タイトル:Impalps〜Triathlon〜マスター:橘真斗

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/11/16 06:25

●オープニング本文


『ぱんぱかぱーん、ラストホープの傭兵しょっくーん。やっとかめだがね? 今回は新たなアイドル募集のお知らせにきたでよ、きいてくりゃあよ』
 アロハにサングラス、陽気な南国のBGMを流しながら米田時雄がUPC本部のディスプレイに姿を見せる。
『今回の募集は傭兵トライアスロンに挑戦してもらうだがねー。距離はスイム1.5km・バイク40km・ラン10kmのショートで行うでー』
『バイクサイクリングでは無く、本当のバイクを使うでよ。バイクがない子はこちらで用意するで、覚醒せずに大事に扱ってくりゃぁよ? ドラグーンの子らはそのままAU−KV使ってもらえばええでよ』
 米田はさらりと告げる。
 すると、ディスプレイにコースの模様が浮かび上がった。
 地図が示す場所は大阪のエイジア学園都市内にあるトライアスロン部御用達の練習コースである。
 平凡なコースではあるので、普通にやれば能力者であればゴールは可能だ。
『ただし、一つだけ普通と違うことがあるでよ。衣装ははじめの水着以外はこちらが用意したものを早いもの順でとっていってもらうでよ。着替えをも含めて頑張って欲しいだらぁ。提供はラストホープのULTショップだでな』
 最後の言葉に嫌な予感を誰もが感じる。
 あの青い悪魔の姿が脳裏をよぎったのは一人だけではないはずだ。
『水着は自分で用意すること、でないとそのままで泳いでもらうでよ。気をつけるように。それじゃあ、男女関係なしに参加をまっとるで、宜しく頼むでよー』
 手を振りながらカメラが下がり映像が消えた。
 芸能界入りに興味があるにしても中々に挑戦的な依頼である。
 はたして、参加者の運命やいかに‥‥。

●参加者一覧

最上 憐 (gb0002
10歳・♀・PN
二条 更紗(gb1862
17歳・♀・HD
ランディ・ランドルフ(gb2675
10歳・♂・HD
クラリア・レスタント(gb4258
19歳・♀・PN
正木・らいむ(gb6252
12歳・♀・FC
エリノア・ライスター(gb8926
15歳・♀・DG
吹雪 蒼牙(gc0781
18歳・♂・FC
南 星華(gc4044
29歳・♀・FC

