タイトル:三匹のオークマスター:橘真斗

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/06/06 03:14

●オープニング本文


 作戦コード『キメラハンター』

 コロンビアの三大バグア軍基地が陥落した後。
 強固な防衛力を誇るキメラ闘技場を除き、国内のバグア勢力は続々と周辺国へ撤退して行った。
 しかし、彼らが国内に残したキメラの総数は数百体とも言われ、これらは物資の流通を妨げ、住民達の生活を脅かしている。
 また、コロンビアの重要な収入源である石油や宝石類の採掘をも困難にしているのである。
 広大な国土を我が物顔で跋扈するキメラに困り果てていたジャンゴ・コルテス大佐に助け舟を出したのは、意外な人物だった。
 UPC南北中央軍中将のヴェレッタ・オリム(gz0162)である。
 彼女は、北米のとある場所に隠匿された『UPCキメラ研究所』の所長を兼任しているのだが、エイジア学園都市にある付属研究員養成校で使用する教材用キメラが不足している。
 つまり、その調達場所としてコロンビアに目を付けたらしい。
 キメラ闘技場の影響か、それとも南米の変化に富んだ地形のせいか、そこに棲息するキメラはバリエーションに富み、未だ研究も進んでいない。
 生け捕りにする必要は無いが、出来る限り大量に調達して欲しい、とのオリムの命に、コルテス大佐は、傭兵を動員した一大キメラ狩りを計画したのであった。
 
 ――ラストホープ UPC本部
 
「皆さんに依頼があります。今回もキメラ研究所の方からの依頼で3匹のオークを回収してもらうことになります」
 キビキビとした口調でリネーア・ベリィルンド(gz0006)が話を続けた。
「今回のオークは雷をまとうサンダーオーク、凍りをまとうアイスオーク、炎をまとうファイアーオークの3匹となっています。少し初心者の方には強い相手かもしれませんが協力すればきっと倒せます」
 話を聞いて緊張をする傭兵にリネーアは優しく微笑みをかける。
「場所はコロンビアの廃墟エリアで、この3体以外のキメラは確認されていません。街に向かうことはないでしょうが早く退治をお願いします」
 丁寧に話を続けるとリネーアは頭を下げた。

●参加者一覧

最上 憐 (gb0002
10歳・♀・PN
クロスエリア(gb0356
26歳・♀・EP
吹雪 蒼牙(gc0781
18歳・♂・FC
アンナ・キンダーハイム(gc1170
22歳・♀・SF
カーディナル(gc1569
28歳・♂・EL
獅堂 梓(gc2346
18歳・♀・PN
レインウォーカー(gc2524
24歳・♂・PN
ユウ・ターナー(gc2715
12歳・♀・JG
赤月 腕(gc2839
24歳・♂・FC
エティシャ・ズィーゲン(gc3727
15歳・♀・ER

●リプレイ本文

●廃墟のドライブ
 南米コロンビアの大地。
 荒野の廃墟に3つの集団が散った。
 車が二台とバイクが二台一組である。
 土煙を上げながら廃墟を走る一つのバイク‥‥リンドヴルムには二人の人物が乗っていた。
「捕獲ねぇ〜‥‥頑張ってみますか」
 運転手であり、バイクに変形するAU−KVに乗る吹雪 蒼牙(gc0781)は軽い口ぶりでアクセルを握る。
 暑いところの苦手な蒼牙だが南米でもこの地域は13度前後の気温で過ごしやすかった。
「実はこのS−01、水属性なんだよね♪」
 後ろに乗るクロスエリア(gb0356)はS−01を見せながら笑いかける。
 カウボーイハットにジャケットを羽織る姿は冒険家のようで頼もしかった。
「おい、獅堂‥‥あんまり派手にやりすぎるなよぉ。最近、黒い所が多いからなぁ」
『ちょっと急に何いってるんですかっ!? ボクはそんなに危険な子じゃないです』
「無線機のチェックだ。がんばれよぉ」
 並走するレインウォーカー(gc2524)は嘲笑を浮かべながら無線機を切る。
「あ、いたいた。予定通り赤い奴。けど‥‥赤、青、黄色何か信号機を思い出すね?」
 双眼鏡を覗いていたクロスエリアが廃墟をノシノシと歩くオークを見つけた。
「了解。焼き豚さんの捕獲と行こうか〜。加速するからタイミング良く飛び降りてよ〜」
 蒼牙はアクセルを握って加速させながらオークへと近づく。
 瓦礫の中で橋のように伸びた壁の一部を加速しながら飛び上がるとクロスエリアはバイクから飛び降りてS−01を撃ち込んだ。

