タイトル:Impalps〜Wt〜マスター:橘真斗

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/03/31 22:54

●オープニング本文


「予想以上にMPAは人員が入ってきたがね。男性アイドルのてこ入れをやらなにゃあな」
「どうでるか判らないというのはありましたけど、本格的に動かなきゃならないですね」
 新しく組み上げられたスケジュールと人員動かし方、新規募集などやることが一杯である。
 ライディ・王(gz0023)と米田時雄はが事務所で相談をしていると、ドアをノックする音が聞こえてきた。
「はいってきて、ええよ」
「こんちわーって、ライディもいるのかよ」
「マネージャーだからね‥‥で、沖那君。凡その予想はついていると思うけど」
「俺も採用というか応募した覚えねーし」
 ドアから姿を見せたのは山戸・沖那(gz0217)。
 ライディのサポートのため、マネージャー業の手伝いをしている少年だ。
 今日呼んだのは米田であり、沖那を正式にMpaへ加入した報告なのである。
「いやぁ、この間のプロデューサーが偉い気にったようだで、つい『ウチのホープです』といってしみゃぁたで、お小遣い弾むで協力してくりゃあよ」
「う‥‥お小遣いはちょっと惹かれる」
 まだまだ遊びたいざかり、傭兵としての仕事以外にも何か収入が欲しいのは仕方がない。
「じゃあ、決まりで。ライディは登録の方よろしく〜。でもって、お披露目会をホワイトデーに行うつもりだで、そっちも参加してくりゃあよ」
「へー、ってもう一週間きってんじゃん」
 カレンダーを見た沖那は目を丸くした。
 この日は3月9日で、14日までは片手でカウントができる。
「大丈夫大丈夫、簡単なトークショーとキャンディーを撒くくらいだで。まぁ、何か希望があればもう一つくらい何か企画やってもええと思うがね」
「ということで、よろしく頼むね。沖那君」
 自分の知らないところで進む動きに翻弄されながらも沖那は首を縦に振ってしまうのだった。

●参加者一覧

鷹代 朋(ga1602
27歳・♂・GD
玖堂 暁恒(ga6985
29歳・♂・PN
金城 ヘクト(gb0701
26歳・♂・EP
ジェームス・ハーグマン(gb2077
18歳・♂・HD
宵藍(gb4961
16歳・♂・AA
ヤナギ・エリューナク(gb5107
24歳・♂・PN
禍神 滅(gb9271
17歳・♂・GD
片柳 晴城 (gc0475
19歳・♂・DF

●リプレイ本文

●初イベントっ!
「『代役をお願い出来ませんか?』と言われたが、何だこれは‥‥って、山戸か‥‥?」
「げっ、玖堂かよ‥‥あんたが何でアイドルの依頼になんか居るんだよ」
 玖堂 暁恒(ga6985)は弟に指示された場所にいくと、そこに居たのは見知った少年、山戸・沖那(gz0217)だった。
 ラストホープの商店街にある集会場を臨時の控え室として今、Impalpsの男性陣を集めて初のホワイトデーイベントを行うのである。
「あの、色ボケ眼鏡がっ‥‥! しかも選りに選ってアイドルだぁ‥‥ったく仕方無ぇ、受けちまった仕事だ‥‥キッチリ果たすしかねぇな‥‥」
「あんたの前向きさ、すごく羨ましいよ‥‥」
「おー、皆やっとかめだがね〜。初めての人もそうでないのもヨロシク頼むでよ」
 暁恒の切り替えに沖那は驚きとも呆れともいえない言葉を漏らしているとサングラスにアロハシャツという目立つ格好の男が姿を見せた。
「社長今回も参加したわけなんでよろしく頼むさ‥‥」
 困ったような苦笑を浮かべる金城 ヘクト(gb0701)がアロハの男――米田に挨拶をするも米田は頭に疑問符を浮かべている。
「今日はヤナギと宵藍と合わせとなるさ。よろしく頼むさ」
「練習もしてきたし、大丈夫だ」
「そうそう、沖縄の言葉だっけナンクルナイサーっての? 緊張するよりは気楽にいこうぜ」
 ヘクトとパフォーマンスで組むこととなった宵藍(gb4961)とヤナギ・エリューナク(gb5107)はヘクトの肩を叩いた。
「じゃあ、俺はここでモニターみているでよ、おみゃあさんらの頑張り期待しているで?」
 米田が能力者達ににっこりと笑いかけると彼らも力強い頷きで返す。
 新たな伝説がはじまろうとしていた。

