タイトル:ALP〜VMポータブルCM〜マスター:橘真斗

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/03/16 22:11

●オープニング本文


「よっしゃー、デバック完了やわぁ」
 タタンッとリズミカルにキーを入れた鹿嶋明美が両手を頭上で組んで伸びをする。
 30も近いというのに突っ張られた胸は緩やかな弧を描くだけだ。
「エイジアゲームショーに間に合って何よりやね。予告しておいて落とすのはさすがにあかんしなぁ」
 明美は椅子に座ったまま床をけり、壁に貼られたポスターのところまで移動する。
 ポスターには三月下旬、大阪の北西にあるOSAKA文化学術研究ミレニアムことエイジア学園都市内にあるイベント会場にて行われるゲームショーのことが書いてあった。
 エイジアゲームショーと呼ばれるそれは今年より行われる事となった大型のゲームイベントある。
 新作ゲームが並びゲームファンだけでなく開発企業としても期待しているイベントなのだ。
 明美が製作しているのは、エイジアゲームショーで出展する3DKVアクションゲーム、『VMポータブル』の開発中である。
 昨年から開発していて4ヶ月という期間での完成というハイペースだった。
「主題歌もあるし、主人公機も完成したしな。後はあれやね、TVCMを作らんとなぁ」
 パソコン上で作り上げたものも携帯ゲーム用のソフトに写してのプレイ風景か、それともゲーム映像をとにかく流すタイプか、はたまたコスプレアイドルをだしてのものかとアイディアは多い。
 じっくり考えたくもあるが、まだまだ本家のVMとの同期の調整などシステムチェックが多かった。
「米田はんに連絡して片付けてもらいまひょ。深夜やけど‥‥ええよね」
 深夜三時というのに明美は遠慮なく電話をかけ、米田へ仕事の依頼をする。
 米田はすぐ出て、二つ返事でOKをしてくれた。

●参加者一覧

椎野 のぞみ(ga8736
17歳・♀・GD
冴木 舞奈(gb4568
20歳・♀・FC
テト・シュタイナー(gb5138
18歳・♀・ER
ミルフィーユ(gb8619
16歳・♀・HA
エイラ・リトヴァク(gb9458
16歳・♀・ER
ラフィール・紫雲(gc0741
15歳・♀・BM

●リプレイ本文

●気合を入れて
「楽しみにしてたんだぜ‥‥、これが初仕事だったからな」
「そらよかったがね、俺としてもこの企画にゃー全面的に協力しちゃーと思うとったで、ええことだがね」
 大阪にあるドローム社のゲーム開発部の一角でエイラ・リトヴァク(gb9458)が笑顔を浮かべて米田時雄に挨拶をする。
 米田はサングラスにアロハシャツというスタイルのままに笑顔を返した。
 20代後半と見た目は若いが傭兵アイドル事務所の社長であり、敏腕プロデューサーでもある米田だが、普段の様子からはまったくそうは見えない。
「貴方がプロデューサーさんですか? 初めまして、ラフィールと言います、よろしくお願いします」
 ポニーテールの黒髪に眼帯‥‥そして、何よりも豊満な胸の目立つラフィール・紫雲(gc0741)が米田に向けて丁寧にお辞儀をした。
「よろしく頼むでよ。今回は募集しとらんかったが機会があったらたよろくしたのみゃーよ」
「おう、社長。フォーゲルマイスターポータブルもこの段階まできたんだな」
 悪ガキといった形容が似合う笑みを浮かべたテト・シュタイナー(gb5138)が米田に軽いノリで声をかける。
「モデルもやってくりゃーたし、テーマソングもうちで作れたでよ。このままグイグイいきたいとこだで」
 気合の入っているテトに子供のような笑顔で米田も答えた。
「はいなぁ〜、こっちきりついたから来たどすぇ〜」
 ワカメみたな髪形の女がふらふらした足取りで姿をみせる。
「あ、鹿嶋さ〜ん。お疲れさまです! お昼用にお弁当作ってきているから、後で一緒にたべましょ!」
「おおきに、マトモな食事とれとらへんかったで助かります〜」
 椎野 のぞみ(ga8736)の持ってきたバスケットにワカメみたいな髪形の女――鹿嶋明美は両手を上げて喜んだ。
「あ、しゃちょーさーん、舞奈から質問あるんだけどいい?」
 チョコを齧りながら学校で先生に質問するかの様に樋口 舞奈(gb4568)が手を上げる。
「ほいきた、舞奈ちゃん。なんだがね?」
「素朴んな疑問で自分モデルしたキャラのコスプレって、コスプレって言えるの?」
「キャラをモデルにしたといっても、ナースがCAの格好をしたらコスプレのうちと思うだらぁ、そーゆーことだでよ」
「わかったようなわかんないよーな」
「あ、それとそれとミルルと舞奈ちゃんは候補生から正式メンバーになれるのでしょうか?」
 舞奈と同じようなノリでミルフィーユ(gb8619)が手を上げた。
「今日の頑張りしだいだがね。さぁ、収録をはじめるでよ。お嬢ちゃん達」
 ミルフィーユからの質問にはにやりと笑い米田は両手をパンと叩いて話題を切り替える。
 新作ゲームのCM撮影がよいよ始まるのだった。

