タイトル:くってけ!ちゅうかまんマスター:橘真斗

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2007/11/15 22:24

●オープニング本文


「まいど、ありがとうございま〜す! あ、はいこれ」
 注文した商品と一緒にロッタ・シルフスから渡されたのは何かの整理券である。
 内容はサンフランシスコ中華街活性化イベントで、能力者限定の大食い大会が開催されるとのことだ。
「『くってけ! ちゅうかまん』なんて、安直な名前だけど面白そうでしょ?」
 ULTショップも協賛しているからとのことらしい。
 サービスにしては妙だと思ったがそういうことかと納得できる。
「いっぱい中華まんが食べられて、優勝したら賞金がでるんだよ! キメラ退治よりもいい仕事じゃない?」
 子供らしい笑顔を向けて話す姿は年頃の娘らしい。
「競争率高そうだから、がんばってね♪ もっといい商品かってくれたら優先券をあげるんだけどな〜」
 にこにこと営業スマイルを浮かべるロッタ。
 ここにいたら、いくらあってもぼったくられそうだ。
 早々に立ち去るに限る‥‥。
「あ、ちょっとまってよ〜、優先券いらないの〜」
 優先券よりも懐が大事。
 さて、でもイベントは確かに面白そうだ。

●参加者一覧

MIDNIGHT(ga0105
20歳・♀・SN
煉条トヲイ(ga0236
21歳・♂・AA
平口 蝮(ga0362
18歳・♀・ST
幡多野 克(ga0444
24歳・♂・AA
犀川 章一(ga0498
24歳・♂・FT
神楽克己(ga2113
15歳・♂・FT
御影 柳樹(ga3326
27歳・♂・GD
葵 コハル(ga3897
21歳・♀・AA

●リプレイ本文

●大会参戦、そりゃノリってことかい。ちょ!
「‥‥何故、俺は此処に居るんだ?」
 目の前に立つサンフランシスコ中華街の門を見上げながら、煉条トヲイ(ga0236)は自問した。
「会場は‥‥奥よ」
 自問しているトヲイを尻目に何かの包みを大事そうにもって、黒ワンピースのMIDNIGHT(ga0105)が通り過ぎた。
「中華まんかぁ、コンビ二のばかりだったから本場のお土産にもっていきたいな」
 さらに、大食い大会に参加するとは思えない台詞を残して、平口 蝮(ga0362)も門をくぐった。
「‥‥ま、まともなヤツはいるのか?」
 トヲイは去り行く二人を見送った。
「間に‥‥合った、中華まん‥‥美味しそう」
 幡多野 克(ga0444)は移動中かじっていた棒状のチョコを食べながら、会場へむかった。
 大食い大会参加者のような感じは微塵もない。
「懐かしいですね、学生時代は激辛早食いや、大盛を食べきるとかそういうもので食費を浮かせていたこともありました」
 犀川 章一(ga0498)はいつのまにやら門にもたれかかりながら遠い目をしていた。
「最近はハムと実家から送られてきた下仁田ネギしか、食べてなかったし。中華まん喰いまくるぞー!」
 元気よく現れたのは神楽克己(ga2113)だった。両手をぶんぶん振って、鼻歌までうたっている。
「おや、神楽君ではありませんか、今回もよろしく‥‥あ、君ははじめまして。犀川 章一だよ」
 先ほどまでの意味深さの欠片もない笑顔を章一は神楽とトヲイへと向けた。
「章一ぃ、さっさといこうぜ」
 神楽は章一の手をとってずんずんと門をくぐり会場へと進みだした。
「今日は久しぶりにおなかいっぱい食べられるさ〜」
 トヲイを突然影が覆った。
 見上げれば、そこには御影 柳樹(ga3326)がいた。
「で、でかいな‥‥」
「ん〜、よく食べるほうだからね〜、いわゆるフードファイター?」
 トヲイはその言葉に己を省みた。
(「俺はファイターであって、フードファイターじゃねぇよっ!」)
「ま、お先〜」
 柳樹は巨体を揺らしながら、門をくぐっていった。
 トヲイは悩む、本当にこの門をくぐっていいものかと。
「開始時間に送れちゃう〜」
 同じファイターでありながら、能力者に成り立ての葵 コハル(ga3897)がいそいそと門をくぐっていった。
 顔は必死である。
 もちろん優勝よりは、中華まんが食べたいだけなのだが‥‥。
「腹をくくるぜ、ここまで来たらやるのが男!」
 トヲイは気合を入れなおして中華街の門をくぐるのだった。

