タイトル:北米からの贈り物マスター:橘真斗

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2007/11/14 01:00

●オープニング本文


 UCP南米戦線。
 バグア軍、UCPともにこう着状態が続いている。
「ちっ、補給はまだかいっ!」
 いらついた口調でSESのブレードの整備をしている女性兵が叫んだ。
 ブラジル人らしい黒い肌に赤い髪。
 しなやかなボディは上半身をシャツ一枚、下は迷彩ズボンというラフなスタイルだ。
 狼のような鋭い目をしたこの女性兵はベルディット=カミリア。南米戦線でのベテラン能力者の一人だ。
「本部には打診をして、サンフランシスコから大型漁船をカムフラージュした上。護衛つきでくるそうです」
 部下らしい男がそう答えた。
「タバコもしけるし、医薬品もない‥‥ここで大きく補給できれれば領土取り返しの足がかりになるんだがね‥‥」
 しけたタバコをくわえてベルディットはブレードをおおきく振る。
「それよりも、負傷者の手当てが間に合わないことのほうが不安です」
「だな‥‥なんにせよ運んでくれないことにははじまらないってものさね」
 チリの基地から蒼い海をじっと眺めていた。
 
「あなた方へ依頼です。今回の任務はチリのUPC基地へいく、偽装漁船を護衛してもらいたいのです」
 オペレーターのリネーア・ベリィルンドだ。
 表情は真剣そのものである。
「バグア占領地、親バグア地域をとおり越える必要もありますが、援軍がきます」
「あなた方は偽装船の護衛にだけ集中していてください」
 一言おいてリネーアは微笑む。
「まぁ、小旅行気分で楽しんできなさいな♪」
 いつもの調子に戻ってリネーアは能力者たちを送り出すのだった。 

●参加者一覧

天上院・ロンド(ga0185
20歳・♂・SN
藤田あやこ(ga0204
21歳・♀・ST
相麻 了(ga0224
17歳・♂・DG
佐嶋 真樹(ga0351
22歳・♀・AA
ラン 桐生(ga0382
25歳・♀・SN
幡多野 克(ga0444
24歳・♂・AA
ブランドン・ホースト(ga0465
25歳・♂・SN
シャロン・エイヴァリー(ga1843
23歳・♀・AA

●リプレイ本文

●不安と不審
 偽装漁船に乗り込む前、ブランドン・ホースト(ga0465)は認証チェックのほうを現地のUPC関係者に尋ねた。
 旧米軍の輸送艦を遠洋漁船のように改造したものだ。
 そこの作業からすべてUPCが自軍営の領土の人間に受注していた。
「そこまで気にすることではないとおもうが‥‥」
 発注担当の軍人は自分が疑われているようで心外だと顔に表している。
「ま、転ばぬ先の杖だからな」
 タバコをふかしつつ、乗船者リストをもらい船旅中に確認しようとブランドンは考えていた。
「あ‥‥入り口に入れない‥‥」
 幡多野 克(ga0444)は背負った荷物がゲートにつまり、困惑していた。
 中身の8割はお菓子だった。
「少し減らしたほうがいいと思いますよ。荷物の持ちすぎは急な戦闘に困りますから」
 天上院・ロンド(ga0185)の装備は武器に防具に双眼鏡と無駄のない装備。
 そして、ピシッとしたスーツを着こなしているため、本当に諜報員らしい。
「生命線を守ることが依頼ですし。お先に」
 どれを残していこうか悩んでいる克より先に偽装漁船へ乗り込んだ。
「大きな船だよね、こういうのに乗ると船の先で両手を広げて〜‥‥って、あの船の話題はやめよう」
 そんなことをタラップを上りながらで呟いていたのはシャロン・エイヴァリー(ga1843)だ。
「早くしないと、克が最後みたいだよ?」
 荷物とにらめっこしていた、克にシャロンはいって先に船の中へ入っていく。
「ああ‥‥まって、お‥‥俺も! これ、そちらで食べて‥‥ください」
 タラップで待機していた軍人に両手いっぱいのお菓子を持たせると克は漁船へと慌てて乗り込んでいくのであった。

