●リプレイ本文
●観光〜能力者ーズ、京都に立つ〜
「しかし、すごい人数ですね‥‥【蒼】御一行はこっちですよー」
京都に着き、高速移動艇を降りるとフォル=アヴィン(
ga6258)はメンバーを集めながら、京都観光のメンバーの多さに圧倒された。
「気ままな鷹はこっちだー」
「橘御一行、点呼するよ〜」
ブレイズ・S・イーグル(
ga7498)や橘・朔耶(
ga1980)も自分のメンバーを募集する。
近畿UPC軍の京都駐留所に到着したというのに、声のかけ方などは学生そのものだ。
「妾の屋敷にいくものはこっちじゃぞ〜」
今回の依頼主でもある平良・磨理那(gz0056)も人を先導しだす。
他にも、舞妓の記念撮影をするものや、若葉隊御一行、義理の家族である嶋田一家。
さらにはカップルで旅行に行くのが数組という大所帯である。
「全員は見られぬのじゃ、案内は侍女に任すゆえちゃんと聞くのじゃぞ。あと、宴席までにはまた此処に戻るのじゃ。こなければ飯と湯は無いと思うじゃぞ」
扇子でびしっと指しつつ磨理那は釘を刺した。
一泊二日の短いながらも濃い時間はこうして始まる。
●観光〜舞妓になりまSHOW!〜
「‥‥え、ええっ? これ、わ、わ、私‥‥ですか‥‥!?」
出来上がった写真の完成度に菱美 雫(
ga7479)は大きな声を上げ、頬を染めている。
「雫さん、すごく綺麗〜」
「こっちの簪とかに変えてみると大人っぽさUPですよ〜」
呉葉(
ga5503)と小川 有栖(
ga0512)は雫を着せ替えていた。
「は〜い、あたし綺麗? なんてな」
はじめは裏声で、最後はいつもの調子で舞妓の格好をした桂馬(
ga6725)が別室から出てきた。
元が良いのか似合っていた。
「うん‥‥悔しいけれど、綺麗」
呉葉の諦めにも近いつぶやきを満足そうにきき、桂馬は写真を撮って締めた。
なぜか特撮ヒーローのような決めポーズ。
「あ、それ面白そう」
と他もノリノリで4人で一枚。
京都戦隊マイコレンジャー参上。
迷子じゃないよ。
●観光〜武士の遍歴〜
「先日合間見えたのは、迷彩模様のゴーレムでな‥‥これはまた強くてのぅ」
屋敷に着いた藍紗・T・ディートリヒ(
ga6141)は磨理那から茶をもらいつつ戦歴を話した。
「そうそう、年末にLHでこんなのがやっていてさ!」
藍紗と与一の間に瞬天速で霧島 亜夜(
ga3511)は割り込み、磨理那に収録したV1グランプリのビデオを見せる。
「ほほ、これはまた面白そうじゃの」
二人の話を真剣に聞いていた磨理那であったが、V1のビデオは特に気に入ったようである。
なんだかんだいってもまだ10代の子供なのだ。
「私達は‥‥失ってはならない何かの為に‥‥戦っているだけです‥‥ですが、争いが無いのが一番ですね」
微笑みながらも、ハンナ・ルーベンス(
ga5138)は磨理那をじっとみる。
戦争をかっこいいと思って欲しくないという願いを込めて。
「ねぇねぇ、磨理那ちゃん。晩御飯の支度って手伝ってもいい?」
「あ、いいね。座敷の掃除なんかも一緒にやっちゃおうか。掃除のし甲斐がありそうと思っていたのさ」
広過ぎる屋敷をみて落ちつかないのか、月夜魅(
ga7375)は磨理那に頼み、キョーコも乗ってきた。
「では、このキス・クマ。さまざまな屋敷や晴れやかでぺろんちょなものを見せていただいた礼のため、お嬢様の口からレーザー砲を撃たせる料理を作りましょう」
「良くわからぬが、せっかくの申し出じゃ。じい、二人を炊事場に案内するのじゃ」
鈴葉・シロウ(
ga4772)の良くわからない気合を受け止め、翁に指示をし料理を作らせたのだった。
