●リプレイ本文
●新しい門出
「やほ、社長。ちょっちだけおひさー。所属がIMPじゃなくなったってだけで芸能活動自体は続けてくつもりだから、今後ともよろしくね」
「目玉アイドルの登場だがね。新しいキャッチコピーでも考えとかにゃーの」
ラストホープのIMPALPS出張所にあるミーティングルームを訪れた鷹代 由稀(
ga1601)の姿に米田時雄は嬉しそうにサングラスの奥にある目を細める。
グループを卒業してもこうして関わって暮れることは喜ばしいことだ。
「おはよう御座います! 今日も宜しくです!」
また一人、出張所に元気な声と共に訪れた者がいる。
「おー、のぞみちゃんだがや。今日も元気で何よりだがね」
「社長! 私報告があります‥‥肩の傷、隠すのやめました。ボクはありのままで勝負します!」
椎野 のぞみ(
ga8736)は米田に手作り蒸しケーキを一つ手渡しながら憑き物の取れた顔で笑った。
「二人とも新しい門出をしたみたいだがね。頑張って芸能活動に励んでほしいでよ」
米田はのぞみと由稀の方をポンと叩く。
「こんな場所ができていたんですね。こんにちわー。依頼の話をしに来ました」
続いてミーティングルームに入ってきたのは夕凪 春花(
ga3152)だ。
「春花ちゃんも久しぶりだがね。移籍希望でええがね? 前もグッズ開発とかには顔をだしとったが興味あるんがや?」
「そうなんですよ。元々開発系は結構好きなのですが、ゲームだと現実では無理な事もある程度出来ちゃいますしっ楽しみです!」
楽しさを堪えきれずにウキウキと夕凪 春花(
ga3152)は会議室を歩きまわる。
「こんにちわー、あの舞奈の関係者が今、IMPにいるんだけど舞奈もアイドルになれるのかな?」
その後、他の依頼希望者もミーティングルームを訪れ、最後に入ってきた樋口 舞奈(
gb4568)が米田に近づくと上目使いに尋ねた。
「まずは候補生として登録するで安心して欲しいでよ。全員そろったようだで、会議の方を始めるとすりゃあね」
米田は頼もしいメンバーの到着を喜びながらホワイトボードの前に立つ。
キュキュッとマーカーを走らせて『VMポータブル緊急作戦会議』とでかでかと文字を米田は描いたのだった。
●いざ、会議
「うちがVM開発者の一人でもある鹿嶋明美いいますねん。VMポータブル計画にも関わることになりましたんでよろしゅう」
白衣にワカメのようなヨレヨレの髪が特徴的な女性は頭を下げる。
「えーまずは、メインのモデル以外で意見がありましたらそちらからお願いします」
明美の隣にいるライディ・王(gz0023)が会議を仕切りだした。
「おう、マネージャーにオーケーもらってたんでライバルキャラの設定とソッチ方面のストーリーを考えてきたぜ」
踏ん反りかえりながらテト・シュタイナー(
gb5138)が口火をきる。
「俺様とエイラのモデルキャラは敵の新型実験部隊でエース部隊って奴だ。後半フラグ次第で仲間になる感じだが‥‥上層部の陰謀を知って終われるとかが王道だよな?」
「ええんちゃうかな〜。ドラマモードと名を打つから、燃える展開がええよね〜。けど、今回のモデルはんは別嬪はんばかりやから萌え要素の方が強そうやね」
「あたしの方は戦うごとに装甲を減らしながら回避性能や機動力を高めていく感じで、三回戦闘で三回目は主人公に倒されたら仲間になるって方向で宜しく頼むぜ」
エイラ・リトヴァク(
gb9458)もテトに続けて意見をぶつけた。
「シミュレーションゲームなノリやね。うちはそういうの好きやからしっかり入れとくやね」
ノートPCにカタカタと打ち込みながら明美は親指をぐっと立てる。
「順番が逆のような気もしますが、メインストーリーの方のアイディアを説明させていただきます」
緋霧 絢(
ga3668)がホワイトボードの前に立ってつらつらと文字を走らせた。
