タイトル:【京都】VM武神祭・弐マスター:橘真斗

シナリオ形態: イベント
難易度: 普通
参加人数: 25 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/06/05 04:08

●オープニング本文


 5月5日は端午の節句。
 京都の町ではあちこちで催しを開いている。
 年末から慌しく、傷跡の残る町並みも幾分かは復興して常に前向きに楽しむ姿勢を見せている。
 昨年の京都市で開かれたVM(フォーゲルマイスター)武神祭は能力者達にも受け入れられ、大きな盛り上がりを見せた。
 その大盛況を受けて、5月5日においても筐体型ゲーム『フォーゲルマイスター』のプレイヤー達だけでVM武神祭はひらかれ、盛り上がったのである。
 しかし、等のマイスター達はどこか物足りなさを感じていた。
「やっぱり‥‥傭兵達と戦いたい‥‥」
「うん‥‥そうだね‥‥」
 赤と蒼のゴスロリ姉妹がフードコートでポテトを食べながら、戦いの結果を眺めている。
 その目はどこか退屈そうで、物足りなさげだった。
「もっと熱い相手と! 俺達はやりあいたいんだ! 去年負けた雪辱を晴らしたいがためにグランエミターのカスタマイズもしたのにさ!」
 熱血少年というオーラを放つ高校生が拳を握り締めて叫んだ。
 この少年の言葉の通り、イベントとしては盛り上がったものの、見知った同士での戦いに飽きている。
「わかったわ。じゃあ、私のほうでセッティングしてあげる」
 口々に物足りなさを呟くプレイヤー達の前に銀髪ロングの女性、レオノーラ・ハンビー(gz0067)が微笑みを浮かべてウィンクを飛ばした。
 本当の第二回VM武神祭の始まりである。

●参加者一覧

/ 白鐘剣一郎(ga0184) / 榊 兵衛(ga0388) / 鷹代 由稀(ga1601) / 如月・由梨(ga1805) / 宗太郎=シルエイト(ga4261) / キョーコ・クルック(ga4770) / 鈴葉・シロウ(ga4772) / クラーク・エアハルト(ga4961) / カルマ・シュタット(ga6302) / 瑞姫・イェーガー(ga9347) / イスル・イェーガー(gb0925) / 石田 陽兵(gb5628) / エイラ・リトヴァク(gb9458) / レティア・アレテイア(gc0284) / ソウマ(gc0505) / 殺(gc0726) / オルカ・スパイホップ(gc1882) / キャメロ(gc3337) / ヘイル(gc4085) / シルヴィーナ(gc5551) / ジュナス・フォリッド(gc5583) / 立花 零次(gc6227) / BEATRICE(gc6758) / 住吉(gc6879) / ユーノス・シーカー(gc7379

●リプレイ本文

●再会
「前回以来だからほぼ一年ぶりか‥‥」
 一年ぶりの来訪となる京都の『ドリームパレス』の店内を白鐘剣一郎(ga0184)は懐かしそうに目を細める。
 戦場とは違い、ライバルであり戦友であるマイスター達の間にはピリピリした緊張感はなかった。
「‥‥白鐘?」
「ブラウか、ツィノーバも久しぶりだ」
「うん‥‥久しぶり‥‥」
 見慣れたゴスロリ姉妹が剣一郎に声をかけてくる。
 一年という短い時間ではあるものの、年頃の二人の成長は著しかった。
 背も伸び、顔つきも子供から大人へと変化の兆しが見えている。
「しばらく見ない内に2人とも見違えたな」
「本当にそうですね。今日もよろしくお願いします‥‥といっても覚えているかな?」
 クラーク・エアハルト(ga4961)も軽く二人に会釈をした。
「別に、そうでもない」
 冷めたリアクションを返したツィノーバはそそくさと去っていく。
 ツィノーバの頬が少し赤いように見えた。
 少し離れたところでは人だかりと共にフラッシュがたかれる。
「ふっふーん、今日も会場の注目は由稀さんがいただきってーことで、はいはい、写真は個人使用のみならいいわよ」
 鷹代 由稀(ga1601)は先日発売されたフォーゲルマイスターのOVA版の隊長衣装に身を包んでいた。
 ゲームセンターから、携帯ゲーム、更にはアニメーションとフォーゲルマイスターの世界は広がっているのである。
「VM楽しみです。実は今日のために特訓してきました♪」
「安全なトレーニング‥‥と言っては言葉は良くないかもしれませんが‥‥無駄になることはないでしょう‥‥特に未熟な私などには‥‥」
 ゲーマーでもあるマイスターの他にもゲームに興味を見せたユーノス・シーカー(gc7379)やBEATRICE(gc6758)らがシステムなどの確認をしていた。
「わんっ! おとーさんとおかーさんと一緒にがんばって勝ってみせますですよっ!」
「シルヴィーは怪我しているけど大丈夫?」
「わん、だいじょーぶですよ!」
 尻尾があれば振り出しそうな勢いを見せているシルヴィーナ(gc5551)をレオノーラ・ハンビー(gz0067)が傍らについて心配そうに顔を覗き込む。
 元気な返事をシルヴィーナが養母となったレオノーラに答えていると、養父のクラークがやってきた。
「さ、そろそろ試合のようです。3人でがんばりましょう」
『来場の皆様にお知らせします。まもなく、武神祭を開催します。エントリーナンバーにかかれた筐体への搭乗をよろしくお願いします』
 ドリームパレス内にアナウンスが流れ、試合が始まろうとする。
 一般人対能力者の本気の戦いが幕をあけようとしていた。

