タイトル:【京都】武者ふぉーげるマスター:橘真斗

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/05/20 17:11

●オープニング本文


「じい、聞きたい事があるのじゃ」
 5月のある日、京都の平良屋敷にて磨理那の第一声がはじまった。
 聞きなれたものには、これが磨理那の我侭の始まりである事は知っている。
「なんでございましょうか、磨理那様」
 もはや、何を聞いても驚かないといった様子で翁は答えた。
「先日見せてもらった『びでお』に映っておったのは『ないとふぉーげる』といっておったな?」
「そう呼ばれておるようでございますな」
 翁は受け流すように相手をする。
 内心安心しつつ翁は磨理那の相手をしていた。
「では、『武者ふぉーげる』はおらぬのか?」
「は?」
 磨理那がとっぴでもない事をいいだした。
「武者ふぉーげるじゃ。『ないと』とは騎士という意味じゃろう。武者がいてもよいではないか」
「そのようなことを私に言われましても‥‥」
 磨理那の言葉に翁は言葉を詰まらせた。
「そうじゃ、子供の日もあるのじゃから『武者ふぉーげる展示会』でもやるのじゃ」
「しかし、見た目があれですので鎧兜を着けるとなりますと‥‥京都ドローム支社の『あの方』に力を借りねばなりませぬぞ?」
 扇子でパシンと叩いた磨理那に翁がドローム京都支社の名前を出すと、磨理那は固まる。
「やはり、避けては通れぬのか‥‥じゃが、妾はみてみたいのじゃ。そのためには手段を選らばん」
 磨理那の決意は固く早速、ドローム京都支社へ翁の車で向かうこととなった。
 
●ドローム京都支社
「磨理那はんやない、機械苦手ではるのによう来てくれましたわ〜。ああぁ、この抱き心地がたまらんわ〜」
「やめるのじゃ〜、今日はちゃんとしたようで来たのじゃ〜」
 ついたとたん、わかめのような髪型をした女性に磨理那はハグられていた。
 わかめのような髪型をした豊満な女性、可愛い女の子が好きな自称24歳、鹿嶋明美である。
「磨理那はんが用件とは何ではるの?」
 ハグを堪能したあと明美は磨理那を離し、話を戻した。
「武者ふぉーげる展示会というかそういうイベントを使用と思うのじゃ、この京都ドローム支社のイベントとしてのじゃ」
 ぜぇはぁと息を整えつつ磨理那は明美に説明をする。
「メトロニウムフレームに規格外パーツをつこうてやれそうやわ。優秀なデザインがあれば本社に製品化提示してみはるわ」
 面白そうな企画に明美も了承した。
「うむ、では端午の節句より開始予定で準備をしてほしいのじゃ!」
「では、その前にもう一回〜」
 明美のハグが30分ほど磨理那を苦しめたのはいうまでもない。

●参加者一覧

蓮沼千影(ga4090
28歳・♂・FT
MAKOTO(ga4693
20歳・♀・AA
鈴葉・シロウ(ga4772
27歳・♂・BM
守原クリア(ga4864
20歳・♀・JG
藤宮紅緒(ga5157
21歳・♀・EL
阿野次 のもじ(ga5480
16歳・♀・PN
みづほ(ga6115
27歳・♀・EL
旭(ga6764
26歳・♂・AA
乙(ga8272
16歳・♀・DF
久瀬 和羽(ga8330
11歳・♀・DF

●リプレイ本文

●おいでませ、ドローム京都支社
「ナイトフォーゲルだから、日本風に武者フォーゲルを‥‥って言う発想はなかったよ」
 ドローム京都支社に自分の機体で訪れたクリア・サーレク(ga4864)は依頼主の発想力に驚いていた。
「海老をモチーフにした鎧やかぶととかありますし‥‥そういうのもいいのかな?」
 藤宮紅緒(ga5157)は期待と不安の入り混じった様子でワイバーンを着陸させる。
「やっぱりイベントには見栄えのする、長くて、でかくて、すっごいものが要るよね?」
 にやにやと笑顔を浮かべる活発少女、久瀬 和羽(ga8330)は京都にくるまでに書いてきたアイディア書をぎゅっと握り締めた。
『そうそう、久瀬さんは打ち合わせ通りでよろしくね♪』
 戦闘機形態から、肉食獣モードに変形させた阿修羅を着陸させつつMAKOTO(ga4693)は久瀬にコックピットからウィンクを飛ばす。
「そっちもOKだよ、楽しくなってきた!」
「楽しむのもいおすやけど、時間も人手も限られてまっしゃろからよろしゅうお頼申します」
 出迎えに来たワカメのようなロングヘアをした豊満な女性、鹿嶋明美が阿野次 のもじ(ga5480)をハグしつつ久瀬に釘をさした。
「おねえさんも離して〜」
 のもじの抵抗は無駄に終わる。

