タイトル:【BT】鷲頭獅子の猛撃マスター:橘真斗

シナリオ形態: シリーズ
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/09/13 03:32

●オープニング本文


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 ――イスパニョーラ島 某所

「”ネゴシエイター”が死んだか。それだけ、今回の奴らは当てになるってぇことだな?」
 アスレード(gz0165)は溶けかけている板チョコを噛み砕きながら、報告をしてきた唯一の腹心である”グリフォンライダー”に視線を向ける。
「そうなります。全体的な戦局も人類側に傾いているとのこともあり、レジスタンスも活発化しています」
「最後の希望に引っ張られてか‥‥ゴミどもらしいぜ」
 アスレードが居城を構えるドミニカ共和国も例外ではなくレジスタンスの勢いは上がり、バグアを排斥しようと戦い続けていた。
 過去に行ったプロパガンダももはや意味をなさないだろう。
 もっとも、そういった動きを担っていた”ネゴシエイター”が死亡した限り、できなくなっていた。
「では、どうされるので?」
「他の都市の戦力を集めて首都のサンドミンゴを地図から消してやれ。残っているからウザってぇことになるんだよ」
「わかりました。航空戦力による空爆と共に地上に攻め込みます」
「派手に動かせよ、そうすれば‥‥北米からいろんなのがくるかもしれないぜ?」
 冷徹とも態度をみせていた”グリフォンライダー”の眉がピクリと動く。
「彼は関係ない」
「”彼”か、ククク‥‥。どうせなら、それもついでに片付けとけ。ウザイのにはかわりねぇからな」
「イェッサー」
 敬礼をした”グリフォンライダー”ジェニス・アンナ元少尉は踵を返して部屋を後にするのだった。

●最終警告
『1800より我々、バグアはサンドミンゴを焦土とする作戦を行う。投降者には寛大な処置を行うことは約束するが、反旗を翻すのであれば当方は容赦なく殲滅を行うので覚悟せよ。繰り返す‥‥』
 警告放送を再生したドミニカ共和国の女性レジスタンスリーダーは怯えることなく、集まってくれた能力者と前に話をはじめる。
「敵はドミニカ共和国にある方々の戦力を集めてこの街を灰に変えるつもりです。迎撃をしなければならないでしょう。一度撤退をしたUPC軍のほうにも話を伝えてもらうつもりですが、私達は逃げません。この街と共に消えるならば、生き地獄を続けるよりもはるかにましです」
 彼女の言葉に周りの男たちも大きく頷いた。
 中米に吹く風は熱く、強い。
 
●鷹の出撃
 ――北米 サンフランシスコ
「正規軍に能力者、さらには俺たちみたいな戦闘機乗りまでかりだすとは大きな作戦だ」
 イーグルドライバーを率いるジェイド・ホークアイ大尉は眼前に並ぶ戦闘機やKVをみて感嘆の声を漏らす。
「まるで映画みたいですよね」
 部下の若い少尉がジェイドに告げるとそうだなとジェイドは小さく返した。
 この様な行動をすることにジェイドはデジャヴを感じていたのである。
 大統領と共に動き戦った日のこと、また、そのときに一人の能力者がバグアの手に落ちてしまったことを‥‥。
「どうやら敵の指揮官は、グリフォンライダーらしいぜ、大尉」
「ジェニスか‥‥。そろそろ俺のほうも決着をつけなきゃいけないな」
 部下からの報告を受けたジェイドは改めて気合を入れなおした。

●参加者一覧

榊 兵衛(ga0388
31歳・♂・PN
終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
藤村 瑠亥(ga3862
22歳・♂・PN
葵 宙華(ga4067
20歳・♀・PN
宗太郎=シルエイト(ga4261
22歳・♂・AA
山崎 健二(ga8182
26歳・♂・AA
レティ・クリムゾン(ga8679
21歳・♀・GD
綾河 零音(gb9784
17歳・♀・HD

