●リプレイ本文
●CountBack
「こう‥‥寒い所から暑い所に来ると、気持ちがいいな」
漆黒のK−111『UNKNOWN』に乗ったUNKNOWN(
ga4276)は咥えタバコをしたまま着陸し、ハイチ軍の撤退を援護するように武器を構えさせた。
北国から中米へと飛んできた彼の言い分にも一理あるが、死体の山と壊れた戦車などのある戦場には似つかわしくない。
『気楽なのはいいですけど、敵がいつくるかわからないのですから、気をつけてくださいね』
三島玲奈(
ga3848)が雷電改『撃虎』で同じように逃げるハイチ軍を背にアスレード(gz0165)に向けて強化型ショルダーキャノンを構えながら下がる用意をはじめた。
『さて、不確定要素が大きすぎるな。出来る限り捌くとするか』
愛機のスピリットゴースト『ジャックランタン』に乗るジャック・ジェリア(
gc0672)も陽動に出向く3つのチームを支援すべく200mm4連キャノン砲を向ける。
あくまでも自分達は避難するハイチ軍の支援なのだ。
『つーワケで皆さん、ぐーっどらーっく!』
父親的存在のUNKNOWNと戦友であるジャックに向けて綾河 零音(
gb9784)が陽気に声をだす。
口の中が多少ひりひりするのを我慢しながら‥‥。
***
『久しぶりね、アスレード。闘技場の借りを返しに来たわよ。アスレードは私達が抑えるから、さっさと逃げなさい』
地上に降り立った冴城 アスカ(
gb4188)のシュテルン・Gが『Luzifer』が試作型スラスターライフルのトリガーを引いて弾をばら撒く。
8mの巨人が雷鳴のような音を放ち続けるが当のアスレードはおびえることなく、死体の山から飛んで避ける。
その間にも逃げ遅れていた軍人達も巻き込まれないように
『さてアスレードさん。貴方を満足させることが出来るかどうかわかりませんが、お相手をよろしくお願いしますよ』
アスカ機とペアを組むソード(
ga6675)のシュテルン・G『フレイア』が95mm対空砲「エニセイ」やファランクス・アテナイで逃げるアスレードを追いかけた。
火線が地面や木々を砕いてアスレードを追いかけ、横殴りの雨のように降り注ぐ。
「こいつぁ、たまらねぇなぁ‥‥ヤル気が見えるぜ」
ソード機の<PRMシステム・改>で火力を高めた攻撃は普通の人間であれば消し飛びそうな弾丸だ。
しかし、アスレードはそれを受け止めながらの楽しそうに笑う。
『2年前、よくも我輩のワイバーンを撃墜してくれたね〜』
アスレードが受身を取って転がるとドクター・ウェスト(
ga0241)の雷電改2が量産型機刀「大般若長兼」で斬りかってくる。
ワームを真っ二つにしてきただろう一撃をアスレードは瞬天足のような素早い動きで間合いを外れて避けきった。
「あのワイバーンに乗っていた馬鹿かぁ、名前はしらねぇがよく生きてたなぁ、あぁん?」
『君と同じように『自分より弱いもの』を相手にしてきたから生き残ってこれた、君もそうだろう〜』
「ほざけ、てめぇらがようやく強くなってきただけなんだよ。俺様をたぎらせるぐらいになぁ!」
『今度は機体だな。俺は、あまり得意ではないんだがな‥‥せっかくだから、相手をしてもらうぞ』
アスレードがニヤリとサメのような笑みを浮かべたところへ藤村 瑠亥(
ga3862)のシュテルン・G『パニッシャー』が追い討ちとばかりのソードウィングを向けてくる。
ソードウィングを受け止め、血の流れる手を見たアスレードは更に口元をゆがめた。
「ふんっ、機械なんぞに頼らないで生身でこれくらいやってくれれば俺様も暇しないですむんだがな!」
懐に飛び込んだアスレードが右拳に光をまとって藤村機をぶん殴る。
