タイトル:エイジアゲームショーマスター:橘真斗

シナリオ形態: イベント
難易度: 易しい
参加人数: 16 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/04/11 18:04

●オープニング本文


『ハロー、マイスターの皆さん元気していた? フォーゲルマイスターのバージョンUP第二段、ついに巨大ヴァーロイドフォーゲル(VV)の登場よ』
 TVで流れるCMにフリフリヒラヒラしたアイドルらしい衣装のアニメキャラクターの少女が写っている。
 コバルトブルーの髪に同じ色の瞳、彫刻のような白い肌と崩れないボディラインを誇った少女は「みゅう」といった。
 少女が一歩横に飛ぶと、そこに現れたのは巨大なロボットの上半身。
 原色で組み合わせれた派手な塗装にゴテゴテした外装、厳つい男のような顔にはマスクがついていた。
 子供が喜びそうなアニメや漫画でおなじみのロボットである。
『メルス・メス社の開発した最新型VV「グランエミター」。全高30mで固定武装のみの超玄人仕様よ。その初披露が今週、エイジア学園都市にあるイベント会場で行われるわ』
 巨大なロボットの前に地図が表示され、さらに外観の説明も入ってきた。
『イベントの名前はエイジア・ゲームショー。フォーゲルマイスターの特別大会をはじめ、その携帯版のポータブルの体験版の発表、今入っている情報では同人からの移植の決まったタワーオブマーセナリーの最新作も発表よ!』
 前のめりになりながら指を立ててみゅうはドドンという効果音と共に宣伝を始める。
 近づいたときに胸がたゆんと揺れるなど芸が細かいアニメーションだ。
『会場で待っているわね、シーユーアゲイン♪』
 最後の一言を締めくくり、ドローム社が提供するドリームパレスの宣伝が終わる。
「ふーん、エイジアゲームショーね」
 CMを眺めていたレオノーラ・ハンビー(gz0067)は手にある招待状を見直した。
 エイジアゲームショーからの優待券である。
「遊びにいこうかしらね。スタッフとの口利きくらいはできるだろうし、コスプレOKだったかしら?」
 参加要項を眺めながらレオノーラは自宅へと戻っていくのだった。

●参加者一覧

/ 白鐘剣一郎(ga0184) / 雪ノ下正和(ga0219) / 鷹代 由稀(ga1601) / クラーク・エアハルト(ga4961) / シーヴ・王(ga5638) / ゼフィル・ラングレン(ga6674) / L3・ヴァサーゴ(ga7281) / 百地・悠季(ga8270) / 椎野 のぞみ(ga8736) / 白虎(ga9191) / 蒼河 拓人(gb2873) / 冴木 舞奈(gb4568) / テト・シュタイナー(gb5138) / エイラ・リトヴァク(gb9458) / ソウマ(gc0505) / ラフィール・紫雲(gc0741

●リプレイ本文

●後悔先立たず
『         エイジアゲームショー事務局
 貴殿が申し込みされたコンパニオン採用募集ですが
 条件不備の為、採用を見送らせて頂きます』

 届いた一通のメールを眺めた百地・悠季(ga8270)はパソコンの前でがっくりとうなだれる。
「くっ‥‥こういうことになるんだったら、ゲーム関係にも手を伸ばすべきだったわね」
 後悔しても遅いが、何か客以外の参加ができないかと悠季はエイジアゲームショーのアルバイトを探していた。
「フードコートで募集があるわね。そうだ、折角だから特別メニューも提案してみようかしら」
 ふっと思いついたアイディアに思わず頬を緩ませる。
 すぐさま悠季はポチリとフードコートの臨時アルバイトに応募をしたのだった。
 
●ゲームの世界から現実へ
「さーって、あたし的には久しぶりにでかい会場での仕事だし、気合い入れていかんと」
 鷹代 由稀(ga1601)は自分をモデルにしたキャラ、『ユキ・ラグナイ』のパイロットスーツ姿で右手の掌へ左手の拳をぶつける。
「そーいや、試遊台ってあるの? この時期ならロケテみたいなもんだろうし」
「用意しているもんやさかい、そちらの説明も頼むわぁ」
 開場前、既に現地入りしている開発者の鹿嶋明美をはじめとしたスタッフ達は打ち合わせをしていた。
 アイベックス・エンタテイメントのアイドル達は外部スタッフとして個人的に参加をしている。
「とうとうここまで‥‥よし! がんばるぞ! 商品説明は任せてください!」
 感動もひとしおといった様子で椎野 のぞみ(ga8736)は『粕野望』の軍服コスプレでグッと拳を握っていた。
「マイナ・クロードのコスプレして頑張るよぉー」
 朝食代わりのチョコバーを食べながら気合を入れるのは樋口 舞奈(gb4568)である。
 ALPとしての初仕事――もっとも事務所の依頼ではないのだが――であり、開発初期に関わったものであるため気合が入るというものだ。
「まずは整理券の配布とビラ配りの方頼みますわ。機器のセッティング等はうちらに任せてくれればあんじょうしあげときますえ」
 明美から事前に連絡し用意してもらったモデルアイドル達との対戦整理券とビラを各自は受け取る。
 開始まであと1時間をきろうとしていた。
 
