タイトル:MPA〜傭兵刑事〜マスター:橘真斗

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/02/18 23:55

●オープニング本文


●新企画発動
「社長、最近女性ファンの増加が著しいです。ここは男性アイドル方面に力を入れてみてはいかがでしょうか?」
「入れてないわけではないのですが、女性アイドルの方が活発なのでしょう。活躍の場所をやはり用意すべきでしょうね」
 秘書より渡されたアンケートの集計結果を眺め、米田時雄は頭を悩ませる。
 密かに考えていた企画はあるのだが、実行に移すには後ろ盾が必要なのだ。
「IMPとALP‥‥それにもう一つ加えたトライアングルで動きたいのですが‥‥」
 米田が机を指でトントンと叩いていると、電話が鳴る。
「はい‥‥アイベックス・エンタテイメントの米田ですが」
『もしもし、私は京都でTVプロデューサーをしています皐月ヶ岳と申します』
「これはこれはどうも、今回はどのようなご依頼で?」
『ええ、刑事モノの企画がございまして‥‥それで役者のできる傭兵を探していまして、そちらの事務所によい人はいないかと?』
「なるほど、わかりました事務所にもいることにはいますが、こちらの伝で募集をかけましょう。それではよろしくお願いします」
 急な依頼であるにもかかわらず、米田の返事は軽かった。
「いいのですか? そんな二つ返事で受けてしまっても‥‥」
 さすがの秘書も目を見開いて口をぽかんとあけてしまう。
「渡りに船。これで第三のグループMPA、Men’s Personality Actersが動かせます」
「『個性的な男性俳優集団』といったところでしょうか?」
「その通り。傭兵の方は個性がありますからね、それを俳優として生かしてみようかと‥‥それではUPCの本部へ依頼をお願いします。私の方は一人呼び出しますから」
「了解しました。すぐにでも」
 秘書は頭を下げるとすぐさま社長室を後にした。

●その名は傭兵刑事(デカ)
「でー、なんで俺がここに呼ばれたんだよ」
「まぁ、ええでにゃーかよ」
 じとーっとした視線を向ける山戸・沖那(gz0217)を米田は宥める。
 ここは京都のとある撮影スタジオの会議室だ。
 沖那の他にも8人ほど選ばれた傭兵達が集まっている。
「皆さん、お集まりいただきありがとうございます。今回の新企画『傭兵刑事(デカ)』の説明をはじめさせていただきます」
「よ、ようへいデカ‥‥」
 会議室のホワイトボードの前に立った妙齢の女性から出てきた言葉に沖那は厄介ごとに巻き込まれたことを感じたのだった。

●参加者一覧

鷹代 朋(ga1602
27歳・♂・GD
金城 ヘクト(gb0701
26歳・♂・EP
赤城・拓也(gb1866
17歳・♂・DG
宵藍(gb4961
16歳・♂・AA
七市 一信(gb5015
26歳・♂・HD
丙 七基(gb8823
25歳・♂・FT
八尾師 命(gb9785
18歳・♀・ER
片柳 晴城 (gc0475
19歳・♂・DF

●リプレイ本文

●オープニング
 80年代の刑事ドラマのようなサックスやトランペットのメロディが流れ出す。
 カメラが回り、京都の町を遠目でとっていたものがクローズアップされ、事件現場が写った。
「ガイシャの状態は‥‥」
 20代前半の男が死体を見ながら眼鏡を左手の人差し指と中指で持ってクイっとあげる。
 
 タカ『鷹代 朋(ga1602)』
 
 ばぁんと言う効果音と共に名前のテロップが下に表示された。
 カメラが動き、次の人物をクローズアップする。
 バスタードソードを背負いながら大型バイクを乗り回す男をカメラが追いかけた。
 逃げる犯人の車の前へ大型バイクがものすごい速度で回りこむとヘルメットを脱いでバスタードソードを抜いて犯人達に向ける。
「スピード違反になっるちゃね。お縄につくさー」
 沖縄弁なまりの口調の男に剣を向けられた犯人は車の中で両手を上げた。
 
 海人『金城 ヘクト(gb0701)』

 名前が表示されると、カメラが動く。
 次の廃工場の前に西部劇にでも出ているかのような井出達のタキシードの男性が映った。
「ヘイユー、捜査はもっとエレガントにやらないとね」
 タキシード男の周りにはSPのような黒服たちがいる。
「さぁ、犯人君大人しく出てくるといい、ユー達はミーが包囲しているよ」
 廃工場に向かって警察手帳をタキシードの男は向けた。
 
