タイトル:【聖夜】ジングルヘルマスター:橘真斗

シナリオ形態: ショート
難易度: 不明
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/01/18 12:14

●オープニング本文


 今の気分をたとえるのであれば”最悪”の一言に尽きる。
 クリスマスも近いというのに、帰り道にタロスの攻撃を受けてロッキー山脈の一角に不時着を強制された。
 通信機はジャミングが酷くて役に立たず、ほぼ遭難状態だ。
 上空では12機のタロスがハゲタカのように飛び回り、こちらを探している。

 KVの練力は一戦闘辛うじて持つだろうが、全力で戦うことは不可能だった。
 息を整え、動くタイミングを待つ‥‥。
『おい、てめぇはこのままお陀仏って訳はねぇだろぉ?』
 やさぐれた男の声がノイズの激しかった通信機から聞こえてきた。
『メリィィクリスマァァス! 久しぶりにサンタが来てやったぜ、えぇおい!』
 人を見下したような声の主はアスレード(gz0165)である。
 最悪な状況に最悪なものが加わった。
 上を見上げれば円を描くように飛んでいたタロスの中央に赤い塗装の施されたタロスが一機増えている。
 手にはロンゴミニアトのような槍を持ち、バーニアが全身に施され機動力の高さが伺えた。
 地図を広げて見て、逃げる手段を模索する。
 だが、考えている時間はあまりないだろう‥‥。
 アスレードが来たからには時間を待ってやり過ごすということはできない。
 最悪のプレゼントを持ったサンタがやってきたものだ。

●参加者一覧

九条・命(ga0148
22歳・♂・PN
藤田あやこ(ga0204
21歳・♀・ST
御影・朔夜(ga0240
17歳・♂・JG
ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416
20歳・♂・FT
戌亥 ユキ(ga3014
17歳・♀・JG
UNKNOWN(ga4276
35歳・♂・ER
ヒューイ・焔(ga8434
28歳・♂・AA
レティ・クリムゾン(ga8679
21歳・♀・GD
まひる(ga9244
24歳・♀・GP
鹿島 綾(gb4549
22歳・♀・AA

●リプレイ本文

●雪中行軍
「うっわ‥‥。あれ、アスレード(gz0165)だよ。もうサイテー! ねぇ! 早く逃げようよ!」
 戌亥 ユキ(ga3014)はこの世の終わりと言う顔で叫んだ。
 無論、通信機越しで聞かれることも、コックピットに阻まれて顔も見られることはない。
 相変わらずノイズの激しい通信機からは味方の声が通ることもなかった。
「私さ、クリスマス限定ケーキを予約してるんだよね。限定50個の超人気チョコケーキ♪ ぜーったい帰って食べるんだから!」
 それでも不安に押しつぶされそうになっているユキはとにかくしゃべり、気を紛らわす。
 雪山を一歩一歩岩陰や、小高く積もった雪に身を隠しながら10機のKVはロッキー山脈を抜けるしかなかった。

 ≪少し休憩だ≫


 UNKNOWN(ga4276)の黒いKVがハンドサインを送る。
 通信機がまともにつかえない現状では一番使える通信手段だ。

 ***
 
「寒冷地用のペイントでよかったぜ。残り練力は6割か‥‥」
 周囲を警戒しながらヒューイ・焔(ga8434)は機体の状態を確認する。
 不時着とはいえ、損傷が酷くなかったのは何よりだった。
「生きて帰りたいが、一泡吹かせたいってのもあるよな」
 不調な通信機だが、アスレードからの声が聞こえないかノイズ交じりであろうと繋げている。
 見えあげる空は憎らしいくらい澄んでいて、タロスが巡回を続けていた。

