タイトル:【DoL】HELP!マスター:橘真斗

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 7 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/02/20 23:30

●オープニング本文


 デトロイトに能力者たちは集められた。大規模作戦の準備は着々と進められていた。
 だが、バグア側もそれを見過ごすわけではない。
 戦い流れが変わりだす‥‥。
「風、止まった‥‥何か起きる」
 駐留軍の志願した能力者の『赤き奇妙な馬』は基地の高台で瞑想をしているときに変化した風を捉えた。
「『赤き奇妙な馬』、緊急依頼だ。ラストホープにも伝令もしたが、このデトロイトに向かって巨大な猿キメラが迫ってきている。数は6だ」
「巨大‥‥問題ない。オレ狩り得意」
 軍人からの指示を受け、赤き奇妙な馬という名を持つネイティブアメリカンの巨漢は立ち上がった。
「話を最後まで聞け。相手はただの巨大な猿ではない。ナイトフォーゲルサイズの化け物だ。せっかく解放したクレストヒルをまたバグアの領土にさせるわけには行かない。街への被害を抑えつつ直ちに迎撃をしてくれ」
 無茶な注文を軍人はしてくる。
 しかし、依頼であり報酬が得られるのであれば、赤き奇妙な馬は断ることはない。
 故郷の家族を養うために、選ばれた力を使うのが一番と考えているからだ。
「依頼確かに受けた‥‥」
 赤き奇妙な馬はのっしのっしと格納庫へと向かうのだった。

●参加者一覧

白鐘剣一郎(ga0184
24歳・♂・AA
御影・朔夜(ga0240
17歳・♂・JG
沢村 五郎(ga1749
27歳・♂・FT
緋室 神音(ga3576
18歳・♀・FT
宗太郎=シルエイト(ga4261
22歳・♂・AA
南雲 莞爾(ga4272
18歳・♂・GP
イリアス・ニーベルング(ga6358
17歳・♀・PN

●リプレイ本文

●ああ、女装
(「何か大事なものをなくしている気がします‥‥」)
 宗太郎=シルエイト(ga4261)は化粧をされている自分の顔を鏡で見ながら、心でつぶやいた。
 隣にいる御影・朔夜(ga0240)もお気に入りのタバコをくわえられず居心地わるそうである。
「若いだけあって、ファンデーションの乗りがいいわね」
 緋室 神音(ga3576)も二人を綺麗に仕上げることを『楽しんで』いた。
「こんなことにでさえ、既知感をぬぐえない私自身をどうにかしたいね」
「とってもお似合いですよ、服はセーラー服とブレザーがありますがどちらがいいですか?」
 二人のサイズにあった衣装をもってきたイリアス・ニーベルング(ga6358)が聞く。
「「自前のがある」」
 だが、二人はそろって返した。
「なるほど、自分で衣装を用意するなんて女装が好きだったか‥‥ああ、大丈夫だ他にはいわないからな」
 さらわれた美女の情報を集めていた沢村 五郎(ga1749)は香水片手にやってくる。
「ち、違いますっ!」
 宗太郎が言い訳しようとするもときすでに遅し。
「メイド服なんて、すごい趣味ね。ああ、ガーターにホルスターまでつけちゃって。スリット入りメイド服なんてどこで見つけたの?」
 緋室が宗太郎の荷物から見つけたメイド服一式を見て、少し頬をひきつらせた。
「え、ええと‥‥そ、それは‥‥」
「よせ、この状況で何をいっても逆効果にしかならない‥‥あきらめるのが一番だ」
 いつの間にやら御影はワンピースにロングコートというモデルのような格好に着替え終わっている。
「二人とも、着替えたらこの香水をかけろよ」
「あ、あと記念撮影お願いしますね」
 戸惑う宗太郎に五郎とイリアスが追い討ちをかけていく。
 退路はなかった。
『こちらコード”天空の剣士”。宗太郎と御影のKVの移動は完了した』
『同じく”クールドライ”、”赤い奇妙な馬”と偽装工作を始めている、そっちの具合はどうだ?』
 白鐘剣一郎(ga0184)と南雲 莞爾(ga4272)は共に称号をコードネームとして五郎の持つ無線機へ連絡をしてきた。
「お姫様とメイドが完成するぜ。あとでイリアスの写真を焼き増ししてもらえば見れるぞ?」
『『遠慮しておく』』
 ニヤリと笑いつつ五郎が返事を返すと、二人はほぼ断りの人ことをいれてきた。
(「お父さん、私の立場って何なのでしょう‥‥」)
 宗太郎は心の中でただただ涙するしかなかった。
 
