タイトル:Impalps〜Forever〜マスター:橘真斗

シナリオ形態: イベント
難易度: 普通
参加人数: 7 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2013/04/04 15:39

●オープニング本文


●衝撃の軌跡
 2008年2月。
 後に5年に及ぶ活動実績と、総勢50人を超える傭兵アイドルグループの母体となるImpが発足した。
 『Idole Mercenary Project』という名称で、小悪魔のインプともかけたネーミングは強くて怖い能力者傭兵のイメージをがらっとかえる。
 姉妹ユニットであるAlpや演技を集中して行うMpaなども追加されて、コミックレザレクションと呼ばれる大きな同人誌即売会でのライブも行われた。
 年末での大型ライブ企画なども動員数を増やし続けてファンの数1万人をあっという間に超えて今に至る。
 
 そんな能力者アイドル達の集大成ともいえるライブステージが、この春、行われようとしていた。
 
●Live is Forever
 人が熱狂し、ペンライトを規則正しく光らせた。
 声援に答えるようステージ上のアイドル達も歌やパフォーマンスで答える。
 アスタリスク大阪で行われているライブの模様は近畿を中心にネットワークの繋がったアミューズメントセンター『ドリーム・パレス』でライブビューイングされていた。
 観客の盛り上がりに負けないくらい、京都のドリームパレスもアイドルのステージを見て盛り上がっていた。
「一体、何をみているんです?」
「遅かったのう。これじゃ、傭兵アイドル『Impalps』の記念ライブじゃ」
 騒がしい中をドリンクを持ってやってきた男に小さな少女は答える。
 『Impalps Live ”Forever”生中継』というテロップが画面に走っていた。
 同じ画面をエイジア学園都市内のドリーム・パレスでも眺めている。
「へぇ、こんなことやってるガキ共がいるのか」
「若さとはいいものじゃのぉ。我輩の研究も新しい局面で動いていかねばなるまいな」
 システムのメンテナンスに来ていた小太り気味なメカニックと、白衣を着た老人が映像を見て言葉を漏らす。
 ライブ会場に入れなかったファンや、Impalpsの活動に何かしら関わってきた人々が彼女達の姿を見つめていた。
 世界が平和になり、彼女達も未来を一人一人が考えている。
 一瞬だけど永遠なひと時を今、ここに‥‥。

●参加者一覧

/ リュイン・グンベ(ga3871) / 秘色(ga8202) / 宵藍(gb4961) / ヤナギ・エリューナク(gb5107) / ファリス(gb9339) / 鈴木悠司(gc1251) / ユウ・ターナー(gc2715

●リプレイ本文

●控室にて
 ライブが始まる前、控室ではアイドル達が各々の準備を整えてライブが始まるのを待っていた。
「‥‥というのが今回の流れになります。何か質問はありませんか?」
 マネージャーとしてスーツを着ているライディ・王(gz0023)がスケジュールの説明を終えた。
「最後の一曲を全員で歌い、その後で個々に挨拶だな? たしかに、ファンに向けて堂々と発表する機会があるようでなかったか」
 リュイン・カミーユ(ga3871)は左手の薬指にあるルビーの指輪を眺めて答えた。
「まぁ、プライベートな部分までは言わなくても構いませんので、続けていくかどうかの意思表示をライブステージでしっかり言ってもらえればと。ラジオで言っていた人も改めてお願いします。ライブビューイングされているのでラジオよりも多く知られせることになりますから」
「我はとりあえず結婚するまでは続けるぞ。やってみたら意外と気に入った」
 ホットパンツからスラリと伸びた自慢の美脚を組み替えてリュインは不敵に笑う。
「Alpとしての活動は確かに面白かったぞえ。過去形にするには早かろうがの」
 秘色(ga8202)もケラケラと笑い、活動を振り返っていた。
 年齢が高く、服のセンスも和服に健康サンダルと変わっているものの積極的に活動をしていき、『僕らのオカン』とファンに認知されるまでに至っている。
 マイペースであり、大きなライブ開始前でも緊張感は見当たらない。
「色々あったけど、ずいぶんと楽しんだ気がする。本当に色々あった」
 どこか遠くを眺めている宵藍(gb4961)の言葉には重みがある。
 年齢を間違われたり、性別を間違われたり、女装ツンデレキャラが定着したりと語ると長くなる濃い歴史ができていた。
「久しぶりのライブステージでソロを頑張るの。CDにいれた曲のライブバージョンなの」
 ファリス(gb9339)はいつもの可愛らしい衣装ではなく色の抜けたジーンズ生地の上下と少しオトナを感じさせるセレクトになっていて、彼女の成長を感じさせた。
「約束の場所。今日をミンナで楽しもうね!」
「世界の皆に笑顔を、元気を、全てを、音に乗せて届けたいね」
「‥‥だな」
 白いパンク衣装で統一された、ユウ・ターナー(gc2715)、鈴木悠司(gc1251)、ヤナギ・エリューナク(gb5107)の3人はお互いに目を合わせて頷く。
 公私共に仲の良い3人でユニット活動が出来ると言うのは何かしら心強いのかもしれない。
「あ、会場の準備ができたみたいですね」
 アスタリスク大阪のスタッフから合図をもらい、ライディがアイドル達に声をかけた。
 開けた扉からざわざわした声が聞こえるほど、盛況のようである。
「さって、行きますかね‥‥っと」
 ヤナギがくゆらせていた紫煙を消すと、アイドル達は立ち上がった。
 
