●リプレイ本文
●彼の山を登ろう
「1人で山を散策するのは、道に迷う危険性がありますから‥‥私が」
苦笑しながらいうのは”迷いの旅人”水鏡・シメイ(
ga0523)である。
「地図ももらったから大丈夫だよー」
愛紗・ブランネル(
ga1001)がパンダぬいぐるみの『はっちー』と共に地図を見て答えた。
「私の場合は地図があっても不安なんですよね」
ぼそりとシメイはいう。
(「磨理那様には‥‥以前、温泉旅行でお世話にもなったので‥‥今回はご恩返しです」)
そんな中、一人菱美 雫(
ga7479)はウサギキメラ退治に対して熱意をもやしていた。
「山にある池にいってみたいの」
『池は水のみ場だから、キメラも動物の修正ももっているみたいだし、集まるだろうからね』
乙(
ga8272)がしゃべり、腹話術でテディベアの『癸』が補足する。
まるで、一人漫才のようだ。
「小屋は山の周囲に転々としているかんじか。罠の位置もある程度絞れるかもね」
背の高めな斑鳩・眩(
ga1433)が覗き込むようにして襲われたという鳥小屋の位置当を確認していた。
「そうだね、襲われたのはこことここと〜」
楽しむように小屋の位置にバッテンをつけていく愛紗。
『一通り探索が終わったら合流しようね』
癸が話しをつけ、愛紗がはっちーでこくこく頷かせた。
(「でも、あの二人見てて和みます‥‥」)
気合を入れていた雫でさえもテディベアとパンダぬいぐるみの人形劇は心が和む。
「追い込める場所とかも捜したいですからね〜、がんばりましょ〜う」
佐伽羅 黎紀(
ga8601)が体を伸ばして先導をしだした。
●餌を探し買い物
「必要なのは、網・ロープ・とりもち・鶏肉・人参‥‥くらいでしょうか?」
レーゲン・シュナイダー(
ga4458)ことレグは6人乗りのゆったりした運転手つきの車の中で買うものを指折りカウントし、買出し組に聞いた。
「それでいいと思いますわ。ラストホープですと、ロッタちゃんのお店ばかりだから普通の買い物って久しぶりで楽しみですわ」
レグの隣で緑川 めぐみ(
ga8223)はフフと微笑む。15歳でのようにみえる少女から漂うのは上品さ。
しかしながら、腰に下がった小銃が能力者であることを示していた。
「夜の戦闘のために懐中電灯なんかあってもいいかと思います」
レグやめぐみの前の座席で振り向きつつ蓮沼朱莉(
ga8328)がレグに提案をだす。
「そうですね、ランタン持っていないペアもあるかもしれませんし確認してそろえましょう」
レグがにっこりと微笑み、それに対して朱莉がおずおずと改まった挨拶をしだした。
「レーゲンさんとおっしゃいましたよね? 兄がお世話になっております。ふつつかな妹ですが、よろしくお願いいたします」
礼儀正しく朱莉は礼をした。
「ねぇねぇ、肉はやっぱり日本国産の方がいい? ‥‥むぅ、兎キメラめ。良いもの食べてるなぁ」
襲われたのは京地鶏。
国産で美味しいといわれる種別である。
呉葉(
ga5503)も後ろをみつつそんなグルメキメラに大して怒りを隠せない。
手に持ったぬいぐるみでべしべしシートを叩く。
「しかし、皆様も磨理那様にお付き合いいただきありがとうございます。私としましても安心いたします」
運転手である翁にいわれ、能力者たちは一層がんばろうと決意をし、買い物をするのだった。
●肉食は肉食なんです
探索隊が回っていると、水のみ場のような池で水を飲んでいるウサギが4匹いた。
「うわー、可愛い〜食べたくなりますね。うさぎ美味しい言いますし」
黎紀は野うさぎたちを双眼鏡で見るとそんな事を言い出す。
「う〜ん、キメラなのかどうかはよくわかんないね」
愛紗も双眼鏡で覗くが、ただの野うさぎか判断がつかなかった。
「とりあえず捕まえてみるの」
『善は急げだね』
乙と癸はウサギの方にたったかと駆け寄る。
足音に耳を動かした4匹のウサギは乙をみつけるとぴょんぴょんと飛び、牙をむいてきた。
「キメラなの!」
「全部キメラか!」
事前に野うさぎの事を調べている人がいなかったが、ニホンノウサギは夜行性であり昼間動く事はない。
逆を言えば昼間動いていたら『普通の』ニホンノウサギではないのだ。
6人が戦闘態勢を整える。
「こんな可愛い兎さんをキメラにするなんて‥‥許せない‥‥っ」
雫のスパークマシンαが唸り、襲い掛かってきたウサギキメラに電撃を浴びせた。