 無線機を切りながら獅堂 梓(gc2346)はため息をつく。
「どのタイプが現れるか‥‥緊張するね」
「どれに当たるのかなァ‥‥クジ引きみたいでちょっと楽しみっ!」
 ユウ・ターナー(gc2715)は見た目通りの子供らしい興奮を隠せずにジーザリオの中ではしゃいだ。
 手にもっている銃は未来研究所で作ってもらったオリジナルのSMG「ヴァルハラ」である。
 ジーザリオは瓦礫の多い荒野を物陰からの奇襲に気をつけながら走り続けた。
「地形を見る限りは平原ばかりだな建物が多いがもとより崩れているところの方が多い」
 ハンドルを握るカーディナル(gc1569)は助手席で地図に指を這わせているアンナ・キンダーハイム(gc1170)をチラリと見てから正面を見直す。
「アンナおねーちゃんはまた一緒だね? 一緒な人がいるとユウも嬉いよ♪」
 きゃいきゃいと元気に声をかけてくるユウにアンナは軽く会釈を返した。
 ビスクドールを持ち、ゴシックロリータの服装と白いマスクによって不思議な印象の強いアンナだが仲間意識がないということはない。
 キキィっとブレーキがかかりジーザリオが揺れた。
「居たな‥‥だが、あれは雷の方か?」
 車を物陰までバックさせたカーディナルは双眼鏡を持っているユウに顔を向ける。
「うん、雷の方だねっ。3班に連絡した方がいいよね?」
「そうだな‥‥まだあいつはこっちに気付いていない、ギリギリ相手することになったら動くことにしよう」
 カーディナルが無線機片手に確認を取ると全員頷きで答えた。

「‥‥ん。行こう。運転は。任せて。大トロに。乗った気分で。任せて」
 運転手である最上 憐 (gb0002)のその言葉は同乗するエティシャ・ズィーゲン(gc3727)の関心を煽る。
「‥‥いやぁ、能力者って凄いねぇ。そりゃ人類の希望にもなるわ」
(「もっと早く移植してりゃ、救えた戦友も増えてたのかねぇ‥‥」)
 エティシャ自身、見た目は16歳だが三十路手前で元従軍医兼衛生兵だ。
 多くの命を救える力を持つ能力者になったことで、こうして再び前線に立つことにしたのである。
「しかし、また豚か‥‥あんたもこれ喰うか?」
「‥‥ん。食べる。けど、手が。離せない。あーん」
 ブルーベリータルトを口にしていた赤月 腕(gc2839)が空いた憐の口へタルトを投げ込んだ。
 埃っぽい荒野に合わない甘い香りが漂う。
「余裕があるなぁ‥‥おっと、ちゃんと探さないとね。あ〜メンドイ」
 エティシャが双眼鏡を覗きなおそうとしたとき、トランシーバーが唸った。
「はいはい、こっちは3班‥‥うん、そっちで雷を確認? 場所は‥‥うん、うん」
 カーディナルからの無線を受けたエティシャが頷きながら視線を憐に向け、前の席に座っている腕の地図を指差す。
 憐はハンドルを回して目的地へと車を走らせた。
 土煙を上げてジーザリオが廃墟立ち並ぶ荒野を進む。
 2班と反対側になるサンダーオークの背後へ回り込んで憐のジーザリオが迫った。
「無茶するなよ」
 覚醒するまえに腕がエティシャに忠告をする。
 初陣の緊張はなかった。
「無茶はしないさ、援護をするだけだね」
 面倒くさそうに頭をかきながらエティシャもグローブ型超機械『クロッカス』をはめなおした。
「ん‥‥それじゃあ。止めて。突撃。奇襲」
 キュッとブレーキを踏んで車を止めると憐は大鎌「ハーメルン」を取り出しながら車を降りる。
 そして、<瞬天速>で加速しながら黄色い肌をしたオークへ背後からの一撃を浴びせるのだった。

