タイトル:【MN】チョコな転校生マスター:橘真斗

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/08/20 23:17

●オープニング本文


 ※このシナリオはミッドナイトサマーシナリオです。実際のWTRPGの世界観に一切関係はありません
 
 「やつのいくとこチョコが飛び交い嵐が走る」
 
 そんな噂を持つ一人の高校生がいた。
 
 彼の名前は飛鳥零奴{あすかれいど)通称、アスレード(gz0165)と呼ばれる男である。
 
 次々と問題を起こしては転校を繰り返す謎の転校生、その口にはいつも板チョコが咥えられていた。
 
 そして、彼が次に訪れたのは荒くれものが多いといわれる市立雄比椎(ゆーぴーしー)高校。
 
「ここからはチョコの匂いがするぜ」
 
 アスレードは風の吹く中、校門を越え学校の中へと踏み出した。
 
●俺様がリーダーだ!
「よし、お前ら! 転校生を紹介するぞ。飛鳥零奴だ!」
 教師の武羅土(ぶらっど)が黒板の前に立つと飛鳥を紹介する。
「ひぅふぅみぃ‥‥まともなやつは8人といねぇな。今日から俺様がこのクラスのリーダーになる! 文句があるやつは相手になってやるからかっかってこい!」
 バリンといたチョコを砕いて食べたアスレードはギロリした視線をクラスにまわした。
 嵐のようにやってきた転校生、アスレードの真の目的とは!
 
 近日公開『チョコな転校生 The Movie』

●参加者一覧

葵 宙華(ga4067
20歳・♀・PN
クラーク・エアハルト(ga4961
31歳・♂・JG
くれあ(ga9206
17歳・♀・DF
瑞姫・イェーガー(ga9347
23歳・♀・AA
冴城 アスカ(gb4188
28歳・♀・PN
諌山美雲(gb5758
21歳・♀・ER
五十嵐 八九十(gb7911
26歳・♂・PN
綾河 零音(gb9784
17歳・♀・HD

●リプレイ本文

●高校動乱
 飛鳥零奴ことアスレード(gz0165)が転校初日クラスで暴れ終わった後、クラスの外にいた存在が動き出した。
「何だって? クラスで乱闘? けが人がくるのか‥‥」
 ホームルームが終わって、これから学校公認の付き合いをしている校医とヨロシクしようとおもっていたクラーク・エアハルト(ga4961)は愚痴を零す。
 「ER」と書かれた白衣を羽織って準備をはじめる。
「タイミングが悪いわね。いつもなら二時間目くらいまでは静かなのに」
 校医のレオノーラ・ハンビー(gz0067)は肌蹴た胸元を直して椅子に座った。
「せんせー、何かチョコをいつも食べている子が来たんだって。これはメイド同好会特性チョコをプレゼントするべきだよね♪」
 怪我人より先にきたのはレオノーラが顧問をするメイド同好会に所属するくれあ(ga9206)である。
「あの激辛わさび入りとかはちょっとやめた方がいいわよ? ここに担ぎ困れるといちゃつけないから」
 さらっとレオノーラは答えながら、カルテの用意を始めていた。

「隣のクラスに来たのは零奴だったのね」
 旧校舎の図書館で眼鏡の奥の瞳を見せず葵 宙華(ga4067)はパソコンのキーボードを叩く。
 学校が管理しているパソコンへのハッキングが成功し、廊下を走るのを見かけた転校生の情報を眺めた。
 ここ最近転校を続けていて、問題のある学校を転々としている。
「目的は不明か‥‥私を迎えに来る準備ができた訳ではなさそうね」
 宙華は呟きながら図書館の窓から白い空を眺めながらどこか物悲しそうに呟いた。
 