●前哨戦
『そう。今日の私は騎士、ナイトである! あえて名乗ろう、世界を大いに盛り上げる為のジョン=スミスとでも』
 フレーム「ゴールドラッシュ」を装着し、槍と盾を装備させた雷電『飛熊』は金色の騎士といっても過言ではない姿へと変貌していた。
 操縦席の鈴葉・シロウ(ga4772)もマスクとマントで決めていた。
 もっとも、覚醒でもっこリしているため非常になんともいえない状態なのだが‥‥。
『メイド・ゴールド、アンジェリカカスタム【修羅皇】でるっ!』
 開始早々に漆黒のボディに縁だけ赤く彩りした愛機を動かしてキョーコ・クルック(ga4770)は物見台へと向かった。
 総勢26名の能力者達が計画していた作戦通りに部隊を展開させていく。
 急増で組まれたメンバーも多い中で統率の取れた行動ができるのは大きな戦いを乗り越えてきた歴戦の戦士だからだ。
『一足先にコア‥‥いえ、グランエミターまで行かせて貰いますね』
 すべてをブーストで振り切るつもり満々な如月・由梨(ga1805)はディアブロ改『シヴァ』で大門の方へと向かう。
『私の愛馬は凶暴ですよ‥‥いえいえ、一度は言ってみたい台詞だったので〜♪』
『最後まで生き残っていれば、確実にチャンスは訪れるんですよ。あとはそのチャンスを生かすだけ。現実もゲームも勝利の方程式は同じです』
 住吉(gc6879)が意気揚々とシュテルン・Gを動かし、ソウマ(gc0505)がディアブロ改『ウィズウォーカー』を動かして由梨機の後へと続いていった。

 ***

 進軍エリアの一つである堀には4機のビーストソウルチーム【爾来也衆】が能力者達の襲来を待ち構えていた。
「さて‥‥システム、戦闘モード起動!」
 石田 陽兵(gb5628)もビーストソウル改『パーシヴァル』を堀へと向かわせて、水中戦に入っていく。
『水中は僕のもの! ここは負けらんないよね〜。数が倍でも腕でカバー!』
 リヴァイアサン『レプンカムイ』を使うオルカ・スパイホップ(gc1882)は軽いノリで堀の中へと飛び込み、距離をとった。
『けもたまは特殊能力を使ったヒット&アウェイ戦法を使ってくるだろうから、僕は距離をとって魚雷を撃つよ!』
「おーけ、おーけ。じゃあ、前にでるからフォローよろしく」
 石田はオルカのシャチのような姿の機体を確認しつつM−042小型魚雷ポッドを4機のビーストソウルに向けて撃ちだす。
 散開しつつ潜水形態で加速をしてビーストソウル達が回り込んで試作型ガウスガンを発射してきた。
「おー、さすが手馴れているか。片方ずついくか!」
 ガウスガンで応戦しつつ石田は右側に接近して左腕に装備している高分子レーザークローで相手の装甲を引き裂く。
 高熱のレーザーを水中という冷却効果のある場所で爪のように使う武器は硬い装甲でさえも貫いた。
「そんでもってこいつもおまけだ!」
 一体のビーストソウルを掴んだまま右手のツインジャイロを回転させて減り込ませる。
 その隣にいた機体はブーストで加速し、≪システム・インヴィディア≫を作動させたオルカ機が蒼い燐光を排出口から出しつつ水中練剣「大蛇」で横から貫いた。
 二人の攻撃で2機が沈黙し、機体どうしてハイタッチを行う。
 その二人の背中に向けてM−042小型魚雷ポッドが放たれ、水中に泡の尾を退いてぶつかってきた。
「おっと、ちょっとゆれたな」
『一発くらいどうってことないよ』
 ぐらっときた衝撃を体で感じつつ、リアルな戦闘感覚に石田はにやりと笑った。
 オルカも同じなのか、楽しそうな声色が耳にくる。
「残りも片付けるか」
『ちゃっちゃと片付けて二人でバトリましょう〜』
 ターンをして2機の水中機が向かいあい、互いの力量を見せるために戦いだした。