 伯爵『赤城・拓也(gb1866)』
 
 次に映ったのは京都市内のクレープ屋だった。
「今日も平和でクレープが美味しいですね〜」
「ああ、美味いなー」
 140cmという小柄な少女と195cmで筋肉質でプロテクタをつけている男のツーショットが映る。
 二人そろってクレープを食べていて、何かに気付いたように振り向いた。

 スイーツ『八尾師 命(gb9785)』
 狼『丙 七基(gb8823)』
 
 カメラがまた別の場所へと変わる。
 警察署で二人の男達が握手をしていた。
 片方は赤毛、もう片方は黒髪の男たちである。
「‥‥生命線長いな。渋とく生き残れるぞ」
「その言われ方はなんか嬉しくない‥‥」
 
 ジャッキー『山戸沖那(gz0217)』
 占い『宵藍(gb4961)』
 
 最後に警察署、『能力者犯罪対策課』の札を映し、その奥にある課長のデスクへ近づいていった。
 座っているのはパンダである。
 正確にいえばパンダの着ぐるみを来た男だ。
「各班に連絡、近くの者から合流して捜索にあたれ」
 見た目とは裏腹に渋くポーズを決めたパンダの下にテロップがでる。
 
 ボス『七市 一信(gb5015)』
 
 本日の犯人・水橋ハルキ『片柳 晴城 (gc0475)』
 
 パンダ男の後ろをカメラが映しだし、日光を塞ぐようにブラインドが下がると文字が浮かんだ。

 『傭兵刑事』
 
 一際大きな効果音が鳴り、提供などがそのまま流れだす。
 能力者による刑事ドラマがはじまったのだった。
 
●出会い
「あー、今日から配属となった天野だ、よろしく」
 日本刀を小脇に抱え、フライトジャケットにデニムというラフな赤髪の青年が手を差し出すと黒髪の青年がその手を取る。
「‥‥生命線長いな。渋とく生き残れるぞ? 俺は『占い』だ」
「その言われ方全然嬉しくないんだけどさ‥‥占い? 変な名前だな」
「変な名前といってはいけないな。私のつけたコードネームなのだから」
 占いと天野が挨拶をしているとパンダの着ぐるみを着た男がノッシノシとやってきた。
「ここの課長の『ボス』だ。それ以上でもそれ以下でもない‥‥それでもって、キミの名前は今日から『ジャッキー』だ」
 パンダの登場に唖然とする天野を他所にびしっと指を突き立ててボスは名前をつける。
「えっ、マジ?」
 突然の命名にどうしたらいいかわからない天野‥‥もとい、ジャッキー。
「自分は、『海人』さ、これから、よろしくなジャッキー。俺の今日の運勢はどうだ?」
 ジャッキーと握手を交わすと海人は占いの方へ顔を向けた。
「難事件に巻き込まれる相がでている。ラッキーアイテムは犬だ」
「なら、狼がいれば大丈夫さー。難事件は今更さ」
 沖縄弁らしい陽気な口調で話す海人は隣にいる2m近い男の顔を見てにやつく。
「俺は壬生で愛称は『狼』だ。犬じゃねーんだよ。何度言えばわかるんだ海人」
「天野‥‥じゃなくて、ジャッキーって言わないとダメなんだよな‥‥」
 既に愛称だけで会話をする集団を前にどこか諦めた様子で自己紹介を済ませた。
「今はここにはいませんが、『スイーツ』と『伯爵』がパトロール中です。最後になりましたが『タカ』です。貴方を含めた8人で事件を解決していきましょう」
「了解、ようやくまともな人に会えた気がするぜ」
 タカと握手をしながら、ぼそぼそとジャッキーは呟く。
「さっそくだが、ルーキー達を連れてパトロールへ行ってくれ。ストーカー被害の報告もある。火種のうちから犯罪は摘み取れるのが一番だ」
「よし、じゃーいくか。ジャッキーは俺とだ」
「占い、一緒に行くさー」
「今‥‥廊下を黒い猫が‥‥」
 ザワザワとしながら4人は部屋を後にした。
 ボスとタカの二人だけになった部屋は静寂に包まれる。
「あいつらだけで行かせて大丈夫でしたかね‥‥。信用して無いって意味じゃないんですが、なんかこう‥‥今日に限って一抹の不安が」
「大丈夫だ。彼らも傭兵刑事[デカ]だからな」
 不安な視線を向けるタカにボスは両腕を組みながら渋く答えた。

