●リプレイ本文
●あれ、そういえば‥‥
「おっはよーございまーす」
元気な声をだして、『Redio−Hope』の新スタジオにやってきたのはミッシング・ゼロ(
ga8342)である。
「おはようございます。ミーティングルームというか、こちらにどうぞ」
スタジオの主であるライディ・王(gz0023)が案内をしていく。
すでにゼロを除いたメンバーが全員いる。
「えっと、OP曲もED曲もイメージだけですね‥‥その辺はこちらで社長さんに伝えておきますが‥‥足りないところは社長さんに追加してもらいますね多分、全部任せるつもりだったのでしょうけど‥‥」
各自、役作りやシナリオ作りでミーティングをしていたが、題名や役名、学園の設定などはすっかり忘れていた。
「とりあえず、収録しましょう。一通り収録して放送時は分割しますから、米田社長さんにはそう伝えておきます」
苦笑しながらもライディは話を進めることにした。
IMPメンバー達は出足の不安を抱えつつライディを眺める。
「らっじお、らっじお〜」
おき楽なゼロを除いてではあるが‥‥。
『僕達の自然(ナチュラル)』
●第1章 出会いは突然に
「おはよう、静くん」
いつもの通学路で眼鏡をかけた少女が僕に声をかけてくる。
僕の名前は紫苑寺・静。声をかけてきたのは幼馴染の風華・ルイだ。
「もうすぐ学園祭だね‥‥」
「そうだね」
「あなたたちは何をするか決まったの?」
僕とルイの間に背の高いもう一人の幼馴染の相楽 奏先輩が割り込んできた。
幼いころから変わらない、たわいも無い登校風景。
”僕達の自然”だけれどこの日は違っていた。
「あの、申し訳ございません。御園生学園までの道を教えていただけませんか?」
後ろから声をかけられ、僕とルイは振り返る。
そこにはお嬢様という言葉の似合う少女が白いワンピースを着て首をかしてげていた。
「それはうちの学園だよね?」
ルイが僕の方を向いていうが、僕の目はその少女の姿に釘付けだった。
「静くん! あ、私は風華・ルイ。この男の子は幼馴染の紫苑寺・静くん」
僕が動かないのでルイが自己紹介をまとめて行う。
「ルイ様と静様ですね、よろしくお願いいたします。私は日向琴音と申します」
綺麗な声と共に一礼をして、自己紹介をした。
そんなゆったりした時間をすごしていると予鈴が鳴り出す。
「あっちゃ、遅刻するわよ。ほら急ぐよっ!」
奏先輩が先に駆け出し、そのあとをルイが追っていった。
そして、僕は思わず琴音さんの手を引いて坂道をかけあがっていく。
僕達の自然がなくなり出した瞬間だった。
●第2章 偶然は続いて
「よう、マジメな静クンが遅刻ギリギリとは珍しいじゃないか」
僕の後ろの席にニヤニヤしつつ座ってきたのは波木・誠。
同級生で、高校入学時代からの仲だ。
「そういうマコトこそ、早いね。いつもは遅刻してくるのに‥‥」
「今日転校生が来るって噂を聞いていたからな、これはチャンスだろ」
何のチャンスか僕にはわからないが、マコトの考えてることだからナンパとかそういうことだろう。
そして、ホームルームのとき、転校生がやってきて僕は驚いた。
「今日から、こちらのクラスでお世話になります日向琴音といいます。右も左もわかりませんがどうぞよろしくお願いします」
丁寧な言葉遣いで一礼をする琴音。
黒板に書かれた字が、登校時にあった彼女であったことを物語っていた。
ワンピースも似合っていたが、学生服も良く似合っている。
「静くん、鼻の下伸びてるよ」
斜め後ろ、マコトの隣に座っているルイから、僕は突っ込みをうけた。
「あら、静様にルイ様。同じクラスでしたのね? 安心しました」
