●リプレイ本文
●お手伝いさんいらっしゃい
「失礼します」
「邪魔するよ」
「邪魔するなら帰ったってな〜‥‥あ、冗談だで、はいってくるでよ」
ドアの前で、米田時雄からの返事を受けて玖堂 鷹秀(
ga5346)と犬塚 綾音(
ga0176)は固まった。
その後、冗談という言葉と共に入ってくる。
「傭兵で手伝いに来てちょーたとゆーメンバーはおみゃぁさん達だね?」
先ほどの砕けた口調とは違い、スーツをキッチリ着こなした米田がデスクから離れて二人と握手をする。
「初めまして米田社長、玖堂鷹秀と申します。今回は営業などで皆さんを支えることとなりました。傭兵の前は営業をやっていましたので、その経験が生かせると思います」
いつもの白衣とは違うスーツ姿の玖堂は名刺を米田と交換する。
「よろしく頼むよ。営業回りをやってちょーるなら、うちの事務所の名刺をあげよう。必要だろう? おみゃあさんの名前は直筆してもらうけどよぉ‥‥で、そちらの美人はアイドル志望?」
米田の視線が綾音に向いた。
「あ、あたしみたいながさつなのがアイドルなんて不向きでしょ?」
「そんなことにゃ〜。いろんな個性があり需要があるもんだで成り立つ世界だでよぉ。やる気があるならいつでも登録するだがね」
照れて頬を染め出す綾音に米田は名刺を差し出した。
どうしたらいいか、少し困りながらも綾音は名刺を受け取る。
「そ、そうだよ。危うく目的を忘れるところだった。今回、ちょっと参加できなかったメンバーがいるから、以前の写真とかプロフィールとかもらえないかい? 宣伝用パンフに使いたいからさ」
ついつい米田のペースに飲まれかけていた綾音が意識を戻して、目的のブツを受け取ろうとする。
「ああ、あるものは貸し出すでよ。そうそう、そっちからの要求とかも聞いておきたぁーことがあるでよ。経費についてだで」
「その辺はですね‥‥別の事務所の方なのですが、2名応援参加していただくということと、衣装でこういう要望がありまして‥‥」
米田のひとことに玖堂がすかさず西村・千佳(
ga4714)と兎佐川・芽衣(
ga4640)の応援参加とIMPメンバーの要望資料を持ち出し説明していく。
玖堂の戦いはここから始まっていた。
●スタジオで撮影っ!
「ねぇねぇ、この衣装どうかな?」
雪村 風華(
ga4900)は着替えを終えてでてきた。
服装は白か銀を基調とした物をベースに、背中にヒラヒラした羽をイメージしたものがついている。
キャッチフレーズである『雪の妖精』そのものだ。
「ええやん、かわゆいで〜」
節分のときにきていたチャイナドレスにハリセンをもって沢辺 麗奈(
ga4489)は風華をほめる。
麗奈ことReinaのキャッチフレーズは『ハートにつっこみ!』だ。
「あんたたち、着替え終わったら撮影しなよ。時間がいくらあっても足らなくなっちまうよ」
綾音に発破をかけられ、控え室から撮影スタジオの方に移動していく風華と麗奈。
現在は控え室で着替え中であり、また綾音はその場でジャケットデザインを決めている。
「なんか、完全に肝っ玉母さんポジションだね。ちょっとうれしいかも」
鷹代 由稀(
ga1601)はカジュアル&男装をイメージし、白のカジュアルスーツで決めていた。
キャッチフレーズは『熱き白銀』であり、白いスーツに銀のアクセが輝く。
「よしとくれよ‥‥ま、昔とった何とやらってやつだろね‥‥」
由稀の言葉に苦笑しつつ、綾音はふと遠い目をする。
「私としては同い年がいてくれた方が助かるし、気が向いたら一緒にがんばりましょ」
肩を叩いたあと綾音の横を由稀が通っていく。
「あんまりいつもと変わらないかも‥‥」
ジーラ(
ga0077)はデニムを使って、ショートパンツにショートのジャケット。
踊りやすさを重視したスタイルだ。
キャッチフレーズは『紫水晶の揺らめき』と米田につけられている。
「あの、私の衣装はどうなっているのでしょうか?」
「絢の衣装は前のをそのままでいけってさ。社長が言ってたよ。あ、ネコミミはなしでいいってさ」
緋霧 絢(
ga3668)の問いかけに返事を返しつつ、綾音はジャケットの裏面を作り出す。スプレーを使ってシャッと文字を描く。
「それを聞いて少し安心しました」
「私は‥‥前回より、パワーアップさせました‥‥」
安心する絢の横に着替え終わったミオ・リトマイネン(
ga4310)がでてくる。
犬耳、犬尻尾でライダースーツ。
インナーは着ずに柔肌が見える状態でへそまでファスナーを下げていた。
スタイルのいい胸が存在感をアピールしている。
「若いっていいねぇ‥‥」
あまりの格好に綾音は作業を止めて呆けてしまう。
「‥‥私も少しパワーアップしましょうか」
