タイトル:【京都】鬼門を叩けマスター:橘真斗

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/09/14 11:18

●オープニング本文


●鬼門発見
 ―京都市二条城―
「調査隊の方が戻ってきましたな‥‥朱貂と思われるものの写真等が手にはいっておりますぞ」
 白河丹生が部下の能力者に集めてもらった写真やレポートを広げた。
「やはり、沖那ににておるの‥‥何ゆえ、このような姿なのか‥‥」
 平良・磨理那(gz0056)は丹生の持ってきた写真に写る朱貂と山戸・沖那(gz0217)の似すぎる部分を首をかしげて悩む。
「そのことについては私の方からお話します。沖那には双子の兄がいました。沖那を出雲に預ける前に蛇キメラに襲われて行方知れずとなっていたのです」
「双子ゆえ、瓜二つということであったか‥‥なるほどのぅ」
 沖那の母親である天羽君からの説明を受けた磨理那は頷きながら茶を口につけた。
 今時点で現れた理由は分からないが、京都を狙う目的はおぼろげながら浮かんでくる。
 『復讐』という言葉が最も強いが、果たしてそれが真実なのかはまだ分からない。
「それともう一つ、道中での調査ではこのようなものが出てきましてな‥‥」
「方角は南東じゃが‥‥まるで鬼の出る場所、鬼門じゃの」
 京都市に住む人々にとって北東が忌むべき方角の象徴として鬼門の名称と共に認知されていた。
 そこにはキメラが屯(たむろ)する施設が撮影されていたのである。
「大量に来た理由はこれかや。散発的に襲撃はいるもののUPC京都軍でずっと耐え切るのも限界じゃからの。ここは一度潰すべきじゃな」
 京都市に隣接した山城の土地にある工場を破壊すべく、再び能力者への要請を磨理那は行った。

●鬼の宴
 ―山城 北条屋敷―
「朱貂様、ネズミを生かしていてよかったのでしょうか?」
 金髪でポニーテール姿の女性が明らかに年下の少年に敬語で確認をとりだす。
「まぁ、向こうにもある程度流しておかないとな、楽しさが半減するだろ?」
 女性の言葉に朱貂はニヤニヤと笑いながら答えた。
 調査に能力者がいるのを知っていながらもあえて手を出させなかったのである。
 余裕の表れなのだが、真意は分からない。
「工場を守るためにヤクシニーは修羅を連れてお出迎えしてやれよ」
「御意。貴方様の意のままに‥‥」
 ヤクシニーと呼ばれた女性は頭をゆっくり下げて屋敷を後にした。
 

●参加者一覧

熊谷真帆(ga3826
16歳・♀・FT
山崎 健二(ga8182
26歳・♂・AA
風羽・シン(ga8190
28歳・♂・PN
麻宮 光(ga9696
27歳・♂・PN
赤宮 リア(ga9958
22歳・♀・JG
火柴(gc1000
13歳・♀・SF
和泉 澪(gc2284
17歳・♀・PN
ハーモニー(gc3384
17歳・♀・ER

●リプレイ本文

●鬼の巣
「お〜‥‥うぢゃうぢゃと鬼がいるいる。こりゃ渡辺綱も吃驚ってぇヤツだ」
 戦場となる場所へ到着した山崎 健二(ga8182)はコックピットの中で両の拳を叩きあう。
 どこかの企業の工場らしいが、雰囲気は暗く、周囲に鬼のような姿をしたゴーレムと、鬼のキメラがいた。
『ちなみに、次の京都の代表はその末裔といわれている渡辺鋼って奴さ』
 山戸・沖那(gz0217)の破曉から突っ込みに近い通信が届く。
『さて、温泉に遊園地、祭りとしばらく平穏だった京都がまた慌ただしいな。沖那とも一年ぶりの共闘になるな』
 健二や沖那と共に鬼キメラ退治を担当する麻宮 光(ga9696)も阿修羅で先陣をきった。
「よし、援護をするぜ。断末魔の叫びを上げろッ! Acht−Acht(アハト・アハト)!!」
 長射程を誇る8.8cm高分子レーザーライフルが火を噴き、一体の鬼キメラの頭部を撃ち抜く。
 それが口火となって鬼キメラや鬼ゴーレム達が一斉に動き出した。
 