「なんだ、紫苑寺達は知り合いか、それじゃあ朝日、席を換わってやれ」
「ほっほーい」
僕の隣にいた朝日・陽子はクラスのムードメーカーで、同い年とは思えないほどに明るく元気で子供っぽい。
先生のいうことを聞いて、僕の隣には琴音さんが座る子になった。
「縁があるようでうれしいです。よろしくお願いしますね?」
琴音さんの微笑みが僕に向けられ、僕の顔が真っ赤になるのがわかる。
「おい、静クン。あとでじーっくり、聞かせてもらうからな」
マコトからもシャーペンで背中をグリグリされて僕はどうしていいかわからなかった。
さらに、追い討ちをかけるかのように文化祭実行委員は僕と、そしてルイが選ばれることになる。
「あ、え‥‥、その。わかりました」
押しの弱い性格だから断れない。
しかも、ルイは生徒会の書記でもあるため、学園の創立者の孫にあたる生徒会長の御園生・薫と面識があることも大きな要因だった。
「しょうがないよ、お互いがんばろう」
僕はルイにそう声をかけたが、この言葉を後に僕は悔やむ
●第三章 交錯する思い
「失礼、します‥‥」
ルイがノックをしたあとに文化祭実行委員運営部と張り紙の張られた部屋へ入っていく。
「君か、生徒会役員としてでなく、文化祭実行委員としても協力してくれることを俺は歓迎するよ」
生徒会長の薫がルイを出迎えた。
その後、他のクラスからも運営部担当の実行委員が集まる。
大体、あつまったことを見回して徒副会長の御桜・咲夜が細い目で確認をとった。
「全員そろったようですので、話をはじめます‥‥運営部担当の皆さんにはクラスの出し物と予算の調整などをやってもらいます」
咲夜が話をしだす。
しかし、薫の目はじっとルイを見つめていた。
その視線に照れたルイが顔をうつむける。
「風華さん、話をきいていますか?」
その態度を見逃さず、咲夜が大きな声でルイと名前を呼んだ。
「おっかないな‥‥あの人苦手だよ」
一(にのまえ)・優がぼそぼそとルイの隣‥‥といっても、後輩だ。
薫のほうはクスクスと微笑んでいる。
咲夜による淡々とした説明が進む静けさを部屋の扉を開ける音が割った。
「あの〜、すみません。転校したてて場所がわからないのですがここは何をするところでしょうか‥‥」
おっとりとした声の琴音が不思議そうな顔で室内を見回している。
「今は会議中です、早々に立ち去りなさい」
咲夜のきりっとした声をうけて、琴音はあわてて部屋を出て戸をしめて駆け出した。
「今の人、可愛い人だったなぁ‥‥いや、別に気になるとか初恋とかじゃないよな」
優は自分が抱いた感情を自分で否定した。
「咲夜君、きりもついたことだから今日はここまでにしよう。皆、文化祭まで時間は少ないけれど協力していいものをつくっていこう」
ざわめく様子を薫がクールにしめ、会議は終わりを告げる。
咲夜は不服ながらも薫に従った。
●第四章 ふれあう心
「ふぅ、屋台の看板デザインどうしよう‥‥」
僕は文化祭実行委員としてクラスの意見をまとめ、喫茶店ということでルイに申請し、無事通った。
ルイは予算の関係などで動いているため、ここにはいない。
時間も放課後だから、人も少なかった。
「そうですね、喫茶店ならのどかで落ち着けるイメージがよろしいのではないかと」
「うわっ!?」
背後から聞こえた声に僕は思わず飛びのき、声をかけた人物を確認した。
転校生の琴音さんである。
「琴音さん、まだ帰ってなかったの?」
「いえ、学校を案内してもらった静さんにお礼をと思いまして戻ってきたのです」
律儀な人だなと思いつつも、琴音さんの笑顔に僕の心臓がどくんと高鳴った。
「絵画は好きなので、よろしければお手伝いいたしますよ」