●ヤリすぎ注意
『くははっ、さぁ俺を楽しませろ!!』
 覚醒して口調の荒くなった吹雪が<竜の咆哮>と共にハルバードをファイヤーオークにぶつけて瓦礫の壁へと弾き飛ばす。
 ズシンと言う音と共に2mほどの体が壁へと減り込んだ。
「わお、パワフルにいくね」
 いきなりの大立ち回りにクロスエリアは思わず両手を叩いて驚く。
 だが、すぐに意識を切り替え<GoodLuck>を使い捕獲のチャンスを伺った。
 今の一撃で気絶までもいかないが、敵の動きがそれほど早くないことが分かる。
 しっかりとダメージを蓄積させれば動けなくすることは容易そうだった。
「愉しめそうだなぁ」
 震える手で刀を握り締めたレインウォーカーは嘲笑を口元に浮かべてバイクを走らせる。
 起き上がろうとするオークに向かって走らせたバイクから飛びおりながらレインウォーカーは蹴りこんだ。
 フォースフィールドが広がり、加速された勢いがほぼそのままレインウォーカーに返ってくる。
 SESによって突き破らない限り通常攻撃の威力は減衰されてしまうのだ。
 能力者がキメラ戦において重宝される理由でもあり、対バグアに有効な存在な証でもある。
「壁にぶつかっている分押し込むのも無理かぁ。なら全力で殺ろうかぁ」
 弾き返されながら着地したレインウォーカーは<疾風>で己の動きを風のように加速させた。
 だが、起き上がったオークが瓦礫を掴んで投げ飛ばそうとするも、クロスエリアが<二連射>で動きを封じる。
「そうはさせないよ! 属性付の攻撃よ!」
『ウグルゥラァァア!』
 水属性の付与された小銃「S−01」からの攻撃がオークの腕に当たるとオークが痛みに声をあげた。
 暴れるオークが大木のような腕を振るってレインウォーカーや吹雪を薙ぎ払う。
『そんなモンか? もっと掛かって来いよ!!』
 吹雪はハルバードで腕を受け止め、不敵に笑った。
「遅すぎるぞ頓馬ぁ」
 レインウォーカーも腕をバックステップでかわしたところで全力の攻撃に移る。
「そぉらよぉっ」
 <刹那>を付与した力強い一撃を叩き込み、ガードしようとした腕をへし折った。
「腕一本もらったぁっ!」
 その腕をハルバードを吹雪が大きく振り下ろして斬りおとす。
『ブグゥグォォォゥ』
 腕を斬りおとされた反動で、尻餅をついたところに頭部に線が入ったかと思うとごろりと転がり落ちた。
「‥‥嗤って消えろ」
 一周回転して降り立ったレインウォーカーは落とした首を一瞥すると刀を鞘に収める。
「属性付ってのは効果的だけど‥‥ちょっと肉へのダメージ大きくないかな?」
 部分部分を潰していたが、属性による影響が大きいのか切り口部分の損傷が酷いのを見てクロスエリアは額に指を当ててうーんと唸りだした。
「まぁ〜、あとは到着した人に聞けばいいかと思いますよ?」
 唸りだしたクロスエリアにのほほんと覚醒をといて戻った吹雪が伸びをして答えを出す。
「とりあえず、完了した連絡からだな」
 無線機を取り出したレインウォーカーは作戦完了を知らせるのだった。
 
●子連れコックぶらり途中下車中?
 一気に詰め寄った憐のハーメルンがアキレス腱を斬り裂く。
「‥‥ん。一気に。行く。遅い。胴が。お留守」
 濁った血が噴出して憐に掛かるが、憐はそのまま胴を払った。
『ブグゥ!』
 オークは片足で起き上がりながら体を帯電させて憐を殴が憐にそんな攻撃があたるはずもない。
「援護はするよ。憐、やっちまえ〜」
 憐を盾にするようにしてエティシャは憐に<練成強化>を、オークへ<練成弱体>をかけて支援に徹した。
 赤月は長弓「彩雲」を使って<援護射撃>で憐を援護し、更なる追い討ちを仕掛ける。
「‥‥ん。わかってる。これでお終い」
 オークのがむしゃらなパンチを避けた憐は飛び上がると共に首をハーメルンで一気に凪いだ。
 ふわりと赤いマントが膨らみながら小柄な少女を地面へと着地させる。
 同時に首がゆっくりとずれながら落ちて、エティシャの足元まで転がってきた。
「すんごいわ、これ‥‥おまえと組んで良かったよ」
 思わずエティシャは吸っていた煙草をポロリと落とす。
「大丈夫だろうが、一応、周辺を見てくる。報告では居ないとされているが、回収時に襲われたらたまったもんじゃないからな‥‥」
 覚醒をといた赤月は弓を構えたまま無線機をちらつかせるとその場から一度離れた。
 
