タイトル:帰ってきた鷹マスター:橘真斗

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/04/07 18:41

●オープニング本文


『魔の三角形』と呼ばれるバミューダトライアングル。
 バグアの襲来前から宇宙人がいるとか、戦闘機や船が行方知れずになっていた。
 近代では小説家達の作った謎であるとも言われている。

 バグアとの戦争が始まったさなかもこの海域、空域で戦闘は避けられず戦いに挑んでいった。
 そして、消息を絶ったものも少なくはない。

 しかし、奇跡というものは起きるもので、消息不明だったF−15の一機が発見されたのだ。
『こちら、TACネーム:カヒライス‥‥応答してほしい、TACネーム:カヒライス‥‥救助を求む』
 濃い霧の中一機のF−15が姿を現し、よろよろとした飛行をしつつ救難信号を発している。
 周囲にはヘルメットワームがゆっくりと迫る、そんな状況下だった。

●UPC西海岸空軍基地
「軍曹! 俺にいかせてください!」
「ダメだ! アイツは公式上死んでいる。罠の可能性もある」
「ですが、生きている可能性だってあるはずです!」
 基地の詰め所では、普段ぶつかり合うことのないジェイド・ホークアイ大尉とジェイコブ・マッケイン軍曹がぶつかっていた。
 イーグルドライバー達はその様子をただ見るしかない。
「出撃は許可できん‥‥」
「なら、勝手にいかせてもらいます。懲罰は帰ってからで‥‥」
 うつむきつつ、マッケイン軍曹は否定的なことを言うしかできなかった。
 ジェイド大尉が扉を開けて出て行ったあと、マッケイン軍曹はイスに深く腰掛けなんともいえない顔になる。
「TACネームカヒライス‥‥ジェイドのパートナーだな、公私共の‥‥」
 そう呟き、マッケイン軍曹は電話を手に取りラスト・ホープへ依頼を頼むことにするのだった。

●参加者一覧

ゲック・W・カーン(ga0078
30歳・♂・GP
新居・やすかず(ga1891
19歳・♂・JG
伊藤 毅(ga2610
33歳・♂・JG
熊谷真帆(ga3826
16歳・♀・FT
フォル=アヴィン(ga6258
31歳・♂・AA
アルタ・クラウザー(ga6423
18歳・♀・SN
比良坂 和泉(ga6549
20歳・♂・GD
鞠絵・エイデル(ga8236
18歳・♀・DF

●リプレイ本文

●鷹を追うものたち
「‥‥軍人としては命令違反はさせられん、とは言え人としては行かせてやりたい‥‥ま、だからこそ俺達を呼んだんだろうかね? あの鬼軍曹さんはよ」
 ラストホープから直接救援に向かう進路を取りつつ、ゲック・W・カーン(ga0078)はつぶやいた。
 バイパーの試験のときに今回連絡のあったマッケイン軍曹と面識がある。
 だが、それからずいぶんと軍曹に会っていなく思い出せば殴られた腹が痛んだ。
『気持ちは分からなくも無いのですが、単機で向かうのは、さすがに危険ですよねぇ〜‥‥空を飛んでいるうちに頭が冷えてくれればいいのですけど』
 ゲックのつぶやきに別班として飛んでいるアルタ・クラウザー(ga6423)が不安そうに声をかけた。
 噂のバミューダートライアングルに行ってみたかったというのもこの依頼に参加した理由の一つである。
『うぅ‥‥生活費のためとは言え、知らない人ばかりで緊張します』
 飛んでいるKVの中で一際目立つ赤いボディ。
 MSIから出荷されたばかりのディアブロにのった鞠絵・エイデル(ga8236)はその高価な買い物で生活が苦しい。
 人見知りが激しいタイプだが、食べていくためには慣れるしかなかった。
 だが、ただ一人冷たい感情で参加している人物がいる。
 元航空自衛隊のパイロットの伊藤 毅(ga2610)であった。
『馬鹿の尻拭いで命を捨てることはない‥‥ルーキーは無理をするなよ』
 灰色系統のスプリッター迷彩、パターンは旧米空軍のイーグルのカラーリングをした伊藤機のバイパーはエンジン出力を上げ、大きく飛翔した。
 それぞれの願い、思いを翼に受けて、8機の鋼鉄の鳥はアメリカ方面へ向かっていく。
 