●CM1〜味方ショートバージョン〜
 四角いフライパンの上に卵が流し込まれ、枠にそって広がりながらも黄色い体を固めていく。
「ふんふん、流石に家事を引き受けてるだけあって、味付けはバッチリなのです」
「ちょっと、もう少しだからつまみ食いは駄目!」
 柏野・望として演技をするのぞみが玉子焼きを焼いていると、後ろからひょいと顔の覗かせたミル・フューズの衣装を着たミルフィーユが玉子焼きを摘み上げて食べた。
 短い髪を揺らして望が怒りを表すと、ぐらりと部屋が揺れた。
 遠くから爆撃の音などが響き、さらに揺れる。
 折角卵を焼いていたフライパンがコンロの上から転げ落ち、床に黄色い塊が無残にも散らばった。
「ああーッ!? 折角作った卵焼きが!」
「あ、こんなところにいた! インパルス小隊に出撃命令が出た。行くよっ!」
 床に転がる黄色い塊だったが、無慈悲にも駆けてきたマイナ・クロードの格好をした舞奈の足に潰される。
「了解! いま行くよ!」
「えッ、しゅ、出撃なのです!?」
 こぼれそうになる涙を拭って望は拭って立ち上がり、ミユは驚きながらもマイナの後に続いて走り出した。
 アラート音が鳴り響く中、映像はゲーム画面へと切り替わり、BGMにテーマソングが流れカスタマイズKVが戦場を飛ぶ。
『ボクの全力見せてあげるよっ!』
 Rー01改『ダブルフェイス』がフィンブレードを展開させながら敵の攻撃をブースターを噴かして回避し、間合いを詰めた一撃を当てた。
『照準合わせて、えっと次は‥‥トリガーです!』
 マイペースな台詞と共にナイチンゲールの持つスナイパーライフルからレーザー光が迸り、敵機を貫く。
『遊んでいる暇なんてない』
 冷静に言葉を残しながら、3.2cm高分子レーザー砲と、RA.0.8inレーザーバルカンを交互に放ちながら近づく敵機との間合いを調整した。
 
 あのアイドル達をモデルにゲームが出来た!
 
 君の選択次第でインパルス小隊のメンバーが変わる!
 
 好みに強化をして君だけの小隊を作り上げろ!
 
 セーブデーターはそのままゲームセンターのVMへのコンバートも可能!
 
 通信対戦で仲間との連携を磨け!
 
 文字と共にラフィールのナレーションがゲーム画面を背景に飛び交った後、パイロットスーツ姿のマイナ、ミル、望の3人が映る。
「「「フォーゲルマイスター・ポータブル、2010年5月5日発売!」」」
 息を合わせてソフト名と発売日を宣言すると映像は終わった。
 
