●リプレイ本文
●えんかうんとっ☆
「日用品そろえておかないといけませんね。お酒もついでに買って‥‥あれ?」
UPC本部近くコンビニで買い物をしていた奉丈・遮那(
ga0352)は通りを私服で歩くリネーア・ベリィルンド(gz0006)を見つける。
すぐさま支払いをすませて出て行き、声をかけた。
「今日はオフなんですか?」
「ええ、急に空いちゃって。だからブラブラと買い物をしようかなって思っていたところなの」
声をかけられたリネーアは苦笑しながらハンドバックを肩に軽くかけるように持ち直す。
「では、僕も暇ですし一緒に‥‥」
「あ、リネーア殿ハッケーン!」
遮那が照れくさそうにリネーアを誘おうとしたとき、ぱたぱたとラサ・ジェネシス(
gc2273)が駆けてきた。
一瞬、残念そうな顔を遮那はするもラサもリネーアも気付かない。
「ラサさんもこんにちわ」
「あれ‥‥もしかしてリネーアさんですか? いいことが起こりそうな気がしていましたがキョウ運は相変わらずかな?」
小説を買った帰りのソウマ(
gc0505)も加わってデートという雰囲気ではなくなった。
「フムフム、なるほど我輩もリネーア殿の買い物についていっていいでしょうカ? ソウマ殿もよいでしょう?」
「ええ、ご迷惑でないのなら是非」
ラサは手を上げて言い、ソウマも誘った。
「丁度暇でしたから大歓迎ですよ。ショッピングモールへ行きましょうか、ねぇ、遮那さん?」
「あはは‥‥そうですね‥‥」
乾いた笑いを浮かべ、心の底で二人きりのデートを逃して泣く遮那であった。
●水着を買おう
ショッピングモールでは夏のセールが始まっている。
その中でも水着売り場は盛況で、若い女性たちが各々の水着を買うべく品定めをしていた。
「う〜ん、どうしたものでしょうか。買うべきか、買わざるべきか‥‥」
ハンナ・ルーベンス(
ga5138)はその中でも修道服のままでいるためものすごく目立つ。
探しているのも競泳用水着なのも彼女を知らない人から見れば変わっていた。
「あら? ハンナ様も水着の買い物ですか?」
「はい、そうなのですが‥‥去年の物の方が値段がやすいので悩んでいるところです」
同じ背丈ながらも胸においては差のある王 憐華(
ga4039)が水着の買い物にきている。
当人は可愛い物が着てみたいのだが、その溢れる魅力の塊二つによってセクシー路線でしかサイズがなくて困っているのだ。
「あら、二人とも水着のかいものですか?」
憐華とハンナが話していると乾 幸香(
ga8460)が買い物袋と共にリネーアを引き連れて姿を見せる。
「これは元祖胸の大きくなる能力者のリネーア様ではありませんか」
「元祖という言われ方をするのも何かこまりますけど‥‥しかも、お店の中ですし‥‥」
感動に目を輝かせる憐華とは裏腹にリネーアは困り顔だった。
「折角ですからリネーアさんも水着を見て行きましょうよ」
「え、私は‥‥その‥‥」
「是非是非、リネーア様のセンスをみたいのです」
乾と憐華に気圧されてリネーアも久しぶりの水着の買い物をしてみる。
試着室へ交互にはいり、乾は背中の開いた大胆な水着やパレオ付きのビキニを着て見せた。
憐華はリネーアのオススメでもあるホルターネックのAラインワンピース水着を着ている。
色はパステルカラーのロイヤルブルーでショートタイプパンツと合わせた形で可愛いデザインだ。
「流石です。こういうのを知っているなんてリネーア様はすばらしいです」
「リネーアさんはセンスがありますね‥‥私も何か試着しましょうか」
一歩は慣れたところで見ていたハンナだが、綺麗な水着を着ている姿にうずうずとしだす。
「じゃあ、ハンナさんはコレを着てみてください。ドット柄のビキニですよ? お題は私が出しますから」
興味を持ったところへすかさずリネーアが水着を手にハンナへ迫ったのだった。
●水族館へいこう
「こんなところでリネーアさんと会うとは思わなかったですね」
ハンナが予約した喫茶店でビールグラスを買いに来た綾野 断真(
ga6621)や夏服を買いに来た有村隼人(
gc1736)も加わり、リネーアの休日は結構な大所帯での行動となる。