「当初と〜予定は違いますけどぉ、やっちゃいましょ〜う♪ 幸せのヒノキ風呂のためにぃ〜っ」
電撃を受けたキメラに黎紀がヴィアによるソニックブームを飛ばし、喰らったウサギキメラはフォースフィールドを砕かれながら。
「愛紗ちゃん一緒にがんばるの」
「がんばろうね♪」
乙と愛紗はお互い頷きあって一匹に対し二人ががりで攻撃を与える。
愛紗の一撃を受けて弱って逃げ出そうとするウサギキメラ。
『乙、キメラは逃がしちゃだめだよ』
「わかってるの」
駆け出した乙がクロムブレイドでとどめを刺した。
眩が1匹のキメラをすばやい動きで回りこみ殴り倒す。
最後の逃げようとした1匹をシメイによる鋭覚狙撃をこめた一撃で見えないような二回の射撃でしとめた。
「4匹は倒せて何よりですね、報告して合流しましょう」
二コリとシメイは微笑み、皆にいう。
「昼間動いているなら〜、お昼過ぎてから残りを倒しましょう〜。あのウサギ食べれないかな〜?」
黎紀は最後の最後までウサギキメラの味にこだわっていた。
●夕日は今にも沈みて
合流後、罠を張る前に一度、磨理那の屋敷でニホンノウサギが夜行性であることをつかみ、木の陰とかにいるということで違いをはっきり掴む。
「夜になって、どっちも動き出していると大変です。まだ襲われていない鳥小屋を警戒する班と罠設置しつつ見つけ次第倒す担当でわけましょう」
レグによる作戦提案がだされ、もともと2人一組で動こうとした夜の行動作戦が変更された。
襲ってくるかこないかとか、逃げ出して混ざった場合困るのは明確である。
シメイと黎紀、呉葉とめぐみが鳥小屋の警護をすることになった。
「私たちは山の方を退治にいきましょう。聞き込みによれば、昼でも夜でも集団だったそうですから」
とレグと朱莉ペア、愛紗と乙ペア、雫と眩ペアがキメラ用の罠をもって現在、日の沈みかかっている山を探索中である。
午前の担当が4匹倒しているそうなので、そうそう多くはないはずだ。
「そうそう、朱莉ちゃんにいっておきますけれど‥‥覚醒してもびっくりしないでくださいね?」
鶏肉のきざんだものを朱莉といっしょに巻きつつレグはいう。
そして、その物音と生肉の香りにウサギキメラ達3匹は難なく誘われてきた。
「さぁ、ウサギども丸焼きにしちまうよ」
ウサギキメラを見ると覚醒し、ブロンドの髪が風になびくレグ。
性格も攻撃的で、その姿は朱莉にはとてもまぶしかった。
レグの声に気づき、肉を咥えて逃げようとする2匹だが愛紗や雫たちが押さえ込む。
「そうら! この一撃を与えたら間合いを詰めて一気にやっちまいな!」
ほとばしる電撃を放ちつつレグが朱莉に指示をする。
朱莉も覚醒し、動きやすくなった体で斬りかかった。
「おやすみなさい!」
流れるような動き共にクロムブレイドがウサギキメラを斬り倒す。
「よくやったね、朱莉」
レグが朱莉の頭をなでなでする。
「こっちもおわったよー」
終了を示す二組を確認し、覚醒をといたあと倒しのこしがないか一同は山の散策をしだした。
●忘れがたき京都
カラカラカラと、黎紀ガ頼んでいた鳴子がなり、ウサギキメラが小屋の近くにやってきたことを示した。
「めぐみさん、グルメキメラをとっちめましょう!」
「私の小銃S−01も待ちわびて降りましたわ」
気合をいれる呉葉に対し、ドレス姿でにっこりとめぐみも笑い舞うようにウサギキメラの気配を探り出す。
一匹のウサギキメラが音に驚き逃げようとしていた。
「逃しませんわ」
狙いを定めてめぐみがウサギキメラを撃ち、髪が炎のようになった呉葉もハンドガンの弾丸に練力を纏わせて撃ち込んだ。
二人の銃撃であっさりと一匹のウサギキメラは倒れた。
「ふぅ、またつまらないものをうっちゃった」
覚醒をとかないまま呉葉が煙の上がる銃口へ息をふきかける。
そんな呉葉にシメイたちからの無線が入った。
『こちらに2匹きて、倒しました。あとレグさんから山を回ったそうですがキメラは見当たらないそうです。全部倒せたようですね』
うれしそうなシメイの声に呉葉も満足そうに頷く。
「おっふろ、おっふろ〜」
キメラ退治を終えた一行は、磨理那の屋敷でゆっくりと温泉と食事を楽しんで一晩とまってかえることとなった。
朝、シメイは水をまいてお礼を返し、レグと朱莉は磨理那と共に冷たい井戸水での禊体験。
充実した京都を能力者たちは満喫したのだった。