●リプレイ本文

●選手紹介
『さぁ、始まりましたアイベックス・エンタテイメント主催のコスプレトライアスロン! 美男美女が集まっています』
 気合の入ったMCが場を盛り上げる。
 能力者が行うトライアスロンという中々お目にかかれない企画に大阪にいる人々やローカルTV局のカメラが競技の行方を見守っていた。
『それでは選手の紹介をしていきましょう。1枠、最上 憐 (gb0002)ちゃん10歳。食べることが大好きなようです』
 カメラが切り替わると、びちびちと跳ねる魚を口に入れながら器用に犬掻きをする憐が映る。
「ん‥‥。魚、美味しい。天然もの。一番‥‥」
『続きまして‥‥2枠、二条 更紗(gb1862)ちゃん。17歳、意気込みは『狙うは優勝ただ一点、やるからにはこれぐらい狙わないとね』だそうです』
 憐に続き隣でさらしを巻いて泳ぐ更紗はペースを押さえつつも、抜ける相手は抜いていった。
『3枠、ランディ・ランドルフ(gb2675)くん。10歳の少年です。意気込みは『まだ子供ですけど実戦経験とかはそれなりに積んでます。よろしくお願いします』とのことです』
 カメラがランディを捕らえると、ヒーローマフラーをなびかせながら体力のセーブをしつつ泳いでいる。
『4枠、クラリア・レスタント(gb4258)ちゃん、17歳。『皆さん初めまして! クラリア・レスタントです。精一杯頑張りますので、宜しくお願いします!』と元気なコメントをもらっています』
 言葉どおりカメラに追いかけられるクラリアはチャンスを狙うためにセーブをしながら赤い瞳で平泳ぎを続けていた。
『さぁ、残りは4選手です。5枠は正木・らいむ(gb6252)ちゃん、12歳。甘いものが大好きだそうです』
 自己紹介をされたらいむは水着を用意し忘れたのでワンピースのままで泳ぎづらそうながらも持ち前の元気で押し切ろうとバタ足で進む。
『6枠はエリノア・ライスター(gb8926)ちゃん、1‥‥8歳。『誰が呼んだか疾風怒濤のダブルトルネード! 暴風のエリノア様たぁ、私の事っ!! 学校も訓練もズルけちゃいるが、勝負とあっちゃー黙ってらんねぇ!! そうだろ兄弟ッ、盛り上がってるかァーー!? Yeaaa!!』というコメントをもらっています』
 スクール水着を着て、エリノアは少々嫌そうな顔をしつつも泳ぎを続ける。
 平らな胸は抵抗を生むことなくすいすいとその体を前へと押し上げていった。
『残る選手は二人です、7枠は吹雪 蒼牙(gc0781)く‥‥さん、23歳。今回は仮装が楽しそうだったからの参加だそうです。褌姿で泳ぐ姿は男らしさを感じさせてくれますね』
 苦手な自己紹介を丸投げしていた吹雪は外見年齢に驚いたであろうMCの声に苦笑をする。
 ランディとは違う白いマフラーをつけながら泳ぎの方を無理の無い程度に続けた。
『最後の8枠は南 星華(gc4044)さん29歳。元ファッションモデルの経験があるそうで、今回は復帰への第一歩となるようです』
 颯爽と着物を脱いで競泳用水着姿で飛び込む星華の映像が流れたかと思うと、現在の中継模様が映った。
 バランスの取れた肢体が水を跳ねてゴールへと進む。
『以上、8名の男女による特別レースが行われています。皆さんがんばってください。それは一旦、CMにはいります』
 MCが声援を送った後、アイキャッチと共にCMへと流れこんだ。
 
●お着替えタイム1回目
 スイムでは各自が温存方向で目立った駆け引きは行われずにゴールしていく。
『犬掻きながらも最上選手が一番で着替えエリアに入りました。衣装ごとに試着室がありますから、そこで着替えてください』
 MCが説明をするとカメラが試着室を映し、扉にはさまざまな衣装の名前が貼られていた。
「‥‥ん。着替え。面倒臭い。全裸じゃダメなの? ‥‥仕方が無い。頑張って。着る」
 濡れた体を拭くためのタオルを受け取り体を拭きながら憐はワンピースの試着しつに行く。
 1.5kmを3分10秒というすさまじい速さなのはさすが能力者だ。
「‥‥ん。バイク。KVよりは。運転。楽だけど。とりあえず。安全第一で。行く」
 着替えを終えた憐はそのままバイクに跨って走りだす。
『さぁ、1分遅れながらも次々と選手がはいってきます。レスタント選手、二条選手、南選手がそれぞれセーラー服と褌、そしてチャイナドレスを選んでいきます!』
「アイドルに興味はありませんが、こういったスポーツ関連に参加できるなら考え物ですね」
 すばやく着替え終わった更紗が愛機のアスタロトへ乗り、先に走って言った憐やクラリアを追いかけるようにアクセルを回した。
「見えそうで見えないギリギリを楽しんでもらおうかしら」
 艶やかな笑みを浮かべた星華はチャイナドレスのスリットから白い足をだしながら自前で用意したSE−445Rで更紗に追随する。
「悪いけど、お先に。一度、着たかったんだよ」
「仕方ない!」
『吹雪選手がUPC軍服を一歩の差で確保、ランドルフ選手はカンパネラ学園制服を着ていきます。マフラーを手放さない二人は良いライバルのようにも見えます!』
 MCが二人を盛り上げていると、二人はそろってAU−KVのパイドロスに乗って走っていく。
「ちぃ! 油断しすぎたぜ。だが、バイクで追い上げて見せるぜ。不良を舐めるなよ!」
 カメラを向けられたエリノアは意気込んで残っている中でスーツの試着室に入った。
 水着の上からスーツを羽織り、パイドロスで前の男二人に続く。
『更に遅れて正木選手が到着しました。それでも5分台の記録はさすがとしか良いようがありません』
 服の抵抗のために苦労をしたらいむはクシャミ一つしながら水から上がり、ブレザーを着ながら前走者を追いかけるのだった。