<神輝拳>と呼ばれる必殺の一撃で硬い完全装甲「月夜」をひしゃげた。
『くっ、馬鹿力は相変わらずか‥‥』
バランスを崩しかけたところを踏みとどまり、反撃にでようとする藤村機にアスレードが腕をつけたまま、『何か』をしようとする。
『そこまでです。貴方には贖って貰いますよ‥‥ナパームレディ‥‥俺の家族を死に追い遣った事を‥‥』
追い討ちをかけようとしたアスレードを終夜・無月(
ga3084)のミカガミ『白皇 月牙極式』から繰り出される機槍『ロンゴミニアト』が吹き飛ばした。
「ちっ、やってくれるじゃねぇかよ」
地面に叩きつけられ、転んだアスレードは血を流しながらも起き上がった。
そこに更なる追撃とばかりにユーリ・ヴェルトライゼン(
ga8751)のR−01改『ディース』から双機刀「臥竜鳳雛」の切り裂くような一撃が繰り出される。
撤退まで時間稼ぎをやれるだけやろうと、ユーリは長さ4.2mの二刀一組の連撃をアスレードへと向けるのだった‥‥。
●Gung ho! Gung ho!
零音のアンジェリカ改『D=バイルシュミット』からRA.1.25in.レーザーカノンが撃ち出されてアスレードの行く手を阻む。
当てようとする攻撃ではなく、あくまでも移動妨害の牽制だ。
『落ち着いて、ここで倒すのが目的じゃないよ!』
倒されても困るけどと小さくつけて、目の前で戦う味方を支援する。
『月狼の旗に集った仲間は皆俺の家族ですから‥‥』
砲撃の飛び交う中でも、執拗に無月はレーザーガドリング砲を叩き込んで、更にアスレードを追い込んで、ユーリの攻撃のチャンスを作った。
『容赦なくやるよ、遠慮していたらこっちがやられるんだから』
銃弾を撃ちつくして盾に得物を変えておいたアスカ機がアスレードを押さえ込もうと動く。
ガキィンとアスレードの周りにフォースフィールドが発生して、アスレードをその巨体で押し付けようとした。
『今です、試作型女神剣「フレイア」!』
アスレードの動きが止まったところでソードが剣を抜き、エニセイで釘付けにしながらアスレードに向けて 刀身を二枚の翼で作られた刃をふりおろす。
ザシュと肉を切る音が響き、アスレードの肩口から血が溢れる。
「ちっ、まだ治りが完全じゃねぇか‥‥だが、面白いぞ、てめぇら! ちょいとばかり俺様も本気を出さないとなぁ!」
南米で負傷した腕をだらりと下げつつ、アスレードの気迫が増した。
<限定突破>と呼ばれるバグアの技の一つである。
『ケヒャヒャ、いろいろと力を使ってくれたまえ、それら一つ一つが貴重なサンプルになにるのだからね〜』
レーザーガドリングなどで攻撃を仕掛けるドクター機はアスレードの行動の変化、戦闘パターンを探りだした。
「ハンッ、ようやくこれくらいの力で戦えるようになったんだから、こっちこそてめぇらの実力を試してぇなぁ!」
ヒュッンヒュイとガドリングの雨を流れるように避け、アスレードは一気に足元へ駆け寄ると<神輝拳>をドクター機に叩き込み、そのまま<メガギブライフ>での練力吸収に入る。
『機体の燃料が瞬く間になくなっていくとは、味な技を‥‥脚部のバランサーを壊してもいるだと!』
味方機の足元へもぐりこまれては射撃で援護しようにも流れ弾のリスクが高いことを見越してのアスレードの戦い方であった。
***
「さっすが、アッスィー。かっこいいよね」
『喜んでいる場合じゃないだろ、でも、こっちに来る様子は無さそうだ。一分もたってないのにあそこまで追い込めてるんなら上等かもな』
アスレードの戦いぶりを、ハイチ軍の撤退を支援する零音はやや下がった位置から恋する乙女のような瞳でみていた。