●第一印象は大事っ!
「会場にお集まりの皆さんこんにちは今日はアイベックス・エンタテイメントのイベントにご参加いただきありがとうございます」
 ライディ・王(gz0023)がつつがなく司会を勤めながら、通常のイベントにしては少ない客を相手に頭を下げた。
 メインが男性アイドル中心、それも今回がデビューだったり3ヶ月前に出てきたばかりの新人ということもあるため比べても仕方ない。
「では、今回のイベントに参加していただく期待の新人をご紹介します。皆さん、拍手で迎えてください」
 気を取り直しライディが客席をあおり、即席ステージに能力者たちを呼び込む。
 沖那を含め、9人のMpaとなったもの、また今後芸能界入りを希望する者達が一列にそろった。
「名前はジェームス・ハーグマン(gb2077)、生まれはイングランド、具体的にはロンドンの郊外です、チャームポイントは、突然変異で生まれた髪と瞳の色、後はメガネですね。 特技といっていいかわかりませんが、人より視力はいいです、これは見えすぎるのを矯正するためにかけてるやつです」
「先日のドラマでデビューした鷹代 朋(ga1602)です。傭兵と二足の草鞋ですけど、精一杯やりたいと思ってます」
 1番手のジェームスに続き朋が挨拶を行う、眼鏡キャラ(?)だがクールに決める朋とあどけなさの残るジェームスにかぶりは無い。
 朋の心配していたアノ件は聞かれることもなかったため、少し間を空けた自己紹介はそのまま続く。
「チャームポイントではないですけど‥‥特技といえば料理かな。半分趣味みたいな感じになってますね」
 優しく微笑む朋の顔は恋人がいるのも頷けるほどかっこよいものだ。
「僕 禍神 滅(gb9271)と言います、今日は宜しく」
 ショタと呼ばれる属性な半ズボンに水兵なセーラー服を着た滅が3番目に軽く敬礼しながら挨拶を行う。
「僕には11人の異母姉が居て、メイドとして超スパルタ教育も受けました。よく女の子に間違えられる事が多くて、声をかけられる事が。でも覚醒して凄んだら逃げていきますよ」
 あははと軽く笑うが滅の言う内容は漫画などの空想物に近く、『事実は小説よりも奇なり』という言葉を思い出させた。
「片柳 晴城 (gc0475)です。よろしくお願いします」
 4人目の片柳はイベントだというのに笑顔もなく淡々とした喋りを続ける。
 特別ドラマの傭兵刑事に出たときもそうだが、ストイックな印象の強い男だ。
「チャームポイントは強いて言えば普通なところ、ですかね? んな感じですのであまり面白味が無く感じるかもしれませんね」
 淡々の事務作業のごとく片柳は自己紹介を終える‥‥。
 ここまででも個性のある能力者タレント達に観客の好奇心は次第に吸い込まれていくのだった。
 