以前のゴシックパンク衣装を銃でところどころ打ち抜き、穴の空いた衣装に仕上げた。
退廃的な雰囲気がまし、露出部も高くなった。
「チラリズムより‥‥積極性です」
ミオはそんな絢に対して一言だけいうと控え室を出て、スタジオへ足を運んだ。
「おう、入るで〜着替え終わったんでこっちの様子見や」
クレイフェル(
ga0435)が小田切レオン(
ga4730)をつれて控え室にやってくる。
「いいけど、ノックくらいしなよ。顔見知りが多いっていっても着替え中だったらどうするのさ」
「そういわないでくれよ、ジャケットができたってクレイが喜んでたんだからよ」
「お、できたのかい? 早かったねぇ」
レオンがクレイの行動にフォローをいれるも、それが気に食わないのかクレイはハリセンでレオンの頭を叩いた。
「レーオーンはーん。それをいうたらあかんやろっ! ネタは鮮度が命やで!」
「頭を叩くなよ、アイドルは顔が命だってのに‥‥」
叩かれたところを撫でつつレオンがクレイに対してぶつぶつと言い返す。
そんなレオンの格好はレザーベースで上下をそろえ、アクセサリーはシルバーとレザーを織り交ぜたセクシー&ワイルド路線だ。
『いつも心に太陽』をキャッチフレーズにしたカウボーイっぽい仕上がりである。
「あんたらの漫才はいいから、品を見せておくれよ」
「おう、これやでー」
クレイが出したのは表は白地に黒、裏は黒字に白で『IMP〜catch the heart〜』と描かれているリバーシブルジャンパーだ。
「な、なかなかいいと思います」
3人の和気藹々とした空気に非常に出づらいようすで、試着室のカーテンから絢は顔を出す。
その頬は赤く、絢自身恥ずかしそうにもじもじしていた。
「うぉぅ!? なんや、緋霧さんいたんか‥‥びっくりしたわ。着替え終わったのなら一緒にスタジオへいこか〜」
そんな絢の様子などまったく気にせず、いつもの笑顔でクレイは絢に手を差し出す。
「え、えっと、その着替えは終わったの、ですが‥‥その」
絢の頭は真っ白になる。
今の自分の格好はとても片思いの相手に見せられるものではないからだ。
「終わったんならいこか、ほらハズカシがらんと」
シャーっとクレイがカーテンをあけるとボロボロになった衣装を纏う絢がいた。
絢自身、無意識に両手で胸を隠す。
「あ‥‥えーっと、いつもより、アレやね‥‥うーん」
予想外の姿にクレイは言葉を濁し、視線が宙を泳いだ。
「おい、さっさと行くぞ。ほらそのジャンパー着せれば大丈夫だろ」
「そ、そやった。そやった」
出来立てのスタジャンを絢に着せると、挙動不審になりながらクレイはスタジオに絢と共に向かうのだった。
●ウサギと猫の宣伝行脚
「こにゃにゃちわ〜」
「こんにちはー」
ラストホープのとあるCDショップに急遽二人のアイドルがやってきた。
魔法少女アイドルである千佳と、現役ジュニアアイドルの芽衣の二人である。
「あ、ちかたんだ」
「めいたんもいるぞ」
客の一部が彼女達に反応する。
「今日はボクらがメインじゃないのにゃ〜」
「後輩の応援に来たんだよ〜。お兄ちゃん、ポスター貼っていい?」
店の中に入っていき、店番をしているバイトの青年に二人して上目遣いアタックを仕掛ける。
「あ‥‥ああ、いいけど。せっかくだからサインもらえるかな?」
青年は悩んでいたが、二人の視線攻撃にやられ、交換条件としてサインで交渉をした。
「二人で一枚にかくにゃ〜」
「ボク達の合作はなかなかないもんね」
一枚の色紙に千佳と芽衣がイラスト付きのサインを一枚仕上げる。
そんなことをしているといつの間にやら男性客に二人は囲まれていた。
「サイン俺も〜」
「俺も〜」
大勢の人垣を二人は声をそろえて沈める。
「静かにするにゃ〜」
「今日は今度CDを出す後輩のためにきたからサインは駄目っ! 応援してね。お兄ちゃんたち♪」
芽衣がウィンクと共にビラを配り、二人そろって外にでる。
「お詫びに僕の歌と‥‥」
「ボクのダンスを披露するよ」
街頭でのミニイベントをし、客の注意を引き寄せる。
もちろん、終わったあとCDの売り込みも済ませた。
二人の宣伝行脚はこの後数件に続く。
●希望の風に乗せて‥‥
「ライディ・王の『Wind Of Hope!』」
ライディ・王(gz0023)がMC席にてタイトルコールをしていた。
「ボク、緊張してきた‥‥」
ジーラは慣れない空気、体をこわばらせる。
CDの収録後、快く番組参加を認めてもらい狭い、スタジオに7人のアイドルは普段着で集まっていた。
「ラジオ局の収録ってのが珍しいと思っていたが、速攻放送できるよう話を進めていたとは‥‥さすがだぜ」
レオンも米田の手回しのよさに感服する。
「はい、今日は特別ゲスト。最近、世間を騒がす新人アイドルIMPの皆さんにきていただいています。どうぞ〜」