「私の故郷が‥‥こんな事って‥‥」
 京都出身の和泉 澪(gc2284)は目の前の光景や、京都市の現状を見てきて心を痛める。
 ラストホープに来る前は平和そのものだった景色が一変していた。
「あれが‥‥鬼! 撃ち抜きます!」
 射程内に入ってきた敵に向けてスナイパーライフルD−02を撃つが、遠くの敵には中々当たらない。
 ズシンズシンと大きな足音をたてながら迫るゴーレムを<強化型SES増幅装置『ブラックハーツ』>で増幅された<フォトニック・クラスター>が包み込む。
『まずはまとめて焼いてやるよ! フッ、アッハッハハハハ!』
 近くにいた鬼キメラさえも巻き込む一撃が火柴(gc1000)のペインブラッドからハイになった火柴の声が戦場に響いた。
「近づかないといけませんね」
 早々に切り上げて澪のディアブロは火柴と共に鬼ゴーレムへと肉迫し、KV用の日本刀である機刀「雪影」で斬りつける。
 深く傷を受けた鬼ゴーレムだったが、金棒の様にも見えるハンマーを鬼ゴーレムは澪へと叩き返した。
「痛い‥‥だけど、鬼に京都を渡す訳にはいかないんだから!」
 強く叫んだ澪が震動でどうにかなりそうな体を支え、自動火器のアーバレストを零距離から撃ちこみ返す。
 その後ろを火柴機がレーザーガトリングで援護をはじめた。
 鬼の巣を切り開くために鋼の騎士は闘い続ける‥‥。
 
●空を舞うもの、地を這うもの
 空中では高高度で戦闘が繰り広げられていた。
 風羽・シン(ga8190)のシュテルン・Gと鹵獲され、黄色を中心としたカラーリングに塗り替えられた敵のアンジェリカとがぶつかる様に互いの距離を詰める。。
「双子の兄だろうが鬼だろうが‥‥牙を剥いて来るってんなら、それに応じた御出迎えをしてやろうじゃねぇか」
 シンはコックピット内で一人呟き、敵機に向かって<PRM>で防御力を高めてリア機の攻撃のチャンスを図る。
『アンジェリカのバグア仕様‥‥その性能、見せて戴きましょう!』
 先手を取ったのは赤宮 リア(ga9958)だった。
 <SESエンハンサー>を使用した試作型G放電装置を放ち、起点を作る。
『天使という名前で呼ばないでください。この機体は夜叉‥‥朱貂様に頂きし力の一つ!』
 敵機からハスキーな女性の声が響いた。
 G放電装置の雷撃を正面にフィールドを作って突き抜けて、プロトン砲を撃ち込んできた。
 警戒をしていた攻撃のために、リアは比較的余裕を持って回避しきる。
『流石はバグア仕様‥‥しかし、この熾天姫だって普通のアンジェリカではありませんっ!!』
 リア機は回避の旋回のままに背後を狙おうと回るが夜叉はその場で縦に回転し、レーザー砲の弾幕を張ってきた。
「おいおい、セコイことやってんじゃねぇよ!」
 弾幕に煽られたリア機を援護すようにシンが当てることよりも牽制をかねた嫌がらせのごとく試作型『スラスターライフル』を打ち込む。
『面倒な! ならば受けるが良い、地獄の業火を!』
 スラスターを大きく噴かしてシンの攻撃を避けた夜叉は全身から250発のミサイルが飛び出してシンとリアの二機を包みこんでいった。
 
