●リプレイ本文
●控え室にて
「あんた、しばらく見ない間にいい顔になったじゃないか。指揮官面してきてるさね」
鯨井昼寝(
ga0488)はベルディット=カミリア(gz0016)から背中を叩かれて驚きつつもベルディットの顔をきりっと見つめて言葉を返す。
「いったっ! 久しぶりねナパームレディ。そっちはかわってないようで何よりよ」
「昨日の騎士は今日の敵、なんてね。手合わせできて、光栄ですよ」
宗太郎=シルエイト(
ga4261)は笑顔でベルディットと握手をする。
「あんたもかい、そういえばあたいを助けに来たのが3人もいるとは‥‥物好きだねぇ」
握手をしながらベルディットは周囲を見回し、クラーク・エアハルト(
ga4961)と水理 和奏(
ga1500)の姿をみつける。
「わかなさん、さすがにその格好は‥‥あ、カミリアの姉御、負けませんよ」
「え、運動するには一番ぴったりの格好だと思うんだけど‥‥?」
体操服にブルマ姿で準備運動していた。
柔軟運動も欠かせない。
装備も軽くし、余念が無かった。
「おうおう、クラークもついにそういう趣味が‥‥」
須佐 武流(
ga1461)はそういってニヤニヤする。
「私が選んだわけじゃありませんって‥‥レースですが、武流さんにも負けませんよ」
クラークがめがねを直しつつ武流にいった。
「俺には勝利の女神がついているからな」
そんなクラークの言葉には動じず、武流は傍にいたリュス・リクス・リニク(
ga6209)を抱き寄せた。
「わわっ、かっこ、いい‥‥ところ‥‥見せて、ね‥‥タケル‥‥」
頬を染めてリニクが武流にいう。
「『賞金稼ぎ女王』として優勝賞金は私がいただくわよ」
ゴールドラッシュ(
ga3170)が武流やクラークらに戦線布告をした。
「私達アクアリウムでしょ」
ゴールドラッシュの言葉を遠石 一千風(
ga3970)が訂正する。
「やれやれ、今回もいろいろありそうな大会になるねぇ」
そんな様子を眺め、ベルディットは盛大に笑った。
●格納庫にて
「‥‥今日だけは、風がいなくて良かった」
戦い傷ついても修理してきたR−01を見つめ、ホアキン・デ・ラ・ロサ(
ga2416)はつぶやく。
その隣ではエレナ・クルック(
ga4247)が姉のキョーコ・クルック(
ga4770)と共にワイバーンの最終チェックに入っていた。
「きょうはお姉ちゃんにも乗ってもらうことになりますけどよろしくお願いしますね〜」
「昨日は相乗りだったけど、今回は本乗りだからね、あたしとしてもよろしく頼むよ」
煙幕弾の改造をしたかったが、未来研究所でしか強化、改良のできないパーツである。
エレナの手には負えなかった。
「嬢ちゃんはメカが好きらしいな」
そんなエレナにガラガラ声が聞こえてきた。
隣にあるディアブロを整備していたゴンザレス・タシロである。
「は、はじめまして‥‥エレナ・クルックと申します」
ぺこりとお辞儀するエレナの声を消すような大きな霧島 亜夜(
ga3511)の声が格納庫に響いた。
「うお! 噂のおやっさんだ!」
指をびしっとさして亜夜が子供のようにはしゃぎだす。
「でけぇ声だすなよ‥‥」
耳をほじりながら、タシロは燃料タンクを積んでいく。
「おほん‥‥あらためて、俺は前回のV1優勝者の霧島 亜夜です。あのメルス・メス社のスポンサー契約とかさせてもらえないかと思いまして」
おやっさんを目の前にし、自分の希望を言い出す。
「前回は前回、今回の成績が良かったら俺がテストパイロットとしてそのつど声はかけてやるよ」
そんな亜夜の真摯な眼を見つめ返し、そう答えた。
●1st Step Sea
〜アンカレッジの水路前〜
レース開始の合図と共に2機のテンタクルスが広い水路に飛び込み、変形した。
「さて、この時期何かと入用ですからね」
”不敵な微笑”を浮かべた周防 誠(
ga7131)は照明銃をエメラルド・イーグル(
ga8650)に打ち込んだ。
だが、しかし発光もせず不発に終わる。
水中対応していない武装なのだから仕方なかった。
「こりゃ、まいったね」
困惑する周防を後ろにエメラルドは移動して距離をとる。
『初めての運転ですから‥‥緊張します』
レンタルされたドローム社のナビゲーターから海図をレーダーとリンクさせ進路を考える。
「‥‥賞金は頂きます」
周防はブーストをふかし、一気に距離を離も、エメラルドも同じようにブーストで追いかける。
『余力を残さず、ただ行くだけです』
二人ともナビゲーターの能力は同じ、機体の性能も差がない。
