タイトル:【NS】ドラゴンハントマスター:橘真斗

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/03/09 01:27

●オープニング本文


「【North America Strikes Back】――つまり東海岸奪還作戦、か。悪くない」
 2011年2月、オタワには、UPC北中央軍とUPC大西洋軍の幹部と呼ばれる面々が集結していた。手にした資料を机上に下ろし、ヴェレッタ・オリム中将(gz0162)が一言、呟きを洩らす。
「ギガワームは、もはや我々人類の脅威足り得る存在ではありません。南米において可能であった事が、北米で不可能である筈はないと考えます」
 北米には、3機のギガワームが確認されている。彼らが立案した作戦は、ニューヨークとワシントンのギガワームを討ち、東海岸の都市を奪還するためのものだ。資料には、それを可能にするために踏むべき幾つかの段階が、詳細に書き記されていた。
「悪くない。だが、ユニヴァースナイト弐番艦とヴァルトラウテの常時参戦は難しいな」
「はい。それらを五大湖や東海岸へ常に投入できるほど、この世界は安定していませんからな。しかし、両艦ともに元々は北米の護りを固めるためのもの。出来る限りの便宜は図るべきでしょう」
 オリムの言葉に、UPC特殊作戦軍准将ハインリッヒ・ブラット(gz0100)が意見を述べる。オリムは深く頷き、暫く黙考した。
 シェイド討伐戦以降、他地域への援軍派遣はあれど大規模な戦闘の無い北米のUPC軍には、兵力と資金の蓄えがある。五大湖の膠着した戦況を打破し東進を決める材料として、十分な程に。
「よかろう。この作戦を承認し、ニューヨークとワシントンの攻略を目指す」
 居並ぶ将官、佐官たちへ、顔を上げたオリムの鋭い視線と低い声が飛んだ。
「まずは第一段階だ。五大湖以南の各都市を押さえ、前線をこのオタワから引き離せ」

●空翔る翼
『で‥‥お鉢が回ってきたわけですね、隊長』
「そういうことだ。ここで俺達『も』やることでアメリカの威信というか、鼓舞になるというわけだ」
 空をRF−15『ドライイーグル』がコロンバスに向けてアメリカの空を飛んでいる。
 F−15改での戦闘の限界を感じていたドローム社の研究員達が作りあげた複合装甲や試作M3帯電粒子加速砲などの装備が整えられたバグアに対応できるように強化されたF−15なのだ。
 ただ、あまりにも加速性能が高く、パイロットもそれなりの腕が必要であるため結果として其れほど量産はされずに現状は熟練のイーグルドライバーに支給されている程度である。
 同行しているのは傭兵のKV達だ。
『キメラとの戦闘も多少は楽になりましたが、ヘルメットワームはまだまだですのでいざという時頼りにさせてもらいましょう』
「生き残れていれば上等だ。イーグルリーダーより各機へ、敵のお出ましだ‥‥傭兵達も頼むぞ」
 戦闘を飛ぶ隊長のジェイド・ホークアイ大尉は随伴する4機のドライイーグルと共に戦闘に入る。
 コロンバスの上空には飛龍と思しきキメラが雲のように飛んでいた。
『ヒュー、まるでハリウッド映画だな』
「油断はするなよ、ドラゴンの鱗は鉄より硬いというのが常道だからな!」
 5機のドライイーグルからは狼煙とばかりのホーミングミサイルが撃ち込まれる。
 爆炎が周囲を包むが、飛龍キメラはその煙をつきぬけ牙をむいてくるのだった。
 

●参加者一覧

伊藤 毅(ga2610
33歳・♂・JG
秘色(ga8202
28歳・♀・AA
ほぅぷ(gb8877
20歳・♀・HD
ヘルヴォール・ルディア(gc3038
20歳・♀・CA
セリアフィーナ(gc3083
14歳・♀・HD
グリフィス(gc5609
20歳・♂・JG
月見里 由香里(gc6651
22歳・♀・ER
ユーリー・ミリオン(gc6691
14歳・♀・HA