●喧嘩上等

『貴方の唇を奪います

 放課後、校舎屋上へ来られたし

      生徒会書記 諌山美雲(gb5758)』
      
 突然、渡された手紙を見直して律儀にも放課後に屋上へとアスレードは向かう。
「よ、登校初日から生徒会に呼び出されるなんてやるじゃねェの転校生? 気を付けた方がいいぜ、ウチの生徒会は頭からして普通じゃねェから」
 その手紙をひょいと横から眺めた五十嵐 八九十(gb7911)は酒を口にしながらアスレードに絡んだ。
 ビールの泡の出る麦茶といって堂々と飲む姿は教師ですら呆れて手が出せないほどである。
「くだらねぇな‥‥俺様は朝が中途半端でむしゃくしゃしてるんだ。遠慮なくぶち当たっていくぜ」
 ぺっと唾を吐き捨ててアスレードは五十嵐と別れ、階段を上って屋上へと出た。
 そこには深紅の木刀を肩に乗せた極道の娘である生徒会長・綾河 零音(gb9784)がいる。
「よく来たな、私と『是不穏(ゼフォン』を恐れなかったのは褒めてやる!」
「くだらねぇ‥‥テメェがこの学校の頭か? なら話は早ええ、ぶん殴って俺様が上になってやるぜ」
 ごきりごきりと拳を鳴らしたアスレードが零音へと近づいていった。
「ちょっと待ったぁ! 雄比椎高スケ番! 冴城 アスカ(gb4188)だ! 夜露死苦!」
 その時、後ろの扉が開いて一人の女生徒が姿を見せる。
 いまどき流行らないロングスカートに革のグローブをつけている如何にも不良少女なアスカが登場早々に名乗りを上げた。
「おい、約束通りもう一度てめぇを殴りに来たぞ?」
「教室で俺様に喧嘩を売ってきた、アマか‥‥いいぜぇ、ここの奴より先にケリをつけてやる!」
 アスカが両拳をぶつけて威嚇をすると、アスレードはアスカの方へ振り返ると駆ける。
「よし、こい!」
 アスカもファイティングポーズをとりながらアスレードを待ち構え突き出された拳を払って反撃の蹴りを繰り出した。
 アスレードは上体をそらして蹴りを交わすと足を払うように蹴りこむ。
 アスカはそれをバックステップで交わし、反動をばねにして膝蹴りを叩きこんだ。
 空手を習っていたアスカと喧嘩術を得意とするアスレードの激しい攻防が屋上に繰り広げられている。
「な、なんだ‥‥む、無視するなよ! ほら、零奴は私を狙ってきたんだから私と戦ってからで!」
 ぽかーんと二人の戦いを眺めていた零音が木刀を振って駄々をこねだした。
「うるせぇ! 外野はだまって‥‥くぅ!」
 駄々をこねだした零音にアスレードが文句を言おうとしたとき、アスカのパンチが頬をしたたかに打つ。
「どうした、余所見をするほど余裕があるとは思えないぜ?」
 口を切ったのか血が流れ出すが、アスレードはそれを舐めて嬉しそうに笑った。
「これくらいハンデだよ、クソアマ」
 だが、その光景を見てプッツン切れた人物がいる。
 部外者となっていた零音だ。
「私のアッスィになにしやがるぅぅぅわああぁぁあ!」
 木刀の「是不穏」を振りかざして、殴り合っている二人の間へ割り込もうと零音は走る。
「ああっ! 会長! 喧嘩はいけません!」
 静かに給水塔の上から様子を見ていた美雲が飛び出して零音を止めようとした。
 だが、ずるっと滑った美雲の体は零音の背中を押してアスレードに向かって突き飛ばす。
 アスカの攻撃に集中していたアスレードが間合いをとったタイミングと零音がぶつかるタイミングが重なった。
 ぶちゅっと二人の唇と唇がも重なりあう。
「成功です! やりましたよ会長!」
 美雲は失敗したと思っていた行動が成功に転じた様子を確認すると喜び勇んで零音に抱きつこうと走り寄った。
「おい、会長! こんなところで何やってるんだよ!?」
 突然の出来事に今度はアスカが突っ込みに回る。
 そのアスカをも巻き込んで美雲の体当たりが全員を包んで屋上の一角へ押し込んだ。
 4人が倒れこむとチュドーンと学校に不釣合いな爆発音が響き、屋上に煙が上がる。
「クソ‥‥姐さん‥‥すまねぇ‥‥」
 アスカは最後に呟きがくりとうなだれ、屋上での喧嘩は全員負傷という泥試合で終わりを迎えたのだった。
 
●保健室で‥‥
「とりあえず、拾ってきた‥‥が、屋上で火傷ってどういうことがおきたんだ?」
「あ、屋上には私の仕掛けていた地雷があったんだ」
 クラークが他の保険委員と一緒に負傷者を運び込んでくると、くれあがレオノーラとお茶を飲みながら「てへ☆」と笑う。
 もっとも危険な人物はこいつかも知れないとクラークは思うもレオノーラの手前、何も言わずに片っ端から負傷者をベッドへ転がして手当てを始めた。
「薬品、確かもうすぐ今週分が配達されるね‥‥一緒に取りに行こうか」
 手当てを終えたクラークが時計をみるとレオノーラに声をかける。
 レオノーラもカルテを書き終えると立ち上がりにっこりと微笑んだ。
「あ、私もアスくんに食べてもらうために葵ちゃんと作った新作チョコを取りにいってくるね♪」
 くれあも新作の『独創的』なチョコを取りに保健室を後にする。
 静かになった保健室に宙華が静かにやってきた。
 他の生徒が眠っていることを確認すると、アスレードのベッドの隣にまでくる。
「昔の事なんか忘れたよね、迎えに来て結婚するって‥‥約束なんか覚えてないよね‥‥何故ここにきたの?」
 葵はベッドに腰をかけながら訪ねるがアスレードは答えなかった。
「後は‥‥女神の息吹‥‥か」
 くれあと共に作った特性チョコレートを先に持ってきていた宙華はアスレードに食べさせ、キスをする。
「黄金の林檎もイブの息吹により禁断の力を増幅させた‥‥アスの力もきっと‥‥」
 顔を離しながら、宙華は保健室を後にした。