●中華まんおかわりだだだだだだ!
 大会は中華街の真ん中にある広場の特設会場で行われる事となった。
 報道陣などもつめかけ、一大イベントらしさを感じさせる。
 一列に並んだ机に並んだ能力者たち。
 ステージには司会者と、1時間の制限時間を示す大きなカウンターがある。
 ギャラリーは老若男女いっぱいだった。
「やるからには、俺は勝つ!」
 自分に言い聞かせるかのようにトヲイは避けんだ。
 その叫びに、ギャラリーが沸きあがった。
 目の前に水のコップと、蒸篭が並んでくる。
 しかし、隣のMIDNIGHTは髪を左手首のへアーバンドで後ろにまとめ、もってきた包みの中から「地道」と書かれた湯のみを置いた。
 本気とも取れる行動である。
「それでは、スタートするよろしっ!」
 ドォォーンと銅鑼がなり、能力者たちは蒸篭をいっせいにあげた。
 もわぁ〜んと広がる湯気の中に中華まんがホクホクになって食べられるのを待っていた。
「「いただきますっ!」」
 能力者全員が両手を合わし、一礼後、食べ始めた。
「あついけど‥‥おいしい」
 克が待ってましたとばかり両手に中華まんをもって食べ始める。
 熱さより、食欲が上回った瞬間だ。
「うん、おいし〜さ〜」
 柳樹も肉まん一個を一口で口の中に入れる。
 独特の食べ方をしているのは葵。
 わざわざ中華まんを四等分し、それから食べている。
(「大食いであって、早食いじゃない。無理なく食べなければな」)
 トヲイはそう考えながら、一個一個食べ続けた。
 隣のMIDNIGHTは無表情で中華を半分に割りながら食べる。
 しかし、2分もしたら平口が箸をおいた。
「ご馳走さまでした。次にもってきてもらったもの、すみませんけどお持ち帰りでお願いします」
 苦しそうになってももがくより、上品に去ることをきめた平口だった。
 空になった蒸篭をどかしてやってきた、蒸篭をお持ち帰りで包み、壇上からスタッフ側へ。
 使用人としての性かもしれない。
「これはなかなか、手ごわい‥‥」
 章一は覚醒をしだす。目は青くなり、神が鈍い鋼色に染まった。
 時計を見ながら水をのみ、食べなおす。
 MIDNIGHTも白い肌が褐色のものとなり、覚醒して食べていた。
 
 10分が経過した。

「どうも昔ほど食べれないな‥‥」
 食欲はあるが、同じものを食べ続けることへの飽きが、章一の手を止めさせていた。
 すでに12個が章一の胃には消えている。
 克は覚醒し、両手に掴んで18個目をたべていた。
 無表情ではあるが、ペースアップしているのはたしかだった。
「はふぅ‥‥さすがに飽きる」
 葵も手を止め、腹休みをすることにした。
 トヲイは焦りを見せずにゆっくりと10個目をたべ、軽く水を飲んだ。
 