●CM2〜敵バージョン〜
 暗い画面にゲームミュージック用にアレンジを加えたエイラの歌『ヘルヘイム〜焔の意志〜』が流れ出す。
「あいつら、どんな顔してんだろうな‥‥」
 口元だけを映し、オルガ・ユーティライネンとなったエイラがニヤリと笑った。
「おうともよ。オーディンのひよっ子共なんぞ、軽く捻ってやるさ」
 スポットライトが当たり、オルガの姉という設定のティーダ・ユーティライネン役のテトが心の中を語り始める。
(「俺様は、孤児院のガキ共に夢を見せてやらなきゃいけねぇ。その為には、立ち塞がる敵を潰し続けて上を目指すっきゃない。やってやるさ。相手が誰であろうとな‥‥!」)
 画面が暗転して戻ると、フォーゲルマイスターのコックピット映像へと切り替わり、二人の姿が画面を上下に二分割しながら映った。
「姉さん、あたしらの力見せつけてやろうぜ! オルガ・ユーティライネン、ヘルヘイム出る!」
「ティーダ・ユーティライネン。デイ・クレイン、出るぞ!」
 二人が出撃するときを演出すると、画面がゲームへと変わる。
 深紅に塗装されたヘルヘブン750カスタム『ヘルヘイム』と青を基調して、ところどころに白を入れたフェニックスカスタム『デイ・クレイン』がゲーム画面を駆け巡った。
『お前ら、ぜってぇ地獄に墜とす』
『手前ぇ等の冥福は、俺様が祈ってやる。安心して逝け!』
 メトロニウムハルバードで連続の斬撃コンボをヘルヘイムが叩き出し、そこへデイ・クレインがショルダーキャノンを飛ばして追い討ちをかけるシーンが流れる。

 現れた敵は人類
 
 争いが続く世界で、人はわかりあえないのか
 
 好みに強化をして君だけの小隊を作り上げろ!
 
 セーブデーターはそのままゲームセンターのVMへのコンバートも可能!
 
 通信対戦で仲間との連携を磨け!

 そして、一部変更したラフィールのナレーションと共に同じくパイロットスーツを来たティーダとオルガが隣り合って映りカメラに向かって指を突きつけた。
「「フォーゲルマイスター・ポータブル、2010年5月5日発売!」」
 カッコ良く決めて敵バージョンの収録は終わる。
 ここで、少し休憩を挟み最後の対戦している光景の撮影へと流れるのだった。
 
●夢広がる予約特典
「はい、とりあえずは普通ので申し訳ないけど、サンドイッチにお握り、からあげ、タコさんウィンナに厚焼き玉子で最後にうさちゃんリンゴに蒸しケーキでドーナツだよ」
 バスケットの中からタッパに詰めた料理をひょいひょいと取り出しながらのぞみが説明をする。
 蓋を開ければおかずやスィーツ類は実に色鮮やかに自己主張をしていた。
「どれもこれも美味しそうやね〜。うち、ツナマヨが好きやねんけどおにぎりの具にはあらへんの?」
「そういやポテトサラダもないな」
 グサグサと鋭いものがのぞみの心に刺さる。
「折角作ってもらっているんですからそんなこといわずに食べましょう。僕の方からも今日は桃まんの方を持ってきましたので」
 収録の間の時間管理やら映像処理の手伝いなどをしていたマネージャーのライディ・王(gz0023)が同じようにタッパに詰めたお饅頭をだした。
「じゃあ、舞奈は甘いものからいっちゃうね〜いっただきまーす」
 それぞれがのぞみの料理に手をつけ食べ始める。
 のぞみは密かに胸をなでおろした。
「あの‥‥初回特典についてまだ決まっていないとマネージャーさんからお聞きしましたのでアイディアの足しになればと」
 ラフィールが胸を揺らしながらメモを取り出す。
「ドラマCDとポスターやね。ポスターはええんやけど、ドラマCDは難しいわぁ。貴方達のまとまった仕事のタイミングをまっとりはったら発売が遅れてしまいますえ」
「あー、そうだよなー。前回が11月だもんな‥‥タイミングがあったとはいえ、確かにこれ以上俺らの都合で引っ張るわけにもいかねぇよな」
 卵の詰まったサンドイッチをもしゃもしゃ食べながらエイラがはっと気付きながら明美の回答に納得した。
「ミルルは設定資料集を推したいです。これならそちらだけでできると思うです。あと、BGMとテーマソングを収録したCDもいいと思うです」
「いやぁ、CDは俺の方からストップでレーベルとしてはアイベックス・エンタテイメントの名義でちゃんと発売したいとこだでよ。キャラソンというのもありゃよ」
 おにぎりにはいっていた梅干に思わず顔をしかめていた米田が待ったをかける。
 タイアップ商品というのは互いの利益もあるためにどこまで踏み込むかという調整は難しいのだ。
「ボクもドラマとかテーマソングCDがいいかなって思ったけど、そういう考え方もあるんだ」
「いろいろと大変なんですよ。表に出ない部分というのも‥‥」
 のぞみが感心したように頷くとライディが苦笑する。
 この業界に入っていろいろと苦労してきたようだ。
「一つの意見としてもらいますわ。エイジアゲームショーでは発表できるようにしますんさかい、そのときはよろしゅうに」
 今回の出てきた意見をメモし、お弁当を一通り平らげた鹿嶋は両手を合わせて締める。
「考えるのは大変です。でも、どんな形になるか楽しみなのです。もう一息、頑張りましょう!」
 ミルフィーユが元気に手を上げて鼓舞をすると、おーという元気な掛け声が返ってきた。