●お前らのためじゃないんだからな!
「「シャオたんのツンデレキター!」」
 会場全体が異様な一体感に包まれた瞬間である。
『あー、この盛り上がりは嬉しいような悲しいような‥‥どうしてこうなった』
 スポットライトを浴び、ミニの青系チャイナドレスを着た宵藍は前説で、一言述べてから既に後悔していた。
 開始10秒もたっていない。
 バックではチューニングを続けるヤナギが『もう少し伸ばして』と指を広げるジェスチャーで言ってきたので、辞めるわけにはいかなかった。
『なんだ、いつもの前説がコスプレをよくしていたのであやかってみたら盛り上がり過ぎて‥‥困る。注意事項をいうので、ちゃんと守るように』
「「はーい!!」」
 大合唱のような野太い声の返事がくる。
 折れそうな心を最近できた恋人とペアで持っているネックレスを握って踏みとどめて宵藍は説明をはじめた。
 ちゃんと静かに聞くファンの礼儀正しさは高く評価したいが、ちらちらと見える「しゃおたん頑張れ!」という横断幕は何と言っていいかわからない。
 説明を終えたとき、振り返ればヤナギが両手で円を作ってOKサインをだしたので、宵藍はホッとして曲紹介にうつる。
『じゃあ、一曲目の紹介だ。スタートはメンバー全員で歌う、始まりの曲。「Catch the Hope」だ。そのままTriangleのpast,present,and futureを二曲続けて聞いてくれ』
 全身全霊のステージの幕が切って落とされた。

●三位一体
 スタート曲が激しいリズムだったが、次の曲はアカペラではじまる。

――past,present,and future――

♪〜〜

 今 この空を見つめて
 さぁ、飛び出そう
 
〜〜♪

 前奏がはじまり、明るい照明がステージを包んだ。
 ヤナギのベースが小気味よいビートを刻み、悠司のギターがキーパートを繰り返して、羽ばたいているような雰囲気を作りだす。
 マイクを持ったユウが曇り空の映像をバックに会場へ向けて手を振った。
『ユウ‥‥ありったけの魂をこめて、皆に心を届けるよ!』
 答えは拍手と歓声で返ってくる。
 ライブならではの熱気と興奮を肌で感じたユウはマイクを手にガールズパンクらしい可愛さを前に出して歌った。
 
♪〜〜

 このキャンバス 何色に染めていこう?
 僕らの手には カラフルなポップキャンディー
 ビターな味も スウィートな味も
 お好み次第さ キミの仰せのままに
 

〜〜♪

 ユウの左右をヤナギと悠司が背中合わせになって演奏する。
 演出と共にアップになった悠司やヤナギの姿が映像で映りキャーキャーと黄色い声がした。
 次第に曇りの映像が渦巻き、動き出して行く。
 

♪〜〜

 幼い頃 壁に描いた落書きが
 時折頭の中 通り過ぎてくよ
 キミが笑ってた 僕も笑ってた
 
〜〜♪

 ゆっくりと渦巻く雲にあわせて曲調もやや静かになり、ユウの歌い方にも気持ちがこもる。
 ヤナギのベースにも重く響くような音響効果が当てられて、聞くものの感情を揺さぶった。
 そして、雲の動きが加速していき、曲調も走るような軽さへと変わっていく。
 最後の二フレーズはヤナギと悠司もコーラスし、歌を盛り上げた。
 その後の盛り上がる中での間奏では、ステージを所狭しと動く。
 観客を眺めつつ悠司はギターソロを奏で、ヤナギはベースでチャチャをいれるように被せた。
 その間奏のやり取りさえ、笑顔を絶やさず、汗を飛び散らせて二人は引き続ける。
 