●観光〜はぐれカップル純情派?〜
「綺麗だな‥‥あ、あれ‥‥みんな、どこ?」
【蒼】一行として、金閣寺を歩いていたラシード・アル・ラハル(
ga6190)だが周囲の人ごみで同行者の姿が見えない。
どうやら、はぐれてしまったようだ。
「‥‥ラス、こ、こんなとこにおったのか。手、つないでもよいか‥‥の?」
夜柴 歩(
ga6172)はバレンタインのときにラシードに告白したものの、二人の距離が縮まらない事にモヤモヤしていた。
しかし、今回は偶然なのか二人っきりである。
「歩! よかった、さすがに一人だと困るところだったよ」
見知った顔を見つけ、ラシードは笑顔になり、手を握る。
その笑顔と行動に歩の胸がキュンとなった。
「どこに行こう? この後はイシニワを見てみたいんだけど‥‥」
「ええ、と、じゃな‥‥」
ガイドブックを奪って顔を隠しつつ今後の行動を考える歩。
しかし、その視線の先においしそうなお餅をあ〜んと食べさせているハルトマン(
ga6603)と旭(
ga6764)の姿があった。
二人の甘い空気が歩にもビンビン感じられる。
「ラ、ラス!」
「ど、どうしたの?」
歩の大きな声にびっくりするラシード。
「まずは腹ごしらえじゃ!」
ああ、花より団子。
●観光〜京都土産買いあらし〜
「金平糖や生八つ橋もいいけど、やっぱり春の京都と言えば豆腐アイスと桜餅だよね〜!」
真紅櫻(
ga4743)は朔耶と半分個したりして食べ歩く。
「これもいいわね、翡翠。追加するわよ」
海音・ユグドラシル(
ga2788)は京都の工芸品でいいものを見つけては支払いを済ませ追加していく。
「ちょ、ちょっと買いすぎじゃありませんか?」
神無月 翡翠(
ga0238)は両手一杯の荷物を持ちつつ、悲鳴に近い抗議をした。
「おぉ、このような場で出会うとは奇遇でござるな」
翡翠の抗議で気がついたのか、土産選びをしていたオットー・メララ(
ga7255)が橘御一行の方を向く。
手には『恋愛成就』と『身体健康』のお守りを持っていた。
「恋愛成就なんて、好きな子いるんだ」
「あ、いいやそれは!?」
「え、巴さんは‥‥そういうのではなくて。え、あ‥‥今のはオフで!」
朔耶が突っ込みをいれると、オットーは慌てふためく。
一緒に土産を選んでいたヴァイオン(
ga4174)が過剰反応していた。
「いやいや、皆さんおそろいで‥‥京都の土産はいろいろあって困ります。もっとも一番の土産話ができなくて残念でしたがね」
不敵な笑みを浮かべつつ鋼 蒼志(
ga0165)は土産の山を抱えている。
しかし、視線は清水の舞台をじっと見ていた。
●宴〜与一再来〜
「那須与一には及ばんが、全力をもって、3本中1本は命中させてご覧に入れよう」
宴の始まりは醐醍 与一(
ga2916)の遠的から始まった。
料理の運ばれる前の座敷の奥から、池に浮かぶ小さな的を狙うというものだ。
距離にして70m、通常の弓では届かない距離である。
ぐっと長弓『草薙』を引き、与一は意識を集中させた。
与一の髪が赤く燃え上がり、炎の文様が左顔面に浮かぶ、そして一発で射抜いた。
「見事じゃ! 天晴れ、天晴れ」
扇子を広げ磨理那は大いに喜んだ。
「与一さん、すごかったぜ! ささ、飲んで飲んで」
蓮沼千影(
ga4090)は与一にビールを注ぐ。
「千影、妾への酌が後とは偉くなったものじゃの」
意地悪い笑みを浮かべた磨理那が突っ込みをいれた。
「はうぁ! 申し訳ございません、ささ果物のジュースでございます」
オレンジジュースを注ぎだす。