●リプレイ本文

●Arrow Of Distiny
「‥‥さて、うちの初陣となるんやね。うちのかわいいワイバーンが飛竜相手にどれだけ戦えるか、腕試しやわ」
 月見里 由香里(gc6651)は愛機のコックピット内で一呼吸入れる。
 実戦の緊張を感じながらも目の前の敵の動きに注意した。
 ドライイーグルから放たれたミサイルの攻撃を受けきっても数は減っている様子はない。
『実戦慣れしていないのなら無理しなくていい。後ろを取られる事だけに気をつけろ、専門用語で言うところのチェック6だ』
 ジェイド・ホークアイ大尉が緊張を声色から感じたのか、フォローを入れてきた。
『はじめまして、イーグルドライバーの皆様。今日のドラゴン退治、共に宜しくお願いいたしますね』
『さて、飛龍キメラ。うーん‥‥ドラゴンなのかワイバーンなのか‥‥ドラゴンですと噛み付き、爪、爪、尻尾の4回攻撃だったでしょうか‥‥』
 二人の会話に挨拶と共にセリアフィーナ(gc3083)はどこで見聞きしたかも定かではないドラゴンについての知識を口にした。
「そんな連撃されたら、うちのワイバーンもいたそうやね」
 素直に信じてしまう由香里だが、そんな雑談も敵との距離が狭まればやってはいられない。
『わたくしも、この機体での空中戦初めてですわ。少し緊張します‥‥』
『ふむ‥‥允に映画のようじゃな、此の数もさながら‥‥さて、先ずは数減らしといくかの。此れで少しでも後が楽になると良いのじゃがのう』
 由香里の呟きにほぅぷ(gb8877)と秘色(ga8202)が高度を上げ、他の機体を巻き込まないようにしながらK−02小型ホーミングミサイルを放った。
 上空に1000発に及ぶミサイルが尾を描きながら現れ、飛龍キメラ達に牙をむく。
 秘色のディアブロは<パニッシュメントフォース>を起動させての強力なミサイルのシャワーだった。
 多数のミサイルにキメラたちはその翼をもがれ、地へと落ちていく。
『レーザーライフルWR−01C射撃モードに移行戦闘開始します』
 着弾に合わせて混乱するキメラ達に向かって、ほぅぷはマリアンデール『マリアン』の装備を変形させた。
 
●Dragon Hunter
「マスターアーム点火、ドラゴン1エンゲイジ」
 安全装置を解除した伊藤 毅(ga2610)は航空自衛隊での経験に沿った戦闘を仕掛ける。
「ドラゴン1、FOX2」
 遮光ゴーグルの奥の瞳が弱っている飛龍キメラを捕らえ、ロックオンサイトを合わせて愛機のフェニックス『Phoenix955』からUK−10AAMを発射した。
 追撃を受けた飛龍はまた、地面へと落ちる。
『今回も注意を踏まえて、頑張ってみるです』
 機械のように正確な動きを見せる伊藤機に感心しつつもユーリー・ミリオン(gc6691)は未だに群れを成す飛龍に向かってホーミングミサイルDM−10を撃ちだす。
 更に一体がこの攻撃で落ちた。
 群れを成すといっても半数が初手のK−02小型ホーミングミサイルに貫かれているため、数での優位はなくなっている。
 後は、腕の見せ所だ。
 
 ***
 
「‥‥さてと、ぼやぼやしてると名物軍曹とやらにドヤされるらしいからね‥‥手早く片付けるとする、よ‥‥! グリフィス、支援射撃!」
『了解っと、ぼやぼやしていると食っちまうぜ!』
 突撃していくヘルヴォール・ルディア(gc3038)のスカイセイバー『テュルフィング』にグリフィス(gc5609)のフェイルノートII『フランベルム』がスナイパーライフルD−02の支援を飛ばした。
 しかし、キメラとてやられているばかりではない。
 火炎弾を口から放ち近づいてくる鋼鉄の鳥を焼き尽くそうとしてきた。
「バレルロールッ! 胴体は硬いようだが羽ならばどうだ!」
 機体をきりもみ旋回させるようにして火炎弾を避けたヘルヴォールは3.2cm高分子レーザー砲を翼に向けてリロードされるまで撃ちつくす。
 翼にいくつもの穴をあけた飛龍は自由に飛ぶこともできずに空中で姿勢制御をするのが精一杯である。
 そこへ容赦のないグリフィス機からのスナイパーライフルD−02の弾丸が叩き込まれてまた、地に落ちた。