●目には目を
「初陣です。ドキドキしてます。一緒に頑張りましょうわんわんお」
 110という意味を付けたワイバーンをデータに反映させたキャメロ(gc3337)は物見台へと向かっている。
 多数の猛者と共に参戦しているものの緊張感はぬぐえなかった。
『まずはイビルアイズに集中砲火だ!』
 同じ【白鐘班】の宗太郎=シルエイト(ga4261)の声を聞き、キャメロは135mm対戦車砲を発砲する。
 イビルアイズ改の≪対バグアロックオンキャンセラー≫の範囲内のために砲弾は明後日の方向に飛び着弾した。
「はうぅ、もっと射程の長い武器を持ってくるべきでした」
 キャメロが悔やんでいるところにイビルアイズ改からのバルカン砲の雨が降り出す。
『ゲーム世界の戦場とは如何なるものか、体験させてもらいます』
 レティア・アレテイア(gc0284)のイビルアイズ改『邪眼』の≪対バグアロックオンキャンセラー≫を機動させて、敵からの弾幕を同じようにそらさせた。
 カウンターの牽制射撃とばかりにレティア機が90mm連装機関砲を放つ。
 イビルアイズ改やウーフー改、ワイズマンにスカイスクレイパー改で構成されているこのエリアの防備は厳しく、弾丸がすれ違うばかりだった。
『こっちはワイズマンを叩く‥‥』
『了解です‥‥こっちを巻き込まないでくださいよ』
 【鷹代班】に所属するカルマ・シュタット(ga6302)のシュテルン・G『ウシンディ』と立花 零次(gc6227)のシュテルン・G『夜桜』が命中ダウンも気にすることなく斬りかかる。
 カルマの持つ巨大剣「シヴァ」に巻き込まれないように零次機は動き、ワイズマンを挟み撃ちにする。
 二機が特攻したことにより、戦線が崩れ各個撃破の体制が整ってきた。
『この一撃で‥‥落ちろ!』
 二人の挟み撃ちをものともせずに体中に付けられたブースターで回避し続けるワイズマンに向かってジュナス・フォリッド(gc5583)のアンジェリカ『ファースト・トリガー』がΔ・レーザーライフルを撃ち込んだ。
 飛び上がっていたところに横からの一撃を受けてワイズマンはバランスを崩し、そこへ追い討ちをかけるようにシヴァが振り下ろされて撃墜される。
 それと同時にスカイスクレイパー改も宗太郎機の一撃の刃を受けて倒れていた。
『今日の敗北を忘れんなよ。噛み締めて修練積めば、てめぇはもっと上にいける‥‥』
 宗太郎の言葉はどこか懐かしそうにそして、何かを思い出しながら言っているかのような重い言葉となる。
 電子線機部隊を蹴散らした一行は奥のエリアへと侵攻を開始するのだった。