「さすがちぃ兄、期待を裏切らないね‥‥。そうそうマリナはこういう『物の怪』見たことある? バレンタインに羽根が生えてて‥‥」
葵 宙華(
ga4067)が飴をなめつつフフフと笑いながらマリナに何かを吹き込もうとしていた。
「葵さん、ちぃをいじめないでください〜。あ、はじめましてレーゲン・シュナイダー(
ga4458)といいます。『れぐ』とお呼びください」
葵の発言に千影が慌てふためくと、レグが止めに入る。
すぐに、ぎこちなくも三つ指ついてレグは磨理那に挨拶をした。
「れぐかや。千影の嫁と聞いておるのじゃ。ツメが甘い男じゃからしっかりと引っ張るのじゃぞ」
「ははは、言われてますね。お嬢様、折り入ってご相談があるのですが‥‥」
磨理那にいわれている千影を微笑ましく眺めると、嶋田 啓吾(
ga4282)は磨理那と耳打ちをしだす。
「ほぅ、嶋田とやらおぬしも悪よのぅ。じゃが、やるのであれば‥‥」
「いやいや、磨理那様ほどではございませんよ」
時代劇の悪役同士のような会話が広げられて行く間にも、月夜魅やシロウの作った料理が並びだす。
宴は始まった。
●宴〜想いめぐりて〜
「なんであたしの気持ちがわかってくれないんですかぁ!!」
一方、パティ・グラハム(
ga7167)は出来上がっていた。
オレンジジュースと間違えてビールを飲んでしまったようである
「よってるだろ! おい、水飲め、水!」
絡まれている真神 夏葵(
ga7063)が水を差し出すも「ごまかされません!」と断られた。
「傭兵なんていって無事でいるのか心配だったけど、元気そうで良かった。また会えて嬉しいよ、のものも」
「ほどほどにしましょうね、夜は長いですから」
一方、揃いの浴衣で酌をし合っているのは不知火真琴(
ga7201)と叢雲(
ga2494)だ。
旧知の仲である二人だが、こうしてゆっくり話すのは本当に久しぶりである。
「壊れた町並みも酷かったな‥‥」
「そうですね」
ブレイズは沖 良秋(
ga3423)と酷い状況の京都を思い出していた。
文化遺産などに興味はない、生きた情報こそがバグアにとって必要なものと思い知らされる。
「ふふ‥‥皆、面白い」
リュス・リクス・リニク(
ga6209)は料理を食べつついろいろと話し合ったり酌をしあう人を見て微笑んだ。
そのときフラッシュがたかれる。
「今の笑顔、しっかり撮りましたよ。フィルムは多めにもってきていますけれど、足りますかねぇ」
困った様子ではあるが、声はそうでもないグリク・フィルドライン(
ga6256)は微笑む。
いろいろな想いをもって楽しむ人々。
飾らない姿はとても美しい。
●宴〜芸の連続〜
『そのままですが題して『夜桜を纏う緑の瞳』。俺の妹的存在、朧 幸乃(
ga3078)をとくとご覧あれ』
春風霧亥(
ga3077)はマイクを片手に司会進行よろしく朧を宴席の舞台に呼び出した。
「お楽しみって、こういうことですか‥‥今日くらいはいいですけど」
ジャージなどで参加するつもりだったが、来てみれば春風とレグに桜の花弁柄着物を着せられた。
髪型もメイクも抜かりなく施されている。
「HAHAHA、ミーが一つ芸をお見せしようと思うのでゴザル。おじょーさんご協力を」
アッシュ・リーゲン(
ga3804)が黒装束にイアリス、黒のフェイスマスクという間違ったニンジャで登場し、朧やヴァイオン、クレイフェル(
ga0435)を木柱の前に立たせた。
「はっ! ジャパニーズシュリィーケェェンッ!」
磨理那が用意したのは手裏剣であり、それを一発ずつ投げる。
頬の横や頭上すれすれで手裏剣が柱に刺さった。