●いつの時代も好かれるものがある
「賑やかなものだな。なるほど、人気の程が伺える」
 白鐘剣一郎(ga0184)は人ごみの会場内を歩き、ドリームパレスブースを眺めては目を見開く。
 ディスプレイのついたタワーのようになったものを中心に幾つモノ筐体が輪になって並び、そこに列ができていた。
「ハーイ、待っている人は簡単な操作方のマニュアルでも見ていて頂戴ね」
「これはエアハルト婦人、こんなところで仕事をしているとは思わなかったよ」
「私だってするつもりなかったわよ。何となく流れで頼まれちゃってね?」
 『みゅう』と呼ばれるフォーゲルマイスターのマスコットと同じフリフリヒラヒラしたコスプレ姿でマニュアルを配るレオノーラ・ハンビー(gz0067)に剣一郎はさらに驚く。
「あ、剣一郎さんもいましたか。レオノーラも似合っていますよ」
「ちょっとスカート短いから恥ずかしいけどね」
 シャスール・ド・リスの制服を着たクラーク・エアハルト(ga4961)に声をかけられ、レオノーラは恥ずかしそうにスカートの裾を押さえた。
「ご馳走様だ。しかし、マニュアルを見る限りKVそのものと変わらないな」
 剣一郎がマニュアルを確認していると、タワーの中央にあるディスプレイに対戦中のゲーム映像が映る。
「アレがグランエミターかぁ、やっぱりロボと言ったらスーパーロボットだよ」
 フードコートでラーメンを食べていた雪ノ下正和(ga0219)が流れている映像に出てきた30m級の派手な色合いのロボットを見るために通路にまで出てきた。
 巨大な剣を振るい、胸部から三連装ビームランチャーを放つ姿は確かに普通のKVとは一線を画している。
「コレがフォーゲルマイスターですか‥‥噂には聞いていたので実に興味深い」
 ソウマ(gc0505)も同じようにディスプレイで流れる巨大ヴァーチャロイドフォーゲル(VV)とグリフォンなどの最新機種の戦闘映像を眺めていた。
 見ているだけでも手に汗を感じる。
 本当の戦場を感じていながらも、ロボットを使った闘いに惹かれるのは男の性(さが)かもしれない。
「レオノーラ、そちらが終わったらフードコートへいきませんか?」
「ええ、後で合流しましょう。ああ、後能力者の皆にはこれね」
 クラークからの誘いにレオノーラが返事ついでに渡したのは特別試合の参加証だ。
 能力者VSゲーマー達の本気の戦いができる夢の機会が待っている。

●次なる世代へ
「ライディ、こっちです」
「あ、うん‥‥まさかこんなところでデートするなんてね」
「デートというには視線をバリバリ感じやがるですが」
 シーヴ・フェルセン(ga5638)が女子更衣室から出てくるとライディ・王(gz00231)を手招きする。
 ツインテールに黒のゴシックワンピースで決めた姿は『タワー・オブ・マーセナリー』というゲームのフェルゼーヴにそっくりだ。
 もっとも、シーヴがモデルなので仕方ない‥‥視線の招待ももちろんそのゲームユーザーからのものである。
「SFKのブースにいくです」
「わ、わわわっ!」
 ライディの腕を引っ張りシーヴが会場を軽く見回した後でSFKのブースに行くと、『タワー・オブ・マーセナリー・セカンドエイジ』通称TOMSAが大々的に宣伝をされている。
 レスラータイプの女性や、アーマーを着込んで斧を振り回す女の子がいたりと新キャラが派手にデモムービーでバトルを続けている。
「角、久しぶりでありやがるです。こっちが旦那のライディです」
「ああ、はじめまして‥‥ええと、嫁がお世話になったようで‥‥」
 シーヴに旦那と紹介されたライディは照れくさそうに後頭部に手をやりながら自己紹介を済ませる。
「どうも、ようやく発売までこぎつけれて今回発表となった新作ですよ。遊んでいってくださいね」
 同人ゲームTOMの開発者でもあり、今はSFKでTOMSAを作り上げた角は立派なクリエイターとしてスーツを着こなし営業を続けているようだ。
「久方ぶり‥‥。此度は、宜しく‥‥」
 そんな角にもう一人、黒のゴシック系衣装で整えたシャヴィアことL3・ヴァサーゴ(ga7281)が挨拶にくる。
「ヴァサーゴさんもよろしくお願いします。早速、お客さんへの説明等をマニュアルを渡しますのでそれにしたがってもらえればいいですから」
「了解‥‥。ずいぶんと良く出来た。鮮血エフェクトが何よりよし」
 虚ろな表情ながらもどこか嬉しそうにヴァサーゴは角に完成版の感想を漏らす。
「新キャラでありやがるですね。よろしくです」
「ん‥‥ゲームでみた‥‥そうか、フェルゼーヴ」
 シーヴの差し出した手にヴァサーゴも答えて握手をすると、その光景をフラッシュが囲んだ。
 旧世代キャラと新世代キャラの夢の競演が果たされたのである。