♪〜〜

 キミが 描く空
 赤く赤い 過去
 青く青い 今
 白く白い 未来

 今 この空を見つめて
 さぁ 飛び出そう
 
〜〜♪

 照明が歌詞にあわせて変わり、白いパンク衣装の3人を染め上げた。
 ラストではバックの映像が雲の合間に光が差し込み、突き抜けるような青空へと変わっていく。
 疾走感のある歌い方でユウは会場の隅々まで響く声をだした。
 
♪〜〜

 キミが 描く空
 赤く赤い 過去
 青く青い 今
 白く白い 未来
 僕らが 今描く
 
〜〜♪

 歌声に呼応するかのように楽器が伸びやかに旋律を紡いで行く。
 ステージを動き回っていたヤナギと悠司も最初のポジションに戻り、ユウの力強い歌い終わりに合わせる。
 照明が白く観客とステージを照らしたあと、暗転して締めくくられた。
 
●優雅独奏
『いや、いい曲だったな。我も負けないように歌い上げようか』
 拍手をしながらTriangleの3人と入れ替わったリュインは告げる。
 藤色のロングコートタイプのジャケットを着こなし、凛々しくも美しい立ち姿に黄色い声援があがった。
 メインを男性にしたグループであるMpaの一員でもあり、男性役もこなすリュインには女性ファンが結構ついている。
『新曲を聞いてくれ、「Change Wolrd」ミュージックスタート!』
 指をパチンとならせば、背景の大型ビジョンに自動ピアノが曲を演奏する姿が映る。
 奏でるリズムはミドルテンポのバラード調だ。
 静かなメロディによる前奏を終えて、リュインは歌い出す。
 

♪〜〜

――『Change World』―― 作詞:リュイン

 I want make change world melody
 流れ行く日々の中 変わりゆく物多すぎて
 歩くスピード分からず 足が絡まってばかり
 どうにもならない運命なんて 多分ないから
 未来の事なんて思い悩まないで
 明日は明日の風が吹く
 『変えられる』んじゃなく 『変えて』生きたい
 そこら中溢れる小さな幸せ 気づける人になりたいよ
 傷つく事を恐れずに
 分かり合おう 変えていこう 世界を
 I want make change world melody
 Keep on singing
 It’s my goal in life

〜〜♪

 全身でリズムをとり、優しくしっとりと歌い上げた。
 自分の歌で変わる世界があって欲しいという願いを込めて‥‥。
 曲が終わると拍手や口笛が静かだった会場に充満した。
 彼女の彼らの心を揺さぶることに成功する。
 ひとの心を変えれれば、きっと世界も変わるはずだとリュインは感じた。
 
●幕間〜Tower of Mercenary〜
 二つの曲が終わり、ステージが暗くなると大型ビジョンに映像が流れる。
 近年、能力者の参加によってブームになった格闘ゲーム『タワー・オブ・マーセナリー』である。
 そして、発売中の最新作にはImpalpsのメンバーもキャラクターモデルとして参加しているのだった。
 簡単なストーリー解説を終えた大型ディスプレイが格闘ゲームの背景と思われる映像に切り替わる。
『Get Set Ready‥‥Go!』と
 機械音声が流れるとドンと大きな音がなり、奈落に控えていたリュイン、宵藍、秘色が横並びで飛びあがっていた。
 各自の衣装はゲーム内にあわせた格好のため、ゲームから『飛び出してきた』かのような演出だった。
 会場を沸きあがる。
 その興奮を保つようにゲーム内での戦闘BGMのライブバージョンがシンセサイザーで流れ始めた。 
 疾走感と躍動感のある電子音にあわせて3人がダンスを舞う。
 横並びしていた三人がリズムに合わせ、動きを合わせて殺陣や型に近い動きをみせた。
 ステージ合間の演出だが、気合の入った演舞となっている。
 間奏のような一時落ち着いたパートになると、秘色がステージ中央へと進んだ。
『コードズ『φ(ファイ)』‥‥参ります』
 黒い喪服のような和装でクールな一面をみせると双眸を銀青色に光らせ、剣の形をした紋章を両手に輝かせる。
 CGなどではない、能力者の覚醒演出を目の当たりにした会場は『おーっ』と感嘆の声をあげた。
 その間に左右へと動いていた宵藍とリュインが挟み撃ちをするように秘色へと襲い掛かる。
 二人に対して、秘色は空中をつかんで投げるモーションをすると二人は動きに合わせて地面に転がった。
 これもファイの必殺技演出である。
 技を決めると一礼をして、秘色が下がった。
 拍手の中、入れ替わるように中央へ立つのは宵藍である。
『コードズ『Ρ(ロー)』、‥‥何者であろうと排除します』
 ミニの青系チャイナドレスから普段着に近い蒼の中華服へと着替えている宵藍も物静かな雰囲気をだしていた。
 両目を鮮やかな瑠璃色に輝かせるとヌンチャクを回してポーズを決める。
 秘色と同じ剣の紋章を浮かばせると、よりいっそう輝きを増させた後で左右にヌンチャクを振って衝撃波を飛ばした。
 リュインも秘色もガードするも後ずさったのが、威力の高さをしめしている。
 一礼して下がると、リュインが中央に出る。
 覚醒して金髪であることもそうだが、何よりも衣装が赤いスリットの深いドレスだったり、髪型も縦ロールのウィッグをつけていて別人だった。
『わたくしセレスティーヌこそが最強ですわ!』
 模造な大きな剣を掲げて高飛車演出をしてから、二人の攻撃を大きな剣でガード。
 ペネトレーターの覚醒効果である翼の紋章が輝く足で生足を披露するような蹴りを返し、モーションキャンセルからの剣の重さを生かしたなぎ払いを二人に当てた。
 拍手と口笛による賞賛を受けてスカートをつまんだお辞儀をリュインが返す。
 BGMが再び速く激しいものへと変わった。
 ダンスもお互いを飛び越えるようなジャンプや側転回避などアクロバティックな演出が随所に盛り込まれ、ゲームを遊んだことがない人にもやりたくなるようなダンスとなる。
 そして、後半のステージがはじまる時間へと移り変わっていくのだった。