●それぞれの船旅
 遠洋漁業船らしいコースをとって動きだす偽装漁船。
 しばらくはUPC軍の領土や競合地帯の海域のため比較的穏やかな旅路だった。
 外はロンドや、ブランドンらが双眼鏡で交代しつつ偵察をしていた。
「俺は了、宜しくねー!」
 相麻 了(ga0224)は黒ビキニにワンピースの白衣を羽織って乗船していた藤田あやこ(ga0204)に早速声をかけていた。
「ん〜、年下は好みじゃないのん。ごめんね」
 あっさりと撃墜された了。
 断ったあやこは特に気にした用もなく忙しそうにキャビンからでていった。
 しかし、彼の軟派魂(ナンパソウル)はこれくらいではくじけない。
「君も可愛いね、俺は了。人呼んで『ジョーカー』の了さ」
 ぴしんとポーズを決めてラン 桐生(ga0382)に声をかけた。
「ごめん、女の子方がこのみだから」
 頭をかきながら、了はランにも断られた。
「あとの能力者は‥‥」
 ぐるっと見回してそれらしいのはキャビンの壁で休んでいる佐嶋 真樹(ga0351)だった。
 しかし、了の野生の感が無駄であることを告げていた。
「他の人にも挨拶にいってこよう。医務室にお姉さんとかいるはずだ!」
 何の根拠もない自信にあふれた叫びをあげると、スキップをしながら船内を動く了であった。
(「‥‥気楽なものだ」)
 目を閉じながら、了の行動を推し量っていた真樹はため息をもらす。
「あ、あの‥‥チョコレートとか、どう? 寝ちゃってる‥‥かな?」
 克が手持ちのお菓子を食べながら真樹の前まで来て声をかける。
 真樹はそれには答えない。
 戦闘以外に自分のすることなどないからだ。
「お、おいて‥‥いくね。それじゃあ‥‥」
 チョコレートを真樹の前のテーブルに奥と、克はそこからさった。
 
●藤田あやこの暗躍
 乗船日の夕食の時間、あやこはひそかに準備していたことを実行した。
 それは、海洋戦力の強化を促すシミュレーション映画の上映会。
 内容がアマチュア作品「ウレトレマン対海獣ゲソドン、エビドン、タコドン三大海獣決戦」「怪面ハンター対カニ怪面」
 ということを除けば、ちゃんとしたプレゼンテーションになっている。
 海外人にも人気の寿司バーを自分で用意するなど、あやこの人気はかなり高くなっていた。
 厨房へいって料理などをしたのはもう一つ理由があった。
 それは対キメラに対する秘密兵器を準備すること。
 厨房のあるものをそれに使おうと考えていたためである。
 その効果がでるかどうかは、謎ではあるが‥‥。