「すごいですが、朧に怪我があったらどうするんですか」
静かに、強く春風が怒り出す。
「セッシャーはドロンでグッバーイ」
気まずい雰囲気をさっし、アッシュは隠密潜行で宴席から逃げていく。
「次は俺やな。傘回しいくで〜、よっ、はっ」
京野菜を満足に味わい、アッシュの犠牲となりかけたクレイも一芸をと番傘で枡をまわしだした。
そして、如月(
ga4636)のバイオリンなどの芸が終わり締めに出されたのは戎橋 茜(
ga5476)と小川の漫才である。
『もうすぐ旧暦のひな祭りやな。ひな祭りといったら何思いだす?』
『そうですね、ちらし寿司に蛤のお吸い物に雛あられに‥‥』
美少女二人による漫才でわいたあと、一同は温泉にぞろぞろと向かう。
楽しい夜はこれからだ。
●温泉〜悪即惨〜
「怖いナイスガイが睨んでいるから、覗きはやめとけといったんだがな‥‥」
ベーオウルフ(
ga3640)は湯船にぷっかり浮いているスティンガー(
ga7286)に突っ込みを入れる。
覚醒までしているのか髪の毛がわかめのように漂っていた。
「嶋田家の可愛い姫達の裸を見ようとは‥‥許すまじ! 悪は滅びるのです」
わざわざ防水加工を施したハリセンで宗太郎=シルエイト(
ga4261)はスティンガーをはたいていた。
「騒がしいな、落ち着いて風呂くらい入らせてくれ」
騒がしさにウンザリといった様子の柊 緋影(
ga7762)が一人ごちる。
「いやーいいよねー極楽だ。そして、また泉質が‥‥」
自称、若葉隊温泉隊長の有栖川 涼(
ga6896)は騒動などまったく気にせず入っていた。
「腰痛が治った! それに体の匂いを消すのにもいい。こんなにいいものがあったとは!」
また、シャワーばかりの生活が多かったデル・サル・ロウ(
ga7097)は温泉のよさに感動の涙を流している。
「だから、さぁ‥‥静かに入らせてくれよ‥‥」
「まったくだ、この辺の鬱憤は卓球で返すしかないな‥‥」
柊と霧島 黎人(
ga7796)の抗議は湯煙の中に消えていった。
●温泉〜すきんしっぷ〜
「ふ〜っ‥‥極楽極楽」
温泉マナーを守るため、体にタオルをつけれず髪だけをタオルでまとめて犬塚 綾音(
ga0176)は湯船で羽を伸ばしていた。
「ああ、本当に極楽だ。湯煙の中から覗くアレやコレは実にすばらしい‥‥」
百瀬 香澄(
ga4089)が湯船の中でどこか感慨深く語った。
「やはり、裸の付き合いというものもいいですね‥‥二人ともいいものをもっていらっしゃいます」
じーっと、二人(の筋肉)を見ているのはミンティア・タブレット(
ga6672)である。
「でも、ミンティアさんも細くてうらやましい」
風(
ga4739)も湯船の中を歩いて3人に近づく。
(「こ、これはすばらしい大きいのから小さいのまで選り取りみどりっ!」)
香澄は内心飛んで逝きそう(※誤字にあらず)なのを抑えていた。
「皆に聞きたいけれど、男って、胸が大きい方がいいのかな?」
「どうなんだろう‥‥ケナに聞いたことないや」
キョーコ・クルック(
ga4770)が裸の付き合いらしい質問をぶつけだした。
(「私はどっちでもかまわない。必要なのは形だ!」)
香澄は心の中で強く思ったのである。
●温泉〜卓球〜
一方、卓球場では早くも若葉一行による卓球大会が開かれていた。
そして早くも準決勝である。
「今回も美味しく頂戴させて頂きますよ」
愛輝(
ga3159)はゴゴゴとうなるオーラを出しつつ、Letia Bar(
ga6313)をにらむ。
「く、だがあの京扇子は私のものだー!」