●セッション!
「今日は集まってくれて有難うな! 俺はヤナギ、所謂バンドマンってヤツだ。皆の中にはバンド好き、居ねェか?」
 前に出てきた4人とは方向性の明らかに違うヤナギの登場に会場の一部で驚きの声があがる。
 どうやら、インディーズ時代を知っているようだ。
「いるみたいだな、ありがとよ。俺のチャームポイントはこの赤い髪と澄んだ金色の瞳だぜ」
「こんにちは、ホワイトデイイベントへようこそ。俺はIMPALPS、MPA所属の宵藍。中国出身の25歳‥‥25歳。大事な事だから二度っ」
 ヤナギの次に出てきたのは宵藍。
 背丈も低めで童顔ということもあり念をおした自己紹介を行うと「かわいいー」という声が飛んできた。
「この通りの童顔だが、けして『しゃお君』とは呼ばないように‥‥チャームポイントは声かな? 良く通るといわれる」
 黄色い声援を堪えて自己紹介を続けると、「しゃおくーん」と呼ばれなんともいえない表情になったのはいうまでも無い。
「自分は、金城ヘクトって言います。よろしく。チャームポイントは覚えていない父親から引き継いだこの青い眼かな?」
 宵藍に続いて出てきたヘクトがチャームポイントを紹介するとヤナギと宵藍に目配せをし、それを見た先の4人も奥へと下がった。
「特技は、料理と三線を弾くことまぁ、趣味みたいなもの何でそれなりにこなせるってレベルかな‥‥で、今日は少し特技を披露したいと思うさ」
「オレのベースと‥‥」
「俺の中国舞踊も合わせて楽しんで欲しい」
 ヤナギのべースがビートを刻みだすと、ヘクトの取り出した三線がアップテンポのリズムを奏でる。
 全身でリズムを取っていた宵藍が小さなステージの両端に立つヤナギとヘクトの間を伸身前転宙やバク宙等の軽業を披露しながら往復をした。
 技が決まるごとに拍手がおき、次第に音が大きくなっていく。
 踊りの間にはヘクトやヤナギのソロパートが混ざり、練習して合わさった演技が出来上がる。
 最後に太極拳のポーズを宵藍が決めたときには会場全体からの大きな拍手を受けた。
「ありがとう‥‥」
 少し照れながらも宵藍は頭を下げヤナギやヘクトと共に退くと、残りのメンバー紹介へ戻る。
「玖堂暁恒、29、チャームポイント‥‥? まあ自分の体の中で‥‥頼りにしてるのは、腕、だな」
 暁恒が上着から逞しい腕を見せると、キャーという黄色い声が聞こえてきた。
「最後? 俺がトリでいいのか?」
「出て来いよ‥‥山戸、それとも‥‥この場で逃げ帰るか?」
 沖那が戸惑っていると暁恒がニヤつきながら出てくるように煽りをいれ、沖那は大人しく出てくる。
「山戸沖那‥‥こう見えてもまだ、13だ。チャームポイント? この髪かな‥‥日本人っぽくないけどさ」
「俺と山戸の特技は殺陣だ‥‥こいつとは付き合いも長いんで‥‥少し見せるとする」
 何と言ったらいいかと沖那が頬をかきながら自己紹介を済ませると、暁恒と沖那がステージの中央に陣取った。
「木刀だけど、加減いらねーよな?」
「もちろんだ‥‥俺も足が‥‥出るかもしれないけどな」
 木刀を構えながら小声で言葉をかけてくる沖那に暁恒は不敵に笑いながら返す。
 互いが一歩踏み出し、激しい殺陣が繰り広げられた。
 
●チョコにまつわるいろいろ
「続きましてはトークショーです。まずは先月のバレンタインの話題からです。皆さん今年はチョコ何個もらいましたか?」
 自己紹介も終わり、パイプ椅子が並べられたステージに9人の能力者タレント達が並び司会のライディが進行をしていく。
「今年は‥‥2つ‥‥かな? うん、そのぐらいでしたね。毎年似たようなものですけどね」
「私からは、祖国の大切な人に、こっちがもらったのは2つですね‥‥イングランドでは双方がバレンタインデーに贈り物をしあうんですよ」
「文化の違いはあるな‥‥俺も道場の欧州支部にいたので馴染みが薄かった。っと、数だな。今年は行きつけの店のおばちゃんから10個もらった」
 日本人の朋から始まり、ジェームズと宵藍が話を続けていった。
 バレンタインにチョコと決めているのは日本の某製菓会社のキャンペーンだというのは有名な話である。
「僕は身内からもらったくらいですね。家族チョコとかでしょうか? こういうイベントを行うのが逆に新鮮です」
「今年もらったチョコは1つ‥‥義理ですがね」
 滅が楽しそうに話し、片柳が淡々とストイックに続ける。
 事情もいろいろあれば千差万別のバレンタインを過ごしたようだ。
「皆もらってるなぁ 寂しいケド今年は0なんだわ、これが。誰か俺に愛の手を‥‥!」
「俺も貰ってないが、そこまでする気無いな‥‥というか、今日は俺達がサービスする日じゃないのかよ」
 オーバーなアクションで客席に向けて声をあげるヤナギに沖那が突っ込みを入れる。
「では、そのまま次の話題に移ろうと思います。バレンタインの思い出についてお聞かせください」
「いい思い出はなくてさぁ、チョコを作ってと頼まれたことがあったさぁ」
「それくらいなら‥‥いいだろ? 俺は男子マネージャーから‥‥チョコを貰った‥‥返礼もそうだが、本気なのかどうか悩んだな」
 ヘクトと暁恒が苦い思い出を語っているとヤナギ、宵藍、滅、片柳の4人がそっとステージから離れた。
「バレンタインデーの贈り物は無記名のメッセージカードを添えて送るんです、当然、手渡しなんてもってのほか、さりげなく置いておくのがベストなやり方です‥‥ですが、今回はホワイトデー、会場の淑女へささやかな贈り物を‥‥」
 思い出トークにジェームスが混ざり、盛り上がったいたところで最後に全員がそろって立ち上がる。
 離れていた4人がキャンディーを箱に一杯詰めてやってきたのだ。
「そんなバレンタインを過ごして来た俺達だけど、今回は皆との出会いに感謝をこめて〜そ〜れ!」
 ヘクトがキャンディーを掴み、先人を切って投げ始める。
 色とりどりのキャンディーが雨のように降り注いだ。
「今日は来てくれてありがとうね〜」
 キャンディを運び終えた滅も手に取ったキャンディーを巻くというよりステージ付近の観客へ手渡して配る。
「これが隊長の言っていたKASHIMAKIですか‥‥NAGOYAで祝い事の時のローカル行事だと聞いていましたが、違うみたいですね」
 ジェームスにいたっては目の前で行われている不思議なイベントに目を丸くして見入っていた。
 だが、楽しそうにとる人々を前に黙っているわけにもいかないと自らもキャンディを掴んで投げる。
 あっという間に山のように用意されたキャンディーはなくなり中間のイベントは終わりを告げるのだった。