●正面突破
 大きな門構えのある大門には2機のゼカリアが巨砲を携え、同じく2機の雷電改がガドリング砲を構えて能力者の侵入を待ち構えていた。
 だが、そこに突撃する部隊は他のどこよりも多数で強力なものだった。
『雷電相手にこの『忠勝』が後れを取る訳にはいかぬのでな。悪いが、我が槍先に掛かって貰おうか』
 榊 兵衛(ga0388)の雷電改『忠勝』を先頭に14機の鋼鉄の巨人が攻め入る。
『でかすぎるのも問題だよ‥‥』
『支援射撃に協力する』
 チーム【イェーガー】のイスル・イェーガー(gb0925)のディアマントシュタオプ『ラーゼン』と【榊班】に属するヘイル(gc4085)のシラヌイS2『HSII−テンペスト』が雷電と合間見える仲間を支援しだした。
 ダダダダダと激しく火を噴くヘビーガドリング砲の火線の中を盾を構えたアッシェンプッツェル『ヤクシニー』は突っ切り、肉迫する。
『機体を生かすのは上手いけど、それが欠点にもなるってね』
 操縦する瑞姫・イェーガー(ga9347)は相方であり夫でもあるイスルの支援に心強さを感じながらビームコーティングアックスを振り下ろして雷電改を攻撃していく。
 雷電の構えた盾にビームコーティングアクスが食らい込み、真っ二つに溶断した。
 【イェーガー】と共に動く【エアハルト家】も3人が互いをカバーしつつ戦闘に加わる。
『おーっし、あたしらは突っ切っていくぜ。門をぶち壊して突撃だー!』
 エイラ・リトヴァク(gb9458)のスカイセイバー『ワルキューレ・ミスト』を隊長機とする【エイラ班】は数の有利を生かし、敵機を押さえ込んでいる味方機を出し抜いて先行しだした。
『了解、これでも受けろっ!』
 ゼカリアの突撃式ガドリング砲をストライクシールドで受け流しつつ殺(gc0726)のスカイセイバー『天人』がエイラの指示を受けて大門を蜂の巣にして突破していく。
 波乱の展開に苦戦しつつも、マイスター達は楽しそうな声を上げて能力者達と相手取るのだった。

●一騎打ち
「ふふっ、1対1に何とか持ち込めましたか‥‥後は、本気でぶつかるだけ!」
 一足先にグランエミターEXが待ち構える天守閣に到着した由梨は眼を細めて微笑む。
 巨大剣と同じ名前をした愛機のシヴァは試作型巨大レーザー砲も構える単機強襲仕様だ。
『他を抜けてきて相手に来るなんて、こっちも嬉しいぜ!』
『やってやろぜ、兄ちゃん!』
『トリプルドライブ安定してるよ!』
 30mという巨大なスケールに巨大剣『シヴァ』にも負けない大降りの太刀をもったグランエミターEXがその眼をキランと光らせて由梨へと踏み込んでくる。
「少し無茶をしてみましょうか」
 想像していたよりも大きな迫力に驚くどころか楽しみを感じている由梨はシヴァを振り回して牽制を始める。
『甘いっ! グランシィィィルドッ!』
 ≪イクシードコーティング≫を張った可動式シールドでシヴァの一撃を食い止める。
「なんと‥‥」
『無敵剣! 一文字ぎりぃぃぃっ!』
 巨体に驚かなかった由梨が驚いた一瞬の隙にグランエミターEXが横薙ぎの一撃を繰り出して由梨機の装甲をきり裂いた。
「また、ここを斬られるなんて。面白い相手です」
 由梨は不敵に笑いはじめ、試作巨大レーザー砲を放つ。
『無駄なことを! グランシィィィルドッ!』
 再び可動式シールドを動かすグランエミターEXだったが、今度は由梨が動きを見せた。
「パターンが同じというのは慢心の表れですよ。もっと場数を踏みましょう」
 距離が近いことを利用すると共に、相手のシールドではカバーできないポイントに向けて由梨は練剣「雪村」を突き刺す。
『兄ちゃん!』
『これくらい平気だ!』
 さらにナックルフットコートγのパンチを突き刺して出来た雪村の傷口に叩き込み、試作型掌銃「龍破」を撃つ鮮やかな連続攻撃を繰り出した。
「これが本当の戦争を味わったものの戦い方ですよ」
『出力は大丈夫、まだいけます』
『兄ちゃん、オイラ達も本気でいこうぜ!』
『ああ、こんな強敵久しぶりだ。こっちも本気でいくぜ! ゲームだってなぁ、遊びでやってるんじゃないんだ!』
 由梨の言葉にグランエミターEXに乗った3人は焚き付けられ、巨大剣同士の激しい斬りあいが始まる‥‥。

