここで待っているから、貴方達がんばってらっしゃい。遺書とか遺品で拾っておいて欲しいものがあれば聞いておくわよ」
レオノーラはボートから手をフリフリと振りながら笑顔でとんでもないことを言って能力者達を見送る。
●Battle And Swiming
『遠回りでも隊列を崩さず、上流を目指していきましょう』
先行隊前列であるシェリー・ローズ(
ga3501)はあらかじめ決めておいたハンドサインで物陰などはさけ、遠回りではあるが安全なルートを進むように後列のB班に指示をする。
『了解』
風羽・シン(
ga8190)が答えるも、B班の隊列は定まっていなかった。
その上、A班とは進む力に差があり、距離が離れていってしまう。
『距離離れているけど大丈夫か?』
殿となり、後方を警戒しつつ前方にいるメンバーにカルマ・シュタット(
ga6302)がハンドサインを送る。
『足を引っ張ってすまない』
一番進む速度の遅い榊原・信也(
ga8389)がハンドサインで返した。
『隊列をくずさないためだよ、だいじょび。だいじょび〜』
因幡・眠兎(
ga4800)も安心させるようにサインを送るがそこまでくだけた伝わり方ができているかは不明である。
覚醒しつつ泳ぎ、シンやユキがSASウォッチの時間から到着ポイントである約48kmを割り出し、B班は水面にあがった。
ジャングルであるにもかかわらずサーチライトが夜闇に何本も走っている。
「よいっしょ、早く水抜きしないとね‥‥」
全員が光を気にしつつ、じっくりを周囲を確認して陸地にあがりだす。
「よし、急いでテントも立てるぞ」
いち早くシンが準備をしていたそのとき、視線が隠されていた監視カメラと合った。
ウゥゥゥと警報がなり、侵入者が知らせたことを知らせる。
「うわん、すでに領土内ぃ!? ちょ〜ぴんちっ!」
因幡の緊張間のない声と共に武装したUPC軍のものではない特殊な軍服の集団がやって来た。
銃声が響き、木々や草むらが弾け飛ぶ。
「こうなったらやるしかないか、相手が人間なのは気に食わないが‥‥」
カルマが右手の甲を淡く輝かせながらクロネリアを放った。
暗闇でも暗視ゴーグルで見ているため、喉へ易々と矢をえぐりこませた。
「能力者だ! 警備隊長へ連絡しろ!」
そんな声が響くなか、B班のメンバーに動揺が走る。
「一斉帰還したかったが、仕方ない」
同じく弓を放ち信也は河に逃げよう思うが、このまま河に注意がいけばA班も巻き込まれかねないことに気づいた。
「このまま私達で警備をひきつけよう方角はわかってるし、敵の領土内なら撮影していけば情報にもなるよ」
ユキの提案どおり、動きづらいダイバースーツのまま、陸を走り出す。
その後方から射撃をされるも、能力者を傷つけるにはいかない。カメラや暗視ゴーグルが壊れないよう逃げ続ける。
『そこまでだぜぇ、てめぇら! この新藤雪邑様がミンチにしてやるぜぇ!』
だが、正面から大きな人影がでた。
それは能力者にとって見慣れたもの、ナイトフォーゲルR−01である。
撮影しつつ、厄介な場所への潜入依頼をしているとB班のメンバーは思うのだった。
●Battle Of River
「ぷはっ、目標ポイントに来たけれどずいぶん騒がしいわね」
シェリーは水上に上がりボンベを取り様子を探る。
サーチライトが後方の陸地を集中してさしているのがわかった。
「はぁっ、やべぇ匂いがするな」
水上に上がったOZはそこから見える景色を撮影する。
城塞都市というわけではなく人工的な明かりがペルー側の岸にいくつも見え、ボートがついていた。
「ふぅ、どうするんだ? 助けにいくか?」
我斬も顔を出し、対応を聞く。
「ん‥‥ろ過装置はここから20km先になりますからね」
アグレアーブルの視線はOZに向かった。
「あいつらだって、パンピーじゃねぇんだ、自力でなんとかするだろうよ。逆に好機だ、ろ過装置をブッ壊すなら今。そうすりゃ、敵の集中もこっちに向けれるぜ」
まさに綱渡りだが、このまま救出に向かうよりは練力の消費は抑えられる。
「それじゃあ、また潜るか‥‥OZ、後ろ!」
シェリーが叫ぶとOZの背後に大きな口が開いていた。
「くそったれっ!」
アーチェリーボウを使いその口の中をOZが攻撃しだす。
『グヒュルッゥゥゥ!』
大きな叫びを上げてワニキメラが水辺でもがいた。
「おい、大きな物音がしたぞ!」
陸地で声がし、サーチライトが動く。
水中にすぐに潜って、能力者たちが動き察知はされなくも先ほどのワニキメラが追いかけてきた。
『交戦は避けられませんね、先に行ってください』
アグレアーブルがサインをだし、菖蒲を構える。
『ちゃんと決めてきなさいよ、二人とも』
シェリーが透明な水中で黒いオーラを纏い、アグレーブルと共に迎撃にでた。
『わかった、先に行くな』
OZと我斬は潜行して先を急ぐ、今は目的を果たすだけである。