●白髪姫、推参
「飛鳥ぁ、どこにいるんだよ。ボクがどれだけ愛してるか知ってるくせに‥‥」
 高校に白髪の少女、近隣の私立芭愚亜(ばぐあ)高校の瑞姫・イェーガー(ga9347)が幽霊のように歩いてくる。
 夏だというのに冬服を着ているのは不良らしく見え、そういうものを見たら喧嘩を売りたくなるのが五十嵐の性分でもあった。
「幽霊‥‥って訳じゃないな? 飛鳥を探しているなら教えてやってもいいぜ? ただし、俺を倒せたらだがな!」
 ぐいっと飲みかけのビールを飲み干した五十嵐は缶を投げつけながら殴りかかる。
「うるさいな‥‥そういうのがムカツクんだよ」
 五十嵐の拳を受け止めて瑞姫は不快感を顔に出して殴り返した。
 華奢な外見に似合わない鋭い拳が五十嵐の鳩尾を抉る。
「ごはっ! なんてパワーだ‥‥」
「これくらいじゃ壊れないよね? せっかくボクに喧嘩を売ってきてくれたんだから、楽しませてくれないと困るよ」
 足を払って五十嵐を転がし、腹を遠慮なく蹴った。
 瑞姫は何の感情もないかのような瞳で蹴られる五十嵐を見つめている。
「そこまでして私を潰してぇのかよ‥‥瑞姫‥‥ハァ‥‥ハァ」
 騒動を聞きつけて目を覚ましたアスカが足を引きずりながら息を切らし廊下に現れた。
「あすか? アスカ? 飛鳥? あれ、同じようだけど違うような気がする‥‥いいや、別に壊せればなんでもいい」
「そんな風にしちまったのは私だ‥‥だからって、この学校で暴れさせてたまるかよ。最凶スケ番アスカ、いくぜぇ!」
 手負い出会ってもアスカの闘志は揺るがない。
 番長を自負する限り、何があっても舎弟を守るのが務めだ、出なければシャバイスケになってしまうのだ。
「姐さん‥‥私に力を貸してくれ」
 卒業した赤髪の先代スケ番のことを思い出しながらアスカは壁を蹴って瑞姫の顔へ蹴りを放つ。
 側頭部に一撃を受けた瑞姫は転がり、アスカも傷の痛みのため着地に失敗して床に転がった。
「いたいなぁ‥‥けど、思い出したよ。アスカ‥‥ボクは、あれ以来不良潰しをしてるんだ」
 床に転がった瑞姫はゆらりと起き上がって虚ろな瞳でアスカを見つめてニヘラと笑う。
「そんなことで弟は喜ばないぞ、瑞姫ぃっ!」
 立ち上がりながらアスカは過去に自分との戦いの末に死んでしまった瑞姫の弟のことを思って吼えた。

●復活の男
「ちっ、大分眠っていたぜ‥‥調子はいいが騒がしいな」
 起き上がったアスレードは包帯を解いて投げ捨て、ゴキゴキと首を鳴らす。
「おい、怪我人はおとなしく‥‥なんだ、治っている? どんな再生能力をしているんだお前は‥‥」
 レオノーラと共に薬を持ってきたクラークはドアを開けた瞬間シャドーボクシングをしているアスレードを見つけて呆れた声をだした。
「やーん、黄金種のカカオで作ったチョコがなくなってたよ。あ、アスくん復活したんだね! って、そうじゃないよ。今廊下で乱闘があって、運動場に乱闘の場所が移ったみたいだよ!」
 遅れてきたくれあがアスレードの復活を喜びつつも学校で起きている問題を伝えた。
「やってきたのは瑞姫よ。アス‥‥。今のあの子は昔のあの子じゃない‥‥私のことを忘れていてもいいから、あの子を助けて」
 いつの間にか保健室に戻ってきていた宙華もアスレードの手をつかむと懇願しだす。
「ちっ‥‥しつこい女だ。じゃあ、とっとと片付けるとするか、俺様にはまだやることがあるからな、そうだろ? チカ」
 アスレードは宙華の手を払うと不敵に笑い、保健室の窓から飛び出して運動場にいる瑞姫を目指した‥‥。
 