 ***

『さて‥‥じゃ、始めようか』
 100mの距離をとった石田機とオルカ機が武装のリロード共にガンマンのごとく振り返った。
 先に石田機がガウスガンを撃つが、オルカ機の装甲を抜けることはなく、流線型のボディに流されていく。
『中々、改造が行き届いているみたいだね』
 あくまでも余裕を崩さない石田に向かってブーストタックルを仕掛けた。
 反作用で同じように吹き飛ばされるオルカ機だが≪エンヴィー・クロック≫で急制動をかけてバランスを保つ。
『まだまだいっちゃうよー!』
 ≪システム・インヴィディア≫を起動させ、流れるような動きで攻め込もうとした。
 「大蛇」のレーザー光を刃に変えてオルカ機が石田機を貫こうとした瞬間に石田機の魚雷発射口が一斉に口をあける。
『そう簡単にはね‥‥やられないっと』
 シュボボボボボと一斉に発射された魚雷が至近距離から直撃しオルカ機へダメージを与えた。
『うわわ、油断した〜』
『次の一撃、こいつに全てを賭ける‥‥勝負だ、オルカ君』
 既に倒しきった【爾来也衆】との戦いと先ほどの体当たりで機体へのダメージのでかい石田は最後の勝負とばかりに距離をとり、デッドウェイトとなった武装をパージした。
 ≪剛装アクチュエータ『インベイジョン』A≫とブースターを併用、一直線に近づき‥‥唯一持っている武器ツインジャイロで貫く。
『最近対人戦ばっかりなような気がする〜たのしいな〜!』
 意思なき自動操縦されたワームではなく、息を感じる戦闘にオルカは心躍らせながら動きだした。
 アクティブアーマーを使って石田機の突きを弾き、体当たりから魚雷ポッド、「大蛇」までのコンビネーションを返す。
『く‥‥俺は所詮、この程度だったか‥‥』
 この攻撃により石田機はリタイアすることとなった。