●Escape For Knight
「ナイトフォーゲル! 新藤雪邑って誰よっ!」
ユキの疑問は雪邑機から打ち出されたH−11照明銃の射出爆発音で消される。
「警備にKVがいるなんて聞いてないぞ‥‥って、それを調査する依頼か」
厄介だと思いつつ信也は水抜きを終えた長弓で牽制するも、雪邑機の装甲にはじき返された。
「やっぱり通常装備だと無理か」
明るくなった場所でお返しとばかりに突撃仕様ガドリングが唸りをあげて、数十発の弾丸が信也と周囲の木々を貫く。
『おらおら、もっと俺様を楽しませてくれよぉ。ええ、おい!』
大きく負傷した信也に追い討ちをかけようとするも、カルマの攻撃で塞がれた。
「明かりをつけてくれてありがとよ、おかげでこいつを叩きこみやすい」
『クソがァァァ!』
カルマに向かって弾丸が飛ぶが木を盾にし、防ぐ。
「信也、今のうちにダッシュだよっ」
因幡とシンが信也に肩を貸し、雪邑機の足の下をくぐって逃げ出した。
ユキはカルマと共に弓矢で雪邑機の気をひきつける。
(「とんだ黄金郷だ‥‥」)
撮影カメラで雪邑機を取りつつ、どこまで逃げていいかわからない道をB班は雪邑におわれながら逃げ続けた。
住居がある通りを見ながらも、前方から来る一般人警備兵から銃弾を向けられる。
「スリリンぐ〜」
物陰に隠れ因幡は叫んだ。
「信也の手当てをするからちょっと前方の敵をどうにかしてきてくれ、能力者らしくないが油断するなよ!」
シンの声で因幡は物陰から飛び出して、可愛らしいポーズをとってウィンクを飛ばす。
そのポーズに一瞬、警備兵の動きが緩んだ。
「いっくよんっ!」
その隙にダッシュして近づき、因幡は警備兵を砂錐の爪できりつけ、シンは信也への手当てを終える。
『おらぁ、クソどもがっ! 生身でちょろちょろしやがって』
バルカンで砲撃を浴びせつつ、後ろからユキやカルマを追いかけてくる雪邑機がいた。
二人とも、傷が酷くも何とか逃げている。
「シン〜、この先、大きな排水溝があるよ」
「そこから脱出だ、陸地はきつすぎるさっさと逃げるぞ」
警備兵を倒しきった因幡がシンにいった。
信也も立てるほど回復したものの戦闘は厳しいのは明らかである。
「全員で生還するのが第一だからな‥‥」
信也は後方から二人にもハンドサインで伝えて駆け出した。
●Break Out!
その後OZや、我斬もピラニアキメラの群れと戦いつつ20km泳ぎ、明らかに人工物であると思われる壁を見つけた。
壁はアマゾン川をさえぎるように広がり、ちょっとしたダムのような構造ではないかと思われる。
しかし、ごつごつとした岩などを使った多層式ろ過装置のため壊すのにそこまでの破壊力は必要なかった。
「ふぅ‥‥あのレオノーラめ。びびらせやがってこれくらいなら弾頭矢はいらないぜ、女も弾も一発必中、任せろよ」
鋭角狙撃で狙いをさだめ、狙撃眼をかけてもろい部分を赤い幾何学模様を浮かべるOZは探しだす。
一発で貫通さえできれば水圧で壊れるはずだ。
「そっちはまかせるぜ、俺は警戒しておく」
我斬がOZの邪魔をしないよう周囲の警戒に回った。
「そこだ、くたばれよっ!」
ぐっと力強く引かれたOZの弓から矢が放たれる。
それは一点の石を砕き、ダムのような構造のろ過装置を決壊させた。
ドゴォという大きな音と共に土砂と岩と水がOZと我斬を襲いだす。
「おい、これってやばくないか?」
「スリルがあっていいじゃねぇか! トンズラするぞ」
ボンベを口にしてOZが潜り、我斬がそれに続いた。
●Strategic Move
「くそっ、退屈しのぎができるとおもったのによ‥‥」
能力者達が排水溝へ身を投げていくのをR−01から見ていた雪邑はいらだっていた。
『警備隊長連絡です』
「ヘッドって呼べっつてんだよ、畳むぞおらぁ!」
無線で聞こえてきた声に、雪邑はそう答える。
元暴走族で、依頼での不祥事により、UPC軍から能力者であるところを剥奪されそうになったとき、このエルドラドへとやってきた。
好き勝手に暮らせる自由郷ということで‥‥。
『ヘッド。ジャック様からの連絡です。能力者は追わなくていい、映像を持ってこいとのことです』
「なぁにぃ! あのクソどもを逃がせっていうのかよ‥‥まぁいいぜ。暇つぶしにはなったからよ」
『その映像とろ過装置の破壊をネタにUPC軍に対して、動きを見せるとのことです‥‥我々の戦いはこれからでしょう』
無線機からの話を聞き、雪邑の顔はにやりとなった。
「そいつぁおもしれぇ‥‥戦争にでもなっちまえば楽しいぜ。ククク、いい夢見れそうだ。後の処理はテメェらに任せるぜ」
雪邑は無線機の相手である警備兵に連絡して格納庫へと戻っていく。
同じころ、怪我のためキメラを寄せつつ苦労をしながら能力者たちは無事情報を持ち帰っていた。
黄金郷とは名ばかりの支配国家の映像を‥‥。