●演技派アイドル達+α
 ぽよんと小気味の良い音と共に大きな二つの果実が揺れる。
「あ、拓人君、来てくれたんですね〜ゲームのキャラの衣装なんですけど似合ってますか〜?」
 蒼河 拓人(gb2873)が視線をあげると果実の上にはラフィール・紫雲(gc0741)の笑顔が乗っていた。
「ラフィちゃんきたよー。衣装も似合っているし、お仕事頑張っているね」
「はい、こちらチラシです〜」
 ラフィールがコスプレしているゲーム――VMポータブルのチラシには5月5日の発売を間近に気合の入った映像とキャッチが散りばめられていた。
 登場人物には有名な能力者傭兵の姿に良く似た女子もいた。
「あ、ラフィちゃん‥‥休憩時間だけど」
「その質問には答えられませんが、ここを見てくださいね」
 仕事上プライベートな話をするわけにもいかないラフィールはチラシの一部を指さす。
 そこには簡単な地図と休憩時間が書かれていた。
「ありがと、じゃあ。お仕事頑張ってね」
 拓人はチラシを丁寧にしまうと微笑みを浮かべてブースから去っていった。
「いろんな機体が登録されていますね。ポータブルではグリフォンは無いのが残念ですけど‥‥」
「機体は少ないですがオリジナルのカスタマイズ要素が追加されているので、フォーゲルマイスターとは違った楽しみ方ができますよ。試遊台もありますのでどうぞ〜」
 チラシを手にし、じっくりと眺めていたゼフィル・ラングレン(ga6674)をラフィールが案内をしていく。
 その姿は衣装とあいまってオペレーターらしくしっかりしていた。
「よし、やるぜ‥‥テト姐さん頑張ろうぜ」
「おい、オルガ。俺様はティーダだぜ? その愛称で呼ぶのはてめぇにはまだはええな」
 時計を見たエイラ・リトヴァク(gb9458)――今はオルガ・ユーティライネンというキャラのパイロットスーツコス中――がテト・シュタイナー(gb5138)に声をかける。
 だが、今は見た目どころか中身もキャラになりきっているテトことティーダ・ユーティライネンは鼻を鳴らして不敵に笑った。
 マイクを持ってちょっとしたステージに立つ二人はゲスト対戦開始の準備の間のトークを始める。
「そうだったな、ティーダ姉さん。これから選ばれたヤツラとやりあうってことだが大丈夫だよな?」
「どんな相手だろうと手加減はしないさ。おい、そこのオペ娘はこっちで参加だ。3対3の対決だからな」
 エイラも調子を取り戻し、キャラクターらしく振舞うとテトが案内をしているラフィールをステージへと呼び込んだ。
 他にもオーディンとしてプレイヤーと共に戦う3人の女戦士も一緒に並んで小さなステージに華が咲き乱れる。
「あ、はい。頑張らせてもらいますね」
 その中でもぽよんと揺れるラフィールの胸に整理券を持った男たちの視線は集中する。
 他のメンバーも無いわけではないのだが、質量の多さには勝てないようだ。
「ようし、はじめるぜ。機体は主人公機『ホーリィライト』一本だが、カスタマイズは大分されているし、高機動戦、狙撃戦、白兵戦の3タイプにわかれているから一機ずつ選べよ」
 テトが簡単な説明をしていると一番初めの対戦相手が向かい合って並ぶ。
 ステージの上には対戦している映像が出るようにディスプレイも用意された。
「負けないぜ、それじゃ第一戦ッ、いくぜっ!」
 エイラが気合を入れて叫ぶとコンパニオンと来場者とのイベントバトルが始まる。
「対戦ゲームというのもデートとかにはいいかもにゃね? べ、別に下調べとか予習とかそんなんじゃないんだから!」
 VMポータブルブースの外から携帯ゲームで対戦しているのをみた白虎(ga9191)は自分に突っ込みをいれていた。
 彼はしっと団と呼ばれるモテナイ男女達の総帥。
 桃色なんてあってはならないのだ‥‥あってはならないのだ。
 