●鷹の誇り
「カイヒラス、応答せよ! カヒライス! こちらTACネームShadow。ジェイドだ!」
 バミューダ近辺で行方不明となり、公式記録上死亡とされている恋人に対して、ジェイドは声を上げて無線連絡した。
 だが、かえってきたのは周囲にいたヘルメットワームによる攻撃である。
「くそったれ!」
 飛んでくるプロトン砲の光刃を激しいGを受けながら、バレルロールを描いてよけた。
 カヒライスも同じようによける。
 ジェイドの心に希望の光が芽生えた。
『こちらTACネーム、スザク! ジェイド大尉落ち着いてください!』
 フォル=アヴィン(ga6258)の声が聞こえたかと思うとジェイド機の横を3機のR−01が通り過ぎ、ヘルメットワームと戦いだす。
『さて、最初っから全力で行きますよっ!』
 久しぶりの空に心を躍らせていた比良坂 和泉(ga6549)のR−01がゲック機と共に戦闘に参加しだす。
 カイヒライスを2機のヘルメットワームが追い、6機のヘルメットワームがプロトン砲で和泉機たちを狙いだした。
 掠りながらも、大きなダメージを受けず接近していく、ゲック機、フォル機、和泉機。
『フォル君、ゲック君、比良坂君、援護します! 放電装置‥‥ファイア!!』
 遠距離支援担当の鞠絵機が試作G放電装置による攻撃を放った。
 飛び出す電撃が、ヘルメットワーム3機に大きなダメージを与える。
 新型機の基本性能の高さが見られた。
『負けてられません、UK−10AAM ファイア!』
 眠そうだった眼をパッチリとさせて、有効射程に近づきつつミサイルをアルターが叩き込んだ。
 3発のミサイルは1機のヘルメットワームへと吸い込まれるように撃ちこまれる。
 続いて支援攻撃として伊藤機の短距離高速型AAMが飛び交い、6機のヘルメットワームとカヒライスをおう2機のヘルメットワームを完全に切り離した。
『支援完了、援護を続ける』
 伊藤機はそういい、鞠絵機やアルター機に割り込むように戦いだす。
 フォーメーションなど取れていなかった。
 指揮官がいないのである。
 
 
●鷹を模した怪物
「Shadowよりスザクへ、救援を呼んだ覚えはないが‥‥軍曹か」
 ジェイドはつぶやき感謝すると共に、意識をカヒライスの方へ向けた。
 2機のヘルメットワームに終われ、フェザー砲を撃たれながらもそれを上手くよけている。
『怪しいですよね、普通に考えて‥‥でも、確証が無い上にヘルメットワームが狙っているように動いているとあると黒に近いグレーでしょうか‥‥?』
 新居・やすかず(ga1891)は熊谷真帆(ga3826)と一定距離をとりつつ飛んでいた。
 ロッテ戦術と呼ばれる航空戦術の一つである。
『甘い再会を見させて欲しいものね‥‥』
 真帆はただ願う。
 軍曹から事情を聞いて願わざるを得なかった。
『TACネームShadowへ、こちら新居といいます。貴機の援護に入ります』
『同じく熊谷真帆です。援護させてください』
「こちらShadow‥‥‥‥素直に感謝する」
 ため息が漏れる間を空けつつ、ジェイドは冷静さを取り戻す。
『新居がカヒライスのコックピットを確認に行きますから、大尉は私と共にヘルメットワームのひきつけをお願いします』
「それも仕方なしか‥‥」
 新居機が先に飛び出し、カヒライスに近づく。
 その後方から迫るヘルメットワームに対して真帆機はスナイパーライフルを、ジェイド機が牽制攻撃のホーミングミサイルを仕掛けた。
 ジェイド機のミサイルはフォースフィールドによってはじかれるも、真帆機の放ったスナイパーライフルはフォースフィールドを打ち破りダメージをたたき出した。
 そしてゆっくりとと新居機がカヒライスに接近し、コックピットを確認しだす。
 一秒一秒が長く、まどろっこしささえ感じた。
『答えは白か、黒か‥‥』
 コックピットが見える。
 誰も座っている形跡はなかった。
『黒!』
 新居が大きく無線に叫んだ。
 だが、カヒライスが加速し、ターンを描きながらガドリングを撃ちはなってきた。
『先手を取られましたか!』
 ガガガガガと装甲に銃弾が食い込むも、強化したメトロニウムフレームが防ぐ。
 逆をいえば、ただのガドリングで大きなダメージも受けかねない相手だった。
「カヒライス‥‥くそっ!」
『これは罠だった、ということなのですかっ?』
 アルターがカヒライスに攻撃された新居機を見て驚いた。
 カヒライスが狙っているのはジェイド機である。
「どうすれば‥‥」
 一瞬、ジェイドに迷いが生まれ、動きが鈍る。
『‥‥いいか、奴等はあんたの恋人の尊厳を、自分等の目的の為に穢してんだぞ? 彼女の事を本気で想うんなら、奴等の束縛から早く開放してやれ!』
 ゲックの言葉にジェイドは覚醒し、機体を急加速してよける。
「ShadowよりGutsへ。お前に教わるとは俺もまだまだらしい」
『いいや、空戦についてはあんたに教わりたい事が山ほどあるんだ。死んでもらっちゃこまるぜ!』
 ゲック機も戦闘に入ったのか通信にノイズが混じりだした。
「カヒライス、いくぞ!」
 ジェイドの目は今、獲物を狩る鷹となった。