●総員、戦闘配備!
 ピコーン。
 親バグアの海域を抜けようとしたとき、キャビンにある魚群探知機が巨大なものをとらえる。
「くじらか、なんかでしょう」
 操舵手のUPC兵はそんなことをいう。
「いや、違う! コレは敵だ!」
 しかし、その予想ははずれた。魚群探知機の反応が消えたからだ。
「ちぇっ‥‥」
 舌打ちをしつつも、気になって了は外にでる。
 望遠鏡で覗いていたブランドンの隣に了はついた。
 風が生暖かくふいているのは南半球だからだろうか?
「今、何か海面が妙に光った!」
 すぐ後、触手のような足が伸びて来た。
 色は赤黒く、数は5本。
「後手ね、船のスクリューを止めて。真横からだとそのまま進むと背を向けることになりかねないから」
 ランはそういって、キャビンクルーに連絡をし、迎撃にでることにする。
 SESはあくまでも攻撃手段。
 フォースフィールドでスクリューをやられたらおしまいだ。
「敵襲‥‥」
 真樹は呟きながら目を明ける。
 足元には克の用意したチョコレートがあった。
「糖分は戦闘に必要だな」
 ソレをぽいと口にいれると、、戦場へ躍り出た。
「非戦闘員はなるべくキャビンの中へ固まって! 危ないわよ!」
 シャロンも叫びながら、足の方へ動き、ヴィアを抜いた。
「かかってらっしゃい!」
 シャロンはかかってくる触手を挑発した。
「俺の野生の勘は正しかったか、大丈夫。俺達に任せてたら何も心配ないぜ!」
 一方、非戦闘員をまず落ち着かせなければと了は、シャロンの声によって動いた非戦闘員達をキャビンへ誘導した。
「狙い撃ってこそのスナイパー、ですからね」
 動き出した触手へ一撃を与えるも、よろけるだけで勢いを消しきれない。
 触手がいっせいに船へせめてくる。
 一本の触手が船へへばり付き、絡みついてくる。
 ミシミシと偽装漁船が悲鳴をあげた。
「船の被害‥‥抑えないと‥‥」
 克はそういって足の方へ動くも、別の足が克めがけて攻撃を仕掛けてくる。
「そんな‥‥攻撃‥‥」
 鞘に納まった刀で触手をはじいた。
 だが、数がおおく、対応できない触手が次も船べりへ絡みつく。
 ガックンと漁船が揺れた。
「‥‥大丈夫だ」
「そうよ」
 真樹とシャロンはつぶやき、揺れに足をとられながらも、自らへ襲い掛かってくるクラーケンの足を己の武器ではじいた。
「倒す」
 克の髪が銀色になり、敵を見つめる瞳は金色に輝く。
 船に絡みついた足を斬り落とそうと、抜刀し、ダッシュして豪破斬撃を叩き込んだ。
 絡み付いていた足は斬撃で船べりから離れた。
「中々、やるな」
 真樹が克の動きをみて、無表情に関心した。
 真樹自身も髪の色が灼熱の赤に染まる。
 灼眼は淡い光を放ちながら、はじいた足を見据える。
「斬る」
 アーミーナイフ一本で、飛び掛り、切り刻んだ。
 足だけが別生物かのように動き船から距離をあける。
「まずはタコ足退治からか」
 キャビンの窓辺に、フォルトゥナ・マヨールーをおいて、安定させ、真樹とロンドの攻撃を受けた足を狙い撃った。
 すさまじい衝撃がラン自身と足を襲った。
「中々落ちないものだね」
 次の弾を込めながらつぶやいた。
「頭かくしてなんとやら、と‥‥」
 髪が肩口まで伸びたブランドンが弾をこめて弱弱しい足にとどめとばかりにハンドガンを撃ち込んだ。
 足は力を失い海中へ沈んでいく。
「やっと一本か、タコ助が」
 唾を吐き、ブランドンは次の狙いを定めだす。
「まだ秘密兵器の出番ではないようね」
 なにやら呟くと、あやこはライフルで攻撃を仕掛けた。
「やっぱり物理攻撃につよいわね〜」
 あやこはボソッと呟いた。