●弾幕シュート!
 敷地内へ入り天守閣へ続くエリアを走っていくKV達。
 3DCGでモデリングされていながらも質量感などを保ち、ゲームでありながらリアリティの高いものだった。
 大門を突破した部隊も次のエリアへ別れつつ、天守閣を目指す一行を弾幕の嵐が塞いだ。
『傭兵のヘイル。シラヌイS2、『テンペスト』で推し通る。なんてな‥‥フ、こうして名乗りを上げられるのもゲームならでは、と言ったところか』
 初陣となるヘイルも多くの仲間と戦い抜いたことでゲーム操作の自信もついてきている。
 相手がスナイピング重視のガンスリンガーとスピリットゴーストであろうと恐れることはなかった。
『雷電だからといって、鈍重な機体と思って貰っては困るな。我が鎧として、槍として鍛え上げたこの『忠勝』、ただの雷電とは違うぞ!』
 加速して間合いを詰める榊機に砲撃体勢を崩し、四方八方からの砲撃戦に切り替える。
 レーザーガドリングなどの武器を使い分けてくる戦術は手馴れたものであった。
 榊機に搭載されたファランクス・アテナイが火を噴くもスピリットゴーストもガンスリンガーもスキルを上手く使ったり、牽制射撃にとどめたりなどをして射程内に中々入らない。
『ようやっと骨のある相手みたいだ』
 ヘイル機がPCB−01ガトリング砲で反撃をして、ダメージの蓄積を狙う。
『数が同等になればやりようがありますよ〜。そーれそれそれ!』
 包囲しようとしていた敵機に横殴りをするように弾が降り注いだ。
 住吉機が十式高性能長距離バルカンを発射しながら中門エリアに乗り込んできたのである。
 更にはプラズマライフルの乱射が1機のガンスリンガーに撃ちこまれて沈んだ。
 爆発の後に立つのはキョーコ機である。
 更に、≪ブースト空戦スタビライザー≫を発動させて跳躍し、スピリットゴーストへ機槍「グングニル」をキョーコ機がさした。
『さぁ、この距離での攻撃なんてどうだい?』
 スピリットゴーストは両手でグングニルを掴むと肩に標準装備されている200mm4連キャノン砲を至近距離で撃ちこむ。
『ちっ、やってくれるね‥‥』
『まだです‥‥ロックオンキャンセラーは残ってますから、一気に攻めましょう』
 レティア機が残りの練力を使った≪対バグアロックオンキャンセラー≫を起動させて敵機の照準精度を落とした。
「こっちは‥‥シンプルな‥‥火力勝負ですか‥‥一方的に撃たれるのは‥‥少々大変ですね‥‥」
 死なない訓練と割りきってきたBEATRICEはデュラブルシールドを盾にして弾幕の張られる中を進み、スピリットゴーストに狙いを定める。
 真スラスターライフルのトリガーを引いて銃弾をばら撒く。
 操作感覚までコンバートされ、衝撃も筐体を動かすことで再現されているフォーゲルマイスターは実にいい訓練シミュレーターでもあった。
「すみませんが‥‥蔽物につかわさせていただきます‥‥」
 インファイトで闘う榊機やキョーコ機を遮蔽に使いながら、BEATRICEのパラディン『forces』は腰だめに真スラスターライフルを構えて撃ち続ける。
『ここを越えれば天守閣。人数じゃあいい勝負だろうが、傭兵の本領を見せてやるさ』
 ヘイル機も乱戦となった間合いに踏み込んではLRM−1マシンガンとRA.1.25in.レーザーカノンの二丁拳銃状態で暴れるのだった。
 しかし、間合いを取りつつスピリットゴーストはレティア機を狙って≪ファルコン・スナイプ≫を使って砲撃をしだす。
『よくも当てたわ。逝てもらうたる』
 大きなダメージを受けて、レティアが激昂したとき高笑いが響いた。
『フハハハ、この戦闘に介入させて頂くっ』
 レティア機を攻撃したスピリットゴーストに機槍「グングニル」が刺さり、押し倒すようにしてフレーム「ゴールドラッシュ」の眩しい騎士[ナイト]が現れる。
『派手に行くさ。ゴールドなだけに』
 ばさぁっとマントを翻して、更なる一撃を加えた金色の機体は仁王立ちのポーズを決めた。
『ありがとうございます、シロ‥‥』
 名前をレティアが言おうとしたとき、声がさえぎる。
『‥‥あえて名乗ろう、世界を大いに盛り上げる為のジョン=スミスとでも』
 最後までかっこよくを決めるシロウだった。
 コックピット内はあまりにも見せられない姿ではあるが‥‥。