「どーも、最近デビューした鷹代由稀でっす。年齢だけはノーコメントで今日の番組を楽しませたいと思います」
「えっと〜、初めてのラジオ収録でちょっと緊張しちゃってます。雪村風華で〜す」
由稀が普通に話しているのに対し、風華は猫かぶりで挨拶をする。
その態度に他のメンバーから苦笑がもれた。
「初めまして、ミオ・リトマイネンです。スリーサイズは上から『大きい・細い・小さい』です」
「うわ〜、ミオちゃん大胆」
「風華さん、打ち合わせの時とキャラがちがっ!?」
「なんのことか、ふ〜か分かんない〜」
突っ込みを入れようとしたライディに瞬速の一撃が飛び、それをごまかすように風華の猫かぶりは続く。
「‥‥最後になりましたが、暫定リーダーの『束ねる希望』の絢です。皆さんIMPをよろしくお願いします」
そんな舞台裏の出来事など無かったかのように絢は番組を続けだす。
自己紹介を終えると、曲を流すコーナーに入った。
「それでは、ここでIMPの新曲にして、カヴァーシングル。『Catch the Hope』をお届けします」
「チューニング替えちゃ駄目だぞ」
「最後まで聞いてください‥‥」
ライディの声に由稀とミオが言葉を続けた。
――Catch the Hope――
歩き出そう 希望抱いて
この空を 私達の セカイを取り戻そう
ココロに 未来夢見て
道は無明 歩みは希望と共に
その想い ココロの灯 絶やさぬように往こう
絶望の先にある 本当の希望求めて
明日をこの手に Catch the Hope
駆け出そう 希望抱いて
この空を 私達の セカイを守り抜こう
ココロに 未来描いて
飛び立とう 希望抱いて
この空を 私達の ミライを守り抜こう
ココロに 明日信じて
それは力強く、希望にあふれる歌だった。
「いい曲ですね。このCDが明日発売‥‥あ、ただいま入ってきた情報によりますと明日。大手CDショップにてミニライブが行われることが決定しました! 住所は‥‥」
宣伝をしていると玖堂がスーツ姿で息を荒くしつつスタジオに駆け込んできてライブができるCDショップの資料を手渡した。
その資料はずらっとライブ会場やCDショップの名前がリストアップされ、ことごとく×が描かれている。
かなりいろいろ回って交渉してきたのは明らかだった。
その後ろからクレイフェルが顔を出す。
「LuckyDaysや自販機前にポスターしっかり貼って来たで。サインがつけられなかったのは残念やったけどな」
「ああ、い、いえ‥‥そのありがとう、ございます」
クレイのほうは息を切らせてはいないが、汗をかいているため上着を脱いで胸元に風を送るようバサバサとシャツで仰いでいる。
絢は目をあわさずに礼をいうと、クレイから距離をとった。
「あ、絢さん?」
「ぇと‥‥この曲は今の時代をつらく生きてきた人たち‥‥ボクもそうだけど、そういう人たちに元気になってもらいたいって。ボクたちの活動がその活力になればって」
「そうそう、暗くなるより明るく元気にだよね!」
「べ、別にボクたちを応援してほしいわけじゃないけど‥‥してくれるなら、これからも頑張ります‥‥」
困惑するライディを助けようと、ジーラと風華が絢の代わりにしめた。
今後の課題かもしれないと絢を覗いたメンバーは心の中で思う。
●ライヴ ア ライフ
「みんな、ライブに来てくれてサンキュー! 今日、この場に居る事をぜってー後悔させ無ぇからな。俺達が天国に連れてってやるぜ!」
ライブとあって水をえた魚のようにレオンがマイク片手に大きな声をだす。
ワーッと言う歓声が返ってきた。
呼び込みが成功したのか小さなステージの前には大勢の客が並んでいる。
IMPメンバーの衣装は吸血鬼や小悪魔をイメージしたような黒や赤で統一された衣装。
まとめてのライブだかそろえた方がいいというのが米田の意見だった。
一度照明が落ち、そして曲のスタート共にダンス、そしてバックの大型ディスプレイに、米田が編集したプロモーション映像が流れる。
映像ではKVが空を舞い、戦闘が始まる。
「歩き出そう 希望抱いて〜」
そろった声による歌が響く。
バックコーラスで千佳も参加し、バックダンサーとして芽衣が彩りを加えた。
音楽のリズムにあわせて、各自の機体がアップで表示され別取りした個人の決めポーズとキャッチフレーズが流れた。
その演出に客席はさらにヒートアップする。
「明日をこの手に Catch the Hope」
この台詞の時、メンバーも客席のファンもいっせいに空に手を上げ、掴んだ。
ライブ終了後、CDとDVD販売とあわせたサイン会を玖堂の提案で行われ、大きな成功を収める。
明日を掴む日まで、がんばれIMP。
ここからが業界の戦いなのだ。