●トークショー後半
『はーい、皆さん席についていただけましたか? トークショー後半を仕切り直したいと思います』
 ライディがマイクを使って呼びかけをし、にぎわっていた会場を整列させる。
「次のお題は今日この日、ホワイトデーに関するものです。あげて喜ばれたものや失敗したものなどありましたらどうぞ」
「彼女へのお返しは、料理でしてたな‥‥結局は自分の責任で別れたっすけど」
 ヘクトが自分の苦い思い出を口にしながら苦笑した。
 欠点を包み隠さず伝える真摯なところがヘクトの持ち味かもしれない。
「ホワイトデーも馴染み薄くて、適当にバラを贈ったらやけに喜ばれた‥‥何でだ?」
「いや、それは普通に勘違いするだろう。映画とかじゃ薔薇のプレゼントって彼女とかに贈るやつだぜ? 花言葉も愛とか恋とか多いし」
 天然なのか首を傾げる宵藍に沖那が真面目に突っ込みをいれた。
「俺はそんなセンスないからな、喜ばれたのはアレだ。アレ、アクセ系。あとはバンドやっていたからベースのピックか? ライブの最後に投げても喜ばれるんだよな。失敗したのは服系? 俺の好みが出すぎちまってな」
「失敗というか‥‥さっきの話しの続きだが‥‥普通に買った菓子を返したが何もなかったな‥‥あってもどうかと思うし、なかったらないで気になった‥‥」
「確かにいろいろ想像できてしまう分、怖いな。俺の場合は‥‥」
 ヤナギの失敗談に続き、暁恒のマネージャー話を通って朋の話へと続く。
 緊張を感じさせないゆるりとした空気が流れ、観客も静かに聞いていた。
 しかし、時間は限りあり終幕が近づく。
「大変申し訳ありませんが、今回のイベントももう終了です。最後まで観覧いただきありがとうございました」
 ライディが初めに締めの挨拶をすると、パイプ椅子に座っていた全員が立ち、「ありがとうございました」と大きな声を出してそろった礼をした。
 惜しみない拍手が贈られショーの成功を誰もが感じていた。
 
●後片付け
「中々出来ない経験をできましたね」
 片付けを率先してやりながらジェームスが一息入れながら上を見上げる。
 茜色の空が広がり、一日の終わりを示していた。
「おみゃーさんたちご苦労だがねー。初イベントにしてはええ感じだったでよ。自分たちでアレンジもできておったでな」
 暖かいカップコーヒーを一人一人に配りながら米田は労う。
 片付けまでやる心にささやかな贈り物のようだ。
「あ‥‥それでおっさ‥‥じゃない、社長。弟が間違いで始めたんだが、まあ、ロクに力になれないとは思うが、一応は手伝わさせて貰うわ」
 暁恒はMpa所属の希望を米田へと伝える。
 今回の参加者の中、初めてアイベックス・エンタテイメントのイベントに参加したものは全て所属を希望している。
「確かに受け取ったでよ。これからヨロシク頼むでよ。おみゃあさんらに期待しておるで」
 その全てを受け入れ、米田は笑顔を返した。
 不安であった男性アイドルの計画、それは新たな可能性の道筋である。