タイトル:【JTFM】sylpheedマスター:橘真斗

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/11/01 22:49

●オープニング本文


――???

 戦闘をしている際、脳裏に何かがよぎる

 機動兵機を操り、敵を倒すだけの“ユニット”である自分が何を考えるというのか

 青い空のしたを高速でかける瞬間に心が熱くなる不思議な感覚も」あった

 自分という存在が揺らぎだしていた

●独立作戦
「アフリカで忙しい時に申し訳ありません。任務です」
 リネーア・べリィルンド(gz0006)が真剣な面持ちで南米の地図とともに説明をはじめる。
「エクアドルへの攻勢も佳境となって来ていますので、追い込みの作戦が随時動いて行きます」
「今回もその作戦の一つで、グアヤキル方面へ向かっていると推測されるバグア軍の輸送部隊を皆さんに抑えてもらいます」
 事務的な概要を伝えながら、リネーアは敵戦力のなどの資料を能力者達に渡していく。
 資料には黒いスカイスクレイパーを中心にゴーレム、そして鹵獲機が隊をなして、箱持ちムカデを護衛していた。
「エクアドルバグア軍は疲弊していますが、未だに少数のエースが残っていることが確認されています。気をつけてください」
 資料を渡したリネーアは頭を下げて傭兵達を見送る。
 激しい南米戦線の、決戦の日は近い。

●参加者一覧

白鐘剣一郎(ga0184
24歳・♂・AA
榊 兵衛(ga0388
31歳・♂・PN
宗太郎=シルエイト(ga4261
22歳・♂・AA
ゲシュペンスト(ga5579
27歳・♂・PN
M2(ga8024
20歳・♂・AA
御崎 緋音(ga8646
21歳・♀・JG
ニア・ブロッサム(gb3555
20歳・♀・SN
レイド・ベルキャット(gb7773
24歳・♂・EP
奏歌 アルブレヒト(gb9003
17歳・♀・ER
BEATRICE(gc6758
28歳・♀・ER

●リプレイ本文

 ‥‥なんだろうな、この感覚は‥‥

『ヴィエント』とは何度も戦った今回もそう変わらねぇはずだってのに
 
 ―――今までよりも、確かな風を感じる
 

 『シルフィード』、お前が見える!

●疾風陣来〜シップウジンライ〜
「シルフィード!? あの時の‥‥私の力が至らなかったばかりにMIA(作戦行動中行方不明)になった‥‥」
『間違いねぇ何度も戦いあってきたんだ』
 敵の説明を宗太郎=シルエイト(ga4261)から受けた御崎 緋音(ga8646)は悔しげに唇を噛む。
 V1グランプリと呼ばれるKVを使った能力者同士のバトルレースイベントから宗太郎は彼を追いかけていたのだから、間違いないとのことだった。
 そして、今回は特に彼らしさがあるとも宗太郎が続ける。
「なんとしてでも正体を掴みたいですね。俄然、やる気がでましたよ」
 コックピット内で瞳に闘志を宿した緋音は強い言葉を宗太郎に返した。
『おいおい、ヴィエントの対応班には俺も混ざっているんだからハンパにするなよ』
 二人の会話にどうはいったものかと悩んでいたゲシュペンスト(ga5579)が落ち着いたころを見計らって入ってくる。
「すみません、個人的にいろいろあったもので‥‥」
『エースと勝負か‥‥百足を囲むように先頭にヴィエント、両翼に6機ずつ俺ならそう言う布陣で行くが‥‥ビンゴだ』
 ディスプレイに移動する敵の輸送部隊が映り、廃墟となった街へと向かう。
『進路も予定通りだ、配置についているかいレディ達』
『女っぽいかも知れないけど、女じゃないぞ』
 ゲシュペンストが口笛一つ鳴らしているとM2(ga8024)が低い声で突っ込みを入れた。
『それだけの余裕があれば十分だな。‥‥本来、KVは俺達人類の希望の騎士となるべく生まれたものだ。それをいつまでもバグアに使わせておくわけにはいかぬのでな。悪いが、この手で葬らせて貰うぞ』
 二人のやり取りを聞いていた榊 兵衛(ga0388)は楽しげに笑ったあとで気合を入れなおすように雷電改『忠勝』の≪超伝導アクチュエータ≫を起動させる。
『敵が数で勝る以上、速攻を決められるかどうかが勝負所か』
 白鐘剣一郎(ga0184)が奇襲の合図を静かに待ち、待機しているだろう廃墟を眺めた。