●EX−BATTLE
『ウェルカム、特別バトルアリーナへようこそ。EX−BA[イクサバ]スタートです』
 コックピットのディスプレイに『みゅう』がナビゲートを開始すると視界一面に古戦場のようなものが広がった。
「くぅ、燃えるなぁ〜。こういうステージってグランエミター‥‥発進っ!」
 正和は大きな声をあげて乗っている巨大VVを動かした。
『にゃー、最大出力にゃー。まさかフードコートでナンパされるとは思っていなかったニャ』
『貴方達の作戦は、過去の傾向から対策済みです! 傭兵の底力を見せてあげますよ。上空からの奇襲が後20mのタイミングできますよ』
 3人乗りということで操縦者はじゃんけんの上メインパイロットに正和、火器管制に白虎、オペレーターに機体に悩んでいたソウマという組み合わせである。
 4機のディアブロ達がジャンプをしたかと思うと最大ブーストによる機槍「ロンゴミニアト」チャージングを仕掛けてきた。
「わかってる! まとめて攻撃してやるぜ! グランブレイザー!」
『え、そんな武器あったのかにゃ?』
『適当にいってるだけのような気もします』
 二人のツッコミを受けながら正和の叫びと共にグランエミターの胸部に搭載されている三連装レーザーキャノンが拡散して広がる。
 機動を変えることが出来ずにレーザー光を身に受けたディアブロ達だが、予想の範囲内なのか揺らぎの無い攻撃を続けてきた。
 
「以前、シミュレーターでチェックしていましたけどサイズがアップしてより心強い味方になりましたね」
「余所見していない! 他のが来てるわよ!」
『動きのいいワイバーンがいるな。これが熟練のゲーマーの動かし方ということか』
 クラークがグランエミターの動きに感心していると、複座シートにいるレオノーラと剣一郎が強敵の接近を知らせる。
 真ツインブレイドを咥えた赤と青のワイバーンが互いに位置を交差しながら入れ替わり仕掛けてきた。
 時間差による連続チャージに頭部をゴーグル状にしたクラークのシラヌイS型は飛びのいて回避する。
「連携を崩しに掛かってきましたか、なまじ人間であるから手ごわいですね」
「人工知能とは訳が違うわよ。火器は担当するから接近戦攻撃を仕掛けて! それにこの子らも『ヤクトハウンド』という業界じゃ名の知れた子よっ!」
 覚醒して命令口調を強くしたレオノーラがクラークをせっつき、試作型『スラスターライフル』をばら撒いた。
 クラークは冷静に前を見つつ機体を一機のワイバーンに迫らせる。
 割り込もうとしたもう一機のワイバーンには剣一郎のシュテルンが機槍「ロンゴミニアト」を振り、割りこんだ。
『助っ人参上。連携をこれ以上させはしない』
『グリフォン、援護に入ります』
 ゼフィルが最新機でるグリフォンで戦場に降り立ちながら、プラズマリボルバーを剣一郎が押さえている青いワイバーンに向けて放つ。
『オルガ・ユーティライネン参上だ! こっちでも暴れさせてもらうぜ!』
 休憩時間を使ってポータブルのデータのコンバートチェックも兼ねたエイラがヘルヘイムと呼ばれるカスタムヘルヘブンで戦場を駆け出した。
「さぁて、本家KV乗りの実力を見せてあげなさい、クラーク!」
「はいはい、人使い荒いね。こういうときのレオノーラはっ!」
 火砲支援を受けながらクラークはライト・ディフェンダーで真ツインブレイドを弾き、反対側の手にもつRA.2.7inプラズマライフルを間近で放つ。
 直撃を受けた赤いワイバーンが吹き飛びながらも間合いを取り、短距離ショルダーキャノンで牽制を始める。
 一進一退の攻防に誰もが興奮を覚えはじめるのだった。
 
