●リプレイ本文
●プロローグ
『勇者様、私をお助け下さいませ。
気合で念が繋がったのが証、貴方が勇者様――決定!(ドンパフ)
‥‥は、右から左へ受け流しまして〜♪』
明るくアレキサンドライト・アイのお姫様が一人で盛り上がり、平凡な少年ライディにいってきた。
これは夢?
ライディが頬をつねると、痛くない。
そんなライディを放ってお姫様は話を続けた。
『城のバルコニーから脱そ‥‥いえ、外を眺めていたら私迂闊にも足を滑らせてしまったのです
そのとき、受け止めたのは魔王の配下の魔物でして、現在囚われの身‥‥勇者様どうぞ、お助けくださいませ‥‥』
なにやらお姫様の自業自得な雰囲気を感じながらも、ライディはお城へ本当のお姫様がいなくなったのか確認にでかけることにするのだった。
●お城にて
お城にでむくと、大騒ぎ。
お姫様が魔物に浚われたと民衆が口々にいっているのだ。
人垣をなんとか、通り抜け王城に入ろうとするも衛兵にライディはとめらる。
それもそのはず。
ライディはどこにでもいる平凡な青年なのだ。
「お待ちなさい、彼を通すのです」
金髪のウェーブロングの髪をなびかせ、動きやすい巡礼服にローブをかぶったつややかな女性が王宮内から出てきて衛兵達に声をかける。
「これはクラリス司祭様‥‥ですが、このものは姫が助けを呼んできたという世迷い言を‥‥」
言葉をにごらせる衛兵の横を素通りして、クラリス司祭は微笑みを浮かべ、ライディに問う。
「では、少年。姫の瞳を答えてくださいな」
「瞳はアレキサンドライトです」
ライディがそう即答すると衛兵がオオォと声をあげた。
「神の思し召しですね。では、謁見の間まで案内いたしましょう」
ライディはクラリス司祭の後ろをついていくと普段では見えないような白く綺麗な柱や、装飾の豪華な置物などがおいてある。
静かだった、雰囲気は謁見の間に近づくにつれて騒がしくなった。
「自分の姫なのだから自分で倒せばよかろう!」
「な、殴ったね。親父にもぶたれた事ないのにっ!」
ライディが見る限り、殴ったのは背の小さな少女で、殴られたのは王冠をつけたおじいさんだった。
「お、王様!」
あわてて近づくクラリス司祭。
「ふん、腰痛だの頭痛だの理由をつけては隣国に手を借りる。年とはとりたくないものだな!」
そんな司祭には目もくれずズカズカと赤い絨毯を少女はライディのほうへよってくる。
「おい、お前。魔王退治につきあえ。荷物もちがいなくて困っていたところだ。話し相手も欲しかったからな。名前はなんだ?」
ライディに気づくと少女は値踏みでもするかのように上から下まで見てライディに聞いた。
「普通自分から名乗る物だと思うけれど‥‥僕はライディ。お姫様から助けてって夢をみて魔王の城までの道も覚えているよ」
「ライデーというのか、私はたそがれ国のルート王だ。私の家来になれることを喜ぶがいい!」
勝手に話を進めつつ、ルート王と名乗った少女は盛り上がる。
「おぉ、お主がサイヴ姫と意志のつながった少年か‥‥わが王国には強い意志を飛ばす力を持つ物がたまにおる。そして、それを受け継ぐものもな‥‥わしからも姫を助けてくれぬか?」
よれよれの王様がクラリス司祭に支えられながらライディに頼みこんだ。