●翼を持つものができること
「確たる証拠を得られて、何よりでしたよ」
 フォルは飛び交う多少ノイズの混ざった通信を聞きつつ、一息ついた。
 初の空戦である緊張が手にびっしょりと浮き出る汗が示す。
『援護に向かうためにも、この邪魔者を退治していきましょう』
 逆にノリノリな和泉からの通信に、心強さを感じてフォルはゲック機と共に後方援護にでる。
 基本的な和泉機をリーダーとしたロッテ戦術だった。
 和泉機の乱れ撃つ滑空砲が1機のヘルメットワームを打ち落とし、また1機を中破にまで追い込んだ。
 R−01とて、改造次第では十分やっていける。
「こいつっ!」
 フォルの集積砲を撃ち込み、ゲック機のホーミングミサイルで中破していた1機がまた落ちた。
『ナイスだ、スザク。初の空戦とは思えないぜ』
 ゲックからの褒め言葉にフォルは照れる。続いて、ゲック機のホーミングミサイル全弾が叩きこまれて遠距離組で弱っていた1機が落ちた。
『これで3機、悪いが大尉の援護にいってくるぜ!』
「え、ちょっとゲックさん!?」
 ゲックは仲間の制止も聞かず、飛び上がり、ドッグファイトをしているF−15のほうへ向かっていった。
『フォルさん! 危ないですよ! 変わりに私が入ります!』
 鞠絵機がロッテの間に入り、連携を保つ。
『これも受けなさいっ!』
 アルター機と伊藤機からのミサイル支援が続き、ヘルメットワームを追い詰めていくも、ヘルメットワームのフェザー砲により苦戦する。
 後は、ジェイドたちを信じるしかなかった。
 
●鷹と鷹の戦い。
『機動力がパンパじゃないが、機械の動きだ。読めなくはない!』
 カイヒライスのガドリング砲の攻撃を受けるも、ジェイド機は掠り傷で済ませる。
 イーグルドライバーの腕が誇れるものだ。
「よくも‥‥願いを‥‥このぉっ!」
 ブレス・ノウをこめた真帆機のスナイパーライフルがカヒライスを撃つも、フォースフィールドによってダメージが軽減されていた。
 バグアによって、カヒライスが改造されているのは明らかでる。
 カヒライスを追っていたヘルメットワームたちも新居機たちに攻撃仕掛けてきた。
『厄介ですね‥‥カヒライスを狙おうとしてもヘルメットワームが盾になってきます』
 新居がUK−10AAMでカヒライスに狙いを定めてもヘルメットワームが妨害してきた。
『狙いは大尉を生きたまま捕まえることでしょうか?』
『手間取っているようだな、TACネームGuts援護に入るぜ!』
 新居が弱っているとゲック機が通り過ぎ、盾になったヘルメットワームにレーザー砲の雨を与えた。
 ヘルメットワームからのフェザー砲の反撃を受けるも何とか耐えきる。
『新居さんは、カヒライスのほうを中心に、私はヘルメットワームをまず片付けます』
『了解!』
 新居機がカヒライスの気を引くかのように再び、UK−10AAMで攻撃を仕掛ける。
 カヒライスは回避運動を取るも当たった。
 しかし、ダメージはあまりない。
『F−15じゃないですね、もはやアレは‥‥』
 そうつぶやいた新居のほうにカヒライスから二発のホーミングミサイルが飛んできた。
 その速度はすさまじく速く、よけきることはできない。
 直撃を受けるも、大きなダメージには至らなかった。
『装甲を改造しておいてよかったですよ、本当に‥‥』
 ゲック機と真帆機がヘルメットワームを片付け、新居機の援護に回ってきた。
『よう、どうだ?』
『相当硬い上に回避力もあります。弾薬がなくなりそうですよ』
 ゲックの問いかけにやや困った様子の新居が答えた。
「それでもやるしかありません」
 真帆は答え距離を詰めつつ、ホーミングミサイルG−01を2回撃った。
 4発のミサイルがカヒライスを捕らえ、撃ちこまれていく。
 そのすべてを受けつつもカヒライスは飛んでいた。
『この子の全力の一撃、持って行って下さい!!』
 そこへ、ヘルメットワームを片付けて余裕のできた残りの能力者たちがやってくる。
 鞠絵のディアブロによる、アグレッシヴ・フォースのこもった放電攻撃がカヒライスを光で包み込んだ。
 この一撃でカヒラスはヨロヨロと煙を上げだすも、ジェイド機を狙い飛び続けた。
『大尉、『アレ』をやるぞ!』
 ゲックの言葉にジェイドは過去自分が受けた攻撃を思い出した。
『俺に当てない自信はあるだろうな‥‥』
『あのころとは違うってのを見せてやるよ! そしてとどめはあんたがさせ』
 無言の通信をYesと取ったのか、ゲックはジェイド機を追いかけるカヒライスをさらにゲックは追いかけた。
 一度上昇し、急下降する。ズーム&ダイブと呼ばれるマニューバの一つだ。
 シザースをとりながら、ジェイドはカヒライスの攻撃をよけつつも、主翼に被弾する。
『今だ!』
 ゲック機が人型に変形し落下すると共に、カヒライスに対してありったけの高分子レーザー砲を叩き込んだ。
 エンジンなどをやられ、カヒライスが墜落していく。
 そこへ、ジェイド機のホーミングミサイルが撃たれカヒライスは空の塵となったのだ。