 ***
 
「去年は物資の輸送中、今年は帰り道に遭遇か、一年の締めが魚座とは何ともな、年末であって年度末じゃないんだぞ」
 九条・命(ga0148)はコックピット内でぼやき、道を進む。
「赤いカラーリングが好きか‥‥クリスマスにサンタを気取るとはバグアの好みはわからん」
 赤いタロスの姿は見えないが、いつどこから来るかわからない敵と戦うにあたりトラップの設置場所を行軍をしながら探していた。
『あいつも飽きないな‥‥聞こえているか?』
「ああ、聞こえている。そうか接触通信ならクリアに聞こえるのか」
 御影・朔夜(ga0240)のワイバーン『ノクス』を命のディアブロにくっつけて通信を試みている。
『だが、この状況では戦闘も厳しい。ほどほどに考えなければならないな‥‥相手に聞かれている可能性も高い』
 御影は交戦を避けることを第一にしているが、何が起きるかわからないためできることと出来ないことを試すようにしていた。
「その通りだな‥‥しつこい魚座に一度くらいは返したいが、生き延びることが第一だ」
 命は足跡などにも気を使い、誤魔化しながら機体を一歩進ませる。
 まだまだ先は長かった。
 
●攻守交替
「綾に誘われた‥‥その結果がこの様だよ! 後でその乳、揉ませなさいよ?」
 ディアブロでディアブロの胸部をさわりながらまひる(ga9244)が接触回線を通して鹿島 綾(gb4549)へ文句をだす。
 もちろん本気で言っているわけではない‥‥後半の乳揉みについてはさだかではないが‥‥。
『怒りたい気持ちもわかる‥‥俺とて同じ。いや、それ以上にこの状況が最悪だ。ったく、大切な日に最悪なサンタがきたものだな』
 いつになく荒々しい口ぶりで綾はまひるに返した。
『二人とも落ち着け、ここでの戦闘は極力避けるべきだと思う。タロスをあれだけ大量に相手には出来ない』
 二人を宥めようともう一機のディアブロに乗ったレティ・クリムゾン(ga8679)が接触回線に割ってはいる。
「一機ずつでも潰したいところなんだけどさぁ」
『交戦中に増援が着たら目も当てられないぞ?』
「ごもっともです。はい」
 いつでもクールなレティの指摘を受けるとまひるは自分をクールダウンさせた。
 自分が作戦に誘わなければ巻き込むこともなかったと後悔している部分もある。
「雪崩れが怖い場所だよね‥‥戦うにしてもここじゃ危ないか」
 罠を仕掛けだしているホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416)の雷電を見ると不思議と安心できた。
 まひるが一息つくと、藤田あやこ(ga0204)がスナイパーライフルD−02を崖のところで匍匐姿勢で構えている。
「ちょっと‥‥まさか!?」
 ズドォゥンとスナイパーライフルの火砲が火を噴き、弾丸が1機の赤いタロスに向かうが大きくそれた。
 そのままあやこのビーストソウルが離脱行動を行うが雪上迷彩もされていなくては見つけてくれといっているようなモノである。
『そこにいたかっ! 傭兵ぇぇっ!』
 すぐさまアスレードの乗る赤いタロスが他のタロスを4機引き連れて高速で接近した。
「バグアで恋人って見た事ないけど‥‥あんたらにもバレンタインやらクリスマスとか特別なわけ?」
 近づいてくるアスレードへまひるは一つ気になっていることを尋ねる。
『ああ、特別だ。浮かれているテメェらを弄るには最高の日だ!』
「今度のオフにデートでもしようと思ったけど、こっちから願い下げ。短期間に発揮する火力はちょっとしたものだぞ! 受けてみろ!」
 アスレードからの狂った声にまひるはカチンときて、アテナイの照準を集中させたのだった。
 