●リプレイ本文

●絡みつく思い
 ”ネゴシエイター”の死亡はイスパニョーラ島に住まう人々にとって大きな転機となったようである。
 アスレード(ga0165)の腹心であり、名前の通り交渉人として地域支配に貢献んしてきた彼の存在が消えたことで人類の反撃がはじまったのは当然のことだった。
「でも、引き換えに相手は本気でしかけてきたといったところね」
『何を一人でぶつくさいってるの? 宙華ちゃん』
「そうね。娘の為に人類を裏切った男の物語を記録しておこうとね」
『娘の居所は掴めずだ。変わった苗字なのに見つからないんじゃバグア側かもな』
 山崎 健二(ga8182)の言葉に葵 宙華(ga4067)は答えず、話を変えた。
「イーグルドライバーとUPC北中央軍が来たわ。案内しましょうか」
『こちらUPC北中央軍のジェイド・ホークアイ大尉だ。元々こっちの基地があった場所なんだ。取り返させて貰うとする』
『大尉の場合はステディのオトシマエをつけたいだけでしょ』
「ステディ? まさか、グリフォンライダーが恋人だとでもいうの?」
『なんというか、ただの解放戦線というわけにはいかなくなってきたねぇ』
 グリフォンライダーの過去について話す兵士の言葉に山崎は厄介な戦闘になりそうな予感をヒシヒシと感じるのだった。

 ***

「さて、機体をまともな依頼で使うのは久しぶりだな‥‥あちらの機体数はこちらより上、UPC北中央軍のKV隊がいるとはいっても厳しいな」
 藤村 瑠亥(ga3862)は目の前で編隊を組む本星ヘルメットワームや爆撃型ワーム、ヒュドラなどを目にしつつ、舌打ちをする。
『アスレードの腹心を倒せても奴自身の力を削ぐとは思えませんが‥‥』
 多数の敵軍を前にしつつも落ち着いた様子をみせる終夜・無月(ga3084)が静かに言葉を漏らす。
 目の前の敵よりも更に先を彼は見ているのだ。
『警告をしたにも関わらず兵を挙げてきた限り、覚悟はできているだろう。空の支配者が何であるかを貴様らに教えよう』
『しかし、貴女を倒せればこの国を救う事には繋がりそうです‥‥』
「それには同意する。元イーグルドライバーの腕前を見させて貰おうか」
 一息ついた藤村は無月機と共にグリフォンライダーとの交戦を始めるのだった。

 ***

 空からの爆撃隊が近づく中、地上では既に戦闘が始まっていた。
 サン・ドミンゴ郊外にて、能力者達はレジスタンスやUPC北中央軍の地上部隊と共に街の被害を減らすべく連絡を取り合って動く。
「避難は任せる。戦闘は任せてほしい。アースクエイクの情報を送るので、避難時には気をつけてくれ」
『ここが自分たちの生まれた街であり、国なんだ。ここから逃げるつもりなら皆とっくに逃げている』
 レティ・クリムゾン(ga8679)の心配を吹き飛ばすかのようにレジスタンスリーダーの女性が通信で答えた。
『レジスタンスの皆さん、ワームは任せてあんた方は逃げ遅れた民間人等の対応を! 戦うのも大事だけどさ!』
 少しでも街を残しても、そこに生きる人がいなければ意味がないと綾河 零音(gb9784)は言外にいいながら5.6cm高分子レーザーガンとRA.1.25in.レーザーカノンを交互にゴーレムへ撃ってリロードのタイミングを遅らせている。
『二兎を追うものは‥‥と、嫌ってほどわかっちゃいるんだがなぁ‥‥結局俺達は、そういう風にしか走れねぇ‥‥なぁ、そうだろう、ストライダー!』
 空と陸の同時攻撃で各自の負担が高くなるが宗太郎=シルエイト(ga4261)は気にすることなく零音機が攻撃しているゴーレムへ機槍「ロンゴミニアト」を突き立てた。
『こちらが空戦に回せる戦力がやや少ない分、いかに手際よく地上戦力を沈黙させられるかが鍵になるか。早々に地上の敵を掃討して空戦の助勢に向かわなくてはなるまいな』
 更に榊 兵衛(ga0388)の機体が《超伝導アクチュエータ》の駆動音を響かせて機槍「千鳥十文字」で胸部を貫いてトドメをさす。
 分断した敵の各個撃破を目指して能力者達は動いていた。
 火山が噴火したかのような砲撃音が当たりに響き、鋼の巨人たちがぶつかりあう‥‥。