●事件発生
「また、ついてきている‥‥」
 定食屋『飯くいねぇ!』の看板娘である小原小夜子は買出しの帰りに後ろから近づく足音が気になっていた。
 小夜子が立ち止まれば足音は立ち止まり、小走りになれば小走りになる。
 不気味なことこの上なかった。
「僕の‥‥天使‥‥」
 追いかけていた男、小橋ハルキはボソリと言葉を漏らす。
 パーカーにジーンズ、伸ばしっぱなしの髪とハルキの格好は地味すぎで怖さを強めていた。
「ぼ、僕はっ‥‥!」
 ためていた思いが爆発したのかハルキはこの日、路地へと駆け込む小夜子を覚醒して追いかける。
「きゃっ、きゃぁぁっ!」
 人通りの少ない路地で小夜子が叫んだ‥‥。

「伯爵さん。今、何か聞こえなかった?」
「聞こえましたネー。ミーの耳にもミーの助けを求める可憐なるレディの声がっ!」
「伯爵さんを名指ししたわけじゃないですけど‥‥行って見ましょう」
 食べていたクレープをパクリと食べ終えた小学生くらいの少女『スイーツ』が赤いタキシードを着た『伯爵』と共に声のした方へと急行する。

「は、離してくださいっ! 誰かっ! 誰かっ!」
「離さないっ! 君は僕だけの天使なんだ!」
 小夜子は顔を青くし、歯をカチカチと鳴らしながら、か細い腕を振りほどこうと抵抗するもハルキの力強い腕は離れる様子はなかった。
「そこまでだ‥‥風水でここが鬼門だったからすぐに判った」
「大人しくその子を話すんさ。今なら重い罪にははならないよ」
 占いと海人がハルキの後ろから警告を発する。
「挟み撃ちですよ。世界は美味しい物が一杯なのに、どうして犯罪を起こすかな〜?」
「ミーの情報網を使えばコレくらい楽勝さ」
 正面にはスイーツと伯爵が陣取り塞いだ。
「僕の天使は渡さないっ!」
 懐から閃光手榴弾を取り出して、背後へ投げたハルキは閃光で目の眩んでいる隙を突いて路地から大通りへと飛び出し、ナイフで脅して車を奪う。
 小夜子を連れ込み、ギュルルルとタイヤを煙が出るほど回転させた後に走り出した。
「こちら海人、誘拐事件発生。犯人は能力者の模様。被害者についてはこれから調べるさ」
『判った。詳しい情報がわかり次第、連絡をしてくれ、まずは足取りを掴むために追いかけてくれ』
 タカと海人が話していると占いが空から宙返りで降ってきた。
「二条通を東へ向かって逃走中のようだ‥‥」
『二条通だな? 判った他の班へ連絡をしておく』
 占いの報告を受け、タカは無線の通信をきる。

「ルーキー達にとっては初仕事だ。無事に終わればいいのだが‥‥」
 報告と情報解析を続けるタカの姿を一度みると、ボスは窓のブラインドを指であけて二条通の方を見たのだった。

 
●走れ! 走れ!
『俺が割り出した可能性の高いルートを追え。他はこちらで手配する』
「おっけー、タカ。狼、いくぜっ! ジャッキーは捕まっていろよ」
「チョ、ちょっと待て! うわぁぁつ!?」
 本署のタカからルートの指示を受けた狼がジャッキーを後ろに乗せてたバイクで走行を始める。
 犯人[ホシ]は車を使っている限り追いかけるルートは絞られていた。
 タカの指示するルートに乗っていると、不自然な動きをする車を見かける。
「こちら狼。不審車を発見。追跡を開始するっ!」
 黒いプロテクターに身を包み、同じ黒いスポーツバイクに乗った狼は加速した。
 
「こちら伯爵、犯人のアジトらしき場所が解りました。場所は賀茂川近くの工場跡地です」
「すごいです〜。搦め手であっという間に‥‥ですけど、ここで大丈夫なんですか?」
 レーシングバイクで賀茂川の近くの工場跡のようなところへ伯爵とスイーツは来ている。
「ホシの情報はミーの子飼いの部下が調べてくれてましたからね。彼は能力者になるまでこの工場で働いていました」
「倒産? だから、今日誘拐までしちゃったとか?」
「倒産したのはごく最近ですから、繋がっているかどうか‥‥おっと、来ましたね」
 車が到着し、中から小夜子を掴んだハルキがでてきた。
 伯爵はハルキの姿を確認するとホルスターをはずしてスイーツに渡し、両手を上げて犯人へ近づく。
「ほら、ミーは丸腰です」
「煩いっ! 僕の天使を奪おうとするのはみんな敵だ!」
 拳銃を抜き伯爵の肩口をハルキは撃った。
「ちぃっ、痛いじゃないです‥‥か‥‥」
 怯まずに前進した伯爵の胸を次の銃弾が打ち抜く。
 足が止まり、反動で仰け反りながら伯爵の体がゆっくりと地面へと倒れた。
 小夜子の悲鳴が響くも、ハルキは無視をし小夜子を連れて工場の中へと入っていく。
 一歩遅れて、現場に占いと海人がたどりついた。
「アイエナー! 遅かったか! 占い、説得に突撃するさ。道は開く、大丈夫なんくるないさ」
 海人は倒れている伯爵とそれを看取るようにしているスイーツを後に閉じられた工場の扉をバスタードソードで叩き斬る。
「問題ない。今の風向きは‥‥俺たちに向いている」
 タロットを一枚めくり、『戦車』が出てきたことに占いは満足そうに頷いた。