 ***

「‥‥目標補足‥‥総員構え。‥‥アタック」
 飛行形態で先行し、都市部で迎撃体勢を整えていた奏歌 アルブレヒト(gb9003)がロックオンサイトから見える箱持ちムカデに向けてスナイパーライフルAAS−10Kvで狙撃を開始する。
 400m先の敵、しかも頭部という小さな的に向けての狙撃をガンスリンガー『Schwalbe・Schnell』の≪DFスナイピングシュート≫が可能とするも周囲を囲う鹵獲S−01の胴体に当たった。
 だが、奇襲の合図としてはそれで十分だった。
『輸送部隊の運んでいるものがなんなのかは分かりませんが‥‥それを奪うことが必要なのなら‥‥ベストを尽くしてみましょう‥‥』
 不意の攻撃にゴーレムが中心となって迎撃体勢を整えていくが、間髪入れずにBEATRICE(gc6758)のロングボウII『ミサイルキャリア』が物陰から飛び出し、ブースト共に真スラスターライフルの弾幕を一直線に並んだ、箱持ちムカデとS−01に向けて叩き込む。
 S−01の腕が吹き飛び、箱持ちムカデの足がいくつか砕け散った。
『ツインブースト起動、一気に蹴散らしますよ‥‥!』
 更に隙を埋めるようにレイド・ベルキャット(gb7773)がオウガ『アローヘッド』で強襲を仕掛る。
 ≪ツインブースト・OGRE/B≫で機体の推進力を戦闘力へと変え、DC−77クロスマシンガンを放った。
 怒涛の快進撃はまだ続く。
 BEATRICE機と同じく待機していたニア・ブロッサム(gb3555)の天(TIAN)『シューティングスター』がその体をホバーで浮かせ、接近しつつBEATRICE機の反対側にM−SG10の弾幕を放っていた。
『さて 今回はシューティングスターの慣らし運転だけれど、この子はどこまでやれるのかしら? ‥‥楽しみね』
 両翼から襲撃を受けている敵陣に対してアルブレヒトは装填を終えたスナイパーライフルでの射撃を続けた。
 一発、二発と銃弾が飛んで、ブレなどが無くなってきたときアルブレヒトの目の前に巨大な目が見える。
 ギンッと目が光ると共にアルブレヒトの方に歪んだ空間が飛んできた。

●戦嵐〜センラン〜
 歪んだ空気が地面を抉りながら走り廃墟を砕いた瞬間、宗太郎は激昂した。
「空を極める‥‥そう言ってたよなぁ! そんなあんたが陸に這いつくばっているなんてどういうことだよっ!」
 レースで戦ってきたとき、共に戦線を歩いたときなどシルフィードと名乗った男の事ばかりが宗太郎の脳裏を駆け巡る。
 機槍「ロンゴミニアト」が宗太郎の想いを乗せて風を切り、黒いスカイスクレイパーを鋭く突く。
 しかし、狙ったはずの機影が目の前から消えた。
『宗太郎さん! 足元です!』
 緋音の声が耳に届くと同時に視界が横に倒れる。
 スカイスクレイパーが車両モードへと切り替えてドリフトによる足払いを仕掛けてきたのだ。
『こいつは手ごわい相手のようだ‥‥』
 KVのボディには不釣合いなほど生態的な目玉型の圧力砲を狙いゲシュペンストのリッジウェイ『ゲシュペンスト02』からの支援砲撃が飛び、ヴィエント機の機動力をそぐ。
『可能であれば生け捕りに‥‥私達なら、きっとできます!』
 自らに言い聞かせるような声を上げて緋音機が真スラスターライフルを迸らせてヴィエント機を敵の集団からなるべく離し、生け捕りへの舞台を整えていった。
 