●炸裂、初心者秘儀
「遅れてすみません〜着替えに手間取ってしまって」
「ううん、大丈夫だよ。じゃあいこうか」
 ちょうど、フォーゲルマイスターのイベントが始まった頃、休憩時間を向かえ、一度普段着に着替え直したラフィールが手を振りながら拓人の元へと小走りに近づいた。
 友達という二人だが、周囲から見ればカップルか姉弟に見えなくもない。
「タワー・オブ・マーセナリーセカンドエイジを遊んでみたいっていってたよね? 休憩時間もそんなに長くないだろうし早速いこうか?」
「はい、拓人君と対戦してみたいんですよ」
 柔らかい微笑を浮かべるラフィールに案内されてSFKのブースへと足を運ぶと記念撮影が行われていた。
「我は‥‥こういうのは恥ずかしい‥‥」
 ヴァザーゴと対戦をして、より早く勝った人のランキングで最高ランクと定めた時間の勝利者がでたようである。
 シャヴィアの格好のままのヴァサーゴと勝利者の男性が横に並んで写真を取っていた。
 周囲には雑誌やTVの取材カメラもあり大きく注目されている。
「うわぁ、なんかすごく人気みたいだね」
「対戦台はあいているみたいですし、遊びましょう」
 TVとかでしか見たことのない光景に拓人は思わず声をあげて目を輝かせた。
 ラフィールに引っ張られるようにして対戦台に座るとキャラクターを選び対戦開始。
 拓人が選んだのは知り合いによく似た斧使いの女の子だ。
 登場時にバイクで上空から乱入してきたかと思うと、そのバイクをアーマーのように装着した。
「なんか、本当にあの子みたいだな」
 ラフィールが選んだのはシャヴィアであり、大きな鎌を持ち邪悪な雰囲気をかもし出している。
「速度は同じ、リーチも同じ‥‥戦い方が近い相手って難しいなぁ〜」
 拓人は操作方法に慣れようといろいろと動かしているとシャヴィアが高速移動と共に大きな斬撃を繰り出す<旋−Tsumuji−刃>を放った。
 体力ゲージがガッツリと減り、拓人の顔に焦りが浮かぶ。
「うーん、こうなったら難しいことを考えずにガチャガチャ戦法だよ!」
 しかし、一瞬で焦りを飛ばして拓人はレバーとボタンをむちゃくちゃに動かしだした。
 覚醒モードに入り、近づいてきたシャヴィアをアーマーパージの衝撃が吹き飛ばし、翼の生え機動力の上がった女の子キャラがラッシュを仕掛けていく。
「わわわ、さっきまでとは動きが違います」
 画面の向こうのラフィールが急な変化に驚きの声をもらした。
「大丈夫‥‥瀕死になったら‥‥覚醒して、超必殺を撃てばいい」
 慌てるらフィールの隣に撮影から解放されたヴァサーゴがつきアドバイスを始める。
 画面では拓人の方が優勢に攻めているが、シャヴィアの体力ゲージが点滅しはじめたとき覚醒モードの衝撃が拓人のキャラを吹き飛ばした。
 さらにキャンセルで大鎌を横に一閃。
 シャキーンという音共にシャヴィアのカットインが入ると真っ暗な画面に赤黒い刃の軌跡が走り、勝負がついた。
「あ、危なかったです」
「でも、まだ一戦目だからね。次はまけないよー」
「はい、私も負けませんよ」
 お互いに台の横から顔を覗かせて対戦相手に笑顔を返す。
 そして、再び画面へと向き直り次なる闘いをはじめるのだった。

●デートの続き
「本家の力の入れ具合すげぇです」
「うん‥‥最近のゲームもすごいよね」
 シーヴとライディはフードコートで軽い食事を取りながら大型のディスプレイに映る能力者対ゲーマー達のイベント試合を見ていた。
「ライディ、口元にケチャップがついてやがるです」
 試合に集中していたためかホットドックのケチャップを口につけたライディの顔。
 それを見たシーヴはくすりと笑いつつナプキンでライディの頬を拭った。
「はーい、注文されたKVポテトよ」
「ゆ、悠季さん‥‥!? 何でこんなところに」
「臨時のバイト中。熱々な二人は熱いうちに食べて欲しいわね。じゃあ、ごゆっくり」
 赤白縦縞の半袖スタッフシャツにオレンジのキャロットスカートという姿の悠季は意味深な笑顔を浮かべながら去っていく。
 二人のテーブルに置かれたポテトはプラモデルのようにパーツごとに形どられたポテトを爪楊枝で組み合わせてKVの姿を作っていた。
「シーヴのはディアブロで、ライディのはアルバトロスみたいですね」
 紙皿の上に立つポテトKVは食べるのが勿体無いほどに完成度はいい。
「写真撮ってから食べようか」
「そうですね」
 お互いのポテトを写真にとってそれから食べ始める二人。
「さっきのTOMSAの対戦のときはギャラリーの人気がすごかったね」
「スタッフからも写真せがまれるってどーいうことでありやがるか」
 パクパクと口にポテトをほお張りながらシーヴは対戦イベントの盛り上がりにため息がこぼれた。
「ちょっと‥‥妬けたかな」
「なんか、初めてライディにヤキモチやかれた気がするです」
 ライディがいつになく不機嫌そうな顔で呟いたために、シーヴは思わず噴出す。
 大変ではあったがこんな顔が見られたのならよかったと心のそこから思うのだった。
 
