タイトル:Imp〜突撃LiveHeat〜マスター:橘真斗

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 5 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/03/05 22:55

●オープニング本文


●届け銀河の果てまで
「単体ライブ企画なんて久しぶりですね」
「『Impの原点は歌だったからだで、やっぱり歌をやらなぁと。バレンタインに戦う兵士に送る愛のメロディーっていうのがコンセプトになるでよ』‥‥と社長はいってましたよ」
 ライディ・王(gz0023)はアイベックス・エンタテイメントの社長秘書と事務所兼自宅で相談をしている。
 トリッキーな社長のモノマネを上手にやれる秘書(アラサー独身)は流石に付き合いが長いなとライディは思った。
「何か言いたげな視線を感じますが、気のせいでしょうか?」
「そ、そんなことありませんよっ。ええっと、戦う兵士達に送るといいますと場所はどこになるんでしょうか?」
「そのことですが、KVを持っている彼女達に任せるそうです。ゲリラライブ形式で行うとのことだそうで、あえて明らかにしないことでサプライズになります」
「まぁ、会場の確保が年々大変になってますしね。KVで突撃ライブをするなら大丈夫なの‥‥でしょうか」
 何か大きな間違いを犯している気がしなくもないライディではあるが、企画そのものはアイドル達に喜んでもらえそうではある。
「上層部の方には話を通してありますので問題はないとのことです」
「それならよかったです」
 ライディは続いて発せられた秘書の言葉にほっと一息ついて資料を受け取った。
 対応地域の詳細が書かれている。
「北米と南米のUPC軍基地、宇宙ではカンパネラ港といったところが許可の下りたところになります。いずれか一つを選んで前線で戦ってきた軍人たちに応援にいってもらいます」
「持っているKVの種類も様々ですから、合わせて動けるところになるんですかね?」
 資料に目を通していたライディが確認のために秘書へ質問をぶつけた。
「そうなりますね。では、各自のスケジュール調整など頼みますよ、マネージャーさん」
「はい、了解しました」
 比較的すんなりと話し合いがまとまりライディは秘書に向けて敬礼らしきポーズを送る。
 戦場とは違う戦いをする自分への鼓舞も含めて‥‥。

●参加者一覧

葵 コハル(ga3897
21歳・♀・AA
加賀 弓(ga8749
31歳・♀・AA
大和・美月姫(ga8994
18歳・♀・BM
沖田 神楽(gb4254
16歳・♀・FC
和泉 恭也(gc3978
16歳・♂・GD

●リプレイ本文

●バレンタインロンリーライト
「ん〜〜〜〜っ!! 久々のImp単独活動!! が・ん・ば・る・ぞー!」
 心待ちにしていたImp依頼のしかもライブとあって、葵 コハル(ga3897)はテンションMAXを通り越して有頂天になっていた。
 調子に乗りすぎてミスがなければいいのですが‥‥。
「何をぶつぶついっているんですか?」
 自然とモノローグまで語り出していたコハルを怪訝そうな顔をでライディ・王(gz0023)が眺めていた。
「いやー、はははは。さ、さーて、煙幕銃を装備サセナキャー」
 早速、恥ずかしいところを見られるというミスをしたコハルが愛機のチェックをはじめる。
 KVを使っての空中ライブをするために各自が機体の最終チェックをし、音響装置でもあるソニックフォンブラスターをつけていた。
「弓さんのは痛車ならぬ痛KVなのでしょうか‥‥」
 シラヌイにペイントされたImpの文字とセクシーな衣装のイラストをみたライディは見上げつつ口をぽかんとあける。
「とても本来の戦場にはだせませんけれど‥‥せっかくの機会ですから」
 その機体の持ち主である加賀 弓(ga8749)は苦笑を浮かべていた。
 大和撫子のようなたおやかな雰囲気を持つ弓だが、アイドルの仕事に関してはファンサービス精神が強い。
 なかなか時間がとれずにアイドル業務が半年や一年ごとにしか受けれていないのもあるかもしれない。
「久しぶりのライブですね。とっても楽しみです。あっ、MCの方はやってもいいですか?」
「よろしくお願いします。現地では補佐ができませんので皆さんの経験で乗り切ってください」
「はい、そのくらい任せてください。失敗も転じてサプライズにしちゃいますよ」
 コハルと同じくらいテンションをあげている大和・美月姫(ga8994)は元気にガッツポーズを決めて答えた。
 Imp第一期メンバーの美月姫のそのポーズは茶目っ気たっぷりであるものの余裕の現れでもあり頼もしい。
「ライディさん‥‥今回は、新曲未完成なので不安です」
 一方、沖田 神楽(gb4254) はどんよりと暗い雰囲気をだしていた。
「そ、そんなに沈まなくても大丈夫ですよ。神楽さんだって何度もライブこなしてきた一人前なんですから!」
 慌ててライディがフォローを入れるとすぐさま神楽は表情を明るくさせる。
「確かに自己判断で考えても仕方ないですからね」
「すみません、遅くなりました」
 元気を取り戻した神楽の後ろからへ和泉 恭也(gc3978)が息を切らせつつやってきた。
「今回は裏方としてよろしくお願いします。北米に向かうということですが、ストロングホークIIが偶然にも搭乗機なんですよ」
 ストロングホークIIは北米のメガコーポレーション・ドローム社製KVであるため、今回に丁度いいと和泉は微笑む。
「ではでは、先輩方。ライブを成功させに行きましょうぜ」
 背筋を伸ばして前向きさを取り戻した神楽が他のアイドル達を先導しだす。
 大空でのライブの開幕の合図だった。