***

「俺は奥を。榊は手前を頼む」
 分断に成功したヴィエント担当の3人が集中できるように剣一郎も己の仕事にかかる。
 不意打ちという形で動けた分、優位ではあるものの敵の数は自分たちより上だ。
 更に有人機と思われるゴーレムの対応が的確であり箱持ちムカデを守りながらも目的地へと逃がそうとするよう対応を始めている。
(ゴーレムを潰せば指揮系統を断てると見たが‥‥)
 挟み込んでいるため二手に分かれている一機を狙って剣一郎はシュテルン・G『流星皇』をブーストさせて加速した。
 ≪PRMシステム・改≫で精度を高め、混戦とする中の一機を機刀「獅子王」でもって斬りつける。
 思わぬ一撃をくらって仰け反ったゴーレムへ、濃圧縮レーザーブレードである練剣「オートクレール」の連続突きを放った。
 瞬く間に胴体に風穴を開けられたゴーレムがその機能を止める。
『相変わらず見事な手並みだ』
「なに、そうでもないさ。コンテナの確保がまだできていないからな」
 榊からの感嘆を込めた言葉に剣一郎は一息つきながら答え、攻撃を仕掛けてくる鹵獲R−01達へレーザーガン「フィロソフィー」を撃ち牽制をした。
 もう一体のゴーレムも榊機に向かってビームを纏った斧を振り飾し、鹵獲S−01からの支援火砲を受けつつ攻めてくる。
『さて、忠勝。俺たちも一つ戦いを見せてやろう』
 怒涛の攻めを受けつつも、榊機の動きは修羅場を潜り抜けた武者のごとく押し寄せる敵に向けてスラスターライフルを弾幕をはり、一機ずつ相手取るように動いた。
 ビームコーティングアクスを振り下ろしてきたゴーレムに対しても機槍「千鳥十文字」を下から突き上げた。
 得物同士が交差し、お互いにぶつかるかに見えたが榊機の槍が先にゴーレムの肩を貫く。
 リロードの終えたアテナイの銃口がゴーレムへ向き、揺らいだ体を躍らせた。
 

●風鎖〜フウサ〜
「被害状況は深刻ですか」
 機体各部の異常を知らせるアラートサインを確認しつつ、BEATRICEは箱持ちムカデを体でカバーし、マシンガンを撃ってくるRー01に向けて220mm6連装ロケットランチャーを叩き込んだ。
 鹵獲機の数も半分は減り、漸く対等な数になってきたが元々長距離支援に向いているロングボウIIの機動力では数にものを言わせた弾幕を避けるのは厳しかった。
「だが、確保はできます」
『その通り‥‥とね。無茶しないで後はこっちに任せてよ』
『動きをこれで止められます!』
 BEATRICEの声に呼応する様にM2機とニア機が護衛機が減り、当てやすくなったムカデに向けて銃弾の雨を降らし、武器を叩きつける。
 二ア機は『流れ星』の如き加速で踏み込めば、クロスロッドでムカデと頭部をグシャリと潰した。
『うへぇ、何か絵面がやだなぁ‥‥足も潰させてもらうよっ!』
 生々しい光景を嫌がりながらもM2機がショルダー・レーザーでムカデの足を焼いて、コンテナが動かないようにとどめる。
 コンテナの確保に成功した能力者達は攻勢から防衛にと流れをまとめていく。
 指揮官機が2機やられてしまったようだが、機械的に動く鹵獲機達はムカデごとコンテナを潰そうと放火の狙いを変えてきた。
「次はこちらが守る番です」
 証拠隠滅を図るのであれば、コンテナの中身はバグアとして知られたくないもののはず。
 そうであるなら守らねばならない。
 機盾「ウル」を構えてBEATRICEは機体を踏ん張らせた。
 自動迎撃火器でもあるファランクス・ソウルが鹵獲機達をコンテナに近づけまいと咆哮を続ける。
 だが、リロードの隙をついた1機がコンテナを破壊すべくバグア独特の慣性制御でもって物理法則を無視する軌道を描いて踏み込んだ。
『‥‥コンテナを破棄する気ですか‥‥させません 』
 行動を否定するアルブレヒトの言葉と共に強烈な雄叫びを上げる銃弾が踏み込んできた1機の鹵獲Rー01を屠る。
 シルフィードからの攻撃を受け、やられたと見せかけて狙いを定めていたのであった。
「ありがとうございます。あとはアチラがどうなるか‥‥ですか」
 距離を開け、戦場で舞を踊るかのように戦う4機を眺め、BEATRICEは小さく呟く‥‥。
 