僕の近くに琴音さんが来て、ふわっとシャンプーの香りのする髪の毛が僕の目の前をよぎった。
「う、うん‥‥僕美術苦手だから助かるよ‥‥」
放課後、僕と琴音さんの二人だけの時間がゆっくり過ぎていく。
それは僕にとってルイと一緒では感じたことの無い時間だった。
●第五章 すれ違う時間
「遅くまで、手伝ってもらってすまないね? もっとも、俺は君のその勤勉さを買っているのだけれど」
文化祭まであと二週間といったころ運営本部は当日のための手配や準備、広報活動のために遅くまで作業をしていた。
今、残っているのは薫、ルイ、咲夜の3人だけである。
生徒会長特権というやつなのか、すでに時間は夜の8時を過ぎていた。
「い、いえ‥‥仕事は大切ですし、文化祭は成功させたいですから」
でも、ルイは違和感を得ていた。
一緒に登校し、一緒に帰っていた静との時間が減っていることに‥‥。
そんなルイを咲夜はじっとみめていた。
「さて、さすがにこの辺でお終いにしよう。さすがに、俺としても特権を振りかざしすぎるのも悪いからね。二人は送るよ車を呼ぶから」
と薫は書類整理を終えて携帯を取り出すと、使いのものを呼び出す。
「い、いえ近いですし‥‥」
「せっかくのお誘いですので私は同行させていただきます。風華さんも夜道は危険ですよ」
断ろうとともったルイを咲夜が止めた。
すぐにリムジンがつき、3人は帰路に着く。
「こんな遅くまで二人ともありがとう。俺はいい後輩を持ってうれしいよ」
両手に花といったポジションで薫はいう。
そんなとき、急ブレーキが掛かり、リムジンががくんと揺れた。
「まったく、危ないじゃないか!」
薫が運転手を怒り、咲夜とルイを確認する。
「あ‥‥眼鏡、眼鏡‥‥」
眼鏡を探すルイの顔は薫が今までみてきた女性の中で一番輝いてみえた。
しばらく、薫は見惚けていたがルイの眼鏡が自分の足元に落ちているのを見つけ、ルイに渡す。
「ルイ君、君は眼鏡をかけていないほうが、素敵だよ」
薫らしくない詰まったものいいに咲夜は戸惑いを覚えた。
そして、リムジンはルイを降ろす。
「今日はありがとう、助かったよ。明日からはこれほど遅くならないよう俺も気をつけよう。おやすみ」
「あ、はい、おやすみなさい御園生会長」
車を降りたルイと薫の会話を、誠は聞きつけ、窓から顔をだす。
「はー‥‥相変わらずおっとこまえだねぇ、カイチョーは。あれ、でもあの家ってルイんとこじゃ‥‥」
誠が首をかしげながら家に入るルイと走り去るリムジンをじっとみていった。
●第六章 ホントのキモチ
「あ、静先輩。一緒のご飯いいですか?」
文化祭まであと三日となり、いつの間にかルイといる時間よりも琴音さんといる時間の方が多くなっている。
「いいよ」
そんな昼休み、僕は琴音さんと一緒に中庭で琴音さんの手作り弁当を食べていると優がやってきた。
3人用ベンチに優がすわり、僕と琴音さんとの距離が近くなる。
「日向先輩って、静先輩の知り合いだったんですね」
「はい、静様には良くさせていただいています」
コンビニおにぎりを食べつつ優は話しかけ、琴音さんは素直にそれに答える。
「マコトから聞いたけど、ルイは生徒会長と仲良くなっているようだからね‥‥琴音さんは知り合いすくないから自然とこうなっちゃって‥‥」
昼ご飯も本当はルイと一緒に食べていた。
何だろう、この変なキモチ。
「静先輩は流されているだけなんですね、自分から動こうとしないで」
優の言葉がぐさりと僕の胸刺さった。
「今の静先輩はかっこ悪いです。失礼します」
コンビニおにぎりを食べ終わった優は中庭から立ち去った。
「彼のいうように最近、朝からの夫婦喧嘩がなくなったでしょ? 気づかない?」