●少女から‥‥
『さぁ、ここからは我がMCを勤めていくぞ。後半の出だしを飾るのはファリスだ』
 衣装をそのままに流れる汗を気にすることなくリュインが高らかに宣言した。
『今日はアイドルとして活動してきた集大成なの。成長したファリスを見てほしいの』
 大人びた衣装のファリスがステージ袖から現れ、ライトアップされる。
 愛くるしい姿とは違った雰囲気に一瞬、会場は静まったもののすぐに盛り上がった。
 笑顔で盛り上がる会場にファリスは手を振ったあとに伴奏が流れ始める。
 ファリスが頭上で伴奏に合わせた手拍子をすると、会場のいたるところで手拍子が行われて波紋のように広がった。
 曲のリズムは昨年のクリスマスCDでの収録曲を今回の衣装に合わせたアレンジがなされている。
『一緒に歌える人は歌ってほしいの。「Take My Step」』
 イェーという返事に少しだけ涙を浮かべてファリスは歌いはじめた。

――Take My Step―― 作詞:ファリス

♪〜〜

 何も変わらないと決めつけて
 不満ばかりを言って
 まだ
 誰かが変えてくれるなんて
 そんな都合の良い事
 ありはしないと もう気付いてよ
 【現在(いま)】が気に入らないのなら
 俯いて立ち止まっていたら駄目
 どんなに高い山だって頂きがあるように
 踏み出せば そこから何かが始まるから
 その一歩は小さくても その一歩はあなたを変えるか
 さあ、思い切って踏み出そう
 今日とは違う 明日の為に
 そこにはきっと素敵な未来が待っているから

〜〜♪

 アップテンポにアレンジされた曲らしく、ファリスも曲の間奏でステージ上を駆け回って腕を振るう元気な動きを見せる。
 背後にある大型ディスプレイにはファリスがアイドル活動をしてきてからのスナップ写真が流れ、経験と成長を観客やライブ中継を見ている人に伝えた。
 ジーンズ生地にとめられたハートや星型の装飾品がライトに当てられてきらきらと光り、彼女そのものを輝かせた。
 エプロンドレス姿でどこか不安げな表情を浮かべているときの多かったファリスの大きな成長の証である。
 最後も手拍子できっちり飾り、拍手へと変わる間もずっと頭を下げて礼を続けるファリスだった。
『いいステージだったな。そう思うだろう?』
 マイクを向けるリュインに対する答えは一つだった。

●二人はタメ
『続いては同い年には見えないデュオユニット「lazwald」だ。先ほどの我と共に披露したダンスとは違う一面を見てやってくれ』
 上から目線の言い方だが、リュインの堂々たる振る舞いに説得力があるためか何事もなくイベントは続く。
『消えていったものたちを思い、いつかまた会えようという希望を込めた歌じゃ。しゃお坊の二胡を楽しんで貰えればうれしいのう。それではいくぞ、「想花輪廻」‥‥』
 メインボーカルをつとめる秘色が説明しながら曲が始まった。

