●リプレイ本文
●大空に舞う翼
『10番機、シエラ。到着しました‥‥遅れてごめんなさい』
シエラ・フルフレンド(
ga5622)が最後尾に着きながら謝る。
『こちらMusa。大丈夫よ、まずは飛行に慣れましょう』
シエラの謝罪に智久 百合歌(
ga4980)が優しい声で答えた。
『こちらはIris。4時間くらいの長旅よ。戦闘もあるから、ないときくらいは緊張をときなさい』
同じ後衛ポジションの緋室 神音(
ga3576)もシエラに諭す。
二人の優しい対応にシエラはほっとした。
『平和な世の中だったら、空を飛びながら旅行できたのに〜』
「こちらは岩龍のKitty。そういう世の中にするためにも戦わなくちゃいけないし、この物資も届けないとね。各機へ、ECCM開始。レーダーに気をつけてね」
今回、岩龍による司令塔となった風(
ga4739)はシエラを応援した。
『了解! 前回の名古屋戦線ではこういう輸送機を僕は助けに向かったんだよね‥‥』
そして、輸送機を助けることはできたが、自分を守ってイーグルドライバーが一人海へと散ったのを見ている。
(「だからこそ、新兵器を届けたい。F−15で戦っている人達や、ドローム社のミユさんや社員さんたちの役にも立ちたい」)
水理 和奏(
ga1500)は二ヶ月以上も前のできごとから、今に至るまでのことを回想し、決意した。
“小さなレディ”の瞳に闘志が宿る。
●先手必勝
『10時の方向より1機接近‥‥此方が発見されている様子はなし、偵察と思うけれど‥‥』
「見つかる前にガツンと一発、潰すッス」
エスター(
ga0149)は称号にはじない胸を揺らし、気合を入れていた。
『見敵必殺というのは悪くない。援軍を呼ばれるのも面倒だが‥‥どっちにしろ見つかるさ』
と、知っているかのように御影・朔夜(
ga0240)が苦笑した。
『一番星のアヤさん、いっちゃうわよ〜』
いつもの白衣でなく、エンジ系ワンピにポニーテールの藤田あやこ(
ga0204)が先行し、スナイパーライフルD−02の射程にヘルメットワームを捕らえ撃った。
放たれた弾丸はヘルメットワームに直撃。
フォースフィールドを突き破って、弱らせるも墜落までは至らない。
「意外と堅いッス‥‥ゴーレムやカメばかりでちっと油断していたッスね」
エスターは驚きながらも退屈しないことに笑う。
『こちらリン。あやこを‥‥援護するわ‥‥春花は岩龍の守りを‥‥よろしくね』
『了解、です』
リン=アスターナ(
ga4615)の声かけに夕凪 春花(
ga3152)が緊張しながらも返事を返した。
あやこ機を追いかけるようにリン機が飛び、リロード時間を補うようにAAMを撃ちこむ。
『ウォーミングアップといこう』
「Rest in Peace!(安らかに、眠れ!)」
ヘルメットワームが反撃する暇もなく、御影のレーザー砲火とエスターのD−02が叩き込まれ、爆発と共にヘルメットワームは姿を消した。
『すごい‥‥これがプロの戦い、かた?』
「そんな事ないッスよ。何事も経験ッス」
連携のすごさに圧倒されているシエラのつぶやきに、エスターは照れ気味に答えた。
『御影さんの予想通り、3機の機影が下より接近。振り切れるかどうか‥‥』
「振り切れないときはそのときッス。とにかく寄り道せずに進むッス」
風からの無線にエスターは気楽に答えた。
『心強いというかなんというか‥‥でも、エスターさんらしいわ』
百合歌が微笑みつつ相槌をうつ。
『女3人寄ればかしましいとはいうが、こうも大勢だとイマイチ戦闘依頼という感じがしないな』
苦笑する御影が隊列を整え飛行を続けた。
オタワまでは約1時間半。
●初めての連携
「岩龍の速度にあわせてるとやっぱり追いつかれちゃうっ」
シエラはレーダーを見つつ接近する機影を追う。
岩龍の歩幅にあわせているため、移動力に差がでて、離れていた距離はゆっくりと狭められた。
そして、3機のヘルメットワームから一斉にミサイルが打ち出される。
『後方よりミサイル群!』
『やって来たわね、よけるわけにもいかないし。撃ち落すわ』
『シエラさんはそのままでいいからね? 風さんの指示を聞いて』
緋室機と百合歌機が息を合わせて反転し、飛んでくるミサイルにレーザー砲やガドリングを当てて撃ち落す。
しかし、その間にヘルメットワームの接近を許してしまった。
「え、えっと、向きをかえてっ!?」
背後から迫るヘルメットワームに、シエラは軽いパニックに陥る。
『落ち着いて、一旦、速度落としつつ高度を上げるよ。タイミングは‥‥今!』
風の指示にそって輸送しているKV達は速度を落としつつ高度を上げた。
シエラの上をヘルメットワームが3機、勢い良く通りすぎる。
『エンジン始動、潰しちゃお!』
風の合図と共にKV達が力を取り戻した。
シエラが真っ先に浮き上がり、D−02でヘルメットワームを後ろから狙う。
「そこだね! あったれ〜っ!」