●空を制するもの
「ココで手こずって、『イーグルドライバーが全滅しちゃった』じゃ洒落になんねーからな。速攻で蹴散らそうぜ」
 元でも同胞を撃つのは忍びないとばかりにイーグルドライバーの乗るRF−15『ドライイーグル』と共にディアブロ『Baalzephon』をヘルメットワームに向けた。
『空戦のキャリアはお前達より長いんだ。変な気遣いはするなよ』
 機体をくるりと横回転させながら山崎の頭上を1機のRF−15が通り過ぎ、ヘルメットワームに向けて背中の粒子加速砲が火を噴く。
 ドッグファイトの距離でヒット&アウェイを複数機で流れるように行えるのはさすが熟練である。
『こちらも援護を続けるわ。これくらいの気遣いくらいよくなくて?』
 宙華のワイバーンMkII『メメントモリ』が十式高性能長距離バルカンで追い討ちをかけていった。
 
 ***
 
「あのイーグルの動き、ジェイドか」
 ”グリフォンライダー”ジェニス・アンナは目の前に映る外部の映像を眼にしながら戦闘機ながらもヘルメットワームと戦いあう一団を見る。
 かつての自分がいた場所、共に戦ってきた仲間、そして信頼の置ける相棒が敵としていた。
 いや、自らを捨て‥‥誇りを捨てた彼らを仲間とはジェニスは思っていない。
 そんなことを考えていたジェニスだが、飛んでいたレーザー光を慣性制御をあわせたマニューバで避けた。
『機動パターン確認、誤差も修正します』
 静かな無月の声と白いミカガミB『白皇 月牙極式』がブーストをかけた高速機動に入る。
『回避性能がいいようだがこれはどうだ』
 点による攻撃を行う無月機の援護のためにと藤村のスカイセイバー『テンペスト』は強化型G放電装置を起動した。
 嵐の名を持つ機体か雷光が迸って空を光に包む。
「いい筋だ、だが今ひとつ‥‥だ」
 慣性制御を使い物理法則を無視した急制動からの急加速で雷光をもくぐり抜けたジェニスは間合いを詰めつつ機体の全身から200発を超えるミサイルを発射させた。
『K型の小型ミサイルか‥‥!』
『回避が完全にできないとしても、被害を減らすまでです』
 無月機と藤村機が自分達を被うようなミサイルの雨の中を潜り抜け急所をはずすように動いた。
「思いきりはいいようだ‥‥では、この距離での戦いはどうだ」
 重力子砲を続けざまに放ってジェニスは二機を追い込む。
 グリフォンの通り名に相応しい猛獣のような攻撃だった。
 