●ブレイクタイム
「ちぇっ、俺もアレに参加すりゃあよかったかもな。グランエミターの開発にも関わっていたのに忘れていたぜ」
 じゅるーとジュースを飲みながらフォーゲルマイスターブースの対戦模様をテトは眺めた。
 現在は休憩中で、飲み物片手にぐるぐると回っているところである。
 フォーゲルマイスターのイベントは一番の注目株なのかブースも会場の中央にあり、ディスプレイも東西南北の4つあるためどこからでも対戦模様は見ることが出来た。
「この商品はカスタマイズが出来るロボットアクションゲームで最大4対4の対戦ができるんです」
 テトが会場をあるいていると聞きなれた声が聞こえてくる。
 舞奈がチラシを片手に商品説明をパイロットスーツで行っていた。
 口調は本来の子供っぽいものではなく、慕う兄のように頑張ろうとする女の子『マイナ』を意識している。
「あいつもがんばってんな。ここはゆっくり様子を見ながら俺様も休憩時間を満喫するかね」
 手加減がばれないように手加減するのもかなりの腕がいるもので、ゲーム機を握っていた手に痺れが残りもしていた。
 この後は来場者を含めた4対4戦があるため、休養が必要なのである。
 いろんな最新ゲームを見ながらテトは会場を練り歩くのだった。
 
「VMポータブルならではのモード、シナリオモードでは私達がモデルのキャラクター達が、皆様の入隊をお待ちしております!」
「VMポータブルのブースでは、この後来場者を含めた4対4のイベントバトルであたし達と対戦できるチャンスがあるわよん。ソッチの抽選券も合わせて発行中なのでグッズ買っていってね」
 のぞみと由稀がゲーム内の私服姿で物販の方を担当していた。
 整理券を配布しつつ時間を変えての対戦イベント企画が功をそうして、物販も盛況である。
 ユキ達の企画がきっちりと組まれていたこともあり大きな混乱もなく売り上げを伸ばしていた。
 あまりの混雑のために急遽4対4のイベントは抽選制の一回になってしまうほどである。
「んじゃあ、予約券は無しでええからポスターと主題歌CDを欲しいだらぁ」
「はーい、8000Cになりま‥‥って、社長!?」
「ノンノン、今は謎のアロハ紳士米田さんと呼んでくれにゃーわやだでよ」
 現金を受け取り、商品を渡そうとしたのぞみが素に戻って仰け反った。
「謎のアロハ紳士っていっていることめちゃくちゃよ」
「こまきゃーことは気にしちゃあかんで、おみゃーさん達の様子を見に来たんだがや、心配はなかったようで安心したわ。買い物途中だで、まただでよー」
 何かいろいろな言葉が混ざった怪しい名古屋弁を使いながら米田はサングラスの奥にある瞳を細めながらブースから去っていく。
 両手には既に可愛い女の子の紙袋が握られ、中にいろいろと入っている。
「仕事じゃなくて、本当に遊びに来てますね」
「まぁ、あの人らしいっちゃ。らしいわね‥‥さぁ、もう人頑張りして、休憩の後は最後の対戦よ」
「はい、がんばりましょう」
 由稀と小さな声で打ち合わせたのぞみは気合を入れて物販列に並ぶ人々をさばきだした。
 
●決着
「くっ‥‥足が落とし穴に嵌った」
「にゃー、なんでそんなトラップがあるのにゃー!?」
 ソウマが苦々しく呟くと白虎が慌てふためきながら突っ込みを入れる。
 キョウ運の持ち主を自称する彼は不幸や幸運を舞い込む様だった。
「集中攻撃を受けてても可動式盾「インターセプト」があるから大丈夫だ!」
「にゃんとー! 急にエネルギーが下がっていくにゃ。「インターセプト」の発動も不具合でているにゃー!」
 仲間を元気付けようと振舞う正和だったが、白虎からの報告は寂しいものばかりである。
 敵のディアブロ部隊『真戦組』の2体を退けはしたものの残り2体を相手にしなければならないのは中々に大変だ。
 援軍を予防にも他のメンバーとは戦域が離れてしまっている。
「どうにもならないのか! いや、諦めないぞ俺はスーパーロボットにはピンチをチャンスに変えることだってある! 動け! グランエミター!」
 操縦桿を握って正和が叫ぶも、機体は沈黙を続けた。
 機槍「ロンゴミニアト」を持ったディアブロがブーストを使ったチャージングを仕掛けてくる。
 今度は<アグレッシヴ・フォース>を込めた大きな一撃だ。
 二機のディアブロがコックピットのモニターへドアップとなったとき、グランエミターの眼に光りが宿る。
「システム再起動、これは‥‥勝手に動いているぞ?」
 万事休すと思ったとき、ソウマが疑問の声をあげながらも口元をニヤリと歪ませた。
 強運の始まりだと直感でわかったのかもしれない。
 近づいて来たディアブロをパンチではじき飛ばすと、グランエミターは全身から光りを放ちSESドライブ3つ分のエネルギーを両手に集中させて巨大な練剣状の刃を作りだした。
「何だからよくわからないが、ここは一気に決めるときだ! ひさぁぁぁぁつっ!」
「しっ闘怒豪!」
 練剣を横なぎに構えたグランエミターはディアブロ2機を胴体から真っ二つにあっという間に切り裂く。
 爆発を逆光に受けたグランエミターは全身から蒸気を噴出させると共に停止した。
『勝負あり! たった今、能力者チームの勝利が確定しました。皆さんおめでとう♪』
 またタイミングよく試合終了の合図が『みゅう』よりなされる。
「正和の思いがグランエミターの隠された力を引き出したんだよ。きっとね」
「そうだな。こいつが実際の戦場でつかえたらいいんだけどな‥‥」
「こんな不安定な機体は嫌ニャー、最後はかっこよかったけどね」
 3人はコックピットの中でドット来る疲れに身をゆだねながら勝利の余韻を味わった。
 