「いきつけの居酒屋もいいかもしれませんが、どうせならウチのBARで飲みませんか? 貸しきりますし、サービスさせてもらいますよ」
話し合いの末、水族館に行こうとなり歩いていると綾野がステキな提案を持ちかけた。
「それは是非! お願いします」
鼻歌でも歌いそうなくらいの笑顔でリネーアは答えると、足取りが軽くなる。
「水族館に来るのってそういえば初めてですね‥‥リネーアさんって水族館に来たことはありますか?」
「仕事が忙しくて遊ぶことは全然ですね。でも、動物をみたりするのは好きですよ?」
隼人の問いかけにリネーアは苦笑しながらも答えた。
水族館に到着するとパカっとクス球が割れて入場10000人目としてソウマがもてなされる。
おめでとうございますと記念品のぺんぎんのぬいぐるみを受け取りながらソウマは水族館の中へと入っていった。
「運がいい人なんですね。もう一歩早ければリネーアさんと‥‥」
「遮那さん? 早くしないと置いていきますよ」
ソウマのキョウ運を遮那が若干うらやんでいるとリネーアが中へと先導する。
「隼人殿もいくゾ」
「はい、今行きます」
ぴょンぴょンと跳ねるラサに連れられて隼人も続いていった。
立ち寄ったのはショッピングモールからも近い水族館で、海洋研究所ともセットになっている施設である。
透き通った水槽の中を大小さまざまな魚が自由気ままに泳いでいた。
「のんびりこういうのをみるのもいいですね」
「本当‥‥世界中の危機を知って皆に伝えてばかりだと、こういう平穏がすごく嬉しいわ」
遮那と共に魚を見るリネーアは言葉どおりリラックスしているように見える。
このときばかりは少し砕けた口調なのが遮那にとっても少し嬉しい。
「リネーア殿、リネーア殿! アシカのショーがあるようダゾ。一緒に見に行コウ!」
もう少し話をしようと遮那が近づいたとき、ラサがパタパタと駆けて来てリネーアの手をひっぱっていった。
「ラサさんも楽しそうですね。僕も初めてだからいろんなところが新鮮で楽しいです」
苦笑している遮那の傍へ隼人が近づいて来てぽつりと感想をもらす。
「リネーアさんを楽しませるのもいいですけど、僕達も楽しまないといけませんね。折角の機会ですから」
隼人の言葉にリネーアと共にいることも大事だが自分もゆるりと楽しもうと思いなおす遮那であった。
●うちあげっ!
「「カンパーイ」」
高く上げられた色とりどりのグラスがそろった声と共にぶつかる。
カツンと乾いた音が幾つも響き、宴が始まった。
綾野の経営しているカクテルバーIRISは急遽本日貸切でリネーアと休日を過ごした仲間たちの打ち上げ会場となっている。
未成年にはソフトドリンクを出し、一杯目をぐいぐと飲むと各々が料理に手を伸ばした。
「ソウマさんは大丈夫ですか? 先ほどお聞きしたところアシカにボールをぶつけられたとか聞きましたが」
「ええ、まぁいつものキョウ運という奴ですよ。いいことも悪いことも降りかかってくるんですよ」
心配そうに絆創膏の張られたソウマの額を眺めながらハンナが心配そうに声をかけるもソウマはケロりとした顔で答える。
「お客様、あちらの方からです」
リネーアが一杯目を5秒で飲み終えて次のを頼もうとしたとき、綾野がスマイルを浮かべながらカクテル「サムライ」を持ってきた。
綾野が顔を向けると遮那がエメラルドに輝く海をイメージしたカクテル「マリンスノー」を飲みながら軽く手を上げてみせる。
「遮那さんありがとうございます‥‥初めて飲んだけど美味しい‥‥」
日本酒をベースにレモンジュースを3:1の割合でステアされたカクテルはリネーアの嗜好によくあう。
「リネーアさんも飲んでますか? わたしは余り強くはないんですけど、お酒は好きなんですよね。だから、お付き合いさせて貰いますね」
「いいですね。私も今日は久しぶりに飲み捲くりますよ。美味しいカクテルなんて久しぶりですから」
外見に似合わず乾は強いカクテル「ウォッカ・アイスバーグ」を水のように飲んでいた。
久しぶりの強敵[トモ]に出会った喜びにリネーアは次々とカクテルを試す。
「リネーア様、私は相談ごとがあるのですが‥‥」
酒によるものか、相談内容の照れによる物か顔を僅かに赤くさせた憐華がリネーアの前にずいっと近づいた。