●現れる巨体
 ドドォンと船体に強烈な衝撃が走った。
「やっぱり、海中からきてたのかよっ!」
 了は予想をしていたのかキャビンの柱に捕まるようあらかじめいっておき、女性陣を保護する。
「あっ!」
 一方、外で戦っていた克は船べりから足をすべらせ海に落ちる。
 伸ばす手は宙を漂った。
 しかし、すぐに真樹が来て克を引き上げた。
 女性とは思えない力で‥‥。
「ありがとう」
 克は素直に礼をいう。
「貸しにしておく」
「お菓子のお礼だけに?」
「本体がぶつかったのだろうな」
 克の言葉をさらりと流し、真樹は現状確認をする。
 ブランドンの目の前に巨大なタコの頭部が浮かび上がった。
 目だけでも1mはありそうだ。
「まずは目を‥‥」
 ブランドンが狙いうとうとするところをランがキャビンからスピーカーを通して中止させる。
「目を狙ってこっちを狙わなくなったら、船が壊れるわよ。胴体を狙って弱らせるか、足からね」
 ちっと舌打ちながらももっともだと思いブランドンはそのとおりに動く。
「ゲソドンじゃなくて、タコドンだったのね。いいわ、秘密兵器の力見せてあげる」
 不敵に笑いあやこはクラーケンの頭へちかづいた。
 船体を操舵手が動かし、クラーケンの足から逃れる。
 しかし、頭の後ろには3本の足が姿を現していた。
「実に面倒ですね‥‥援軍はいつくるのでしょう?」
 ロンドはボヤキながらまずはクラーケンの足を落とすことにする。
 真樹も足を蹴散らし始めた、船から離れた一つを狙う。
「邪魔だ」
 切り刻まれた足は勢いをなくしていた。
「さぁ、私もやるわよ」
 シャロンのヴィアが光の舞いを踊りだす。
「あんまりしつこいと‥‥こうなるわよ?」
 ふふっと笑い、クラーケンの本体を挑発する。
 弱った足と、丈夫な足がが克と真樹を狙いだす。
「面倒っ‥」
「まったくだ」
 克のほうはかろうじてだが、真樹は余裕で足をはじく。
「そうそうさせるか」
 別の足は船べりに張り付こうとするもブランドンのハンドガンの攻撃にはじかれてつけない。
 克は自らに襲い掛かってきた足を斬っていく。
「邪魔だよ」
 普段より幾分饒舌な克が言い放つ。
「『ジョーカー』は最後にでてくるものってね、レディ達俺の活躍をみてくれよ!」
 キランと歯を光らせ、了はキャビンから克の弱らせた足へ駆けた。
「俺のこの手が〜ってかっ!」
 獣神流古武術特有の連撃が足に叩き込まれるも、弱らせるまでにとどまった。
「ちょっとカッコわるいな‥‥俺」
 ちょっとがっくり肩を落とす。
「まぁ、弱らせてくれたなら、本体を狙いやすくなったしいいんだけど」
 了を視線の片隅で見ながら、ランは胴体を狙える位置までキャビンデ動いた。
 2発の弾がフォルトルナが放たれ、その衝撃を覚醒して大きくなったバストが吸収する。
「んー、いまいちだな‥‥タコの内臓ってどこだっけ?」
 相手の様子を見てため息をつきながら、ランは呟いた。
「さて、残りの足を潰して、それからブランドンさんに目を狙ってもらいましょうか」
 射程のあるロンドの銃なら、支援のほうが向いている。
 2発の銃弾が克と真樹を襲っていた2本の足を落とすのは造作も無かった。
「そろそろ目を潰して逃げたいところだな」
 8本中5本の足を落とした。
 追いつかれてもなんとかなるだろうとブランドンは踏んだ。
「さぁ、このゲームは俺らの勝ちでおしまいにしよう」
 ブランドンの鋭覚狙撃が、クラーケンの目を狙い打ち抜く。
 ぶちゃっと目がつぶれ、じゅぶじゅぶと泡を噴出させながら触手がむちゃくちゃに動き出す。
 そして、ぐおっと胴体を持ち上げ、光線を吐き出しだした。
「なに!?」
 目の前のブランドンは唖然となる。
 墨を予想していたが、光線はその範疇を越えていた。一直線に伸びる光線。
 自らの足をも犠牲にして放たれた光線をブランドンは避けた。
 その後ろにはあやこが仁王立ちしていた。
「危ない! よけて」
 ランが叫ぶ。
「ふ、こんなこともあろうかとぉ‥‥。中華なべを磨きに磨いてつくった『殺獣鍋』!」
 中華なべを盾に光線をうけ、反射させた。
 しかし、即席道具。反動であやこはすべりこけた。
「なんとまぁ‥‥」
 隣にいたロンドは唖然とその様子を見る。
 反射された光線は足、そしてクラーケン本体に浴びせられた。
「中華電磁メッキのアヤコと呼んで!」
 眼鏡を直しつつ立ち上がるあやこの手の中華鍋はドロドロになっていた。
 もう料理には使えまい。
 それでもあやこは満足していた。
 光線を受け、焦げだすクラーケン。
 勢いあまって船から離れた。

●全速全進!ただし、前方注意!
「全速前進! 今のうちに逃げるよ!」
 ランがいい、スクリューが急速に回りだす。
 そのとき、船の前方から何かがやってきた。
「うぉらぁぁ、どけぇぇぇぇっ!」
 小型高速艇を手下に操縦させ、その後ろに仁王立ちしてSES搭載したブレードを握っている女性が一人。
 偽装漁船の横を通り過ぎ、クラーケンを足ごとまとめて横へなぎ払った。
 一撃ですべてが片付いた。
 戦いおわると、小型高速艇がやってくる。
「もしかして、援軍というのは‥‥」
 真樹が無表情なりに驚いた顔で下を覗いた。
 けろっとした顔でブレードの排気を待つ女性が手を振っていた。
「待ちきれないから迎えにきたよ、依頼を頼んだベルディット=カミリア少尉だ」
 黒人女性ベルディットはそういって格好つかない程度の敬礼をする。
「やぁ、仔猫ちゃん。初めて会った瞬間からキミとの運命を感じたよ‥‥どぉ、俺とお茶しない?」
 了は女性の声が聞こえるやいなや船べりから落ちそうになるくらい体を乗り出しながら、手を振る。
「茶よりタバコだ! タバコ! しけたタバコもきれたんだから、さっさとよこせ」
 了の口説きをさらっと流し、酷いことをさらりという。
「とんでもない人と知り合いになっちゃたのかもしれない」
 シャロンは早速みれた手腕を思い出しながら、ポツリと呟くだけだった。