オーラをにらみ返して、Letiaはスマッシュを放った。
「脇が甘いです‥‥」
残像が見える動きで愛輝は正確に球を返した。
その一球で勝負が決まる。
もう一方の卓球台でも過酷な戦いが繰り広げられていた。
「獅子は我が子を谷底に突き落とす! 必殺、若葉ボールッ!」
篠森 あすか(
ga0126)のシェイクハンドがうなる。
浴衣のすそがひらひらとなびくも、呉葉には効果がなかった。
「隊長‥‥いえ、隊長が全力であれば全力で迎え撃つのみ!」
覚醒していないにもかかわらず敬語が消えている呉葉は飛んでくる球をじっと見つめ、球を打ち返した。
「必殺! えす・いー・えす消える魔球! ‥‥ウソ」
思わず突っ込みを入れたくなる名前が飛び出したため、あすかの反応が落ち、若葉ボールは返される。
「すごいじゃない、呉葉ちゃん」
応援していた佐倉祥月(
ga6384)が思わず呉葉に抱きついた。
「佐倉さん、苦し‥‥くない?」
爆弾発言が飛びつつも、その後の愛輝と呉葉の対決で決勝戦が行われ接戦の末、呉葉が優勝した。
「見事な戦いじゃったぞ。褒美はやるが、罰は無しじゃ。皆よい戦いしたからの」
磨理那から、京扇子を渡される。
しかし、興奮冷めやまないのか帰り時間までの間ほとんどのメンバーは卓球と温泉を往復したとかどうとか。
●温泉〜誤解される日本〜
「これが日本の温泉作法‥‥とか」
「いやぁ〜、温泉で冷酒‥‥悪くありませんね〜自分ももらいますよ」
ホアキン・デ・ラ・ロサ(
ga2416)はラジコン帆船の上に地酒を載せて帆走させ、秋月 祐介(
ga6378)が同伴した。
「いやいや、日本の作法はそんなんじゃないですって、桶に熱燗を浮かべてですね」
来栖 晶(
ga6109)がホアキンに酌をしつつ説明をはじめた。
「杯に夜月を浮かべるのこそ粋ってものですよ‥‥」
伊藤 毅(
ga2610)も温泉の作法というよりは酒の飲み方について語った。
また、同じ湯船では別の話が繰り広げられている。
「とりあえず、『試合』の前にルール等の話『し合い』を‥‥」
「卓球はですね、気合と根性の勝負です。相手をいかに気迫で威嚇し、必殺スマッシュをきめるかがポイントなのです。伝家の宝刀はスリッパです」
リラース(
ga5999)のマジメなギャグに対し、アキト=柿崎(
ga7330)も本気か冗談かわからない説明をしだす。
「宗太郎からも聞いていましたが、やはりスリッパですよね‥‥」
うんうんとバーナード(
ga5370)も納得しだす。
間違った日本文化がまた形成されたのであった。
●温泉〜女3人寄ればやかましい〜
(「くぅ! やっぱ可愛いなぁ、もう!」)
「どうしたの?」
急に(可愛さに負けて)動きの止まった日乃 晃(
ga1085)に対して、月森 花(
ga0053)は小首をかしげた。
「あ‥‥ああ、いや、なんでもない」
そういう晃の顔は緩く、挙動もいつもよりおかしい。
「おっしゃー、温泉だ! 泳ぐぞー!」
雨霧 零(
ga4508)が湯船の中にダイブして泳ぎだす。
「こらこら、泳ぐんじゃないよっ!」
綾音に注意されるも泳ぎ続ける零。
「ほらほら、藍紗ちゃん、祥月。れっつ、ばすとあっぷ!」
手をわきわきさせて、Letiaが優勝できなかった腹いせもかねてセクハラに走っていた。
「う〜、静かに入りたい‥‥」
料理を作って、卓球もやって疲れた月夜魅の疲れがいえるのはずっと後になる。
●自由時間〜京遊び〜
「宴席のときにやった投扇興もそうですが、伝統の遊びというのは優美なものですね」
翡翠は競馬香をしながらうなる。