●決着の瞬間[とき]
 五十嵐とアスカは互いに負傷をカバーしつつ瑞姫を相手にする。
 一人だというのに痛みを感じていないかのように瑞姫は立ち上がり、容赦のない攻撃を仕掛けてきていた。
 ”生きる屍”という言葉がしっくりと来ている。
「最初は虐められてた子助けたくてけど、分からなく成っちゃた。壊すのが楽しいだけなのかさ‥‥」
 何を指すのか分からない言葉を口走る瑞姫が倒れている五十嵐とアスカに近づいてきた。
「とまりやがれ、瑞姫ぃっ!」
 激昂と共にアスレードがドロップキックを瑞姫の背中に叩き込んで、五十嵐とアスカの手を取る。
「へっ、これは貸しじゃねぇぞ?」
「あんたも瑞姫を知っているのか?」
「ちょいとした知り合いだな‥‥」
 アスカを立ち上がらせるとアスレードは瑞姫の方を向いた。
 ドロップキックを受けて転がったはずの瑞姫は何事もなかったかのように立ち上がってくる。
「ハァ‥‥ハァ‥‥いい加減目を覚ませ、瑞姫 これ以上‥‥大好きなアンタを傷つけたくねぇんだよ!」
「やっと会えたね、飛鳥。何でボクを捨てたのかな? アスカも捨てたよね、そうだ‥‥だったら二人ともやっちゃえばいいんだ」
 アスカの声が届いてないのか、瑞姫は壊れたように笑い続けた。
「「も」という限りはてめぇもか。なら話は早えぇ、気合入れて打ちかますぞ。ショック療法だ」
「あんたを信じる‥‥ダブルキックいくぜ!」
 アスカとアスレード、飛鳥零奴は互いを頷きあって全力で走る。
 タイミングを合わせて跳躍し、足をそろえて立ち上がっている瑞姫の胴体を蹴った。
「「くらえぇぇぇっ! ダブルアスカキィィィィック!」」
 すさまじい衝撃を受けた瑞姫が土煙をあげながら運動場を転がる。
 立ち上がらずに転がったままの瑞姫にアスカが駆け寄った。
「瑞姫‥‥大丈夫か。瑞姫!」
「アスカ‥‥ごめん。怖かったんだよ。自分がいつか化け物に成り下がりそうで‥‥許せないからなのに周りは恐れて誰もいなくなって、ボクだって‥‥、ボクだって、人間なのに」
 瑞姫はアスカに抱きつき泣き出す。
 その姿は今までの化け物じみた存在ではなく、子供のように泣きじゃくる少女だった。

●乱闘上等!
「負けちゃだめじゃないですか、ここら近辺に示しがつかなくなるでしょ?」
 瑞姫との戦いが終わって、ひと段落と思ったとき拍手と共に泣きボクロのある少年が拍手と共にぞろぞろと不良をつれて運動場へやってくる。
「なんで、ここに‥‥」
「貴方が勝手をするのはかまいませんけど、まだ貴方がトップなんですよ? こんなショボイ高校にやられたとあっちゃメンツにかかわるんですよ」
 丁寧ながらもその言葉には明らかな敵意とトゲがあり、瑞姫はおびえてアスカに抱きついた。
「ショボイだぁ? てめぇのほうがシャバゾウなんだよ。こっちはさっきの戦いで酒が抜けたんだ、キレ分だけ暴れさせてもらうぜ?」
 五十嵐は少年に向かってガンを飛ばしながら拳を鳴らす。
「手傷を負って、この人数差で勝てると思わないで欲しいですね。やれ!」
 少年が指示をだすと木刀や鉄パイプをもった不良達がいっせいに飛び掛ってきた。
「人数ならこっちも負けていないぞ、会長ルール発動、武装生徒会出撃!」
 そこへ、零音が現れその名のとおり警棒や強化プラスチックシールドを持った生徒達が不良にぶつかる。
「長く寝ていたが復活、最後は決めるぞ、みくもんやっておしまい!」
「いや、喧嘩はいけませんよ会長!?」
 遅れてきたクラークやくれあ、宙華も乱闘に加わって、不良達を蹴散らしていく。
(「そう、これが俺様の目的だ。次の学校にいくのも早いだろうな」)
 その様子を眺めていたアスレードは楽しそうに笑った。
「このアスレードを簡単に倒せると思うなよ!」
 9人は結託し、自分達の居場所を守るべく戦う。
 夏の日差しが照りつける中、確かに彼らは青春を謳歌していた。


※架空シナリオの演出上、高校生役(成人)の飲酒場面がありますが、未成年の飲酒は法律で禁止されています。