●CM3〜ロングバージョン〜
 『WARNING!』と大きな赤い文字が画面いっぱいに表示され、明暗を繰り返す。
『エマージェンシー、エマージェンシー、敵の攻撃を受けています、インパルス小隊は、至急該当エリアに向かってください』
 オペレーター役としてラフィールが冷静に台詞を述べた。
「ミル・フューズ、出撃するのです!」
「ダブルフェイス、出撃します!」
「インパルス小隊、マイナ・クロード出撃完了‥‥出るよ」
 コックピットに映像が変わりミル、望、マイナの3人が次々に映った。
「来たか、オーディン!」
「あたしと姉さんのコンビネーションを見せてやる!」
 3人の後にティーダとオルガが画面に入り、気合の入った台詞を続ける。
 両者の間に火花が飛び散り爆発すると共にドラマシーンからゲーム画面へと変わった。
 先ほどバラバラで撮影した映像に新たな台詞をかぶせたり、別のプレイ画像などを詰め込みゲームの中での激しい戦いを彩る。
 そして、どちらでも流れなかった主人公機『プロテウス』が姿を見せた。
 タイプの違う初期3種類の外装フレームを持った地形に応じて姿を変えることのできる変幻自在なKVとして戦場を駆け出す。
 ゲームでの戦闘シーンが終わるとOPの綺麗なムービーが流れ始め、BGMとしてミルフィーユとラフィールによるテーマソング『鋼の翼』が流れた。

 間違って女性だけの小隊に編成された主人公
 
 現役アイドルをモデルにした魅力的な女性たちと交流を深めろ!
 
 変幻自在な専用機を乗りこなし、戦場を生き抜け!
 
 セーブデーターはそのままゲームセンターのVMへのコンバートも可能!
 
 通信対戦で仲間との連携を磨け!

『フォーゲルマイスター・ポータブル、2010年5月5日発売! 無事に帰ってきてください』
 ラフィールの声が最後を締めて映像は終了した。

●全過程終了!
「これが、あたしも関わった奴なんだよな‥‥」
 完成はしているのだが、何があるかわからないということでお土産として体験版のディスクをもらったエイラはそれを掲げては感慨にふける。
 全てではないにせよ、この中には自分の分身ともいえる存在が生きているのだ。
「エイラさん、お疲れ様です」
「おう、ラフィールもお疲れ。やりたいようにやれたか?」
「貴重な経験ができましたので、ボクも嬉しいです。ただ、今からゲームの中にオペレーターを入れるのは難しいようなので、ドラマCDとかでたらボクの役があるかもってことです」
「そうか‥‥まぁ、まだ正式なメンバーでもないし仕方ないか」
 友人の処遇については残念だが、次への楽しみでもある。
「CMの出来も悪くねぇし、このままドーンといけるといいな」
「エイジアゲームショーにも俺らは直接関わらんが、おみゃあさんらが希望するならイベントに企業側で参加できるよう手配もするでスケジュールは空けておいたほうがええでよ」
 テトが二人に近づき笑うと米田が3人を抱きかかえるようにしながらニヤニヤと笑みを浮かべていた。
「社長、あんまりやってるとセクハラで訴えられちゃいますよー」
 のぞみがツッコミを入れると全員で笑い出す。
 一つの物事についてこんなにも真剣になって、皆が協力して作り上げることがとてもすばらしく思えた。
 発売は5月5日、二ヶ月先の発売が待ち遠しい‥‥。