●闘い終われば‥‥
「中々面白かった。門外漢の俺でもこうなら人気が出るのも頷ける」
「複座戦というのも面白かったですね。違った楽しみ方ができるのはいいことです」
 剣一郎とクラークはフードコートで飲み物を口にしながら寛ぐ。
 施設中央にある大型ディスプレイでは剣一郎のシュテルンと青いワイバーンの戦闘や、先ほどのグランエミターの最後の活躍などが時折ハイライトとして流れていた。
「ん‥‥もしかして、さっきのシュテルンの人?」
「君は?」
「青いワイバーン‥‥『ヤクトハウンド』のブラウよ」
 10歳くらいの少女が剣一郎の傍までアイスクリーム片手にやってくると自己紹介を始める。
「そうか‥‥いい試合をありがとう、このゲームの人気があるのがわかった気がするよ」
 爽やかに笑顔を浮かべ剣一郎はブラウと握手を交わした。
「こちらこそ‥‥久しぶりに本気で闘えた。また、こうして闘う機会があると‥‥いいね」
 物静かでか細い印象の強い少女だったが、剣一郎の握った手にはマメの後が幾つもある。
「戦いが終われば仲良しこよし。いいことじゃない?」
 ホットドッグを持ったレオノーラが剣一郎の正面にいるクラークの隣に座り剣一郎とブラウの握手を見守った。
「ええ、こうして戦いの感想を素直に話し合えるのっていいですね。あ、レオノーラ。さっきの続きは家でね」
「ちょっと‥‥流石にこのタイミングでそれはないんじゃない?」
 クラークがウィンクを飛ばすとレオノーラの顔が仄かに赤く色づく。
「戦い終われば仲良しか。いったい二人きりのコックピットでは何があったのだろうな」
「あ‥‥あの、ご注文のトルコライスですっ」
 剣一郎の前に赤白縦縞の半袖スタッフシャツにオレンジのキャロットスカートを履いた銀髪の女の子がトルコライスを置くとすぐに去っていった。
「はい、こちらは最後になったKVポテトよ」
「ありがとうございます、サイファー型というのによく出来てますね、これ‥‥」
 クラークの前には悠季がポテトで出来たKVを置いた。
「お疲れ様だな。これだけ人がいると食事処は忙しさもひとしおか?」
「まぁね、けど現地でもさらに臨時の人員‥‥さっきの子もそうだけど入れているみたいだから回るんじゃないかしらね?」
 悠季に剣一郎が尋ねると悠季は含み笑いをしながら答える。
 そんな悠季にその場にいた全員は頭上にはてなマークを浮かべるのだった。
 
●もう一つの戦い
「さぁ、メインイベント行くわよ。これから4対4の通信対戦のはじまりよ。ユキさん達オーディンのチームは抽選番号245番の人!」
「俺様達のチームは抽選番号721番だぜ」
 午前中に対戦の行われていたステージへ呼び出された番号の当たった来場者が拍手を受けて上がる。
 対戦だけでなく共闘ということなのだから気合が入るのも仕方ないだろう。
「盛り上がってるです‥‥差し入れは落ち着いてからがいいですね」
「うん、そうだね。皆もものすごく生き生きしているし、俺から見ても楽しそうだなっていうのがよくわかるよ」
 離れたところからブースの中を覗くライディとシーヴはお互いの手を握りながらイベントの進行を見守っていた。
 4人ずつ中央にあるディスプレイを挟むように並び最後のイベント戦がはじまろうとしている。
「安心しな、仲間には手出しさせねぇからよ」
 緊張している来場者へエイラが肩を叩きながら緊張を解すようにした。
「ルールは先ほどと同じで、来場者の方にはホーリィライトを使ってもらいます。武装もいくつか交換できますので使いやすいと思えるものを選んでくださいね」
 ラフィールが説明を付け加えると、ゲーム機を起動しチェックにはいる。
 5分とたたないうちに調整が終わった。
「「試合開始っ!」」
 同時に声を上げ、ゲーム機に4人が集中し、ギャラリーはその光景を映すディスプレイに向かう。
 ステージは市街戦。
 隠れる場所も多く、ビルを飛びながらでないと敵機のロックに苦しむ場所だ。
 逆に狙撃ポイントを上手くつかめれば飛んでいる敵を狙い撃ちも可能である。
 作戦が大きく左右されるステージに8機のVVが降り立った。