 地上ではゼカリアと雷電が戦闘に一歩遅れて行進を続けていた。
 連携を第一に考えたためと施設破壊を中心としているためである。
「前相談でひっかき回してしまいましたので、そちらの汚名返上をさせて頂きます」
 ゼカリアのコックピットではハーモニー(gc3384)が両手で頬を軽く叩いて気合を入れていた。
 未熟さを反省しつつも、それ以上に楽しもうと操縦桿を強く握り締める。
『たぁーっ正義の土建屋真帆ちゃん参上♪ 悪い工場をやっつます!』
 雷電の方にはハーモニーと同じ様に楽しむ気満々な熊谷真帆(ga3826)が乗っていた。
 敵は他の陸戦部隊が率いてくれているため、施設へ攻め入るチャンスではある。
『敵が見えてないなら、一気に突撃しちゃいますよー。ブーストオン!』
「りょ、了解です! あれ、でもそんなに近づく必要は無いと思うんですけど」
 ジャイアントハンマーを振りかざした真帆機がノリノリで突撃していくのをハーモニーが慌てて追いかけた。
 目に見えるパイプやタンクから真帆機がハンマーでぶったたけば、クシャリと潰れて爆発する。
 ハーモニーは真帆機の奮闘を援護するように固定武装である420mm大口径滑腔砲を撃ち込んで手近な施設から火の海へと叩き込んだ。
 47mm対空機関砲「ツングースカ」や7.65mm多連装機関砲を使ってみるものの対フォースフィールド用にインパクトを高めた大口径滑腔砲が一番効果がありそうである。
「では、このままやっちゃいましょう!」
『致命傷を与えずとも牽制出来ればよいです! それ!』
 工場の襲撃に気づいた一部のゴーレムがハーモニー達の方に迫って来るものの、真帆機がスナイパーライフルD02と試作型「ブリューナク」で牽制をする。
 しかし、どちらも一発撃ってのリロード兵器のため、ハンマーのために行動制限のかかっている真帆機では敵の数を捌ききれない。
「敵の攻撃はこちらでやりますから、熊谷君は施設破壊に回ってくださいな」
 リロードに余裕のある武器を持ったハーモニーがゼカリアが寄ってくるゴーレムを牽制し、戦場を炎の赤に彩っていくのだった。
 
●鬼退治
「さっさと片付けたいな‥‥」
 光はミサイルポッドCや試作型「スラスターライフル」を撃ち放ち鬼キメラをミンチにしていく。
 体を削られて痛がるが容赦をしている暇は無かった。
 事前のミーティングで不安のあったハーモニーも現状はうまく立ち回っているようで、一安心する。
『喰らえ! 裂け鬼斬りィ! ‥‥なんつってな』
 健二機も動きの鈍い鬼相手ということもあり、真ツインブレイドを振り回しては袈裟に切り裂き、鬼キメラをひきつけていた。
『ノルマは一人八体なら、何とかなるさ‥‥アニキならできる』
 沖那も破曉の焔刀「鳳」で鬼キメラの足などをなぎ払いながら戦い続けていた。
 鬼ゴーレムが施設破壊班の方に一部回ってしまったが、キメラを送る訳にはいかないと三機は兎に角、勢いを落とさずに戦う。
「そうだな、こいつらを片付けたら施設破壊の援護に回りたい」
『ランチャーシールドを持ってきているんだ、一発くらい撃ちたいもんだな』
 健二が近づいてくる鬼キメラに向けてD−502ラスターマシンガンの弾丸を叩き込む。
 弾丸の叩き込まれ、黒い血を噴出させて鬼キメラは倒れた。
 付かず離れず戦う三機の周りには鬼キメラの死体が一体、また一体と増えていく。
「こいつでラスト‥‥食らえ!」
 至近距離からミサイルポッドCの最後の弾を光は撃った。
 ミサイルの先が割れ、中からベアリングが飛び出すと鬼キメラの姿をミンチへと変える。
『こっちも片付くぜ‥‥いよっとぉ!』
 ズバッと頭から真っ二つにした健二機も光に手を振ってノルマ達成を示した。
『俺の方も終わった‥‥施設破壊に全員で回るか?』
「そうしよう。沖那も良くやったな? 破曉を使いこなせているみたいで何よりだ」
 弟分の成長を光は頼もしく思いながらも追い越されないように気を引きしめる。
 三機のKVはそのまま施設の破壊作業の援軍へと回るのだった。
 