 ***
 
『大尉〜、俺達っている意味あるんですかね?』
「それを愚痴るな、言っていても始まらん。それに目の前の敵は弱そうなこっちを狙ってきているようだからな‥‥餌として逃げ回るのも仕事だ」
『ごもっともです。じゃあ、やりますか』
 久しぶりに共闘した能力者の戦いぶりは入隊したての軍人よりも上手く、そして連携の仕方もしっかりしたものになっている。
 その様子を眺めていたジェイドは口元を緩ませて機体を散開させて追い立てる作戦をとりだした。
 残ったドラゴンキメラたちはか弱き鳥を追いかけだす‥‥。
 
●Dog Fighter’s
 イーグルドライバー達が散開して敵をひきつけている間に、能力者達は二人一組のペア、いわゆるロッテを組んで確実にキメラの息の根を止める作戦で動く。
 接近戦を担当するものと、支援するもので統制が取れていた。
『翼を持つ生物が、最も自由に空を飛べる時代は終わったのだと教えて差し上げます!』
 <DFバレットファスト>を起動させて敵陣に切り込んだセリアフィーナのガンスリンガーからファランクス・アテナイとファランクス・ソウルの自動攻撃バルカンが火を噴く。
 合計して1000発を超える銃弾はいかに硬いといわれる鱗でさえもズタズタに砕き、中の肉を抉った。
 さらにR−703短距離リニア砲と強化型ショルダーキャノンを続けざまに叩き込んで落とす。
『ナイスやね。おっと、そっちにまた別のがきとるわ』
 一息つく間もなく、セリアフィーナ機を狙ってきたキメラに向かって由香里機がUK10−AAMを撃ちだして接近を阻んだ。
 イーグルドライバー達のミサイルよりもSESの力を引き出せている能力者の攻撃というだけでキメラのリアクションは大きく違う。
『おーおー、初の空戦という割にはしっかり仕事できてるじゃないの』
 気楽な隊員の賞賛が飛ぶ。
『竜相手にドックファイトとは面白いですね。いざ勝負。複数ロック確認。<掃射モード>いきます』
『背後は取らせぬ。任せておけい』
 ほぅぷ機が相方の心強い援護の約束を受け、直線状に並ぶキメラの群れに向かって固定武装であるDR−M高出力荷電粒子砲を発射した。
 独自のSESエンハンサーを搭載している為にできるプロトン砲のような高出力粒子砲が数体のキメラを消し炭にする。
 プシューと機体にある排気口から冷却のための蒸気が噴出し、ラジエーターが稼動する。
『見事じゃったぞ、しばし冷却時間がいるようじゃから、わしがフォローするぞえ』
 多数やられたことで、襲われる心配は少ないが、警戒するに越したことはない。
 秘色機は頭を採るように上空から敵に狙いを定めてスナイパーライフルRで撃ちぬこうとした。
 距離が開いているため、翼を狙うことはできなかったとしても気を引くことにはなる。
 翼を羽たかせて自らを狙ってきたキメラの牙を秘色機は機体を旋回させるロールで交わしつつ背後をとった。
『後ろがお留守じゃ、貰ったぞえ』
 UK−10AAMが連続で発射されてキメラの背後から襲い掛かる。
 狙う側から狙われる側へと逆転されたキメラは逃れようと翼を翻すが、狙った獲物を逃すことのないミサイルは無慈悲な爆音を響かせてキメラの体を穿った。
 残すところは5体をきるも、キメラ達も戦うことをやめない。
 口から火炎弾を吐き出し、または近づいてその鋭い爪で裂こうとしてきた。
『ブレイク』
 火炎弾の直撃を避けるため機体をぐっと傾けて伊藤機は対応し、爪で攻撃を仕掛けられたユーリー機はガドリング砲を叩き込んで接近を拒む。
『そのままの機動を維持、エネミーガンレンジ、FOX3』
 真スラスターライフルの銃弾が放たれ、避けようキメラは飛び上がる。
 だが、ユーリー機の強化型ショルダーキャノンが撃ち抜いた。
 伊藤機と互いの死角を補うように連携とっていたユーリー機は逃げ行くキメラの位置へ動くのも容易なことだった。
『機体に慣れるために、ひとつ勝負に出させてもらおうか!』
 ヘルヴォール機がキメラの目の前で<エアロダンサー>を起動させる。
 スカイセイバーの空中変形スタビライザーを統合した新システムが短時間ながらも人型での空中行動を可能にする。
『‥‥ま、シグルドに肖るのも悪くない。<アグレッシヴトルネード>!』
 ブレイブソードが淡く煌き、逃げるキメラの両翼を瞬く間に斬り裂いた。
 その姿はヘルヴォールが口にした神話の英雄のようである。
 トドメとばかりに頭部から尾まで一直線に斬り伏せるとヘルヴォール機は飛行形態へと戻った。
 残り1体となるとキメラは逃げ出そうと踵を返す。
 だが、余裕をもって戦いに出向いていたグリフィスは逃すことはなかった。
 このときを狙い、I−0「パンテオン」を温存しておいたのである。
『お前で最後だな! 全弾持っていけええええええ!』
 <ツインブースト・アタッケ>を使用し威力の高まった100発のミサイルが一斉に飛び出し逃げるキメラを包み込んだ。
『レーダークリア、ドラゴン1、RTB』
 レーダーからキメラの存在がなくなったことを確認した伊藤が帰還符号を口にする。
『イーグル1からドラゴン1へ。軍人だらけならいいが、新人傭兵には専門用語がわからないやつがいるかもしれない。気をつけた方がいいぞ』
 苦笑交じりにジェイドが突っ込みをいれるとRF−15とKV達は全機無事に基地へと帰還するのだった。
 