競馬香とは簡単に言えば、特殊な香の香りを覚えて、点数を得て駒を進める双六のようなものだ。
「ええ、でも悪くはないでしょ」
翡翠とペアになった海音は微笑みつつ香炉から漂う香りを『聞く』。
嗅ぐという表現は無粋であるため、香道では聞くという。
「チィ、もっとちゃんと覚えてよ。負けるよ」
「うるさい、最後に抜くのが王道なんだよ」
朔耶と真紅櫻の方は上手く言っていない様子である。
ワイワイいいながら、京ならではの遊びを楽しむ4人。
「もしかして、これ罰ゲームとかありですか?」
ふと、翡翠は思ったことを聞いた。
そうすると、朔耶と真紅櫻はにっこり笑って答えた。
「「当然」」
夜はまだ長い。
●自由時間〜星振る夜に〜
「せっかくだから、高いところで夜景を見ようぜ」
自由時間、屋敷内の手入れされた庭を歩いていた亜夜は急にそういうと、手をつないで歩いていたキョーコを抱きかかえると物見櫓に駆け上がった。
「ちょ、あ、あやっ!?」
覚醒し、瞬天速で髪も瞳も赤く染まった亜夜は流れ星のように夜を走る。
キョーコの静止も聞かない。
そして、櫓にたどり着くと亜夜はキョーコをお姫様抱っこをしたままポケットからキャラメルをとりだす。
「これお返し」
「キャ、キャラメルだけなのか?」
キャラメルを取り出してにっこり笑う亜夜に、少し口を尖らせるキョーコ。
けれど、次の亜夜の行動にキョーコの口は尖りをなくす。
亜夜のキャラメルを口に入れてからのキス。
甘い夜をすごす二人のバックに流れ星が一筋流れた。
●自由時間〜憧れ〜
「私は憧れていたのだよ。こういうのを、な」
UNKNOWN(
ga4276)のいつになく優しい声に家族は揃って意外な顔をした。
家族といっても血はつながっていない。
傭兵になって、絆を結んできた間柄である。
それでも、お互いに大切な存在たちであった。
こうして、ヒノキ風呂に男女関係無く入れるほどに。
似合う髪形を教え、背中を流し、髪を洗ってやる。
普通であれば何気なくやれることであり、できなかった事。
「父さん、母さん、いつもお疲れ様です。‥‥でも、こうやって団欒する日が来るなんて思いませんでしたよ」
息子の一人である宗太郎がUNKOWNの背中を洗う。
普段のスーツではわからない締まった筋肉をしていた。
「研究があれば家族入らないといっていた私が家族に恵まれる‥‥人生とは面白いものです。長男にも嫁が来てうれしいですね」
父さん―嶋田―は手ぬぐいを頭に載せながらうれしそうに微笑んでいた。
「お、お嫁だなんてお父さん」
長男―千影―の嫁であるレグは頬を染めた。
「私もパパやママができてうれしいよ。急に入れてもらえたのにはびっくりだけど」
お風呂にまで飴を加えつついるのは葵である。
この京都旅行から『家族』になった。
「家族に垣根は無いですよ。血よりも心のつながりがあれば‥‥それを皆さんが教えてくれました」
「だから、今度は私達が教えなければならない。母親、父親としてね」
嶋田の葵に対する返事に、母親―UNKNOWN―は真剣な目で付け加える。
その真意は誰にもわからなかった。
●自由時間〜伝えたい言葉〜
「あ‥‥流れ星、綺麗だね」
星のみえる丘で流れ星を見たラシードは隣で一緒にあるいている歩に声をかけた。
「のう、ラス‥‥。我の気持ちはバレンタインのころから変わってはおらん。我はおぬしが大好きじゃ」
浴衣姿の歩がラシードにもたれ掛かった。
「ごめんね、待たせてて‥‥でも、歩が真剣だから‥‥真剣に考えて答えをだしたいんだ」
自分よりも体力の高いが歩がこのときラスにはとても小さく見えた。
「うん‥‥」
歩は顔を真っ赤にしながら首を立てに振った。