●対決、真戦組
 二の丸ではディアブロ改に『誠』とペイントされた一団【真戦組】が待ち構えていた。
 何度もVMでは能力者達と戦ってきた兵(つわもの)集団である。
『狼ってのは、上さえ潰せば大人しくなんだよな‥‥行くぜ、合体技!』
 【エイラ班】のエイラ機が二の丸に先手で入ると僚機と共に連携攻撃を指揮官機に仕掛けた。
『自己領域開放、カウント開始行くぞ!!』
 殺機とエイラ機が交互に動いて敵機の攻撃をかいくぐり、銃撃を加えていく。
 懐まで飛び込んだら≪エアロダンサー≫と共に≪アグレッシブトルネード≫を起動させて機刀「獅子王」による一回目の斬り上げおこなった。
『今だ! ユーノス!』
『はい、わかってます!』
 続いてユーノスがVMのオリジナル機であるVVのファルコンスナイパーカスタム『シルフィード』に装備している機刀「陽光」で更に斬りあげる。
 殺機とユーノス機が同じ攻撃を二度繰り返して追い込むと、ラストのエイラ機が≪エアロダンサー≫と≪アグレッシブトルネード≫で加速し、BCアサシネイトクローを2発を至近距離で叩き込んだ。
『こいつで沈め!!』
 真デアボリングコレダーで頭部を掴み、エイラ機が地面へと真戦組の近藤ユウ機を叩きつける。
『すばらしい、連続攻撃です。でも、普通に僕がやられたと思わないでくださいよ‥‥今です、陣形『牙突』』
 ボロボロになっていながらも近藤が大きく叫ぶと、3機を取り囲むように機槍を携えて、≪パニッシュメントフォース≫で一撃を強化した残り5機の隊員たちが一斉に3機を貫いた。
 あえて隊長自らが囮になって、疲弊した瞬間を狙うという諸刃の作戦を近藤は取っていた。
『こういう動きも出来るのか、侮れないな‥‥』
 急所をかろうじて避けることは出来たが、機体への損傷が大きく殺が驚きとも感心ともいえる声をだす。
『副長の斉藤一輝‥‥推して、参る!』
 着地した1機が近藤機を庇うようにしながら機槍を構えた。
『我が名はユーノス。悪を断つ剣なんです♪ 勝負はこれからです♪』
 互いに名乗りあい、間合いを取り合ったときに一歩遅れた増援が到着する。
『ちょっと待ったー。前回はケリつけずじまいだったけど、今回はそうはいかないからね!』
 【鷹代班】の由稀が容赦なくガンスリンガーの機体能力≪DFバレットファスト≫を起動させてRA.3.2in.プラズマライフルをばら撒きながら弱った近藤機を狙いながらも真戦組を散らせた。
『斉藤さん、後は頼みます!』
 近藤機は少しでも由稀機に損傷を与えようとブーストで回避をしつつ、スラスターライフルを発射していく。
 他の機体が援護に回ろうにも真戦組の隊員達は既に陣形を整えて、攻撃を仕掛けてきていた。
『やったな‥‥。でも、まだ落ちるわけには!』
 鋭い機槍による連続突きに翻弄されつつもジュナスは≪SESエンハンサー≫を起動させてBCアサシネイトクローで反撃にでる。
 ビームを帯びた1.8mの爪が火花を散らしてディアブロ改の機槍を受け流す。
『これで‥‥ダウンだ!』
 練剣「メアリオン」もう空いた手に持たせ、横に薙ぎ払って深く斬りさいて間合いを取った。
 ユーノス機と斉藤機が戦いあい、乱戦状態となってくる。
『強敵は他にとられましたか‥‥燃え上がる戦いをしたかったのですが‥‥』
『ぷんぷーん、私だって〜真戦組なんですよぉ〜』
 ため息を漏らすカルマ機にシールドバッシュともいえる体当たりを仕掛けてきた機体がいた。
『沖田 司、いっきまーすぅ〜』
『気の抜ける相手ですが、腕は相応ですか』
『油断は禁物ですね‥‥そこっ!』
 巨大剣「シヴァ」を振るい、いなされたところへ零次機が≪PRMオフェンスコンボ≫で機刀「咲夜」とSAMURAIソードの二刀のコンビネーションを繰り出す。
『ですが、連携を分断できている今は、負ける気がしません』
『甘いわねぇ‥‥この距離だからって武器が使えないわけじゃないのよ?』
 カルマが不敵に笑った瞬間、近藤機が由稀機の放ったリアクティブ・ミサイルに撃たれた‥‥。
 