●旋風〜ツムジ〜
「三連ステークっ! 撃ちぬけ!」
 ゲシュペンストは軋む体に鞭を打ち、ヴィエント機の突き立てて来た機槍に向けてクロスカウンターの一撃を見舞った。
 捕獲を狙ったワイヤーもそもそもが捕らえきる事の難しい相手では分が悪い。
 反応速度も機動性もヴィエント機に翻弄されてチャンスを掴みきれないでいた。
 ようやく掴んだチャンスは機体と自分がギリギリ生きている程度のクロスカウンターでしかない。
「こいつもおまけだ。とっときなっ!」
 胸部の圧力砲を機杭「白龍」で潰されたヴィエント機へチェーンファングでの拘束を畳み掛けるように続けた。
 避けようとしたヴィエント機に足へチェーンが絡みつき、機動力を落とさせた。
『こんな再会はお互い望んでいなかったはずですっ‥‥!』
 緋音機がゼロ・ディフェンダーで縛られるヴィエント機の背部に飛び出たスラスターを斬りつけ機動力の更なる低下を狙う。
 あくまでも倒すためではなく生け捕りのための攻撃だ。
 人型形態から車両形態へと変形をして緋音機の斬撃を直撃だけは避け、目晦ましとばかりに拡散フェザー砲を放つ。
 チェーンを振りほどき、ゲシュペンスト機から緋音機へと標的を切り替えた。
『あんたは! あんたは何で戦っているんだよ!』
 人の心があるようで、それでいて機械のような正確無比な反撃を続ける”風”に向かって宗太郎が叫ぶ。
『ソレガ‥‥存在、りゆう』
 この戦闘の最中、初めて”風”が答えた。
『くそったれ!』
 舌打ちと共に宗太郎機がブーストし続け、ランスチャージを仕掛ける。
 あたる寸前まで引き寄せてヴィエント機は拡散フェザー砲を宗太郎機のコックピットに浴びせた。
 長い戦いで、ヴィエント機も傷ついているが宗太郎機も緋音機も急所を避けているためにカウンターによる損傷は激しかった。
 それでも、生け捕りにするという希望を二人は捨てきっていない。
『まだ、いけますよね』
『ああ‥‥勝負は最後までわからないからな』
 圧力砲を潰し、時間を稼ぐことはできているものの不利な状況であることはいなめなかった。
 ヴィエント機が人型形態に変わり、≪慣性制御≫で妖精のように舞い始める。
 槍が両者を容赦なく貫きはじめたとき、光が横殴りの雨の如くヴィエント機に降り注いだ。
 コンテナを確保した味方からの援護射撃である。
『抑えに入りましょう!』
 宗太郎機と緋音機がスパークワイヤーで挟み込むようにしてヴィエント機を縛り上げた。
 束縛から解放されようとするヴィエントに引っ張られ、損傷している関節部が火を噴く。青白い放電を纏うワイヤーが瞬く間に千切られ、ヴィエントが動き出そうとした、その時。
 危険を顧みず近付いた宗太郎機が、コックピットを覆う装甲を剥いだ。
『パイロットが‥‥いない』
 無人機とは思えない動きや受け答えをしていたヴィエントだが、依頼文や過去の報告書通り、そこには誰の姿も無い。
『それじゃあ、ヴィエントって一体‥‥』
 緋音の呟きに答えれるものはいなかった。
 
●憂凪〜ユウナギ〜
 コンテナを無事守りきった一堂は中身の確認を始めると驚くべき事実に遭遇した。
「えーと、何だって‥‥”ヴィエントは遠隔操作システムの通称”だって?」
 コンテナを防衛し、中身の確認を行っていたM2は顔をしかめる。
「多数目撃され、撃墜しても出てきたというのはそれが理由なんですね‥‥どこかにある本体をどうにかしない限りヴィエントはこれからも出てくると‥‥」
「無人のコックピットだったというのも納得がいきますが、量産もされてないところをみれば未だに実験段階なのでしょうか?」
 二アとレイドも資料の確認と搬送の手配をM2と共に行う。
 しかし、資料に書かれた文字や図の殆どが、人間が読む事を想定したものではない。断片的に得られる情報から推測できるのは、そこまでだった。
 文書資料の他にもディスクやらヴィエントに関する計測データらしきものも見つかり、破壊してでも止めたかった敵の意図がおぼろげながら浮かんできた。
 レイドの言うようにヴィエントのような無人でパイロットが乗っているかのような動きをするものが多数出てくると戦争の局面が大きく変わる。
「これらのデータを国外へ出そうとしていた可能性を考えると、操らせる機体やシステムについても限界が来ているのかもしれないね」
 解読不能なものが多く本格的な解析はUPCの専門家に任せることになるため、受け渡しをすれば任務は完了だった。
 スカイスクレイパー自身も駆動部を破壊して動けなくしている。
 機体を調べれば更なる情報が得られるものの、何とも言いがたい空気がこの場を支配していた。