「後一つ、え‥‥と。浴衣姿、可愛い‥‥よ。冷えているし、戻ろうか」
ラシードから手をつなぎ、二人は屋敷へと戻っていく。
言葉は伝わった。
それをどう受け取るかはそれぞれ次第である。
●自由時間〜不夜雀〜
平良屋敷の一室では、賭け麻雀が行われていた。
もっとも、旅行用のミニなものである。
しかし、景品は鋼が購入していた京土産なため中々に燃えていた。
「ハハ、学生時代を思い出しますね」
確立重視の攻めをしてミニ麻雀をうっているのは秋月。
「どんなに大役を狙おうとも‥‥上がれなきゃ意味がありませんよねぇ‥‥?」
鋼の戦法はタンヤオ、役牌での早上がりを狙っての戦略である。
「当たらなければ、どうということはありませんよ」
柿崎は終始笑みを絶やさず、チャンスを狙う。
「ふふ、外国人だからって舐めるな‥‥麻雀くらいできる」
しかし、知っている役が国士無双だけなのか、それを狙い続けるバーナード。
「クク‥‥場を支配するのに必要なのは、力ではありません‥‥。速さ、ですよ‥‥!」
鋼が速攻で攻めに入った。
心理戦と駆け引き。
傭兵にとって必要なものを彼らはこうして養っている‥‥のかもしれない。
よい子はまねするなよ。
●自由時間〜惚ける男達〜
「浴衣姿のレグ、素敵だぜ」
温泉のあと浴衣を着て外に出てきた千影はレグの湯上りを見てにっこり笑った。
「ち、ちかも素敵です」
いつもたらしている髪をアップにしてうなじを魅せるレグが照れた。
そんな姿に千影は一層いとおしく思える。
「ほ、星が綺麗だよな‥‥すごく輝いている」
「そ、うですね‥‥」
二人きりということをお互いに思ったのか、ぎこちなくなる。
静かな夜の広い丘で二人きり。
「でもさ、俺の中で一番輝いているのはレグだから‥‥」
頬をかきながらいう千影の言葉にうれしくなり、レグはキスを求めた。
千影も応じる。
そのとき、静かな丘に神楽笛の音色が流れ出す。
笛の音色の主はホアキンだ。
聞かせている相手は風である。
「ケナの笛を聞くのはあの日以来かな?」
風は交際のきっかけになった名古屋防衛線の後のことを思い出していた。
湯上り浴衣姿で、物思いにふける風の姿にホアキンが微笑む。
「あ、そういえば私の誕生花の花言葉ってわかるかな?」
何かを思いつたかのように風はホアキンに笑顔できいてきた。
「じゃあ、一緒に言おうか」
「うん、せーの」
「「待宵草」」
披露しようと思っていたマイナーな花の名前を言われ、風は驚く。
「貴方にぴったりの花だから覚えていたよ。花言葉は湯上り美人」
星明りに照らされた二人の顔はほのかに赤い。
その後、二人はのぼせるまで混浴を楽しんだ。
●就寝〜悪戯〜
「いざ日頃の恨みっ‥‥と思ったのですが、肝心の如月が見当たりませんね」
深夜、小鳥遊 憐(
ga5574)はわざわざ隠密潜行してまで男性の寝床まで来ていた。
如月は憐が来る事を予測していたのかすでに逃げている。
「こうなったら、クーヴィルで憂さ晴らしするのです!」
きゅぽっと持参したマジックでクーヴィル・ラウド(
ga6293)の顔に落書きをする。
そのとき、顔がよく見えないと懐中電灯をつけていた。
額に肉や、頬になると模様など一通りの落書きを終えると満足したのか憐は自室へと帰っていく。
それを確認したあと、クーヴィルがゆっくりおきだす。
「まったく、憐のおかげで普段では味わえない旅になるな‥‥。まぁ、寝るかこの落書きも顔を洗えば落ちるだろう」
すべてを悟った上で、クーヴィルは寝なおす。
しかし、翌朝、顔を洗っても落ちないという事に気づくのだった。
恐るべし、小鳥遊 憐。