王様の言いつけを断るわけもいかず、ライディは頷く。
こうして、ライディのサイヴ姫救出の冒険がはじまるのだった。
●道中に不審人物その1
「よくよく妙なことに巻き込まれるな。心配だからついていってやるよ、ライディ」
そうして魔王のいる城に行く間にライディの家に寄ったとき、幼馴染の剣士シオーンがライディの肩を叩いた。
持つべき者は友だとライディは思う。
「剣士に僧侶に勇者に王! これは楽しい旅になりそうだ!」
美女のクラリス司祭、5年後あたりに期待がもてそうな美少女ルート王という二人がいるためか弓兵ウヅンのテンションは高い。
彼は女好きであるのだ。
王様にサイヴ姫救出を命令されたのもあるが、二人と一緒に旅に行けるというのが一番の目的なのは此処だけの秘密である。
そんないろいろな人が集まり旅をしていると、倒れている謎の男がいた。
「これはアレだな、罠だ!」
ルート王はいの一番に叫び、腰に刺さったイアリスで倒れている人物をツンツンとつついた。
「は、腹減った‥‥」
カタカタ動き、半ば干からびた謎の音を果てを伸ばす。
「ぞ、ゾンビー!」
勢いあまって叫んだライディによって袋叩きに合う謎の男。
しかし、人間とわかり食料と水を差し出すと三日分をあっという間に平らげた。
「ふぅ、助かった。貴方の名前は」
三日分の食料を平らげた男は旅装姿であり、シールドと、やたら石の詰まったスリング。
腰には盗賊の良く使う道具などがみられた。
「えっと、ライディといいます。あなたは?」
「俺の名前は‥‥うぅ、頭が痛くてわからん。しかし、ライディという名前に何か心当たりもある。いただいた食料と水の恩もあるので俺も連れて行ってくれ!」
ライディが自己紹介をすると謎の男はきゅうに話をすすめだし、土下座までしだした。
ここまで展開が早いとついていくのも大変である。
「家来は多いほうがいいから、つれていくぞ。名前がないと困るのでおまえの名前はポチだ!」
それは犬の名前のようなとライディが突っ込もうとしたが、それをクラリス司祭が真剣な顔で止めた。
「いえ、何気ない名前が記憶を呼び戻すヒントになることもあります。これも神の試練です」
こうして、個性的な6人の旅が改めて始まったのである。
●そのころの魔王
暗い雲が覆い、雷が鳴る。
そんな土地柄の悪いところに立つ巨大な城。
そこで魔王はひざの上にアレキサンドライトの瞳を持つ猫を撫でていた。
猫は魔王の手に引っかくも所詮は猫。
魔王はただ笑いつつ猫を愛でる。
そんな魔王の前にシュタっと黒いネコミミに尻尾、大きな猫の手足を持った魔獣が肩ひざをついて降り立った。
「どうした? 余の前にマナマナが姿を現すとは‥‥」
魔王は目を細め魔獣を見る。
「この城にくる一行を見つけました! なかなかのつわもののようです!」
元気一杯にマナマナは立ち上がる。魔獣といってもマナマナは人間の少年のようだ。
「くれぐれも丁重にお迎えし、その真意を探ってみせよ。ここまで辿り着ければ、余が直々に相手をしてやろう」
マナマナに魔王は命令をくだす。
「わっかりましたー」
マナマナは敬礼をするとシュタっと消え去った。
「まったく、猫はいたずらずきよの?」
魔王は手をひっかいたり、噛み付いたりしている猫に呟いた。
●道中の罠ワナWANAどう?
