●リプレイ本文
●打ち合わせ
「なっつかしいなぁ〜ひなふぇすた、思えばIMPデビュー後あたしの初仕事だったしねー」
葵 コハル(
ga3897)が着替え前の控え室でミーティングをしながら懐かしさに思わず遠くを眺める。
「懐かしむのもいいんですけど、これ‥‥やる順番とか無いんですが‥‥」
汗をたらしながら尋ねてくるのはマネージャーのライディ・王(gz0023)だ。
「ショーでトークで歌なのか、歌でトークでショーなのか‥‥複合ステージというのはわかりますけど」
「判り辛いかもしれません。たしか、歌の合間にトークだったと思います」
「全体曲と個別曲は別なんですよね? じゃあ、ショーの中に解決する歌を入れて、トークと個別曲発表を混ぜてで、最後に合唱ということでいいですね?」
加賀 弓(
ga8749)が苦笑しながら頼み込むと、ライディは打ち合わせ用の書類に書き込みをしていく。
「すみませんが、それでお願いします。ちょっと纏まりがないかもしれませんが」
「いつも結構詰められていたので意外でしたけど、大丈夫ですよ‥‥ただ、これ結構推しますから覚悟してくださいね」
大和・美月姫(
ga8994)が申し訳なさそうに頭を下げるが、ライディは要点をチェックするとスタッフとの打ち合わせに出かけていった。
ここの仕様についてはある程度書いてはあるのだが、全体の流れは確かに見え辛い。
「さて、久しぶりのライブなんだけど‥‥よく考えると男装なんだよね」
打ち合わせのために手に持った書類のショーの項目を眺めた田中 アヤ(
gb3437)は呟く。
そんなアヤに誰も声をかけることは出来なかった。
●雛祭りShow!
「うにゃにゃ〜っ、3月3日はみゃあみゃー猫の日だにゃ」
「ん、良くわかんないけど。雛祭りなんて、めちゃくちゃにしたゃうよ」
猫耳に和服の常夜ケイ(
ga4803)とウサ耳にカジュアルなミニ浴衣っぽい衣装を着たの祈良(
gb1597)、そして鎧武者の格好をしたコハルが雛壇のステージに悪者っぽい雰囲気をだしながら出てくる。
ただ、見た目愛らしい二人では迫力に欠けていた。
ちょこまかとステージを走り、ステージ前にいる観客へ威嚇をする。
「まてぇいっ!」
後ろの入り口から牛若丸をイメージしたような和服姿で沖田 神楽(
gb4254)が拍子木の音色に合わせて出てきた。
神楽の後ろにはImpalpsではない事務所の後輩達がバックダンサーとして弁慶の格好で集まり、ステージの上が華やぐ。
「このステージはネコヒナラーちゃんとウサヒナラーちゃんの雛壇にするのにゃ、こてんぱんにしてやるにゃよ。ダンスで勝負にゃ!」
暴力は一切なしというコンセプトの元の舞台であるため、ダンス対決をネコヒナラーことケイは挑み神楽とのヒップホップダンスで勝負をした。
音楽事務所らしいステージに観客も思わず拍手を送る。
「くっ、私が負けるなんてっ!」
片膝を付いて神楽がうなだれていると、ステージがスモークに包まれた。
「皆で力を合わせてあの歌を歌うの」
スモークが晴れ、姿を見せたのはお雛様役の終夜・朔(
ga9003)がノースリーブの和風なミニワンピースでお内裏様姿のアヤ、さらには弓、美月姫の一人欠けてはいる三人官女がそろっている。
流れる曲は誰もが知っている3月3日を祝った童謡のポップアレンジだ。
「皆も一緒に歌ってくれ!」
神楽が観客を盛り上げるように牛若丸の衣装を脱ぎ捨て桜色のステージ衣装へとはや代わりする。
観客も含めた大合唱が起きると、敵役として出てきたケイと祈良が苦しみだすような演技をした。
「うにゃ〜見事な攻撃にゃ〜。歌に免じて仲直りするにゃ〜」
「敵わないよ〜」
へろへろと二人はステージの真ん中に内股に座り込み、降参と手を上げる。
「歌は世界を救うなの♪ だから、今度は皆で歌うの♪」
お雛さまである朔が音頭を取り、Impの曲の春アレンジを歌うこととなった。
ただ、こちらは合唱とまでは行かず、一部のファンに吊られて歌いあわせる感じとなる。
歌詞カードを配ったり、続いて歌ってもらうように気を使えばまた違った盛り上がりがあったのかもしれない。
「いいこも悪い子も関係なく歌おうね、これからImpを好きになってくれたら嬉しいな」