しかし、周防はエメラルド機に体当たりを仕掛けて少しでも妨害しようとするが、エメラルドはとにかく進んだ。
『私ができるのこれだけ‥‥』
機体に損傷はそれほど無く、仕掛けている間に距離を稼いだため57分でゴール。
「まいったね‥‥」
周防は送れて1時間19分での到着だった。
●1st Step Load
〜アンカレッジ公道〜
そこには2台の青いマシンが並んでいた。
「色までかぶっているとはな‥‥噂のシルフィードの腕見せてもらうぜ」
宗太郎は隣で準備をしてるシルフィードに声をかけた。
『俺にとって、このレースこそが戦場だ‥‥』
宗太郎の耳に幾分か高揚したような声が聞こえてくる。
レース開始の知らせがなると、シルフィード機はブーストかけて車両形態で一気に進んだ。
「出足が遅れたが負けないぜ」
人工筋肉で強化され、行動力の高い宗太郎機が人型のまま全力移動で車両形態のシルフィードを追い抜く。
『いつまで、それが続くかだ』
アップダウンのあるコースを2機の青いLM−01が走っていく。
車両形態のまま走るシルフィード機が宗太郎に追いついた。
そして、カーブに差し掛かる。
「このっ!」
宗太郎はバルカンを使ってシルフィード機へダメージを与えるように狙うも、回避オプションのドリフトで避けられる。
「なにっ!?」
『レースでの戦いは賭け引きだ』
唖然とする宗太郎にシルフィードの落ち着いた声が響いた。
ガードレールにぶつかりそうになるも宗太郎機はそれを蹴ってシルフィードのいるエリアへと移動する。
「まだまだだぜ」
『ふっ、面白い』
再び入ったストレートで、シルフィードがブーストをかけ宗太郎機を放す。
宗太郎は全力移動を繰り出すも、無茶な動きが原因か中々勢いがつかなかった。
ブーストを使って追いつこうにもまさに風のように去っていく。
「シルフィード‥‥くそっ」
人型での追いかけを諦め、ブーストをつかって宗太郎は駆け出した。
空港までは、まだ遠い。
●1st Step Sky
〜アンカレッジKV離陸場〜
50mという短い離陸距離を持つKVならではの小高い丘の広場に離陸場が用意されていた。
合図と共に離陸する5機のKV。
ワイバーンが1機、ディスタンが1機、G−43が1機、R−01が機、バイパーが1機と空の第1レースは各メガコーポレーションの対決とも見られた。
『いっきますよ〜』
エレナ機のワイバーンが勢いよく上昇し、距離をとりだす。
「負けるかってのっ!」
武流がゴールへの距離をとりつつ全力で飛行し、ホアキンがその後ろにぴったりつくナビゲーターの指示なのだから仕方ない。
『ナビゲーターの貴方は普段どおりやってくれればいい』
ホアキンがそういっていると、ややヨコから勢い良く飛んでいく機体がいた。
ブースターを全開で飛んでくるベルディットのディスタンだ。
『ほらほら、遅いよっ! そしてチャンスっ!』
全力移動の際、バランスを崩した武流機をベルディット機が下から20mmバルカンを叩きこんだ。
タタタタンと弾丸が叩きこまれ、武流機が大きく揺れる。
その間にホアキンは武流を抜いていった。
「お前はこんなもんじゃないだろ!」
燃料タンクにバルカンの攻撃を受けても耐え切る。
そして、崩れたバランスをすぐに保った。
「距離をとられたか‥‥だが、まだまだだぜ!」
『須佐さん、燃料タンクに穴が開いたようです。飛行に障害ないとおもいますが、燃費が悪くなると思います』
武流のナビゲーターはそういう。
「それくらいで止まれる俺じゃないぜ!」
武流機は全力でホアキン機を追いかけた。
ホアキンは攻撃しようと思ったが、武装していないことに気づき、苦笑する。
「皆さん、派手にやっていますね‥‥ですが、僕も負けてられませんよ」
攻撃をされることを警戒しつつクラークはスタートで全力移動をかけた。
ゴールの空港が見えるまで、怖いほどに何事も無く過ぎていく。
武流が全力移動をかけて常にトップを突っ走っていた。
だが、見えてきたとき、エレナのワイバーンが唸りをあげる。
『最大出力いきますよー!』
マイクロブーストで加速し、さらにブースターをふかして武流機を追いかけだす。
だが、追いつけず、さらに高度を上げすぎていたためか、ベルディットにも抜かれてしまう。
レイクアンドペニンスラ郡の空港に空路チームがついたときはまだ陸路で走っているチームの姿は無かった。
●Half Time
〜レイクアンドペニンスラ郡の空港〜
『おやっさん、タンクの交換!』