●久しぶりのご挨拶
「お久しぶりです、磨理那様。京都旅行では楽しい時間をまことにありがとうございました」
 恭しく礼をするのは蓮沼千影(ga4090)である。
「久しいの温泉旅行以来が3人かや‥‥もっといろいろな傭兵にあいたいものじゃの」
 顔見知りにあえるのは嬉しいのだが、もっと間口を広げたいと思うのは依頼主の平良・磨理那(gz0056)である。
「そう言わないでくださいなお嬢さん。子供の頃憧れの人物は? というのに戦国武将と答えていたんですよ」
 鈴葉・シロウ(ga4772)が今回はスーツ姿で歯を光らせた。
「お久しぶりです。あのー平良家の家紋を使わせてもらってもよろしいでしょうか?」
 遠慮がちに旭(ga6764)が磨理那に聞きだす。
「さすがに妾の配下とかというわけではないからの。家紋を持つといろいろ贔屓にもなるので今回はだめじゃ」
 磨理那の返事はあっという間だった。
『やぁ、磨理那元気してた〜?』
 腹話術でテディベアの癸をしゃべらせているのは乙(ga8272)である。
「ちゃんと礼儀ただしくするの。お久しぶりなの」
 乙はウサギ耳をつけた頭でぺこりと礼をした。
「そち、その耳と尻尾いぜんついておったかや?」
 磨理那は乙の耳と尻尾に興味心身でさわっている。
『それは企業秘密だよっ』
 癸がそう答えた。
「はじめまして、み『づ』ほといいます。このたびはよろしくお願いいたします」
 丁寧に挨拶をするも、づに強くアクセント置いてみづほ(ga6115)は磨理那に挨拶をする。
「なにやら、妙に強調しておるの」
 変わった挨拶に磨理那の好奇心が刺激された。
「そこは、いろいろあるんです」
 笑顔で答えるが何か威圧的なものを感じ、磨理那はそれ以上突っ込むことをやめる。
(「あの磨理那様をプレッシャーで押し切った!? すごい人だ」)
 千影はみづほにそんな感想をいだいた。
 
●みんなで作ろう武者ふぉーげるぷらすあるふぁ
「一応、磨理那はんからの要請でうちら京都ドローム支社が動くことになりはりました。GWの見学会にあわせますから、よろしゅうお頼申します」
 一連の説明を明美から能力者たちはされた。
 正確にはナイトフォーゲルを作るのではなく、武者鎧のメトロニウムフレームを作るわけである。
 コードネームは『SAMURAYフレーム』いうことになった。
「優秀の判断は磨理那はんで。一応皆はんからのプラン見せてもらやはったけど、廃材のハリボテで再現しはる方向でたのんます」
 ドローム社の整備員にとっても腕のみせどころというわけである。
「弁天出威亞武露(べんてんでぃあぶろ)を作るのだー!」
 気合をいれるのもじだが、現場監督は却下された。
「一応、ドローム社の敷地やからね? 現場はうちに任せてほしいんやわ。何かあって責任とりたくあらへんでっしゃろ?」
 明美にいわれて、しぶしぶのもじは割り当てられた作業員の人と相談しつつ弁天フォーゲルの作成にかかった。
「うぉ〜、まさかみづほさんとネタがかぶるとは」
「打ち合わせ、しておけばよかったですね‥‥」
 千影とみづほはお互い京都らしく弁慶で行く予定だったので困っていた。
「かぶっておってもよかろう、派手なのがあちらにおるのでの。双方に従えれば義経と仁王弁慶という構図も面白いのじゃ」
 そんな二人をさっしてか、磨理那が扇子で扇ぎつつアドバイスをする。
「ねぇねぇ、これくらいの野太刀って実際にはできないかな?」
 整備員に積極的に声をかけているのは久瀬だ。
 手に持っていたアイディア図をみせる。
「ディハイングブレードがあるから差別化が問題になるやろなぁ。ハリボテならありやけど」
 整備員の一人が唸る。
 全長15mの太刀となると12mのディハイングブレードとの差別化をしないと製品として難しいのだ。
「鞘つきで、大太刀と脇差は製品化できませんかね?」
 同じように別の整備員に相談を持ちかけているのは旭である。
「今回は時間の都合上ハリボテだけど、やれなくはないんじゃないかな?」
「本当ですか!」
 こちらは通りそうで旭は喜んだ。
「ただ、二刀流で戦おうものなら腕がいるだろうな、システム的なものもそうだけど」
 操縦者によってしまうという形らしい。重量もそうだが、モーションを誰でも再現できるようにしなければ商品としては失格である。
「やっぱり、プロの人はすごいの」
 熱くがんばる一同を乙はみていた。
『だからこそ、安心してKVに乗れるんだよね』
 テディベアの癸も納得である。
 作業はほぼお任せ、デザインも単純なので乙担当の整備員は楽だったと後に語った。
 