祈良がウサ耳を揺らしながら精一杯気持ちを込めて歌いショーは終了することとなった。
●ひなとーく
「どうも、知ってる人はこんにちは、初めて逢う人は初めまして五人囃子こと体育会系Impの沖田 神楽です」
司会進行するように神楽が手を振りながら袖からステージに戻ってくる。
若干観客の数が減っているが、悔やむよりも前を向くことにして神楽は話を続けた。
「雛祭りについての思い出を話そうと思うのだけど、一人じゃ心細いので皆早くきてー」
「はーい、じゃあ改めてよろしくー。舞闘派Impのコハルです。ただ、ひなふぇすたには二年前参加していたので覚えている人もいるかも? あ、五月人形というツッコミはなしだからね」
神楽と同じように袖から手を振ってコハル、祈良、ケイが姿を見せる。
「‥‥家にあったのは小さな雛人形だったんだけど、可愛い雛人形が飾ってあると、家が華やかになったみたいで、嬉しかったの、覚えてるよ」
ステージに用意されているパイプ椅子に座ると4人は話をはじめた。
「うちは旧い家だったか年代ものの人形があったなぁ‥‥小学生のとき傷つけていつもは優しかったお祖父ちゃんが流石に困った顔をしていたね」
「私のひな祭りは、子供の頃はあまりしなかった気がするなだけど通ってくる子達に言われてみんなでしたことあったな‥‥でも家に7段飾り有ったの知らなかったけど、楽しんだよ」
「神楽ちゃんとこも立派なのあったんだ。ますますキャラ被りしてるね、あたし達」
コハルが苦笑をすると会場に笑いが生まれる。
「二人と違ってケイちゃんはお雛さまが三月三日限定でした。お雛様は母が毎日手紙を書いてリクエストし、トラックに乗ってやってきてはすぐに帰っちゃいました。寂しくて私が泣いていると「お母さん、来年はずっといてもらえるようにがんばるから」とペンだこの出来た手で抱きしめてくれました」
「私の雛祭りに関する思い出は‥‥家にあったのは小さな雛人形だったんだけど、可愛い雛人形が飾ってあると、家が華やかになったみたいで‥‥。嬉しかったの、覚えてるよ」
思い出の形はそれぞれあり、納得されたり驚いたりと会場の反応はさまざまだ。
「じゃあ、ここで‥‥一曲歌おうと思います。『リピート〜繰り返しの季節〜』」
―リピート〜繰り返しの季節〜― 作詞:沖田神楽
♪〜〜
またこの季節が来る
出会いと別れが リピートするように
あれから、会うことは少なくなったけど
みんなはどうしているのかな
例え挫折しても生きる事を諦めないで
それで終わりはしないから
みんな、いずれ別れが来る
楽しいときが続かないみたいに
あれから私は今も変わらずに夢を追いかけてる
みんなは どうなのかな
挫折する事になっても生きる事止めない
季節はそれでも繰り返すから
〜〜♪
静かなバラードが会場に染み渡る。
心配していた神楽は歌う終わると緊張のほぐれた顔で大きく息を吐きながら頭を下げるのだった。
●変わり雛いろいろ
「次は三人官女達のお目見えですよ」
「一人足りませんがそこはご容赦くださいね。なので、お内裏様とお雛様にもお越しいただいています」
美月姫と弓が先ほどの4人と交代し、先に座りながらアヤと朔を呼び出す。
「どーもー、なんで雛祭りなのにお内裏様なのかは突っ込まない方向でよろしくお願いします」
「トークもNoirがんばるの♪」
アヤはやや苦笑を浮かべているものの、隣の朔は元気に十二単のようになったスカートの端を揺らして会場の観客に向かってお辞儀をした。
「まずは変わり雛なんですけど、何かありますか?」
「私は‥‥ないですね。すみません」
「Noirは記憶喪失で思い出がないんですの‥‥」
司会進行を自然と行う美月姫が2人にトークのテーマを投げかけるも苦しい回答が帰ってきた。
「えーと、私はKVでお雛様とかいいんじゃないかなと思っています。シュテルンやフェニックスがお内裏様でアンジェリカやサイファーがお雛様とか絵的にいいと思うんですよね」
「サイファーって女性っぽいデザインですよね‥‥ってこれは通じるのかな?」
KVの話は面白いと思うのだが、相手が一般人だけなだけにアヤは少し不安になる。
「はい、ああゲームのほうで見ている‥‥なるほど、そういうこともあるんですね」