●狂戦士
『この難局、敵とて同じ境遇。なら全力で当たるのみ』
「同じだと? 普通に飛べないテメェらと飛べる俺らの差を考えてねぇのかよ! えぇぇっ!」
 あやこ機が高分子レーザーをアスレードはかわしながらコックピットでサメの様に笑う。
 炸裂槍であやこ機の腕を貫いた。
 炸裂音と共に揺れる機体へさらにワイヤーを絡ませて動きを封じる。
『ピンチをチャンスに変える闘志はまだ燃え尽きていないわ!』
 しかし、あやこ機は金曜日の悪夢を動かしてワイヤーを刻んで脱出した。
「少しは出来るようだが、これで終わりだぁぁぁつ!」
 切り刻んで飛び上がるあやこ機の胴体に炸裂槍を二発叩き込んで沈黙させる。
『待ち伏せ作戦は崩れたが、ここは引けない。押し通らせてもらう!』
 アスレードに向かって雷電が<超伝導アクチュエータVer.3 >を使い突っ込んできた。
 ただ突撃するだけでなく、機槍「グングニル」の限界射程を保ちながらアスレードとの間合いを計っての攻撃だった。
「おもしれぇ‥‥多少はできる相手じゃねぇか! タロス、俺を援護しろっ!」
 ぺロリと唇を舌で舐めたアスレードは4機のタロスでホアキン機を攻撃するように仕向けた。
 自らはフォースチャージによって直撃を堪え、反撃の一手のためにワイヤーを飛ばす。
 雷電を狙ったワイヤーは機盾『アイギス』に阻まれ、ツインブレイドのような装備を持ったタロスも機槍『グングニル』の反撃を受け、怯んでいた。
「久しぶりにいい相手に出会ったぜ、ゾクゾクしてくる」
 アスレードはコックピットで目の前の敵を睨みつづける。
 だが、そこにまひる機からのアテナイの掃射が飛び、状況が変化した。
 量産機をホアキンに集中させたためにこちらへ集中し始めている。
『メリークリスマス。アスレード。今年は良い子では無かったからプレゼントは不要だ』
 恐らく聞こえているだろうとの判断で、レティは名指しで挨拶を交わし試作型『スラスターライフル』をアスレードやタロスに向かってばら撒いた。
「その声は‥‥イスパニョーラ等でもいたなぁ? ちったぁ腕を上げてきたかぁ?」
『その身で確かめてみるんだな』
 レティ機はそのままホアキンを狙うタロスへと機槍『グングニル』で武器や腕など戦闘へ影響の出る部分を狙って攻撃を仕掛ける。
 ホアキンと共に前後から貫かれたタロスが回復さえ間に合わずに吹き飛ぶ。
「ククク、おもしれぇ! 今日は最高だっ!」
 アスレードは強く叫び戦闘を再開させるのだった。

●戦々恐々
「ワイヤートラップもクソも無いな」
 命は前方と後方から挟み撃ちされるようになった状況で毒づく。
 交戦しては仕方が無い、ここを抜けるためにも目の前の敵を倒すだけだ。
 ハンマーボールのハンマーがUNKNOWNのK−111の槍で翼をもがれたタロスへヒットする。
 揺らいだ巨人へヒューイのハヤブサ『白魔』がライトディフェンダーで追い討ちをかけた。
 体制を立て直そうとしたところへ御影のノクスから試作型「スラスターライフル」の弾幕が迸り、頭部と胴部といわずに等しく撃つ。
 再生機能を持つタロスであったが、畳み掛けるような能力者達の攻撃により一体が潰れた。