●戦火散華
『レックスキャノンの色が変わったぞ。対物理モードだ』
『その色ン時は任せて!』
 雷電改『忠勝』の兵衛からの報告を受けて、得意分野である零音のディアマントシュタオプ『アメティストス・オリオン』が《EBシステム》を開放し正面から敵を相手取る榊機の横っ面から練槍「アイスバーグ」をレックスキャノンの頭部へと突き立てて叫びを上げさせた。
『地上戦力も容赦ないよね‥‥なんか、航空戦力の一部の動きが‥‥あの編隊は空爆?』
 榊と共にトドメをさした零音は空を見上げて一人呟く。
『そのようだな‥‥UPC軍の方で迎撃してくれるだろうが、厄介だ‥‥』
 レティは残りの敵数をカウントし、町への被害を抑えるために自らを盾にしてきたディアブロ『Pixie』の被害状況と比べて口惜しそうに言葉を漏らした。
『まずは地上戦力から片付けるしかねぇだろ、レックスキャノンを残しておくと空中の味方にまでちょっかいかけられるんだ。さっさと片付けてから迎撃にでればいいだろ』
 レティと共に半ばペアで攻撃を続けている宗太郎のスカイスクレイパー改『ストライダー』は機槍「ロンゴミニアト」を振り回しゴーレムをいなす。
『レティ! 挟み撃ちだ!』
『ああ、わかった!』
 《回避オプション》でゴーレムの巨大な剣から繰り出される一撃を背後に回るようにして避けた宗太郎機はレティ機と共に前後から槍でゴーレムを貫いた。
 地上の戦力は半数を削るが、街の方も無傷とはいえなくなり始めている。
 更に追い討ちをかけるかのように地鳴りが起きて地殻変化計測器からの振動データが巨大なものの到来を知らせた。
『アースクエイクが来るぞ。大きな獲物だ、人のいないところへ引き寄せて戦う。足元には注意するように』
 レティが皆に注意を喚起しつつ、一時他との戦闘を切り上げてアースクエイクの対応に動き出す。
『仕方ないよね‥‥空爆も他も私がいる限りさせてやらないんだからっ』
『どんな相手であろうと、俺と忠勝‥‥そして、皆がいる限り負ける気はしないな』
 零音機と兵衛機も先にアースクエイクの迎撃に向かった2機を追いかけていく。
 近づく敵を兵衛機が搭載しているファランクス・アテナイの銃火が押し、そこを援軍にきているUPC軍のKV達が梅雨払いと支援をしてくれた。
 無論、足元でもレジスタンスを中心としたサン・ドミンゴの人々が一般人の避難にも協力して、大きな敵の対応に備えている。
 傭兵だけではなく、人類として今、目の前の敵と戦っている実感がレティ、宗太郎、兵衛、零音に沸いてきた。
 それは目に見えない力でもある。
 地を割って出てくる大きな怪物を目の当たりにしようと退かない勇気と倒せるだけの自信を持てる大きな力だった。

 ***
 
 空の戦いも決着の道筋が見えてきた。
 数機のUPC軍のKVが空を覆うミサイルに巻き込まれて沈むも、全滅ではない。
 しかし、一瞬の隙を突いて本星ワームを操るグリフォンライダーがイーグルドライバー達に向かってきた。
『力なきものが空を飛ぶなど、私は許さないっ!』
『地上部隊のアースクエイクは倒れたわよ。それでもまだやるというのなら、作戦ではなく私怨よ。アスレードに作戦失敗の報告をして帰った方が貴方のためではなくて?』
 気をそらさんと葵がグリフォンライダーに向けて撤退を促す。
 でまかせではなく、地上部隊の侵攻はとまって暴れているだろうアースクエイクもその巨体を街中に横たえて動かなくなっているのが空からでも分かった。
「で、空はアンタだけになっちまったんだが、まだ足掻くってンなら‥‥墜とすぜ?」
 最後のヘルメットワームをM−12強化型帯電粒子加速砲で四散させた山崎がグリフォンライダーへ砲塔を向ける。
 できることならば山崎はこのまま戦わずに済ませたいところではあった。
 空中のヘルメットワームを片付けたといっても余裕で蹴散らせたわけではないのである。
『おい、グリフォンライダー。戻ってきやがれ』
 そのとき、回線にアスレードが介入してくる。
 声は傭兵の乗る機体にもわざとなのか、偶然なのか聞こえてきていた。
『ここはてめぇらに華を持たせてやるぜぇ、ようへぇ! 次は俺を落としに来てみろ、待っててやるぜ』
 何かを言おうとしたグリフォンライダーの声をさえぎってアスレードは自らの用件を傭兵たちに伝える。
 一方的な物言いの中にも楽しげな声色が強く感じられる声だった。
『命拾いをしたな、ジェイド‥‥』
 アスレードの言葉の後に消え入るように呟きを零すとグリフォンライダーは空域から去っていく。
「ふぅ、地上部隊が着たら反撃とおもっていたが、意外な終わり方だなぁ」
『あいつへ届かせる障害だったが、あいつがでてくるならその方が早いな』
 山崎が息を吐きながら目の前の決着をみすえると、藤村機が隣についた。
『そうですね‥‥次があるなら、そのときに。まずはこの街を守るのが目的ですから‥‥』
 無月も藤村に同意を示すと先に下へと降りていく。
 いくつもの思いを胸に中米の戦いの一幕が終わろうとしていた。