●プロジェクト横長
 シロウとクリアは己の機体、ディスタンとS−01を独特の形に仕上げていった。
 双方とも縦長というより横幅のあるタイプである。
 武者鎧を着せるためのデザインは困難を極めた。
「やはり、ここは戦国時代の繁栄期にならって南蛮胴でしょうね」
 魚燐装甲など、かなり凝ったデザインに整備員達は唸る。
 白いもこもこや、カブトムシのような兜は楽だったが、魚燐装甲は廃材を切り出して時間がかかった。
「ちょっとこだわりすぎましたかね‥‥」
 しかし、自分も手伝いつつ仕上げていく。
 一方、もっと難題をだしてきたのはクリアであった。
「そういえば、こういうプラモデルがあったわよね」
 それは二頭身のロボットが鎧武者の格好をした子供用のプラモデルである。
「S−01におつむをあえて乗へるなんて、あんたはんおもろいことを考えまんねんね」
 様子を見に来た明美はクリアに関心した。
「そのほうがバランスとれるかなって、コミカルなかっこよさっていうやつかな?」
 クリアは照れくさそうに頬をかき、整備員にお願いして頭部を作ってもらう。
 配色も白、蒼、金をメインにしていたりと普通の鎧武者とは一線を越えたデザインであった。
「時間かかりそうやねぇ。でも、面白そうなものができそうやわ」
 明美はにこにこと作業する様子をみて呟く。
 もっとも、これ以上に凝ったのが後にあったのだが‥‥。
 
●大改造びふぉーあたふたー
「こ、子供の日の催しなので‥‥童心に響くザリガニ釣りのイメージも取り入れてみました‥‥!」
「スナイパーライフルD−02を角ばった四角形っぽい砲身に改良して、んでもって和風カラーに塗り直して装備したいなーと」
 藤宮とMAKOTOの担当となった整備員はプランを見て驚き、主任である明美の顔をみるが笑顔でかえされた。
 『やれ』ということである。
 作業場を修理エリアに移し、2機の四足型KVは改造をされていった。
 ワイバーンにあたっては後ろ足をはずし、それを仮付けとして前足につけてはさみ状にする。
 さらに重心を支えるために支脚の形にしたメトロニウムフレームを何対か脇腹に装着した。
 運ぶのもKVで担がなければ動けないだろう。
「ああ、かっこいい‥‥」
 惚れ惚れとした様子で藤宮はもはやワイバーンとはいえない機体を眺め、写真をパシャパシャとりだした。
「ああ、頭部は140度の角度でやや曲線掛った眉庇を装備させて〜」
 MAKOTOのほうもあれやこれやと注文を立てる。
 のぼり旗もつけて、膝当てなどもつけた。
 家紋に関しても今回は無しで統一される。
 あくまでもモチーフの展示会であり、実際にその家紋を使える立場ではないのである。
 MAKOTOと藤宮のKVは展示会の朝までかかった。
 
●展示会と結果発表
 GWの工場見学会が開かれた。
 立ち並ぶのは、矢の刺さったみづほ弁慶と、ライトディフェンダーを改造したなぎなたを持った千影弁慶の間に立つ弁天衣装を来たのもじのディアブロ。
 南蛮鎧をベースにしたシロウディスタンに、兜に愛とかかれた鎧をつけた乙のディアブロ。
 二刀流の鬼面武者に仕上がった旭のS−01に、同じS−01でも二頭身でポーズもそろえたクリア機。
 虎退治の光景のように飾られた巨大な刀をもった久瀬機とそれに噛み付こうとするMAKOTO機。
 最後に鯉のぼりを持ったザリガニ風な藤宮のワイバーン。
 そうそうたる10機のKVに見学に来た子供達は写真撮影をしたり、一緒にとってもらったりしていた。
「ええ眺めやわ」
 明美は磨理那と共に遠くからその光景を眺め、また子供達と触れ合う傭兵達を見て微笑む。
「民の笑顔はいいものじゃな。妾が守るものも、そちたちや、能力者が守りたいものは一緒なのじゃ」
 磨理那はそういい、明美に旭機のデザインを採用するように伝えた。
 守るための力、その助けに少しでもなりたいという磨理那なりの想いである。