●混戦、乱戦
『鬼の相手は私です。皆へ手出しはさせません!』
 施設破壊を続けるゼカリアや雷電が集中できるように澪機が鬼ゴーレムに近づいては機刀「雪影」を閃かせて斬り続けた。
 中々に装甲の硬い鬼ゴーレムを倒すのは苦労するが、引き付けることが目的でもあるために澪機は戦場を舞う。
「ククッ、鬼なんかに、私を止めることなんて出来ないんだよ!」
 火柴はKVビームサイズを抜いて、二人で一機を集中攻撃を仕掛けて確実に減らす咆哮に動いた。
 狙うべき部位は腕、一撃で致命傷を与えることができなくても敵の手数を減らすことは可能である。
 ビュンと音を立ててビームサイズが空中を横切り金棒のようなハンマーを握り締めている鬼ゴーレムの腕を斬りおとした。
『結構硬いですね! それ! それ!』
 420mmを施設破壊用にキープしているハーモニー機から銃弾の雨が援護に叩き込まれて、鬼ゴーレムを食い止めようと必死である。
 腕を失った鬼ゴーレムは胸部の装甲を開いてフェザー砲を放ち、火柴の機体を揺すった。
「しぶてぇんだよ、このやろう!」
 荒っぽい口ぶりそのままに被弾を気にせずに突っ込んだ火柴のビームサイズが胸部内の発射部位を斬り裂いた。
 手出しのできなくなった鬼ゴーレムを澪機が追い打ちをかけて弱める。
『中々倒れませんね』
 澪機の損傷も長い戦いで酷くなっていたため、持久戦は不利だった。
 そのとき、鬼キメラを排除できた仲間が援軍に姿を見せる。
 鉛球が大量に飛び込んできて鬼ゴーレムを吹き飛ばした。
「ちっ‥‥いいところで‥‥だがよ、感謝するぜ! 澪! このまま残りを押し切るぞ!」
『わかりました、鬼なんかにこのまま京都をやらせはしません』
 二人は援軍に勇気づけらて持ち直す。
 このリは3体をきり、正念場を迎えていた。
 
●赤き天使が煌いて
「この好機を待っていました‥‥受けなさい! 炎翼乱舞っ!」
『なんだと!』
 爆炎の中を貫いて<空戦スタビライザー>を使ったリアの機体が夜叉にエナジーウィングを向けた。
 加速された突撃を一度受けただけで、夜叉がぐらりと揺らぐ。
 装甲を鋭利に裂かれて、中の機械が覗きだしていた。
『逃がさないぜ、こっちも耐えきたんだ。ギリギリまでやらせてもらう!』
 シン機もリアと同じようにファランクス・テーバイでミサイルによる被害を減らし、牽制攻撃を続ける。
 飛んでくるシンからの弾幕に夜叉も軌道を揺らされ、さらに迎撃レーザーの被害をものともしないリアの連続突撃に翼などを引き裂かれた。
「とどめです!」
『くっ‥‥ここまでですか、貴方の存在覚えておきますよ』
 DR−2荷電粒子砲をリアが叩き込むとボロボロだった夜叉は捨て台詞を吐いたかと思うと工場へと墜落して吹き飛ぶ。
 捨て台詞からすれば当人は脱出したのかもしれないが十分に驚異を取り除けただろう。
「アンジェリカをこれで救えたのならばよかったのですが‥‥」
『地上の方も安全の確保ができたようだな‥‥ちょいと俺の方は用があるんでここで帰らせてもらうぜ。押しかけ弟子を鍛えてやらなきゃならない』
 シンは地上班との連絡を済ませてリアに報告すると京都の方へと一人飛んでいく。
「押しかけ弟子? でも、今押しかけているのはシンさんのような気がしますが‥‥」
 事情を把握していないリアは首をかしげながら飛んでいくシュテルンを見送るのだった。

●終結
 火炎放射器で火柴機が工場の一部を燃やす中、雷電はジャイアントハンマーを地面に撃ち付けて立っている。
「るんるん大破壊♪ 大暴れできて真帆満足です」
 目的である施設の破壊は完了できて、真帆はコックピットの中でも笑顔を浮かべていた。
『理科室みたいなキメラのできかけっぽいのとか転がってはいたけど、アンジェリカのパイロットは見当たらないなぁ』
 山崎機が調査を終えて合流をする。
 墜落して爆発したが逃げ延びたようだ。
『そうか、逃げているなら次がありそうだな。ここが壊れているならキメラが増えることもないだろうし、そろそろ反撃の時期か?』
 光が山崎の報告を受けて呟きに近い言葉を漏らす。
「何が来ても真帆がいれば大丈夫ですよ」
 自信に満ちた真帆の言葉だったが、誰もが不安を感じずにはいられなかった。
『汚名返上ができたので私も嬉しいですけど‥‥まだまだ未熟でしたね』
 施設破壊で弾薬を使い切ったハーモニーも嬉しそうだが、戦術眼を鍛えなければならないと切に感じている。
 京都を脅かす一つの障害が消えた。
 だが、まだ朱貂を倒さない限り真の平和は訪れない‥‥。
 秋も近づく中、戦乱の古都は次なる局面を迎えようとしていた。