しかし、観客のファンらしい一人がフォーゲル・マイスターという筐体ゲームの説明を受けてアヤはほっとした。
ファンだけのイベントではないにせよ、自分を助けてくれるファンの存在がアヤには嬉しかった。
「じゃあ、先に一曲いかせてもらいますね」
そのまま椅子から立ち上がり、ステージの中央まで進んだアヤは流れてくるイントロに合わせてマイクを持っていない左手でリズムを取る。
―FLOATIN’ FLOWIN’― 作詞:田中アヤ
♪〜〜
(@hook)
貴方が無事なら それでいいの
私のことなど 考えないで
貴方の幸せ 祈りながら
私は行くよ floatin’ flowin’
街行く人は 皆笑顔で
きっと今日は お祭りなんだね
貴方もそう 皆と同じ
私はひとり そう、ひとりだけ‥‥
でもいいの それでいいの
それこそ私の 「役目」だから
(@hook繰り返し)
きっと きっと 貴方はすぐに
私のことなど 忘れるのだろう
私は 私は 物言わぬまま
貴方のことを 祈り続ける‥‥
(@hook繰り返し)
〜〜♪
歌詞がやや暗い感じもするがミディアムテンポでテクノポップなリズムにのって紡がれれば流し雛をイメージした曲へと変わった。
アヤが歌い終わると交代するように弓が動き、残りのメンバーもバックコーラス等のためにポジションを取る。
トークと歌を混ぜなければならないため、立ったままでのトーク類を意識したやり方だった。
―キミの希望[えがお]―
♪〜〜
キミの過去[きのう]を見守って
ボクはキミの未来[あした]の幸せ願うよ
だからキミの不幸を ボクも背負うよ
ボクは希望[ねがい]は キミと共に育つよ
キミの成長[つきひ]をボクは見守るよ
キミの希望[えがお]がボクの幸せなんだ
キミが一人で歩き出すまで ボクはキミを支えるよ
だからキミの痛みも ボクに分けて欲しいよ
もしもキミが悲しいのなら ボクが悲しみ背負うよ
キミが一人で歩き出すなら ボクは置いて行っていいよ
ボクの希望[ねがい]はキミの希望[えがお]だから
〜〜♪
弓の雛人形そのものをイメージして作った新曲が流れてくると、会場の空気が温まってきた。
その状態で次の朔へとバトンタッチする。
「Noirはさっきの話をしたとおり、思い出がありませんの‥‥けれど、Noiにとって今日が一番思い出に残る日になるの」
いつもなら元気にピコピコと動くネコミミは伏せ気味のまま朔はマイクを両手でぎゅっと握り締めながら一言一言を伝えた。
最後の言葉を述べると、朔は顔を上げて精一杯の笑顔を見せながら呼吸を整えだした。
―We are princesses 〜雛〜― 作詞作曲:Noir
♪〜〜
We are princesses♪
今日は特別 今日は格別
何が? と聞かれたら♪
私はこう 答えるの
今日はHina Hina 雛祭り♪
We are princesses♪
女の子は お姫様♪
だから皆で楽しもう♪
We are princesses♪
今日は楽しい 今日は最高
何故? と聞かれたら♪
私はこう 答えるの
今日はHina Hina 雛祭り♪
We are princesses♪
皆が特別な日♪
だから私は歌うのよ♪
We are princesses♪♪
〜〜♪
弓とは違う楽しげなメロディに会場の人々からは拍手を贈られ、朔はお辞儀を返す。
すると先ほどのトークタイムを行った4人も集まり、締めの挨拶へと入った。
雛壇のようになったステージへ上から、朔とアヤのお内裏様とお雛様組、続いて弓と美月姫の三人官女組。
最後は神楽と五人ばやしの格好に着替えたコハル、祈良、ケイの3人が揃い踏みで準備を整えた。
「締めとして、皆さんに春の歌をお届けしたいと思います‥‥ステージを最後まで見てくださってありがとうございます。IMPの代表曲『Catch The Hope Ver.Spring』をお聞きください」
アヤがマイクをもって挨拶を行い、曲紹介が終わると共に礼をすると曲が流れ始める。
暖かく柔らかい曲調にアレンジされた歌を合唱という形でアイドル達は贈り、ファンへの感謝と春の訪れの喜びを形したのだった。
なお、今回のDVD等の発売は未定である。