●ひとつの誤算
「まったくもってB級映画だ‥‥」
 市街外縁部で車から降ろされた御影はため息をつく。
 サングラスをかけ、髪形はポニーテール。
 コートを着ているため、どこかのマダムとも言える雰囲気が漂っていた。
「ほらほら、御影さんももっと女性っぽくしないといけませんわ」
 いつの間にやら覚醒し、笑顔をふりまいている宗太郎。
 金髪蒼眼で、ランララと歌いながらダンスのようなステップを踏んでいた。
 それにしてもノリノリである。
「ふぅ‥‥たしかに、死んだ餌には興味はしめさんか」
 御影はあきらめ宗太郎と一緒にダンスを踊りだす。
 広い草原のようなところで踊る二人だったが、そのダンスに誘われて『やつら』は来た。
『ウォォホッ! ウォォホッ!』
 ドスンドスンという物音と共に巨大な猿達が二人に向かってきた。
 猿キメラの手には話に聞いている美女はいない。
 2体のキメラが二人に向かい、残りはデトロイトの町を目指していた。
「こちらに来たのは外れか!」
「数を減らせれただけでも上等! やってやるぜ、このやろう!」
 御影と宗太郎は銃を抜いて10mほどはあろうという猿キメラを撃ちだした。
 
●強気結束
「美女を持ってないやつを派遣して残り4体でこちらを目指すか、動物の本能といえど侮れんやつらだ」
 剣一郎は予想の範疇である失敗を悔いるが、すぐに猿キメラを見据えた。
「総員、Bパターンで作戦開始。赤き奇妙な馬はメイドとマダムの救助を頼む」
『メイドとマダム? ああ、あの二人。わかった、オレに任せる』
 共同戦線をはる事となった赤き奇妙な馬は片言で答える。
 褐色のKVが宗太郎と御影のいるところへ向かって、大地を駆け出した。
「緋室と南雲はまず美女の救出を優先してくれ。残りは俺と共に美女を持ってない猿キメラをとめるぞ」
『‥‥了解』
『任せておいて、猿型キメラに二度の不覚はとらないわ』
『あの二人を殺しちゃ、遺族が不憫だからな‥‥さっさと終わらせよう』
『私はこの位置で砲撃支援をします。射線報告は随時しますので、気をつけてください』
 剣一郎はこんな状況でも落ち着いて動いてくれる今回のメンバーを実に頼もしく思った。
「こんな映画のような戦いを終わらせよう‥‥いくぞ」
 緋室機と南雲機が先行し、美女の持つキメラを押さえ込みにかかった。
 残りの猿キメラが助けようと動きだすのをイリアス機のスナイパーライフルがとめる。
「そこだっ!」
 ブースターで加速し、剣一郎のKVが大きく動いた。
 ディフェンダーを両手で刀のように持ち、斬り上げる。
 並みのキメラであれば一撃で葬るであろう斬撃は赤く光るフォースフィールドによって、弱められる。
『ギィィェェェイッ!』
 それでも片腕を切り落とさせられた猿キメラは怒りをあらわにして襲い掛かってきた。
「一撃とはいかんか。だが、こちらも落とせると思うな」
 猿キメラの猛攻をすべてディフェンダーによってさばく。
 剣一郎の剣術の腕と強化したKVの一心同体の動きが成せる技だ。
 そして、猛攻によって疲れた猿キメラにイリアス機からのブレス・ノウをこめたスナイパーライフル2発が見舞った。
『貴様らの魂に救いはない。滅べ』
 一撃でよろけ、ニ撃目でようやく沈む。
「まずは一匹か」
『剣一郎、イリアスまだ5匹いるんだ、ボヤボヤしないでくれよ』
 五郎機がガトリング砲を当てつつ猿キメラの注意を外側に向けている。
「そうだな、戦いはこれからだ」
 今一度、剣一郎は気合をいれ、猿キメラに向かっていった。
 
●美女救出!
「とらわれの姫君の救出‥‥か」
『その言葉だけだとファンタジーね』
 南雲は緋室と共に美女を大事そうに抱えている猿キメラを取り囲む。
『ウォォホッ!』
 本能で奪われると感じた猿キメラは大きく暴れだした。
 ほとんど命中しなかったが、緋室機と南雲機は共に一撃叩かれ大きく揺れる。
「こちらの装甲がへこんだ‥‥なんという馬鹿力だ」
『こちらは腕を確保。消えなさいっ!』
 緋室機が美女をつかんでいた猿キメラの腕を押さえ込み、空いた手でレーザーを直接当てて、腕を焼ききった。
『クギャァァァ!!』
 この世のものとは思えないような奇怪な叫びが響く。
 のた打ち回るように猿キメラが暴れだした。
『くっ、長居するとせっかく助けた子が気絶とかしかねないわ。一時撤収するよ』
「たまらないな‥‥沈め」
 耳にキーンと来る声に南雲は顔をしかめさせながらブレイク・ホークを振り上げ猿キメラの頭部を両断した。
 グシャっという音共に猿キメラの頭は割れ電撃によって焦げる。
 奇怪な声もそれと共に終わりを告げた。
「現実という感じがしないな‥‥」
『私達の体にAIが入っていて、その上異星人と戦っているということを現実とでもいうのかしら?』
 キメラの返り血を浴びて、一層紅色の強くなった南雲のKVの姿はアニメのワンシーンに見えなくないだろう。
「俺の知っている現実は無秩序で、暗い‥‥そういう意味では異星人と戦ったり、体をいじられることに関して抵抗はない‥‥」
『そう‥‥、とりあえずこのまま私は戻るわ。貴方は他の人たちの援護をよろしくね』
 南雲の答えには特に何も言わず、緋室機は戦域を離脱していった。
 南雲の視線は緋室機から、宗太郎たちのほうを向く。
 交戦しているところに、マァピア機が割り込み、二人はマァピア機の手に乗って移動していた。
『二人を連れて行く、少し頼む』
 マァピアがすれ違いざまに通信を入れてくる。
「女の尻をそれでも追いかけるか‥‥さぁ、仲間をやった俺がここにいるならどうでるか‥‥」
 足元に転がった猿キメラの死体を蹴り、南雲は構えた。
 