●風になる集団
『はっ、いい風だ‥‥ゾクゾクずるねぇ‥‥!』
 宗太郎機は敵対する青い機体を前に身震い一つ、脚部のホイールを回転させた。
『何とか分断はできた。向こうは二チームに任せてこちらはこちらで片をつけよう』
 白鐘機が、蒼いワイバーンを機槍「ロンゴミニアト」のチャージで追い込みながら宗太郎を鼓舞する。
『囮でも役に立ててよかったです。さ、さぁ、がんまりましょう!』
「もちろんさ、ハウンド!」
 キャメロ機も遠距離から支援砲撃を続けた。
 機体ダメージもひどいが、その代わり姉妹の分断に成功したのだから十分な成果である。
『以前より‥‥操作になれてる‥‥。機体も改造されてるね』
 ワイバーンのマイスター、ブラウも小鳥の囀りのような声をだしながら、応戦していた。
 一方の紅いワイバーンのツィノーバは【エアハルト家】と【イェーガー】の5人を相手にブラウへの連携をとめられている。
『単純‥‥私達姉妹、個別でも十分』
 冷たい声色を響かせて赤いワイバーンが5人を相手にしつつ、最も動きの鈍いシルヴィーナのアンジェリカ『アンジェ』に狙いを定め飛んだ。
『シルヴィー! 上から来るわ。ブーストで後退しなさい』
『わふ、でもおとーさんからはおかーさんの援護をしなさいっていわれてるです』
『後退しながら、リロードして射撃してくれればそれで援護よ』
『わん!』
 シルヴィーナ機をカバーする様にゼロシールドを構えたレオノーラのウーフーがツィノーバ機の真ツインブレイドの斬撃を防いだ。
『クラークも少しは怪我人の扱い方を考えなさいよ、ゲームじゃなかったら指揮官失格よ!』
『すみません! シルヴィー、危ない時は援護するから、無茶はしないでね』
 覚醒して気の強くなった嫁の言葉にクラークは萎縮してしまうが、彼も娘の負傷を気にしていなかったわけではない。試作剣「雪村」を構え、2機を護るように位置を変えた。
『夫婦の形もそれぞれだね‥‥タイミング合わせ‥‥行くよ、瑞姫』
『結びつきは、短くても、僕らの愛は‥‥、揺るがない』
 イスル機と瑞姫機は互いのリズムをあわせながら、襲撃してきたツィノーバ機へ仕掛けた。
『‥‥っ、ayn(1)、zwei(2)、drei(3)!!』
 イスル機が≪EBシステム≫を起動させてRA.1.25in.レーザーカノンやRA.2.7in.プラズマライフルを撃ちだす。
 ≪マイクロブースト≫を使ってツィノーバ機はその攻撃をかわしきったが、背後に回っていた瑞姫機の機盾槍「ヴィヴィアン」を受けてしまった。
『なるほど、面白い』
 ダメージを受けつつも、ツィノーバ機は飛び回って間合いを計り、ショルダーキャノンと真ツインブレイドの攻撃を繰り出し続ける。
『あっちも盛り上がっているようだが、こっちもフィニッシュさせてもらうぜ!』
 ブーストを発動させた宗太郎機が槍でブラウ機を縫いとめようと突き出す。
『望む‥‥ところ‥‥』
 ≪マイクロブースト≫で加速したブラウ機が突きをバックステップで避け、反動を利用したクロー攻撃を仕掛けた。
『そのタイミング、待っていたぜ!』
 宗太郎機が≪回避オプション≫を使い、全身に装備された高出力ブースターを吹かして側方回転し、居合い斬りのカウンターを繰り出した。
『ストライダーの疾風を‥‥舐めるなぁぁ!!』
 練機刀「白桜舞」がブラウ機の胴体を斬り裂き、脱落させる。
『すごいです、宗太郎さん。後はグランエミターですね』
『まだ、あちらが手間取りそうだ。援護に向かおう』
 仲間との協力で強敵を倒せたことにキャロメは素直に喜ぶも、喜ぶのは早いと白鐘はツィノーバ機の方へ二人と共に向かうのだった。

●試合の終わり
『また助けられたね、相棒』
 ゲームとしてもバグにか思えない残像を伴う動きをしたソウマ機がグランエミターEXに止めを刺すハイライトがディスプレイに流れている。
 試合結果は能力者側の勝利ではあるものの、悔しがっているマイスター達はほとんどなく、骨のある戦いができて満足そうであった。
「グランエミターへの搭乗経験が役に立ちましたね。これもキョウ運という奴でしょうか」
 大型ディスプレイに流れるハイライトを眺めたソウマは不敵に笑う。
「はじめてやりましたけど面白かったです。途中でやられちゃいましたけど、合体技も仕掛けれましたし‥‥シルフィードいい機体でしたぁ」
 ユーノスはフードコートでジュースなどを飲みながら熱く語っていた。
「え、シルフィード?」
 今回使った相棒の名前を口にしたユーノスに宗太郎が妙に反応を示す。
「どうかしたんですか?」
「いや‥‥何でもありません。いるはずないですから‥‥」
 たずねたユーノスに返ってきた言葉も要領を得ず、ユーノスの頭の上にハテナマークを出させるだけだった。
「それじゃあ、皆さん。記念写真を撮りましょう。集まってくださーい」
 クラークが声をかけると、傭兵達をはじめ、マイスター達が集まり記念の一枚が撮られる。
 戦いの記録、出会いの記憶‥‥一枚の写真にはすべてがこめられた。