「俺、この冒険が終わったらお城のメイドさんに告白するんだ」
「何をおまえは死亡フラグをいっておるのだ」
ウヅンにルート王が突っ込みを入れつつ、一行はライディの夢を頼りに魔王の城へ進んでいく。
「う、うわぁ!?」
「シオーン!」
平和なひと時が叫び声でかき消された。
シオーンとライディの姿がない。
良く見れば落とし穴に二人が落ちていて、蛇やムカデなどとライディとシオーンは戯れていた。
「た、助けてくださーい」
「これも神の試練です、自力でなんとかするのです。それが勇者というもの」
涙ながらに声を出すライディだが、クラリス司祭にあっさり却下される。
気持ち悪さを耐え切り、シオーンの剣が毒蛇を切ったりして、それほど深くなかった落とし穴からの脱出に成功した。
「うぅ、気持ち悪い‥‥」
「悪趣味なワナだな‥‥」
ライディとシオーンはため息をつきながら、体中についた嫌な液をふき取る。
良く見れば同じような落とし穴が多く続いていた。
「上手くよけていくしかないですね」
「いえ、勇者さまは試練なので全部はまってよじ登ってください」
先を見て遠い目をするライディをクラリス司祭は精神的に突き落とした。
そして、何度か穴に嵌りながら道を進めば、今度は森。
「む、ここには罠の気配が!」
謎の男(ポチ)がキランと眼を光らせる。
さっきの落とし穴は罠じゃなかったのかよと、残り5人の視線を一斉に受けるポチ。
「俺が先に進もう。敵もいない、罠もない」
自信ありげにポチが進むと、ゴツンと金ダライがポチの頭に直撃した。
さらに、その勢いで中に入っていった100%オレンジジュースが残り5人にかかる。
「すっぱい! 100%オレンジジュースはダメだな。というか、こんな仕掛けを作ったやつは! 絶対殴ってやる!」
ルート王の声にびっくりしたマナマナが木の陰からこっそり姿をあらわす。
「こ、こわくないぞ! この肉級でふにぷにするまで生かしてやるだけだからな!」
マナマナはどこかツンデレらしい台詞をいいながら、戦力疾走していった。
「あの変なのが魔王?」
「それはないだろ、それよりもオレンジくさいの何とかしよう‥‥」
疑問に思うライディをシオーンが突っ込む。
だれも、金ダライで気絶しているポチには気づかなかった。
●到着、魔王の城
それから、奇妙な魔獣たちとの戦いをライディたちは繰り返していた。
豚鬼、犬鬼と呼ばれる魔獣たちがライディたちを襲う。
クラリス司祭は自らに手を下すもの『だけ』を魔法で倒す。
ライディも慣れない剣をつかい、幼馴染のシオーンと道を切り開いていった。
「この程度の雑魚、たそがれ王の敵ではないわ!」
ルート王もばっさばっさと魔獣を倒していく。
一通り片付きライディが剣を収めたとき、ライディの後ろに巨大こうもりが襲い掛かる。
それをウヅンがクロスボウで狙いうち、闘いは終わった。
「油断たいてきだぜ、ライディ」
長い道のりを渡ってきたかられの結束は一団と硬くなる。
そして、魔王の城が見えてきた。
空気すら重いその門の前にマナマナが現れた。
「良く此処まで来たな、魔王様にあいたくば‥‥」
「会いたければ‥‥」
皆、傷ついた体で武器を構えだす。
「踊ってちょ。好きな方を選んでね♪」
めいっぱい可愛らしくマナマナはいい、桜の木と鯉のぼりの着ぐるみをライディに差し出した。
「魔王と会うために来て踊るだと! 王である私がやらないわけにはいかないだろう!」
ライディは鯉のぼり、ルート王は桜の木を着だす。
『バルサミコ酢、やっぱいらへんで〜』
と呪文のような踊りをマナマナと共に踊ると門がゴゴゴと開いた。
「では、さらば!」
バナナの皮を捨てて逃げるマナマナ。
「王にこのような格好をさせた責任を取れ!」
それを拾ってルート王は投げ返し、滑ってこけたマナマナにパンチを一発いれたのだった。
たそがれの王は約束を守る王である。
●最終決戦、魔王との闘い。
門の中は直径100mくらいの闘技場のようになっていた。
「余の余興に付き合え‥‥勝てば姫はくれてやる」
その中央にいるのは魔王だった。
「やはり、あの夢は本当だったんだ」
「さっさと倒そうぜ、俺にはメイドさんが待っている!」
「よくわからないが、がんばろう!」
ライディに続き、ウヅン、ポチが意気込む。
結束はできている?