『バックで援護するよ。オフェンスは頼んだよ』
『任せておきなさい』
『早くやっつけてくるからね』
 マイナがいうとユキのカスタムシュテルン『イグナイト』が望のR−01改『ダブルフェイス』を引き連れて先に動く。
 狙撃戦用のホーリィライトと共にマイナのウーフーは周囲の警戒を続けた。
『俺様がオーディンに引導を渡してやるぜっ!』
 イグナイト達に襲い掛かってきたのはティーダのフェニックス『デイ・クレイン』である。
 上空から<空中変形スタビライザー>を使って変形した状態での奇襲だ。
『こっちもやられないよっ!』
 ダブルフェイスがフィンブレートを抜きつつディ・クレインに斬りかかった。
『へっ、やるじゃねぇか‥‥ここは一端退くぜ』
 デイ・クレインが間合いを離すように後ろへ飛ぶと再び変形して飛び立つ。
『フェニックスってのは厄介ね、このっ!』
 レーザーライフルを放ちながらビルの間を飛んでイグナイトとダブルフェイスがデイ・クレインを追いかけた。
『二人とも前に出すぎ。狙われてるよ』
 マイナが通信で警告を呼び駆けるのもつかの間狙撃ポジションにいたラフィールと参加者の狙撃装備になっているホーリィライトがスナイパーライフルD−02をバーニアで飛んでいる2機へぶつける。
『油断したわ』
『まだ一機いる! 気をつけて』
 マイナが被弾した二人を気にするように周囲の警戒を続けていたが、残りの一体は既に背後へと回っている。
『市街戦はヘルヘブンの十八番だ。決めさせてもらうぜ!』 
 <二輪モード>のヘルヘイムがウーフーたちを狙って蹴散らした。
『くっそ‥‥マイナはこんなところでやられるわけにはいかないんだ』
 マイナの言葉にホーリィライトのパイロットも答えて反撃に移る。
 機械刀「陽光」を持ったホーリィライトがヘルヘイムへ突きを繰り出し、それを回避しようとしたら近くでマシンガンを使って動きの阻害を行ってきた。
 腕は中々のものである。
『へぇ、やるじゃないか! だが、あたしを止められると思うなよ』
『とめて見せるよ、兄さんを越えるために!』
 戦闘による緊張が舞奈をマイナへと変貌させ熱い想いを伴った弾幕がヘルヘイムを襲った。
 さらにホーリィライトが間合いを詰めて連続の斬撃を浴びせ続ける。
『済まねぇ、どうやらここまでみてぇだ‥‥あとは任せたぜ』
 受けに回っていたヘルヘイムは惜しくも先にやられてしまった。
 この撃墜が全てを決める。
 優勢を取り戻したオーディンチームが勝利を収めたのだ。
「ゲーム本編じゃ負けないぜ? 覚悟しとけよ」
 敗者でありながらもテトは役を演じながら対戦相手の参加者を労う。
 最後に8人で写真を撮り一大イベントが終了したのだった。
 
●閉幕
「コレで‥‥売れるよな、あたし何か間違ってた気がすんだよな‥‥素人なんだけどよ何かもう少し出来たんじゃねぇかな」
「何をいうてはりますのん、エイラはんはようやってくれはりましたわ。ウチからいうことはナンもあらしまへん」
 エイジアゲームショーも終わり、片づけを行っている最中でエイラは鹿嶋に不安をもらす。
 鹿嶋はぎゅっと抱きしめながらエイラを元気付けた。
「もし、気にしてはるなら5月5日の発売日イベントとかでもやってくれるようそちらのシャチョーさんにいってくれはります? ウチも皆もやれることを全力でやっているだけですわ」
「でも、やることはやったんだ‥‥後の事は後で考えりゃ良いよな」
「そういうことですわ、ほな片付け最後まで手伝ってもらいますえ」
 鹿嶋に諭されたエイラは少し軽くなった気持ちのまま締めの片付けを精一杯取り掛かった。
 

 夢のような一日が終わる。