●就寝〜家族〜
「こうして待ったり部屋まで用意してもらってくつろげるなんて夢のようや」
クレイはにこにこしつつ末っ子ヴァイオンから酌を受けつつご機嫌だった。
「右も左もわからない俺を家族として向かえてくれたのは本当に感謝しています」
麻雀をやっていたバーナードも、家族との時間のため切り替えてきた。
「んぅ、宗太郎くぅ〜ん」
「花さぁ〜ん」
布団をしいてあるところでは宗太郎と花が抱き合って寝ている。
寝言でまでお互いを求めているのは微笑ましかった。
「こうして、お前達と話せるのはいい機会だと思っている」
UNKNOWNは寝ている子供達を撫でつつ語る。
「この京都もそうだが、破壊と再生を繰り返して文明は作られてきた。人間同士でな‥‥だから、私達はバグアを倒し再生させなければならない。そういう責任を担っている」
能力者の存在はそうあるべき、そうありたいというようにその言葉は家族にしみる。
●祭〜予想外のフードバトル〜
「天下無敵の純情美少女、戎橋茜! 只今参上や! キャベツ焼きをやるで!」
屋台を出す事を許可され、気合を入れる茜。
客寄せにフードバトルを慣行するが‥‥。
「ごちそうさまでした」
流音 紗栖(
ga7742)が3分くらいでリタイア。
(「うんうん、コレくらいなら勝負になるやね」)
しかし、残っている二人が不味かった。
大食いの歩と花なのだ。
「茜ちゃ〜ん、材料がもうないよっ!」
「な、なんやて! 計算間違ったー!」
小川の悲痛な声に、茜は両手で頭を抱えてもだえた。
「フードバトルが終わったら店が動かせないというのはだめじゃのぅ‥‥妾も食べたかったが残念じゃ」
磨理那が寂しそうにいう。
「ごめん、材料追加手配を‥‥こっそり頼むわ」
「了解じゃ」
そんな磨理那に茜はこっそりとお願いするのであった。
「おかわりじゃ〜」
「おかわり〜」
後ろで一人当たり数十人分を平らげた少女の二人の声がこだまする。
●祭〜屋台めぐり〜
「皆さんはぐれないでくださーい」
フォルは引率者として声をだしていた。
「お互い大変ですね」
愛輝が苦笑しつつ、フォルを見やる。
せっかくのお祭りとのことで、若葉一行と蒼一行で一緒に屋台めぐりをすることにしたのである。
「こうしていると、世界の各地で争いがあるなんて信じられませんね」
『ひなふぇすた』と称される祭りの賑わいをみて、フォルは感慨深くつぶやいた。
「ねぇねぇ、マナ何かおごってくれないの?」
「人に迷惑をかけないというのなら、一つだけおごります」
同行者の女性にねだられ、しぶしぶと約束を取り付ける愛輝の姿は兄らしい。
「フォル、ラスペアと夏葵ペアが勝手にどこかにいったぞ?」
「それは放っておきましょう‥‥かえる時間はちゃんと守るでしょうし、せっかくのデートを邪魔しちゃだめですしね」
リラースからの言葉にフォルの方もため息つきつつ集団行動を半ばあきらめた。
ふと、見直してみると。
「ラーメンいかがっすかー!!」
【らああめん元気一発ミニ】の看板を掲げた来栖がいたり、射的屋を潰しかけるスナイパー軍団がいたりと皆楽しんでいた。
「僕らも楽しみましょう」
「そうですね」
二人は共に歩き出した。
●終
短くも濃い一泊二日が終わる。
ほとんどのものが目的を達成できたのか、帰りの高速移動艇では眠りについているものがほとんどだ。
ゆらゆら揺れる移動艇。
いつもは戦場に運ぶだけの鋼鉄の棺おけだが、この日ばかりは安らぎのゆりかごのようである。
しかし、安らぎがあれば戦いもある。
安らぎを手に入れるための戦いを能力者はこれからもしなければならないのだ。