●事件解決
「お前、星座は何だ?」
 追い詰めた占いが緊張したナイフを小夜子に向けているハルキに問う。
「いきなり何をいいだす‥‥僕は‥‥おうし座だ」
「おうし座の今日の恋愛運は最悪。身勝手な行動が凶を招く。ラッキーアイテムは思いやりの心だ」
 流れるように星座占いの結果を述べるがハルキの動きに変化はなかった。
「思いはこんなにあるのに‥‥彼女もお前たちも何でわかんないんだ!」
「一途なのは、悪くないがそれじゃ、縮まりはしないと思うさ心の距離は‥‥っ!」
 占いに意識が集中していたハルキの横から海人が飛び出しハルキの持ったナイフを抑える。
「くそっ、離せ! 離してくれ! 僕には彼女が必要なんだ‥‥彼女以外、ここでの思い出がなくなってしまう!」
「大切に思うのなら、彼女の言葉を受け止めろ。相手のことを考えられない限り、幸せはないぞ」
 もがくハルキに占いは近づき、小夜子を支えながら真っ直ぐな瞳で見つめた。
「うっ‥‥ううぅ‥‥僕は‥‥僕‥‥は」
 落ち着いてきたのかハルキの動きが鈍くなる。
「あの‥‥私のことを思って下さるのは嬉しいです。けど、こんなやり方なんかせずにお店にいつでも来てください。ご馳走しますから‥‥」
 いまだ顔の青い小夜子は拳をきゅっと握りながらハルキへ優しい声をかけた。
「彼女の言葉を信じてみないか? 大丈夫、お前は行動力はあるのだから努力次第でまっとうな生活にだってすぐに戻れる」
「すみま‥‥せん」

「犯人の確保。完了したそうです」
「そうか‥‥撃たれた伯爵は?」
「胸にあったドロップ缶が弾丸を止めていたようですね‥‥強運の持ち主のようで‥‥」
 やれやれといった様子で額を指で押さえながらタカはボスへと報告を続ける。
 ボスは軽く頷くと自分の席へ戻り煙草を吹かした。
「事件解決、苦労だったな。ルーキーの歓迎会を狼からやるように聞いている。タカもいってやってくれ」
「そうですか? では、事務処理は後でやります‥‥」
 部屋からタカが出て行くのを見守ると、ボスは椅子をくるりと回し、ブラインド窓の方を見る。
「ルーキーは期待以上だが‥‥はてさて、どう育てたものか」
 困った風な言葉を漏らすもボスの口元は嬉しそうに緩んでいた。

●本当の打ち上げ
「みなのしゅー、お疲れさんだがねー」
 収録後、米田時雄がスタッフ、俳優を集めての打ち上げの幹事を仕切っている。
「MPAへの参加希望もありがたく貰ったでほぼ全員採用という形をとらせてもらうでよ」
 焼酎をグイっと飲んでニヤニヤ笑い米田は能力者たちを見回して宣言した。
「ほぼというと?」
「ヘクト君は他にも芸能活動しているようだでよ、どっちを優先するか決めておいてほしいと思うでよ。候補生扱いにさせてもらうで」
 首を傾げるヘクトに米田はそのまま答える。
「パンダも採用とは意外でしたなぁ」
「個性的な俳優集団と名を打ってるで、採用はするが役を選ぶでその辺は周りと相談が必要になるで、がんばりゃあよ。芸人時代をしっとるで期待しとるでよ」
 七市に対しても七市自身がやりきれるのであればということで採用を決めていた。
「俺はなぁ、こんなにも男の芸能界入り希望者が多いのが素直に嬉しいでよ。仕事を斡旋できるように気張るだに」
 予想以上の手ごたえを感じた米田はさらに焼酎を飲む。
 楽しい打ち上げと共に俳優集団でありImpalpsの一部でもあるMpaの活動は大きな一歩を踏み出したのだった。