タイトル:Alp〜京都へおいで〜マスター:橘真斗

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 7 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/08/15 17:52

●オープニング本文


 季節は日本で言えば夏。
 蒸し暑く、日差しの強い季節ではあるがラストホープはジューンブライドで盛り上がっていた。
 別の意味で熱い。
 そんな中、ライディ・王(gz0023)の家に小さな来訪者が現れた。
「久しぶりじゃのぉ」
「磨理那様じゃないですか。本当にお久しぶりです」
 おかっぱ頭にクリクリの瞳と愛らしい姿ながらも風格の漂う少女は平良・磨理那(gz0056)である。
「うむ、少々そちに頼みがあっての。足を運んだまでじゃ」
「頼みですか‥‥」
 お茶を出しつつライディは次の言葉を待った。
「うむ、あいどるのまねーじゃーをやっておるそうじゃの? 京都の宣伝に力を貸して欲しいというわけじゃ」
「お仕事の話なんですね」
 メモ帳を取り出して磨理那と向かいあったライディは背筋を伸ばす。
「世間は宇宙進出だ大規模作戦だと騒がしい中とは思うが、やはり息抜きも必要じゃろうからな。そこで復興も終わった京都で遊んでもらえるようあいどる達に宣伝をしてもらいたいのじゃ」
「なるほどなるほど。具体的にどんな感じなんでしょうか?」
「観光協会のしーえむじゃの。京都全土を使うので自社仏閣を見回るものや、天橋立飛龍観ランドで遊んでいるところの収録なんかもよいぞ。ビーチや温泉の貸し出しも全面協力するのじゃ」
 パシッと扇子を広げてコロコロと磨理那は笑った。
「では、詳細は希望者によりけりでしょうか」
「一つに絞る必要はないので、演出も考えてやってくれればよいのじゃ。ぷろでゅーさーは妾が行うからの。そちは人を集めてくれればよい」
「はい、分かりました。京都に遊びにいけるの楽しみにしていますね」
「うむ、夫婦で来るとよいぞ。その際はよい宿を紹介してやるのじゃ」
「お誘いありがとうございます」
 頼もしい振る舞いにライディは頭を深く下げて答えるのだった。

●参加者一覧

秘色(ga8202
28歳・♀・AA
瑞姫・イェーガー(ga9347
23歳・♀・AA
禍神 滅(gb9271
17歳・♂・GD
ファリス(gb9339
11歳・♀・PN
エイラ・リトヴァク(gb9458
16歳・♀・ER
ユウ・ターナー(gc2715
12歳・♀・JG
秋姫・フローズン(gc5849
16歳・♀・JG

●リプレイ本文

●京都の楽しみ方
 薄暗い夜空に光が地上から空へと走り、闇を切り裂いた。
 朝日が昇ってくる姿を、清水寺から3人の異国の少女達が眺めている。
「わぁーきれー」
「きれいなの〜」
「ああ、いい景色だな‥‥」
 黒のゴシックパンク姿のユウ・ターナー(gc2715)。
 童話の主人公のような水色のワンピースのファリス(gb9339)。
 キャスケットにチェックのシャツにダウンジャケットとにチノパンといったコーディネートのエイラ・リトヴァク(gb9458)の3人の仲のいい姿をカメラはしっかりと抑えた。
 和の情緒の強い京都の風光明媚な景色に3人は言葉少なく圧倒されている。
 清涼な朝の空気を味わうかのように少女達はそろって深呼吸をした。
「次の観光地はどこだっけ?」
「次はねー」
 エイラにいわれたユウが秋姫・フローズン(gc5849)の作った手書きの京都マップを画面いっぱいに広げた。
 秋姫の細かいとこまで気遣う性格のよくでた写真つきで分かりやすく、見やすい地図である。
「見るところいっぱいで楽しそうなの」
 ファリスが京都市各地にある名所の数々に声を弾ませる。
「まずはここからいってみよーよ」
「二人とも元気だなぁ‥‥」
 キャイキャイと朝から元気な二人に引っ張られるようにしてエイラも後に続く‥‥。
 天気のいい空の下で三年坂で食べ歩きをしている3人娘が写る。
「えへへ、美味しい〜♪」
「ソフトクリーム美味しいですの」
「暑いから美味いよなぁ」
 三人は横並びに座って宇治抹茶ソフトクリームを味わった。
 夕方になれば巽橋の上で夕日を眺める。
 はんなりとした雰囲気に黄昏時にあわせたハーモニカの音色が重なり、美しい映像として締めくくられた。

 ***
 
 禍神 滅(gb9271)が牛若丸の格好で横笛を吹いている。
 大人になきりてないあどけなさの残る少年の姿は遠くから見れば美少女と見間違えるほどに細く白かった。
 滅の笛の音色をBGMにして、その後の映像が続く。
 青空の下を緩やかな旋律にあわせて、水兵服姿で歩く滅の姿が映った。
「京都の名所観光なんて久しぶりのことだねー」
 通りすぎるお店に立ち寄っては食べ物を手に出てきて食べ歩く映像がながれる。
 景色が流れ、食べて行くものも変わっていく。
 ソフトクリームを鼻にちょっとつけたりと、可愛いハプニングもカットすることなく撮られていた。
 足を止めたのは傘松公園。
 京都の日本海側に面する観光地、天橋立だった。
「よっと‥‥わぁ、本当に空にかかって見える。龍っぽくもあるね」
 両足を開いてそこから顔を覗かせるポーズで見える景色に滅は年頃らしい喜びを見せる。
 爽やかな風が吹き、少年の帽子をまきあげていった。
 