引き金と共に弾丸が飛び甲羅の裏に直撃した。
もこもこと煙をあげ、機動力が落ちるも、やはり落ちはしない。
そして、反転した3機が反撃をしてきた。
初速は速く回避しきれるものではない。
プロトン砲による砲火をエスター機と、御影機、リン機が身を盾にして食い止めた。
「リンさんたち、大丈夫ですか!」
『ええ‥‥問題ないわ』
『これくらい、ゴーレムとかに比べりゃね!』
『だが、お返しをしなくてはな』
三人の心強い声にシエラは気合が入る。
「反撃いっちゃいましょう!」
『ノリノリね。それじゃあ、フォーメーションを組みつつ倒すわよ。敵、ヘルメットワーム捕捉『Iris』エンゲージッ!』
『わ、私も援護します!』
『私もいっちゃうよ、AAMシュートッ!』
緋室機が突撃し、風機と春花機が空対空ミサイルで援護を行なう。
プロトン砲を受けた前衛機も前にでて、さらに攻撃を叩き込む。
『ブライトンに伝えな、シカゴを陥とせるもんなら陥してみやがれ!』
あやことエスターがスナイパーライフルを時間差で撃ち込み、落としていく。
そして、最後の一機をリン機が集積砲でトドメをさした。
『――残念。そこらの輸送部隊と一緒にして甘く見ていたのなら、大きな間違いよ‥‥!』
3機の小型ヘルメットワームに対して、被害を受けつつも、無事戦闘を終了させることができた。
オタワまで、約1時間。
●うなれ! わかなロケット
『もうすぐオタワかな?』
シエラの心配そうな声が水理の耳に届く。
「えっと、時間でいけばそうかな?」
『そんなに敵と遭遇しなくて、よかった‥‥です』
水理の返答に、春花が割って言葉を返した。
『だが、単純すぎる‥‥私には嫌な感覚が残っているよ』
御影の『既知感』から来る言葉が水理や他のメンバーに不安を呼び起こした。
『大丈夫よ。でも、最後まで気を抜かないようにね。コンテナは今のところは無事だけれど、これからはわからないわね』
『燃料もキリキリッスね』
百合歌やエスターも不安を訴える。
そして、その訴えが通じたのか突如前方に壁が現われた。
『えっ!? 瞬間移動!』
『慣性移動だ。一瞬で上昇してきたか何か知らないが、やってくれる』
驚くシエラに御影は苦々しく呟いた。
「これを通ればいけるなら‥‥とにかく突破口だね!」
水理は深呼吸をして敵を睨んだ。
ずいぶん前の輸送機護衛依頼がフラッシュバックする。
あのころは未熟であり、守られてばかりだった‥‥。
だけれど、今は守れる力があり、共に戦う『友(バイパー)』がいる。
「いっけぇぇ! 84mm8連装かける3! わかなロケット!」
壁のように広がる6機のヘルメットワームに対し、ありったけのロケットを水理は叩きこんだ。
フェザー砲で迎撃しようにもするも追いつかず、被弾する。
『正面を抜けさせてもらう!』
『そんな動きじゃ超特急のあやさんは止めれないわよっ!』
『ほらほら、落ちなさい!』
そのままのフォーメーションで敵に向かい、スナイパーライフルやG放電装置などがわかなロケットで弱ったヘルメットワームを叩き、さらに御影機のソードウィングは道を作る。
フォーメーションを保ちつつ抜ける穴を全員で通り抜ると風から通信が入った。
『全員、ラストのブースタいける?』
「ギリギリッ!」
『ま、ここが使いどころッスね』
『賛成よ』
「バイバイッ」
水理は後ろを向き、手を振ると機体のブースターを点火させるのだった。
●オタワから哀を込めて
「室長、輸送を頼んだ傭兵から無事届けたとの報告と、電子メールが届いています」
副室長のロレンタが忠次にディスプレイを覗きつつ伝えた。
「おお! そうかそうか、実際の試験はまだだとしても無事届けば向こうも使わざるおえまい‥‥ふははは!」
大きく笑う忠次にため息交じりにロレンタがメールに添付された写真をプリントアウトした。
「ただ、少し問題がありそうですが‥‥」
「ほほぅ‥‥どれ、むぅ!?」
プリントアウトされた写真を見て忠次は驚く。
青年誌にあるような構図で、あやこがクレイモアミサイルに乗っかりながら写っていた。
周りには若いUPC軍人が鼻の下を伸ばしているところまでばっちりくっきりである。
「あと、この電子メールが一番まずいかも‥‥」
さらにロレンタがプリントアウトしたメールにはこう書かれていた。
『クレモアミサイルを無事、届けました。
この新兵器を私たちも一緒に使ってイーグルドライバーさんと戦いたいです。
そういうお話をミユ社長さんに話しておきます。
体に気をつけてがんばってください
byわかな』
「ぬぁぁぁぁぁぁぁあ!?」
何事もスルーしてきた忠次が大きく叫んだ。
社長に隠して仕事をしていたのが密告されたからであるのはいうまでもない。
(「純粋な少女の気持ちって、一番残酷かもしれないわね。けれど、これで室長がKV系の研究をしてくれるのならいいかしら?」)
いつになく取り乱す忠次を横目に見つつロレンタは小さく微笑んだ。