●フライト・ザ・フライト

――明日はバレンタイン―― 作詞:美月姫

♪〜〜

 慣れない事なんてするものじゃないのかな
 大抵のことならこなせるわたしがこれだけは手間取っちゃう
 きれいにまとまらないし
 ちゃんと固まらないし
 でもきちんと作って上げなきゃね
 これは遠い空の下にいる誰かさんが待っているんだもの
 待っててちゃんを送り届けるから
 必ず待っててね 

〜〜♪


 それは何の前触れも無く響いた歌声だった。
 翌日のバレンタインのために一生懸命頑張る女の子。
 さらに、歌詞の通り、北米の空の下で戦う兵士に贈られるプレゼントでもあった。
 スモークを煙幕銃や煙幕装置で作りコハル機と和泉機がハートを描く。
 その中心を撃ち抜くように美月姫機、神楽機、弓機が急降下突撃し、滑走路へと着陸をした。
『はーい、皆さんお久しぶりです。突然の登場に驚かれましたか? 本日は皆さんに楽しんで貰おうとがんばります。短い時間ですが最後まで楽しんでいってくださいね』
 搭乗機のシュテルン・Gを人型に変形させた美月姫はKVからハキハキとMCを始める。
 滑走路には人だかりが出来て注目させることに成功していた。
『オープニングは私の曲でしたが、次はコハルさんの曲になります。曲名は「Forbidden sky」』

***

 地上では女武士風のアンジェリカ『蛍火・改』。
 レーシングカーのように文字やイラストのペイントされたシラヌイ『驟雨』。
 そして、シュテルン・Gがソニックフォンブラスターで演奏をはじめた。
 上空を舞うコハルのシコン『燎桜』と和泉のストロングホークIIが曲芸飛行をしていく。
『候補生とはいえKVの操縦なら負けないつもりです』
 アップテンポの曲に合わせて和泉機とコハル機がダンスを踊るようにロール―前後を軸に左右に回転―しながら飛んだ。

――Forbidden Sky―― 作詞:コハル

♪〜〜

 乾いた日常の中で願いだけが空回る
 届かない空を見上げて 手を伸ばして叫んでも
 現実の鎖に縛られてても 心なら限りなく羽撃けるさ
 見えない翼探して 夢中で駆け抜けて行く
 何時の日か飛び立つ為に 見つけるのさwing of brightness sun

 嘲笑(わら)う退屈の先に光があると信じて
 褪せない夢を抱(いだ)いてまた拳を突き上げる
 吹き荒れる嵐に曝されようと この翼は折れやしない
 渦巻く風を纏って夜空を切り裂いて行く
 求めた明日目指して 今貫く Dive to the Darkness croud