 ***

 4機のタロスがツインブレイドのような得物を盾や槍のようにして能力者達を翻弄する。
 足場が決してよくないところだが、相手は飛行形態に移れる為に優位に働いていた。
「ちょ‥‥! 冗談でしょ! こんな博打みたいなこと! んもー! ‥‥わかったよ! 最大火力で短期決戦、皆で勝つよ!」
 『生き延びることが信条』と常に語るユキだったが、このときばかりはと頭のスイッチを切り替える。
 突きを繰り出してきたタロスの攻撃を物陰に隠れてかわし、ユキは愛機のシラヌイ『Fortune』の持つスラスターライフルをありったけ叩き込んだ。
 しかし、フォースフィールドを集中させたタロスには傷すらつかない。
「この、バケモノ〜っ!」
 鳴き声に近い叫びを上げていると、先ほどのタロスを倒していた白魔が援護にでてきた。
 ソードウィングを構えて突撃した白魔は装甲板をチタンファングで剥ぐと生態部分を露にさせる。
 ノイズ入りの通信機からヒューイの咆哮が聞こえたかと思うと、ライトディフェンダーで傷口を広げ、至近距離でバルカンでトドメをさした。
 ハヤブサは既にショップでの販売も終了している旧型ではあるが、遣いこなれた能力者達に掛かればタロスと戦えるほどのポテンシャルを引き出すこともできる。
「ヒューイさんありがとう! これで勝ち目が見えてきたかな?」
 以前、UNKNOWNが殿を務めながらタロスへ一撃、二撃を確実に与えて弱めているためユキの下へくるタロスは被弾を受けているものばかりだった。
『なだれが来るぞ! 気をつけろっ!』
 しかし、その余裕も綾からのノイズ交じりの怒声によってかき消される。
 すぐに地響きと共に流れる雪の音が聞こえてきた‥‥。

●進路の敵、退路に雪
「前進だ。前の敵はフロントのメンバーで対処する。隠れれる場所まで駆け抜けよう」
 ホアキンは地響きと綾からの怒声を聞きつけると、アスレードが引き連れていたタロスの最後の一体へトドメを刺し駆け出す。
「アスレードが姿を魅せなくなったと思ったらこれか‥‥こちらも警戒していたから早めに動けたが噂どおりの御仁らしい」
 入り組んだ崖を通り、軒下のように迫出た岩場を目指す。
 動けにないあやこのビーストソウルをまひる、綾、レティのディアブロ三姉妹が支えながら狭い岩場を進んだ。
 戦闘に引き続き、急激な逃走劇で機体にもパイロットにも疲労が見え始める。
「そろそろ最後にしたいところだ」
『休んでいる暇はあたえねぇよっ!』
 離脱していたアスレードが岩場の前にタロス3機を引き連れて下りてきた。
「ここで諦めるわけにはいかない」
 ホアキンは赤いタロスを見据え、機槍「グングニル」を構えた。
 それに合わせ、ディアブロ三姉妹が護衛のタロスの動きを制限するように各々が銃器を持って支援射撃を行う。
 雪山に赤い火花が飛び、地面に当たれば粉が舞い上がった。
『喰らえっ!』
 逃げようと思えば逃げれるのだが、タロスはワイヤーを伸ばしてグングニルを絡めとる。
 だが、ホアキンはそのまま勢いを持って踏み込み、ソードウィングを代わりに使ってタロスを斬り裂いた。
『直撃を狙わずにバーニアを斬るか‥‥楽しいぜ、踏み込んでくる根性も気に入った名前だけは聞いておくぜ』
「ホアキンだ、魚座」
 グングニルの炸薬を爆発させてワイヤーを吹き飛ばし、身を捻るような動きと共にアスレードのタロスの脚部を貫く。
『再生で間に合うっ! こっちの番だ!』
 アスレードが苦境すら楽しむ声をあげて仕掛けてきた。
 引き連れて来たタロスもアスレード共に勢いづくが、UNKNOWNやノクスの射撃により失速、そのまま狼牙や白魔の連続コンビネーションアタックにより沈んだ。
 通信ができなくてもUNKNOWNのハンドサインによって指示を受け、的確に動いていたために窮地を乗りきっている。
「これが‥‥俺達の力だ」
 ホアキンが援護を受ける中、アスレードのタロスへトドメの一撃を放った。
 フォースフィールドによる強化バリアも再生能力も上回る一撃にタロスの装甲は砕け、生態部分を貫き背中にまでグングニルが伸びる。
 タロスが爆発する瞬間にアスレードはコックピットから飛び出し、崖の下へと落ちていく。
「今日は楽しかったぜぇ! メリークリスマス! この調子で俺を楽しませてくれ! その方が殺りがいがある!」
 戦いを楽しむ狂戦士は崖の下へ消えながらもサメのように笑っていた‥‥。