●顕現する姿
 グオンと空気を震わせる音が聞こえたかと思うと、ジーザリオのナナメ前から瓦礫が飛んでくる。
「くぅ!? 先手を取られたか!」
 キキキィとドリフトをしながらカーディナルは瓦礫をかわして飛来した方向をカバーするように車を隠した。
「距離は70mくらい! 隠れながら動くしかないかな? 制圧射撃は40mだから、ちょっと厳しいね‥‥」
 グワッシャーンと一際大きな音と共に隠れている壁が揺れると双眼鏡で隙間から敵を見ていたユウがビクリと体を震わせる。
 梓は長弓「梓」を携え、援護に回るべく息を整えた。
 音がやんだことを確認すると、全員が頷きあってアイスオークに向かっていく。
「目標は捕獲、でも全力で行きます!」
 梓が矢を飛ばすがオークは何事もなかったかのように瓦礫を投げてきた。
 その間にカーディナルとアンナ、ユウが自らの得物の射程内にいくために身を隠しながら遠回りで詰めよる。
『ブモォォォッ!』
 アイスオークは大きな声をあげると両腕に凍気を纏って目に見える梓に向かってダッシュしてきた。
 巨体が空を飛んで着地する。
「ち、ちかいっ!?」
 弓のリロードが間に合わないと思った梓は小銃「フリージア」に得物を持ち返る。
 ドクンと心臓が大きくなったかと思うと梓は内から噴出してくる『何か』を感じた。
「余裕こいてんじゃねぇよ!」
 キッとアイスオークを睨みあげるとフリージアの弾丸を叩き込む。
「ほらほら、豚さん。こっちこっちユウ達の射撃で上手に踊ってねっv」
 オークが攻撃をもろともしないままに腕を振り下ろそうとしたところへユウがヴァルハラによる<制圧射撃>でアイスオークの動きを釘付けた。
 無言のままのアンナが超機械「ビスクドール」を起動させて<練成弱体>でアイスオークの動きをさらに鈍らせる。
「このまま‥‥クタバりやがれっ!」
 カーディナルが最後に飛び掛りながらホーリーベルに<布斬逆刃>をかけて光らせると<急所突き>でオークの頭部を一気に貫く。
 物理攻撃に強い方ではあったが、非物理に変わったホーリーベルの一撃はやすやすと肉をと共に鍔が眉間にまで辿り着いた。
『ブグバァゥ!?』
 目を見開いて口から泡を吹いたアイスオークは膝をついた後に地面に崩れる。
「ちっ‥‥なさけねぇな、クソが」
 暴れださないように倒れたアイスオークの四肢の関節に向かって梓は吐き捨てるような言葉と共に銃弾を撃ち込むのだった。

●打ち上げ
 キメラをある程度からだを残した状態での処理を終えた能力者達は回収班に連絡をするとお互いの状況を確認するために合流をはじめる。
 防寒手袋や合金手袋などで引きずりオークたちを一箇所にまとめてもいた。
 殆どが首を切り落とされたり、頭部にダメージを与えているのでもはや暴れだす危険性は皆無である。
「いやぁ、疲れた。早く帰ってビールとチョリソーで一杯やりたいねぇ」
 煙草に火をつけだしたエティシャの鼻に香ばしい匂いが漂ってきた。
「待ち時間も勿体無い。水餃子とビーフンを作るから軽く食べるとしようか」
 赤月がSES中華なべで調理を終えたビーフンをおき、持ってきていた小型携帯用保冷ボックス内にあった作り置きの水餃子を茹でだす。
「わー、すっごく美味しそう。腕おにーちゃんって料理が上手なんだね?」
「‥‥ん。お腹。空いた。丁度いい」
 匂いに誘われてきたユウと憐が赤月の回りにやってきた。
「大丈夫そうなのはアイスとサンダーの二体かな? 一応まとめておいたけど‥‥」
 防寒手袋を取りながら梓も元気ないつもの様子を取り戻しつつ歩いてくる。
「さすがだねぇ。ボクらは全力で殺ったぁ」
 梓に向かってレインウォーカーはなんともいえない顔をむけた。
「動いてお腹ぺこぺこですよ〜。回収班がくるのは10分後ということですけど食べて待ちましょう」
 吹雪はにこにこと水餃子を眺めて食べ始めを今か今かと待ち始める。
「ま、いい運動にはなったからな。生身の経験には丁度よかったか?」
 カーディナルも煙草に火をつけて水餃子を囲むように座った。
「じゃあ、食うか‥‥いただきます」
「「いただきます」」
 青い空の下、荒野でひと時の休息を能力者達は取る。
 回収班が来て、去っていくのを気付かないほどにゆるりとしたときを楽しんだ。