●責任というもの
 バシンッ!
 UPC大西洋空軍基地に戻るやいやな、強烈な打撃音が格納庫に響いた。
 殴ったのは伊藤 毅であり、殴れたのはジェイド大尉である。
「貴官とて、ファイターパイロットだろう、ああいうことをしてどうなるか、分からなかったわけではないだろうに!」
 伊藤の言い分ももっともである。
 だが、反論する声が別のほうから上がった。
「では、貴様は軍人を感情任せに殴ることがどうなるかわからないわけではないな? 相手は空軍大尉だぞ、ヒヨッコが」
 威圧的な声に殴られたジェイド大尉までも立ち上がり敬礼をしだす。
 航空機操縦士教官をつとめるジェイコブ・マッケイン軍曹その人だ。
「そ‥‥それは‥‥」
 伊藤は自らの行動を正当化できる言葉が見つからなかった。
「傭兵及び能力者が活動地域において罪を犯した場合、UPC軍は現地において適切な処置が取れる。貴様が行ったことは軍法会議ものだぞ! 伊藤!」
 ビシャッとバケツの水をかけられるような言葉が伊藤を攻め立てた。
「空戦記録では他はロッテ戦術をつかっているというのに、貴様は単機で援護をしていた。軍務経験のある貴様が指揮をとるべきだろう! 違うか!」
 軍曹の言葉に伊藤は何もいえない。
「今回の場合大尉にも命令違反の罪はある。だが、貴様がそれを抗議できる立場であると思うな! ジェイド大尉、貴様に命令違反の処罰を下す。明日朝まで俺と酒を付き合え。貴様のおごりでな」
「軍曹殿、私にもご同行させてください!」
 ふらつくジェイドを支え、敬礼をしたゲックがマッケイン軍曹に進言した。
「許可する‥‥あとは補給が終わり次第解散だ。報酬は振り込んである。諸君らの奮闘に感謝する‥‥今後、あのような機体を”グリフォン”として登録する。以上だ」
 軍曹はそういってゲックの反対側にまわりジェイドを支えた。
「あ、あのジェイド大尉‥‥」
 真帆がおずおずとしつつ、ジェイドの背中に声をかける。
「物理で習ったけど一度結ばれた粒子は、遠く離れても永遠に干渉しあうと言うわ‥‥貴方への想いはカヒライスさんが今も送り続けているはずです」
「‥‥あの、その‥‥ぜ、絶対、自棄になったり、し、死なないで下さい。カヒライスさんも、きっと‥‥それを‥‥」
 鞠絵も牛乳瓶のそこのような眼鏡できょろきょろとしつつも言葉をつむいだ。
 二人の言葉に対して、ジェイドは振り返り答える。
「‥‥ありがとう、だがお前たちのような年下に助けられる自分がとてつもなく情けないよ」
 その言葉は能力者ではないイーグルドライバーである彼の精一杯の謝罪と後悔の言葉のように能力者たちにはきこえたのだった。