 ***
 
 境内で舞を踊る女性の姿から映像が始まった。
 人は西陣織の着物を着こなす秘色(ga8202)と瑞姫・イェーガー(ga9347)である。
 小菊に紗綾形の織をしたお揃いの着物姿だ。
 秘色は薄青色で大人っぽい仕上がりだが、一番のポイントは足元の健康サンダルだろう。
 カラコロとなる下駄ではないが、庶民派オカンアイドルらしい姿だ。
 瑞姫は薄紫の衣装で秘色と息のあった舞を見せている。
 二つの華が揺らいでいる間にも背景が変わり、鞍馬寺から本能寺、鴨川神社などがテロップ入りで紹介されていった。
 その次は伏見にある酒蔵を二人は訪れて行く。
 観光のCMと言う建前を持って美味しい酒を飲む秘色の顔は喜びに緩んでいた。
 最後に二人は夕暮れの露天風呂で一息いれる。
 女二人の小旅行っぽい締めに、秘色直筆の「清」「賑」「和」の三文字が夕暮れの温泉風景に描かれ、三つ目のCMとなった。

●芸妓さーん
 京都各地の収録が夕方のシーンも含めていたため、依頼主の平良・磨理奈(gz0056)の屋敷でアイドル達は一泊することとなった。
 この場では美味しい京都懐石を食べたりしてCMには使われない貴重な未公開シーンが沢山ある。
 瑞姫が鼻水と涙をだばだばと零しながら秘色から子供についての話を聞いている姿や、秋姫がスタッフにお茶とお菓子を配って甲斐甲斐しくお世話をする姿などだ。
 二日目のメインは舞妓の体験会だ。
 化粧から着付け、野外やスタジオでの撮影までしてくれるサービスが京都の祇園では結構な数でそんざいしている。
 なお、芸妓の見習いを舞妓といい、芸妓は座敷で三味線や舞などの芸で興を添える女芸者をさす。
 ゆえに、男性である滅ができるのは大きな配慮があってのことだ。
 一流の美貌と芸でもって旦那とよばれるスポンサーについてもらうという特性はアイドルの元祖といえなくもなかった。
 そんな舞妓体験を現代のアイドル達が行うのは不思議な雰囲気である。
「坊は綺麗になるのぉ。男にしておくのはもったいないくらいじゃ」
 化粧をされて美少女のように見える滅に秘色がカラカラと笑って褒めた。
「カツラって不思議なの」
「頭がちょっと重いよー」
 時代劇などでよく見る扇型のカツラをつけるユウとファリスは慣れない感覚に戸惑いを見せている。
 そんな素の表情を候補生として手伝いを買ってでた秋姫のカメラが捕らえていった。
 もう一人の異国少女であるエイラはいち早く身支度が終わったのか今は舞の練習をしている。
 普段しているロックやポップとは違うゆったりしたリズムの中の流れるような舞はなかなか苦戦しているようだ。
 化粧もさることながら、着物姿が普段のぶっきらぼうな印象をなくして新しい一面を見せている。
 秘色や滅にユウにファリスらも支度が整い、舞の練習に加わって行く。
「‥‥こういうお衣装は滅多に着ることができないからとってもわくわくするの」
「ファリスちゃん綺麗だよ〜♪」
 着慣れてない着物での舞がうまく踊れないメンバーの中で秘色は、若いアイドル達にアドバイスをしてまさにこのAlpのオカンともいうべきポジションにいた。
 だんだんとアイドルたちの動きが揃ってきた時、背景がくるりと変わり室内から渡月橋へと風景が変わる。
 ぎこちなかった舞も揃った綺麗なものに仕上がり、7人の和服美女が琴の音色に合わせて舞う。
 各自のアップが映ると共に前日の撮影時に取った京都のスナップ写真が出てきた。
 伏見稲荷の千本鳥居でかくれんぼをする秘色。
 清水焼きの湯のみを作って絵を書いてるエイラ。
 舞妓姿でハーモニカを演奏しているユウ。
 着物姿で自社仏閣の神主さんから話を聞いているファリス。
 それらの楽しい京都の様子を余すことなく見るものに伝えてきた。
 締めに鼓の男と共に画面によって元気に声をだす。
「「京都においで!」」

●二人の決意
「ごめんくださーい」
「こんにちわ‥‥です」
 京都でのCM撮影が無事終わり、ラストホープへと戻ってきた瑞姫と秋姫はアイベックス・エンタテインメントの事務所を訪れていた。
「はいはいー。お待ちしてましたよ」
 アイドルグループImpalpsの総合マネージャーであるライディ・王(gz0023)が二人を応接室へと案内する。
「ライディさん、いろいろご迷惑をおかけしましたが、Alpに所属することに決めました。秋姫も一緒です」
 席についた瑞姫が静かに語ると隣の秋姫が静かに頷く。
「そうですか、お二人ともすごく精力的でしたのでいつまでも候補生だと持ったいないと思っていましたから、何よりです」
 にっこりと笑顔を浮かべ、ライディは二人と握手を交わした。
「傭兵をやめて別の道が見つかるまでになるかとおもうけど、精力的にがんばります」
「不束者‥‥ですが‥‥改めて‥‥よろしく‥‥お願いします」
 瑞姫と秋姫は改めて頭を下げて、新しいアイドルとしてデビューを果たす。
 二人の姫の活躍を全力でサポートしようとライディは心に決めるのだった。