 20分経過。
 
 今のところトップを走るのは克。マイペースでありながら、両手につかみ無表情に食べていく。
 現在24個。それを20個食べ終えているMIDNIGHTと章一が共に20個ずつで追いかける形となった。
「ご馳走様、今日はこのくらいで十分‥‥」
 MIDNIGHTが目の前の中華まんを平らげたあと、両手を合わせて終わりをつげた。
 23個だった。
 『地道』とかかれたMy湯のみの水をゆっくりと味わう。
「また妊婦と間違われそう‥‥」
 追いかけずに終わりを告げたことのギャラリーはざわめくも当人はまったく気にしていない様子である。
「美味しい‥‥」
 もしゃもしゃと克はマイペースで30個目を食べ終えると、水で一気に流しこんだ。
「腹休みも終わり、これから巻き返しますよ」
 章一も中華まんを楽しみながら食べていく。
「やっぱり、味付けがずっと一緒だとあきちゃうな‥‥」
 葵がボソリと呟きながら食べていく。
 それでも20個を越えているのだから、『能力者』のすごさがわかる。
 
●くっていけ、最後まで食べるのが礼儀のはず
 30分になろうとしたとき、トヲイが動いた。
「大食いだろ言うと勝負、やる限り勝つ!」
 右目が金色に輝き、右半身に淡く光る真紅の紋様が浮かび上がる。
 それとも共に緩やかにペースが上がっていった。
「肉まんで体力回復! あんまんで体力と気力全回復だ! ラストスパートいくぜ!」
 神楽ももしゃもしゃと勢いをあげた。
「おお〜、燃えるね〜」
 こちらもペースアップのために覚醒した、柳樹。
 熱々の中華まんをほぼ丸呑みで食べていく。

 45分経過。

「‥‥ご馳走様」
 克が両手を合わせて終わりを告げる。
 顔は無表情ながらにも、十分食べたといった感じである。
 ちなみに、数は45個。
 葵、章一、神楽、トヲイ、柳樹の5人の勝負となった時間は残り15分。
 それまでに克の45を越え、さらに一番だった人がチャンピオンになるのである。
 勝負というよりも、楽しく食べだすといった雰囲気で、誰が勝ってもかまわない。
 能力者だけでなく、ギャラリーや、リタイアした3人もまだ食べ続ける人たちを応援する。
 
 時間終了。
 
「「ごちそうさま」」
 全員、食べていたものに感謝するように礼をした。
 そして、蒸篭のカウントが進められる。
 その結果、勝者はトヲイだった。
 同率2位で章一と柳樹。
 神楽は3位だった。
 トヲイの食べた中華まんは55個。覚醒してからの緩やかな追い上げが勝因かもしれない。
「か、かったぜ‥‥」
 水でのどを潤し、一息ついた。
「新たなライバル誕生なんだね〜、競う相手がいるとフードファイトも楽しいよね〜」
 柳樹のその言葉にトヲイはその名の通り遠い目をした。
(「俺、完全にフードファイターになっちまったんじゃねぇのか? しかも、テレビで宣伝してるし」)
 気づくのは遅すぎた。
 知り合いに見られているかもしれない。
 これからラスト・ホープに帰ることが、少しだけ憂鬱になるトヲイであった。
 
●大いに食べてお土産じゃー
 帰る前に、平口はお土産用に包まれた中華まんをもらっていた。
 大会用とは違い、中身もイロイロな味の詰め合わせになっている。
「あれ、これ‥‥」
「君達は大いにこの街が平和であることをアピールしてくれたし、同じ味でも食べきってくれた」
 詰め合わせを渡した厨師の言うとおり、食べ残しはなかった。
 多く作ってしまった分はそのままギャラリーへ配ったり、今のように詰め合わせを渡している。
「同行者の中でお土産が欲しい人がいるならいってくれ。コレだけ大量にたべてくれると、つくったこっちも嬉しいからさ」
 鼻の頭をこすりながら、厨師はいった。
「ありがとう」
 平口が受け取った中華まんはあったかかった。
 他の皆にも伝えてこなければと、平口は厨師に一礼すると駆け出す。