●猿を断つ漢
「いよぉぉし! 気合入った! エテ公ども、俺の受けた悲しみをすべて返してやるぜ!」
『褌姿できめ台詞をいっても説得力がないぞ』
 車形態のLM−01のコックピットから体をだして近づいてくる猿キメラを指差して宣戦布告をする宗太郎に御影が突っ込みを入れた。
「うるさい! 飛ばすぜ!」
 宗太郎は乗り込み、”摩天楼”を走らせた。
 航空機とは違い、車であるLM−01は市街地戦には特化している。
『やれやれ‥‥』
『すまない、こちらの手数が間に合わなかった‥‥そちらに2体いくぞ』
 南雲からの通信が入り、宗太郎はより気合を入れた。
「がってん承知! 一発殴らなきゃ気がすまなかったくらいだ!」
 ニヤリと宗太郎は笑い、大通りへと機体を滑らせた。
 直線上にある障害物は猿キメラのみ。
「そらそらそらぁっ!」
 車形態のままレーザー砲を連射し、2体の猿キメラを攻撃していく。
 赤いフォースフィードに一瞬阻まれるも、レーザーは確実に猿キメラを弱めていった。
『悪いが、先にやらせてもらう。恥をかかされたのはこちらも同じなのでな‥‥”悪評高き狼”を敵に回したことをその身で知ってもらう』
 御影からの通信が入ったかと思うと、LM−01の上をブースターで加速し、空戦スタビライザーによって、ホバリングしているかのようなバイパーが勢いよく通過した。
 手にもつは金属のつつ。
 しかし、猿キメラに接近したとき、そこから圧縮レーザーの刃が飛び出し、猿キメラを一撃で葬った。
「雪村はすげぇな‥‥だが、こちらは腕で勝負!」
 宗太郎はもう一体の猿キメラのほうに接近し、人型に変形しつつ、ディフェンダーで横なぎの一撃を見舞う。
 猿キメラを通り過ぎ、その後反転したのち今度は縦に斬った。
 その二撃を受けて、猿キメラは絶命する。
「くたばれ! エテ公! 女装させられた恨み、ここに晴らしたり!」
 血のついたディフェンダーを払い宗太郎は満足そうに頷いた。
『よくやったな。女装したまま戦死されたら、お前の親父さんにどういう報告しようか悩むところだったぜ』
 五郎もキメラを排除したようでやってくる。
『全員無事だな。街への被害もない、作戦は成功だ。だが‥‥仕事はこれからだぞ?』
「なんでですか? 敵は倒しましたし‥‥」
 覚醒の解けた宗太郎が疑問を剣一郎にぶつける。
「その敵の死体の処理をしなければ不味いだろ‥‥今回は銃器を使ってないのだから、だいぶ残っている」
 無線越しではあるが厄介だという気持ちが宗太郎には伝わってきた。

●女は怖いよ
 事後処理も終え、救出した美女のところへ五郎は挨拶をしにいくことにした。
「あのキメラは私だけを連れていったのに‥‥なんで、なんで、女装した二人も追いかけているの! ありえない!」
 バァンと机を叩く音が客室から響く。
「いや、私にそんなことを言われても‥‥」
 五郎がドアの隙間から覗くと、緋室がヒステリックな美女を前にたじたじだった。
「この場に宗太郎と御影がいなくて良かったな」
 五郎はため息交じりにつぶやいた。
「女装した二人を連れてきなさいよ! このミスキャンパス直々に審査してあげるわ!」
 むきーという執念丸出しなすがたをみると、とてもミスコンを制した人物に見えない。
「一体、何あった? キメラか?」
 ガタガタと騒がしかったためかマァピアが五郎の後ろにぬっと現れる。
「いや、女は怖いって話さ。ま、ここは緋室に任せて何か飲もう」
 五郎はゆっくりと部屋の前から下がり、マァピアに拳を軽く当てる。
「オマエ、いってることわからない」
「深くは気にするなよ」
 首をかしげるマァピアに軽く笑いかけながら、五郎は客室から離れていく。
 それから1時間は美女のヒステリックはおさまらなかったらしい。