●Debriefing
「よ、お疲れさん。まさかこんなに早く片付くとは思っていなかったな」
 基地に下りて燃料の補給を受けている能力者達の前にジェイド大尉が姿を見せる。
「時間もあるようだから、ちょっと付き合ってくれ。いわゆる『デブリーフィング』だ」
「デブリには出たほうがいいですよ。帰還兵に戦闘中の状況とかを質問するものなんです」
 大尉の変わりに伊藤が補足説明をすると能力者達は後についていった。
 たどり着いたのは娯楽室兼バーである。
「ここはお酒を飲むところですよね? こんなところで重要な会議というか質問をするものなのでしょうか?」
 不安げなセリアフィーナがジェイドに尋ねると、ジェイドは軽く目配せをしてカウンターに座っている初老の男を紹介した。
「おう、良く来たな能力者のヒヨッコども。ジェイコブ・マッケイン軍曹だ。ここでデブリーフィングをはじめる! 初めて空を飛んだのはどいつだ!」
 ギラッと猛禽類を思わせる瞳でジェイコブが見回すと、キメラを相手していたときよりも怯えた様子の由香里が手を上げる。
「初めて飛んだ気分はどうだ?」
「シミュレーターは動かしていましたが、そのときは一人です。ですが、空では独奏や二重奏ではなくアンサンブルを響かせるものだと思いました」
 癖のある京都弁を抑え、連携についての重要性を由香里は軍曹に答えた。
「ふんっ、分かってるじゃねぇか‥‥次っ、格闘戦をやった奴がいたそうだな」
「私だ。自分の腕と機体とを合わせるために行った。勿論、数が減りチャンスがあったからだ」
 ヘルヴォールは胸をはり、堂々とした様子で答える。
「生きて帰ったってことは、それも悪い判断じゃねぇな。以上でデブリは終わりだ。ジェイド、こいつらと打ち上げをやっておけ」
「サー、イェッサー!」
 ジロジロと能力者達を見ながら、仏頂面の鬼軍曹は部屋を後にした。
「じゃあ、乾杯といくか。未成年はオレンジジュースか」
「ユーリーはホットミルクがいいです」
「わしは肴にアタリメが欲しいのう」
 緊張のほぐれた空気にユーリーと秘色が笑顔を浮かべてジェイドにねだる。
「ミルクなら‥‥あるか。カクテルも出せるからな、ここは‥‥。アタリメはない、チーズとジャーキーで我慢しろ」
 一人一人に飲み物の入ったグラスを渡すとジェイドはテーブルにツマミを置いて軽く掲げる。
「今日、こうして帰ってきたことに乾杯」
「「乾杯!」」
 グラスを掲げて飲み出し、ちょっとしたパーティが始まった。
(こういうのも楽しいな‥‥けど、大尉達はもっと命がけなんだろう)
 生きるか死ぬかの戦いをやっているからこそ、生きていることを喜べるとグリフィスは知る。
「うぐ‥‥なんか、きもぢわる‥‥」
「グリフィス! メディック! メェェディィィック!」
 そして、キメラにはやられなくても彼は酒にやられてしまい格好がつかなかった。