『そうだな‥‥そろそろダンスを踊りにいくとしよう。きっと苦戦するだろうからね』
零音の気持ちに水さすかのようにUNKNOWN機がブーストを使って撤退を支援する側からアスレードへ仕掛ける側にでる。
「倒しちゃだめだよ、デートするんだから倒しちゃダメだからね!」
『少し激しくタンゴを踊るだけだよ』
零音の忠告を軽く受け流し、漆黒のK−111が加速した。
●Strider
「くっ、先ほどとは技の威力が違いすぎるっ」
藤村はハイプレッシャーの攻撃を避け、一撃を当ててくるアスレードに苦戦する。
密着するように間合いを詰めてくるため、援護射撃をしようにも藤村機にあたりかねないのだ。
一撃のパンチの重さを危険を知らせるアラートサインが示している。
『ここは全力回避です‥‥。俺らの目的は『陽動』ですから‥‥』
引き際を見極めた無月機は攻撃の手をやすめ、ブーストによる回避行動に転じていた。
家族とも言える一人の女能力者の仇ともいえるアスレードが相手だとしても、ここでやられるわけにはいかない。
迫るアスレードの拳を何とか双機刀で受け止め、脚の機爪を振り上げるユーリ機。しかし、敵は素早くそれを避け、傭兵達の機体の足元を移動していく。
『深追いは厳禁ですが、まだ満足されてないようですよ』
ソードは先ほどと同じく銃弾の雨をぶつけていくが、物ともせずに迫っては指弾などで反撃をしてくる。
強固に改造しているソード機はかすり傷がつく程度だが、当てる事、そして傷つけることができるだけでも十分に脅威だとソードは感じた。
『さて、少し邪魔させてもらうよ』
颯爽と風が吹くかのように戦場にUNKNOWNの漆黒のK−111が姿を見せた。
機槍「グングニル」を円を描くように構え、アスレードの心臓を狙って突く。
鋭い突きを交わそうとしたところへ、支援のために構えていたジャック機からミサイルポッドCが飛んだ。
事前改造は出来なかったが面制圧を考えるならば、有効に働く兵装である。
散らばったベアリング弾にアスレードが囚われていると左脚にUNKNOWNの槍が刺さった。
「ちっ、ドジったか‥‥。だが、やるようになったじゃねぇか傭兵ぇっ! 今日はこのくらいにしておいてやるぜ。次は生身で相手しようなぁ?」
血の流れる左脚の傷口を手で押さえるとアスレードはその場から駆け出していく。
『むむ、我輩が用意したチョコの出番がなかったではないかー。アスレードめぇ!』
捨て台詞を吐いていったアスレードの背中に向けて、ドクターも悪党のような捨て台詞をぶつけるのだった。
●End Of Battle
「また会う日まで元気にしてろよー!」
姿の見えなくなったアスレードの方向に向けて零音はひとしきり大きな声で叫んだ。
国境を越えて、ハイチ国内まで退いた能力者達はしばしの休息を取っている。
「レヲン君、アレは人間の部分なんて一細胞すら残っていないバグアそのものだ〜」
虚空に向かって手まで振っている零音にドクターは眼鏡を光らせつつ釘を指した。
アスレードの残忍さと、狡猾さを身をもって知っているのだから、当然の対応である。
「今回でちゃんと借りが返せなかったけれど‥‥勝ち目は多少見えてきたわ」
「そうですね‥‥アスレードにもKVで協力して当たれば勝てなくはないかも‥‥しれません」
「生身で相手をしていたら満足させられないだろうが‥‥そこまで到達して見返してやりたくもある」
アスカと無月、藤村はアスレードとの戦いの中で、倒すことへの意志を強く見せる。
届かなかった相手に少しでも手が届き始めた実感。
だが、それが油断と隣り合わせなのも事実だ。
中米の動き出した戦場、動乱の中で僅かではあるが希望を光を能力者達は見つける‥‥。