「うるせぇ、わかってるよ」
一番に降りてきたのはベルディットである。ディスタンでありながら戦闘を控えつつの作戦が功をそうした形だ。
ゴンザレス・タシロはピットから容量の大きくなった大型燃料タンクを持ってきて、1分ともかからずいれかえる。
『それじゃあ先にいくさね!』
そのまま出発側の滑走路へと移動しだした。
続いて武流が降りてくる。
「俺の方は燃料満タンで‥‥くぅ、あの姉御やってくれた」
武流はG−43から降りてみてみると燃料タンクに穴がしっかり開いていた。
「修理しますか? 結構時間かかっちゃいますが燃料満タンいれるまでいけば20分ほど」
雇ったメカニックが聞いてくる。
「ああ、分かった。それで頼む」
武流は仕方無しに答えた。
20分の飛行でも30の練力を消費している。
ブーストをかけたら危険かもしれないのでしかたなかった。
「燃料の補充を頼む」
三番手はホアキンだった。無駄のない飛行だが、武装も無くブースターをかけるのが精一杯なのは仕方ない。
11分の補給ロスが入る。
「補給も修理もいりそうもないですね‥‥」
クラークはコックピットをあげてメカニックに指示しようと思ったが計器類を見直し、そのまま出発側の滑走路へと移動しだし、ベルディットより後に飛び立った。
「おねぇちゃん、ゼッケン!」
「燃料補充頼むよ」
エレナがワイバーンから降り、キョウコがメカニックに指示をして変わりに乗り出す。
9分燃料補給のロスができる。
武流の修理と補給が終わったあと、12分後シルフィードが空港に到着し、赤き奇妙な馬のR−01が羽ばたいていった。
●2nd Step Sky
〜ケナイペネンスラ郡上空〜
「ゴールドラッシュ! 現在うちらはどんな順位?」
『空へ飛び立った順番でいくなら5番目、でも3番、4番とは5分も差がないから戦闘よりも速度重視に変更よ』
「了解」
『A2,A3の人たちとの合流ポイントは約1000km先よ』
バイパーで飛び出した昼寝はナビゲーターのゴールドラッシュからのアドバイスを受けて作戦を変更した。
「エメラルドががんばってくれたおかげで余裕があるわ、安全にいくわよ‥‥」
『昼寝、後ろから高速できている機影があるわ』
そう息を抜きつつ昼寝がバイパーを飛ばしていると、ワイバーンが高速で追いかけてきていた。
『参ったね、出足から全力疾走しなきゃいけないなんてね』
「このまま逃げ切るわよ」
『連続で走る人は上位で一人のみ、ワイバーンがもう一機あるからここで負けると時間差がやばいわね』
ゴールドラッシュからのアドバイスを受けて、昼寝も頷き、ブーストをふかす。
4ヶ月前とは違う、チームで戦っているということを昼寝は肌で感じていた。
〜レイクアンドペニンスラ郡上空〜
「さーて、どうきたもんかね」
『追い抜くまでですよ、姉御さん』
一番初めに飛びたったベルディットのつぶやきをクラークが気合を入れて追い抜いていく。
バイパーの空戦スタビライザーとブーストの合わせ技だ。
『クラークさん、ワイバーンは先ほどより高度が低いため、抜かれる可能性が高いです。気をつけてください』
ナビゲーターにいわれクラークは戦術をすこし変化させる。
『今回は安全圏でいかせてもらおう』
ホアキンは上空を取り様子をみだす。
『安全圏はこちらもね‥‥ワイバーンの機動力を見せてやろうじゃないか』
ワイバーンが先ほどのコース同様上昇して雲に姿を隠した。
『ナパームレディ! さっきの借りをかえさせてもらうぜ!』
武流のG−43がベルディットのディスタンを捕らえ、UA−10AMMを撃ちはなった。
ドドンとヒットし、大きくディスタンが揺れる。
「ちぃ、バルカンのお返しがミサイルとは3倍以上じゃないのさ!」
ブースターで逃げようにも、G−43に機動力には追いつかれるため的になる。
バルカンで反撃しようとするが、改良された翼面超伝導流体摩擦装置により回避され続けた。
『あたるかよっ!』
『須佐さん、戦闘に集中しているとコースアウトしますもう少し速度を上げてください』
ナビゲーターの指示を受け、動きを変える武流機。
しかし、二人が攻防している間にR−01の赤き奇妙な馬が全力で抜いていった。
そして合流ポイント付近で鯨のエンブレムのついたバイパーとそれ追うワイバーンが一団に並び空港に向かって飛び交う。
『到着を待っている、自分の守護天使の所に着くまで負ける訳にはいかないんですよ』
クラークが大きくさけんで、空港へと向かった。
次のランナーへ手渡すまであと少し。
●Last Step Start