●イニシャルDragoon
 マイペースに走る憐に向かって、バイクに乗り慣れているドラグーン達が追い上げにかかってくる。
「迫る〜バグア〜! 悪魔の軍団ってね! バイク戦闘なら僕たちの本領発揮さ!」
 真紅のマフラーをなびかせてパイドロスを乱暴に操るランディがカーブを曲がったところから姿を見せた。
「こんな道じゃ風神を止められないよ!」
 ランディと同じようにパイドロスで追い上げてくる吹雪は愛機と自分に自信を持っている。
『おーっと、ここで激しい追い上げがきたぁぁぁ! これが噂に聞くドラグーンの底力かぁ!』
 MCの声が更に熱っぽくなってきた。
 安全運転を心がける憐にドリフトをかけ、火花を散らしながら迫るドラグーンたちが見える。
 40kmと長い距離で駆け引きが見え隠れしていた。
「振り回されないように‥‥あの人の、普段見れない顔が見たいから、私はがんばれる」
「まだ‥‥まだ、ここは温存しないと」
 更紗はすぐ前を走るクラリアをペースメーカーに憐との間合いを詰めることを念頭においている。
 無理をせずシフトをだんだんと上げるためだ。
「バタバタしたものは巻き込む危険があるから、良い子の皆は要注意だぜ! おらおらおらぁぁっ!」
 併走するカメラに向かって注意を促したエリノアがぴっちりしたスーツ姿でトップ陣営を追いかける。
 峠にそって続くカーブの多いコースは速度が出すぎているとスリップする危うさがあった。
「本職のドラグーンにだって負けられないわ。私だって自慢の愛車できているのよ!」
 全力を出すことを決めていた星華もここで大きく加速させる。
 普段は自転車で走るコースを高速のバイクで走るのは危険を伴うがスリリングなレース展開に目が離せない。
「うはははは! わらわも頑張って走るのじゃ♪ 『あうと・いん・あうと』で追いついてみせるのじゃ」
 一番最後を走るらいむも少しでも距離を縮めようとバイクを操りコースを走り続けた。
 半分ほど言ったところで全力を出すランディと吹雪、星華、エリノアが憐を追い抜き、憐に引っ張られる形で更紗となる。
『これは激しいトップ争い、バイクによる主意争奪戦が既に始まっています!』
 怒涛の展開にMCの声が大きくなり、峠の休憩場で見物する観客も興奮した様子でレースの行方を見守っていた。
 果たして、誰がトップで次の着替えにはいるのか‥‥。