「余に勝てればといっただろう!」
急に魔王が5mの龍になり、火炎攻撃をしかけてきた。
長旅の疲労もあり、吹き飛ばされる一同。
「治癒魔法をかけます。手を煩わせないでください」
クラリス司祭が不謹慎な事を言いながらも仲間を治していいった。
「ふ、私の身長の低さを見誤った貴様の炎は効かなかったわ! 喰らうがいい、ラグナロク!」
ルート王がダッシュで駆け寄り、背後の空間から大量の武器を召喚しだすがそのまま背後に落ちる。
「‥‥よし、敵はひるんだ! 今のうちだ!」
何事もなかったかのように話を進めるルート王。
「うぉぉぉ!」
シオーンがルート王の呼び出した剣を取り竜にジャンプして斬りかかったが、硬い鱗には歯が立たない。
「だが、弱いはらならどうだ!」
ウヅンはシオーンの後ろで共にかけていてシオーンとは逆に腹にもぐりこんでクロスボウをゼロ距離で叩き込んだ。
「いくら奴でもゼロ距離からのクロスボウんの一撃なら‥‥なに!」
だが、竜には効かず尻尾によってウヅンは吹き飛ばされ、闘技場の壁にめり込む。
「人間とは弱いものだ、いかなる武器でも!」
竜がライディに爪を向けるもそれをポチが両手を広げて受け止めた。
「ライディ、お前は弱くない。本当は力なんていろんな形があるんだ‥‥思い出したよ、俺はお前の生き別れ」
そこまでいったポチは魔王の爪によって無残に引き裂かれた。
「僕は‥‥誰もすくえない‥‥」
ライディは目の前で散ったポチの血を浴びて呆然と立つ、竜はすぐそこまで来ていた。
「ライディ! お前を信じた姫を忘れるな! お前に救ってもらいたい人はいるんだ!」
シオーンの言葉で覚醒し、ライディは竜の手を駆け上がって眼を剣でつらぬいた。
「ぬ、ぬおぉぉぉああぁぁぁ!?」
竜は影となり、ゆっくりと消えていく。
闘技場も姿を消し、魔王の城さえなくなった。
広い草原には100匹の猫に囲まれたサイヴ姫がいる。
「お姫様は無事でよかったなライディ」
傷ついたシオーンが猫を可愛がりつつ、ライディに聞く。
「いや、でもなんか違うような‥‥」
目の前のサイヴ姫は夢ででてきたようにアレキサンドライトの瞳をしていた。
そのとき、ライディの頭にクラリス司祭からの質問がよみがえる。
「突然ですが、姫様‥‥右から?」
「何をいいだすのですか、勇者さま?」
『にゃー!』
突然の質問に首をかしげる姫を含めた一同。
だが、一匹の猫だけがライディの問いかけに答えた。
「この猫が姫様です!」
ライディだ抱きしめると、猫がサイヴ姫の姿へと戻り、サイヴ姫だった存在がうっすらと消える。
こうして、ライディ一行は無事サイヴ姫を取り戻し、王宮へと戻ったのだが‥‥。
ライディはサイヴ姫を浚って逃げる事になってしまう。
だが、それはまた別の話。
Fin
●夢から現実へ
「おい、ライデー起きろ!」
ゆさゆさとライディをルード・ラ・タルトが揺すっていた。
「あ、ごめん‥‥」
寝ぼけ頭で周りを確認すれば、そこは王宮ではなく雑居ビルのミーティングルームであった。
ミーティングルームで寝ていたのか、ライディは起きだし、ルードの顔を見て笑う。
「‥‥というか、何を笑っている」
ライディがルードを見て笑っていると、ルードが不服を顔で訴えた。
「内緒」
とりあえず、夢は夢で終わらそう。
●夢の中の登場人物
勇者ライディ‥‥ライディ・王(gz0023)
剣士シオーン‥‥榊 紫苑(
ga8258)
弓兵ウヅン‥‥宇月 慎之介(
ga8419)
謎の男(ポチ)‥‥金 海雲(
ga8535)
ルート王‥‥ルード・ラ・タルト(
ga0386)
サイヴ姫‥‥シーヴ・フェルセン(
ga5638)
クラリス司祭‥‥クラリッサ・メディスン(
ga0853)
悪戯魔獣マナマナ‥‥愛輝(
ga3159)
魔王‥‥辰巳 空(
ga4698)