いつの間にか木陰から。クラスメイトの春日・梨緒がでてくる。
その顔は怒りとも呆れとも取れる顔をしていた。
「何もしないで今までがこれからも続く訳じゃないんだよ? 大切なものはしっかり掴まなきゃいけない。私から言えるのはこれだけよ」
梨緒はそれだけいって、校舎内へ入っていく。
「二人してなんだよ‥‥僕が何をしたっていうんだよ‥‥」
僕は二人の言葉を受けて項垂れるしかなかった。
「静様‥‥」
項垂れる僕の頭を琴音さんは優しく撫でる。
今の僕にはそれが心地よかった。
●第七章 初めての拒絶
学園祭当日。
生徒会室で運営部の打ち合わせをすませたあと、咲夜は薫とルイを部屋に残した。
「会長、躊躇するとは貴方らしくありませんね。成功率が0でない限り、挑むべきではありませんか?」
いつも傍で見ていた咲夜には薫がルイに惹かれているのはわかる。
だが、告白をしないのが気になり、こうして舞台を用意した。
咲夜は自分の気持ちを抑えて。
「ルイ君‥‥俺は君の事が好きだ。この日を気に付き合って欲しい」
薫はルイに近づき、眼鏡をはずして告白した。
「あの‥‥あの‥‥」
ルイは戸惑った‥‥だが、ルイ自身、梨緒に時間を見つけて相談していたのだ。
自分の気持ちを、そして自分が求めている自然を‥‥。
「ごめんなさいっ!」
とられた眼鏡をそのままに、ルイは薫を突き飛ばし、駆け出していった。
「振られてしまったのは初めてだよ。振ったことは多いけれど‥‥」
ルイ自身、強く拒絶したのもこれが始めてである。
●最終章 僕達の自然
「静くん!」
涙を流しながら、ルイが文化祭準備中の教室に駆け込んできた。
「おい、静。準備やっておくからルイつれて屋上いってこい」
ルイとのことの相談にのってくれていたマコトがいつに無く強い口調でいう。
「静さま、いってください‥‥」
琴音さんも声を震わせて僕とルイを送りだす。
「皆、ごめん‥‥」
僕はルイを抱きしめて、屋上に駆け出した。
「全然、話せなくってごめん。‥‥寂しかった。ルイは?」
「私も静くんとの距離が離れているのが嫌でした」
涙を流し、ルイは答えた。
「僕はルイのことが好き」
「私、静くんの事‥‥これからも、ずっと好きです」
僕達は抱き合った。
●CAST
紫苑寺・静・ナレーション‥阿木 慧斗(
ga7542)
風華・ルイ‥ノエル・イル・風花(
ga6259)
相良・奏‥鷹代 由稀(
ga1601)
日向・琴音‥夕凪 春花(
ga3152)
御園生・薫‥小田切レオン(
ga4730)
御桜・咲夜‥緋霧 絢(
ga3668)
波木・誠‥葵 コハル(
ga3897)
春日・梨緒‥ミオ・リトマイネン(
ga4310)
一・優‥ジーラ(
ga0077)
朝日・陽子‥ミッシング・ゼロ
●反省会
「せんせーどうでしたか?」
「30点」
手を上げてアピールするゼロを由稀が厳しく採点した。
「キャラクターを自分で作らなきゃだめだよ? 役名とかライディが考えてくれたけれど、今回は私達が社長に設定とかまでまかされたんだから答えなきゃ」
「はにゃー。レオンくん、せんせーが怖い〜」
困ったゼロがレオンに抱きつく。
「打ち合わせが難しいとか確かに後半急ぎでやった部分はあるけれど、私達はアイドルとして米田社長さんやアイベックス・エンタテイメントの看板を背負っていくのよ」
由稀は一息ついてなるべく優しくゼロにいった。
「まぁまぁ、あとは僕のほうで米田さんにいっておきますから、皆さん今回はお疲れ様でした!」
ライディが由稀をなだめ、収録は終わる。
アイドルとしての自覚、そういうものが求められてきているのかもしれないと皆思った。