●お着替え二回目
『トップでランドルフ選手と吹雪選手。今回は服を争うことなく入っていきます! この追い上げはすさまじい!』
 ワーワーと聞こえる歓声の中、走りだしてから一時間とかからずにトップ陣が到着した。
 AU−KVをアーマーモードに変形させて吹雪は防火耐熱服をとり、ランディはバイクから降りて迷彩服の方へと向かう。
「高機動型パイドロスを選んだというのにAU−KVを装備したら服が出せない! 変身ヒーローネタが〜〜!」
 今回のルールに涙しつつランディは吹雪と共に試着室を出て走りだした。
『ほぼ同時に入ってきたのライスター選手! こちらも追い上げがすばらしい! 抵抗の無い服装のチョイスが生きています!』
「AU−KVは反則くさいから置いていくぜ。私のチョイスは修道衣だ!」
 修道衣の試着室にパイロドスをおきながら入っていく姿は少女だが漢らしい。
『10分遅れて南選手が到着しました! 選んだのはメイド服のようです』
「このままだとご主人様がピンチだわ、少しでも走りやすくしないと」
 メイド服に着替え終わった星華が前を追いかけやすくするためにメイド服の裾を破ってスリットをわざと作って走り出した。
 意外な行動だが、男性の視線が星華の足に釘付けになる。
『更に10分後でレスタント選手、二条選手と最上選手がほぼ同着! 能力者であればまだトップを狙える圏内でしょう!』
「ここからが全力をだしますよ!」
「‥‥ん。給水ポイントとか。無いのかな。微妙に。結構。お腹が。空いて来た」
 更紗はボーダー水着、憐はレオタードを選び、クラリアは燕尾服を着ながら走りだした。
 平らなボディラインにぴったりした両者の姿はある種の人間にはたまらない魅力に満ちていて、反面窮屈そうな燕尾服を押し上げるクラリアの肢体も魅力がある。
「逆転はここからです!」
 1分の差を縮められないままに服選びに入ってしまった三人はラストスパートのために気合を入れた。
「むむむー! 好みの衣装は取られてしまっているのじゃ!」
 らいむは残ったドレスを身に着けて追いかけていく。
 <迅雷>を使ったらいむは観客からは瞬間移動でもしたかのような速さで走り、時間の差を縮めようと加速していった。
 
●ラストラン!
 10kmという距離を能力者達は各々の作戦で走りだす。
『ここでの一番は吹雪選手! AU−KVの上から防熱耐火服をつけたままで走っていきます』
 キュィィンと脚部のタイヤを回転さて吹雪は突き放しにかかった。
「まだじゃー! わらわは負けてないのじゃ!」
 その後ろを<迅雷>で通常の凡そ3倍の速度で駆けてきたらいむが吹雪を追い抜き、そのまま全力疾走にかえて突き放しにかかる。
『開始から一分とたたずに順位が大きく変動していきます! さらに、最上選手の追い上げがすさまじい!』
「‥‥ん。お腹が。かなり。空いて。来たので。スパートを。掛けて。ご飯を。食べに行く」
「そうです。ここが全力の出しどきですから!」
 さらに全力疾走をしてくるクラリアが続けて吹雪を追い抜いた。
 ズドドドドという音が聞こえそうなほどに足音を立てて憐が走り込んでくる。
 彼女の原動力は空腹だが、小さい体からは考えられないほどの力で吹雪を更に抜いていった。
『このままおいて行かれる真似だけはしたくない!』
 一瞬にして続けて追い抜かれてしまった吹雪は抜き返そうとダッシュする。
『人の邪魔をするより、一人でも多く抜く方を選ぶ!』
 更紗が<機鎧排除>をして銀色の髪を風に流し、紫色になった瞳でゴールを見つめる。
 残る距離は500mをきり、ラストスパートを仕掛けてきたのだ。
 全員が他者を妨害することはなく、ただ只管にゴールを目指して走り続ける。
 『GOAL』とかかれた看板とゴールテープが迫り、仮装した能力者達のラストランに終りが見えてきた。

●勝利者
『コスプレトライアスロン優勝者は最上選手! 第二位はレスタント選手! 三位は二条選手となりました。皆様3人に惜しみない拍手をお願いします』
 表彰台の上に乗った3人は両手を上げたままで拍手をする観客に走りきった喜びを笑顔という形でみせる。
 トップ3に惜しくも入れなかった能力者達もお互いの検討をたたえあうように拍手をしていた。
『皆さん、お疲れ様です。皆さんからの事務所への希望は概ね受理いたしました。各方面のアイドルとしてがんばって頂きたいと思います』
 走りきった能力者達を称えるようにアイベックス・エンタテイメント社長の米田時雄がスーツ姿でまじめな挨拶を行う。
 その目は新しく芸能界という戦場で戦うだろう能力者達を微笑ましく眺めていた。
『‥‥今日は一つのゴールですが、新たなスタートです。感動と希望を共に与える良い仕事をしていきましょう。以上です』
 長めの挨拶を終えて、米田はマイクを置く。
 新たな衝撃[インパルス]が走り出した瞬間だった。