大きな胸が歩四と揺れる。
乾も中々に大きいため、リネーアを含めた3人集まるといろいろと目のやり場に困りそうな状態だ。
「私で答えれることでしたらいいですけど‥‥」
ウォッカ・アイスバーグを口にしながらリネーアが尋ねると、憐華は恥ずかしそうに小さく話をきりだす。
「あの‥‥覚醒のたびに若干胸が成長していくんですが‥‥大丈夫、なんで‥‥しょうか?」
素面ではとても相談できないことだったので、酒の力を借りて憐華は真剣な目で訴えた。
「私は一度大きくなるくらいなので、細かいアドバイスはできませんけど‥‥大体覚醒は戦闘時になるものですから、戦闘に支障がでるような変化はないと思いますよ。なので、いずれとまるかなと思います」
専門家ではないので主観的なアドバイスなんですけどと、最後につけくわえながらリネーアは答える。
「そうですか、一安心です」
席に戻ると再び胸がぽよんと揺れた。
一方、未成年でもあり友達でもあるラサとソウマ、隼人はノンアルコールカクテルやオレンジジュース、クリームソーダなどで料理を摘むのを中心に楽しんでいる。
「リネーア殿は何を着ても似合ってステキだったナ。はじめてみたペンギンも可愛かったゾ」
「楽しかったですね、水族館‥‥10000人目記念もあってソウマさんを中心に記念写真も取れましたしいい思い出ができました」
出来上がった写真をながめながら隼人はオレンジジュースを飲む。
初めての水族館で貴重な経験ができたことは素直に嬉しかった。
「今日はここにいる皆さんに出会えたのが一番のキョウ運ですね」
ソウマのその言葉に誰もが頷く。
「さて、リネーアさん。最後のイベントといきましょうか?」
丁度きりのついたとき、ハンナが優しい微笑を浮かべながらビデオカメラを取り出した。
●思い出を送ろう
ハンナが昼間から準備をしていたサプライズ企画『妹さんにビデオレターを送ろう』がIRISで行われる。
「ただ、ここで撮影をするとなると妹さんは心配しませんか?」
「私のお酒好きはわかっていると思うから‥‥大丈夫‥‥です。たぶん‥‥」
段々と自信なさげになりながらリネーアは答えた。
「妹さんでどういう方なんですか?」
「今は寄宿舎付のお嬢様学校に通っていてね、私に似て美人なのよ。ほら、この写真は学園祭のときの写真でね」
ハンドバックからリネーアはアダーラの写真だけが収められた手帳を出して興味を示した隼人へ見せる。
その姿は親ばかといっていいほどだが、たった一人の家族だからこそ大切なのだ。
「リネーアさん、一番初めにリネーアさんから取ってもらわないと僕らはいえませんよ」
「ごめんなさい、じゃあ、カウンターにカメラを置いて自動撮影でとりましょう」
写真でも撮るかのように一列に並んでビデオレターの撮影がはじまる。
「こんばんわ。アダーラ。今日は突然出来たお休みもあって、友達とビデオレターを作ることにしました。最近忙しくてあえないけれど元気ですか? 私は‥‥」
かなり飲んでいたにも関わらずリネーアは普段どおりの優しい口調でアダーラへメッセージを添えた。
「こんばんわ。ハンナ・ルーベンスです。今日はリネーアさんのオススメもあって普段は着ないような水着をいただきました。アダーラさんがこちらに来たときは一緒に泳げるといいですね?」
ハンナは少し照れくさそうにしながら紙袋を見せてメッセージを送る。
ドット柄のビキニが入っているとは誰も思わないだろう。
「こんばんわ。王・憐華です。日ごろからリネーアさんにはお世話になっています。今日は水着を選んでもらいまして嬉しかったです」
憐華は念願の可愛い水着を手に入れて感動したようすでメッセージをつけた。
「アダーラさん、お久しぶりです。またLHに来るときは皆で歓迎しますよ」
遮那が妹を思う兄のような笑顔で言葉を伝えると、乾や綾野、ラサ、隼人、ソウマもそれぞれ一言二言続ける。
「最後にもう一度、私はこのラストホープで楽しく過ごしています。あなたも幸せにすごしてね? 愛しているわ。リネーアより」
締めの言葉を述べてリネーアはビデオの録画をきった。
かけがえのない友人と愛する妹へ送るビデオレター。
その価値はお金にはかえられないものとなった。