 ――想花輪廻―― 作詞:宵藍

♪〜〜

 四季廻り 時代(とき)廻り
 花もゆるりゆらゆら めぐり廻る
 たとえ散る宿命(さだめ)に咲くとしても
 玉響の煌き 吾が胸に 君が胸に
 確かに其処に在る息吹 二人憶えておりませう
 何時までも 果て迄も
 夢と現 ゆきつ戻りつ
 過去と未来 ゆきつ戻りつ
 想い花咲く 幾十(いくそ)の世重ね
 かそけき絆 小指の紅緒
 手繰り手繰って 何時までも 果て迄も
 
〜〜♪

●アクシデント
 突如、静寂が訪れた。
 世の中何がおこるのか予想ができない。
 歌の最中に音源が途絶え、マイクも響かなくなっていた。
 ザワザワと盛り上がりとは違う空気が息苦しく充満しだす。
 演奏を止めた宵藍が秘色をみるが、彼女も戸惑っている様子だった。
 宵藍は小さく頷き、二胡を弾き続ける。
 ざわめく会場に二胡の静かな音色が吸い込まれるが、落ち着くまで、宵藍は流麗な音色を生み出した。
 人の音声に最も近いといわれる響きに会場の人々や秘色の心を解す。
 タイミングよく復帰した音源が続き、まるでソロ演出ではないかと錯覚するような雰囲気を醸し出した。
 秘色は優しい視線を宵藍に向けた後で、会場に向かって歌を続ける。
 
♪〜〜

 四季廻り 時代(とき)廻り
 花もゆるりゆらゆら めぐり廻る
 人もゆるりゆらゆら めぐり廻る

〜〜♪

 歌い終わりまで今度はしっかりと続けられて、ハプニングがあったものの拍手で二人は迎えられた。
 その拍手にあわせて今まで歌っていたメンバーがステージに集まりだす。
『皆のもの聞いてくれたありがとう。最後じゃが、メドレーでもって締めくくりとさせていただこうと思うぞ』
『皆も歌える曲は一緒に歌って欲しいの』
 秘色がマイクを持ったまま話を続ければ、ファリスが元気に呼びかけた。
 観客が手が上げて雄叫びをあげてこたえる。
 ヤナギと悠司、宵藍が楽器を鳴らし、ユウやファリスが両サイドに動きながら手拍子を誘う。
 秘色とリュインが体でリズムを取り、最後のメドレー曲をスタートさせた。
 
●ライブが終わり
「おっつかれさーん」
 ブシャァーと勢いよく泡が吹き出し人々とを水浸しにしていく。
 ライブが終わり、楽屋裏での打ちあげがはじまっていたのだ。
 メドレー曲を終えてヘトヘトになっていたのが水を得た魚のように打ち上げでは元気になっている。
「未成年もいるんですから、セーブしてくれないと困りますよ」
「カァタイこというなって、ライディ」
 ビールまみれの被害者であるライディが主犯のヤナギを恨めしそうにみる。
 注意をしながらも目尻をさげて笑っている。
「席も別けているし、そこはそこでね。ところで、今日の感想を聞いてみたいな」
「ファリスもマネージャーさんやプロデューサーさんのお話を聞いてみたいの」
 飲めないスタッフと一緒に離れた場所でジュースの乾杯をしていたファリスがひょこと顔をのぞかせていた。
「わしからいわせてもらやぁ、でらぁよかったで。これがファイナルで解散しても心残りがないくらいだでよ」
 ビールをぐいっと飲み終えたプロデューサーであり社長の米田が大声で話す。
「不安がなかったわけじゃにゃあ企画だったけど、やってよかったと思えるもんだったで、スタッフをはじめ、アイドルのみんなにゃ感謝してもしきれんで、ありがとぉぉぉっ!」
 グラスを掲げて目一杯盛り上がっている社長の姿は誰もがみたことのない姿だった。
「ほい、次はライディの番だで」
 米田にふられたライディもグラスを片手に普段よりも声を出して話す。
「マネージャーをやり始めて色んなライブを見てきましたが、今日のライブが一番です。けど、これから先もこれを超えていけるようなライブを皆さんと一緒にやっていきたいとも思います」
「もちろんなの。ファリスもアイドルを続けて頑張っていきたいの」
 ファリスの返事に周囲のスタッフやアイドルたちも同様の声をあげた。
「一番身内で一番近い客にいわれちゃあ、頑張らないわけにはいかないな。これからも宜しく、マネージャー」
「こちらこそ」
 コツンと二人のグラスが重なりあった後も宴は夜がふけるまで続くのだった。