〜ジュノー付近の空港〜
「あとは任せたよっ」
一番手に着陸したキョーコが機体から降りつつ、柔軟体操を亜夜にゼッケンを渡した。
二番手は全力移動をしつつ戦闘を回避し続けたホアキンが変形しつつの着地を決め、コックピットを地面に近くしすぐさま降り立つ。
「勝負は最後までわからないものだ」
交代をしないのでホアキンはゼッケン渡しのロスをなくして全力で駆け出した。
「あやー、ゴールまでがんばるのじゃぞ!」
空港には応援に来た観客が何人もいる。
「恋人がんばったんだ、がんばらないわけにはいかないっしょ!」
その中に亜夜は磨理那を見つけ亜夜は親指をたててホアキンを全力でおいかける。
亜夜の後ろで交代をすませた、チーム・ドローム社のチェイミィ・王が『限界突破』を使い、舞うように走っては瞬天速で移動していく。
行動値を消費しないスキルでも、同じスキルの連続使用はできない。
ワンステップふんでからチャイナドレスを翻しチェイミィはホアキンの隣に並んだ。
ホアキンは走りながら横の女性を見ると、どこかで見たきがしたが、その意識を今はなくす。
(「手ごわい相手ばかりのようね」)
遠石も全力移動で追いかけるが、届かないため、前回優勝者である亜夜の後ろを追走する形をとる。
一方、空港ではわかながクラークからもらったゼッケンを受け取っていると須佐が同時に着陸していた。
「武流さん! 負けないよ! 秘技わかなダーッシュ!」
わかなは瞬天速とステップを繰り返して駆け出す。
「俺もそのつもりはねぇ!」
「がん‥‥ばって‥‥タ・ケ・ルー‥‥! ‥‥一番‥‥だったら‥‥ご褒美‥‥あげ‥‥るー‥‥!」
コックピットから飛び出す武流に普段では聞けないような大きなリニクの応援が武流にかかった。
「元気百倍! ぶっ飛ばすぜ!」
武流は全力ではしり、先頭グループを追いかけていく。
果たして勝負はまだはじまったばかりだ。
●Last Step Turning Point
〜10km地点〜
直線の多いコースからアップダウンやカーブの多いトンネルに入っていく。
瞬天速は直進30mの障害物無しのため使いづらくなる。
「お先!」
一番手だったホアキンはペースを保って走っていたが、そこを亜夜が追い抜いた。
「須佐さん、まだまだ僕まけないよ!」
武流とわかな、そして遠石がチェイミィを追いかける形で第二陣がなっている。
「勝負どきね‥‥」
遠石はつぶやきトンネルの壁面へ飛び、瞬天速で伝ってはしった。曲がりくねった部分をジャンプで渡りなるべく直線ラインを走りぬく。
ここ遠石がトップへと踊りでた。
「絡めてもつかってみるものね」
降りたった遠戚が高揚した笑みを浮かべつつ後続を話していく。
「わかなちゃん、がんばって!」
ナビゲーターからの応援をもらい、わかなも気合をいれて遠石のように壁を走りだした。
勝負の行方が分からなくなる。
●Goal Step
遠石の奇策が功を奏し、勝負は【アクアリウム】の優勝となった。
「おめでとう、貴方達チームの団結力の勝利ね」
ミユから50万Cの大きな紙幣をもらいジュノーの特設開場は大いに盛り上がっている。
「二位は【守護天使と銃を持つ騎士】です。おめでとう」
ミユから30万Cの大きな紙幣をクラークにお姫様抱っこされたわかなが受け取った。
「え、ああの‥‥この賞金の使い方ですけど‥‥」
わかなの視線の先にはドローム本社の研究員メンバーである八之宮忠次やロレンタもいた。
「貴方の好きにすればいいわ。私は手渡すまでが仕事よ」
ミユはそういって、3位のドローム社チームを表彰し、特別章にうつった。
「今回の特別章は【緋】チームです。正直、機体の性能をうまく使った戦い方やドライバーの連携によって授与します」
表彰台に亜夜たち3人が上がり10万Cの紙が渡された。
「優勝できなかったから、プロポーズはやめておくか‥‥」
亜夜の何気ないつぶやきがマイクを通して会場全体に響く。
とたんに会場が静かになった。
「え、あ、亜夜‥‥プロポーズって‥‥」
キョーコが頬をそめどぎまぎしだす。
いつの間にやらミユ社長とエレナの姿はない。
「え、えーっと、優勝はできなかったけどさ‥‥よかったら俺と結婚してくれ!」
大観衆の前で亜夜がキョーコに告白をする。
「答えはこれだよ」
キョーコは真っ赤になりながら亜夜に近づきキスをした。
再び拍手と歓声に会場が包まれ第二回レースは幕を閉じる。
後日、亜夜の元にゴンザレス・タシロから臨時テストパイロット契約の書類が届いたのだった。