 高く、高く何処までも
 高く 速く、速く何よりも速く
 遠く、遠く果てしない彼方へ‥‥
 Forbidden Sky  

〜〜♪

 完全な新曲でないにせよ、大空で歌うのはまた別な感じがしてコハルも新鮮さを感じる。
「イヤッホォッゥ! 盛り上がってるかーい!」
 コックピットで昂揚した気分を口にすると滑走路の人だかりがうごめいた。
「北米サイコー! このままライブ盛り上げちゃううよー!」
 自分の心のままに空を駆ける。
 興奮を伝えるべく機体でバレルロールなどのマニューバを決めた。
『続きましては中々ご一緒できない同期のお姉さんの弓さんです。曲名は「I Love You」』
 美月姫が宣言するとペイントの目立つ弓機が一本前にでてセンターでメインボーカルを担当する。

――I Love You―― 作詞:弓

♪〜〜

 キミと共にいる それはボクが自分で選んだこと
 あの出会いを偶然なんて言いたくない
 この胸の想いを必然なんて言いたくはない
 あの出会いを奇跡なんだと言いたくない
 このキミへの想いを運命なんだと言いたくはない
 ありふれた言葉で
 この想いを伝えることが出来るだろうか?

 きっとどんな言葉でも
 この想いは伝えきれない
 それでもこの想いを知って欲しくて
 この想いを伝えきれない言葉を使う

 偶然の運命に感謝して

 必然の奇跡に歓喜して

 ワタシはアナタを愛していますと 

〜〜♪

 ゆっくりと愛を語る歌に上空の二機がバックダンサーのように大きく円を描いて飛んだ。
 歌い終われば口笛がなり、盛り上がる声が更に大きくなる。
『皆さん、ありがとうございます。これからも応援をよろしくお願いしますね』
 弓が礼をすれば大きな拍手が迎えてくれた。
 このひと時があるからこそ、弓はアイドルをやめられない。

***

『最後は沖田神楽さんの曲で「Star Symphonic」です』
『北米の人々に自由を取り戻すことが出来て私は嬉しい! 頑張ってくれた皆に楽しんで貰えるようライブのプレゼントを! この思い届け、宇宙全てへ!』
 アンジェリカがセンターに立ち、大きな声をあげた。
 腕を空に突き上げてポーズを決めると演奏が始まる。

――STAR SYMPHONIC―― 作詞:神楽
♪〜〜

 音一つ無い 虚空
 霹靂が起こるように
 はじけ飛んだ 終わりを告げる始まりの音 全てを解き放って
 塵の一つダトシテモ
 ボクらは響き渡らせる 
 無駄なことだなんて 誰にもわかりはしない
 この星の鼓動 届けて見せたいんだ
 響かせるようにこの音を届かせて見せよう
 ボクらは スフィアの一部だから

〜〜♪

『よーし、私のとっておきの技、行ってみせるよ! 月光円月乱舞!』
 歌い終わった神楽はアンジェリカで練機刀「月光」を構え、ビームをその日本刀のような刀身に帯させた。
 名を示すかのような淡い光を帯びた刀を振るう。
 神楽は自らがいつもやっているような剣舞をKVにて行い、自分のアピールとして魅せた。
 ライブの締めをバッチリ決めるとアイドル達は北米の基地からラストホープに向けて飛び立つ。
 小さくなっていく5機のKVに向けて基地の兵士達は手を降り続けて見送るのだった。

●ネクスト・トゥ・ドリーム
「皆さん、お疲れ様でした」
 ラストホープに戻ってきたアイドル達をライディがお茶をいれて出迎える。
「ありがとうございます。そのうち自分も舞台に立つこともあるのでしょうかね」
 お茶を受け取った和泉は晴れやかな舞台をたつアイドル達の姿を思い返して呟いた。
「きょーやんもImpに来たらん? 自己申告で候補生は移れるんだったよね?」
「Impは人数多いので打ち止めていますけど‥‥」
 コハルがぐびぐびっとスポーツ飲料を口にしながら和泉を誘うがライディが言葉を濁す。
「そっかー、でもさー。表舞台に立てるチャンスはあるんだし興味があるなら正式に動いてみよーよ。合同ライブとかなら一緒に歌えるしね」
「‥‥考えてみます」
 ニシシとたくらむ笑みを浮かべるコハルに促されて和泉は苦笑と共に答えた。
 
 チャンスは手を伸ばせば届くところにある。
 
 今はそれがわかっただけでも十分だった。