「先ほど明美様が言ってらしたように萌え要素が高いので、女性部隊に間違って配属‥‥もちろん、男性主人公の場合ですけど、戦いながら指揮官へと成長していく話を考えています」
絢の走らせたプロットは序章から、解説のためのシナリオやキャラの背景シナリオの流れ、ラストの敵との対決までしっかり書かれている。
「本格的な流れですね‥‥絢さんにこんな才能があったとは‥‥」
「付け加えてキャラクター設定はALPがモデルしていることを売り出すのであれば余りいじらない方が適切化と思います」
驚くライディを他所に絢は意見を述べると席に戻った。
「ミルルはテーマソングを作ってきましたー。聞いてください『鉄の翼』‥‥」
ミルフィーユ(
gb8619)はウィンクとピースをライディ達に向けてアピールすると、そのまま歌い始める。
♪〜〜
いつか描いてた 遠い夢忘れている
心にしまった 思い出も消えてしまう
もしもこの心に鉄(くろがね)の翼があるなら
今すぐここから君のもとへ飛んでいけるはずなのに
そしてこの心に鉄の杭を打ち込んで
この記憶もろとも気持ちも全部縛り付けて欲しい
嘘ついて別れた 悔しくて眠れぬ夜
期待だけ やけに大きくて情けないね
だけど今私のやるせなさがここにあるなら
君の隣にあるその気持ちはいったい何なのだろう
もしもこの私に鉄の剣があるなら
その記憶もろとも気持ちも全部切り裂いてしまいたい
おかしいよね 矛盾してるのは分かってる
嘘重ねて 自分騙してる
悲しいね 本音だけがどうしても出てこない
それでも 愛してくれる?
※サビ繰り返し
〜〜♪
「テーマソングも作ってもらえるなんて嬉しいわ〜。録音はしたんやけど、ちゃんとした収録頼みますわ」
静かに歌を聞いていた明美はころころと笑うと前向きに設定をパソコンに詰め込んでいくのだった。
●想いを膨らませて
「あたしとしちゃこんなところかな‥‥」
メインのモデリングにはいると由稀が一番手をとる。
〜〜
●キャラ設定
ユキ・ラグナイト
■性格等
気さくな姉御系。基本的にノリで動く人。戦闘・戦術に関しては確かなものを持ち、判断は至極冷静。
隊長と呼ぶのはNG、ユキさんとお呼び。
豪快さん。非番は寝てたら終わってた、そんなタイプ。
●VM設定
イグナイト
■スペック
シュテルン系の外装だが、中身は試作フレームを使用した最新型。
可動式のマント型シールドが特徴、武装は標準の物を使用。
〜〜
「シュテルンの個人カスタマイズタイプやね。OKOKやよ特殊能力は<垂直離着陸能力>をオミットして二つもありやよ」
「ゲームらしい感じでいいわね。それでいくわよ」
明美の答えに親指をグッと立てて由稀は答えた。
「じゃあ、次は私が行きますね」
春花が勢い良く立ち上がり、自分のキャラの説明を始める。
〜〜
●キャラ設定
ハルカ・Y・カーディル
■性格等
ちびっこ担当。 年齢の割りに実戦経験は多い。
●VM設定
XN−01F スーパーナイチンゲール
■スペック
ナイチンゲールの発展改良型。
ナイチンゲールの更なる強化を求める熟練パイロットの要望により設計された強化型ナイチンゲール。
生産数は少なく、一部のパイロットにしか供給されていない。
〜〜
「シンプルな感じですね」
「基本コンピューターやから無茶な動きをさせるとええやね、マニューバの要望とかあるなら実戦闘データをもらえると嬉しいわぁ」
「もうそれは是非! KVに関しても詳しいのですね!」
「うちはドローム社京都でKV関係の仕事してたんや。今はゲームの方やけどね」
開発系の好きな春花にとっては嬉しい話であり、飛びつくように目を輝かせた。
「私の方をはじめさせていただきます」
いつものマイペースぶりを崩さず絢が説明を始める。
〜〜
●キャラ設定
緋桜 彩
■性格等
主人公の任官には上層部からの指示という事で特別な感情は抱いていない。
純粋な能力主義者、主人公の能力に疑問を感じれば、訓練等を積極的に受けさせようとする。
趣味はぬいぐるみ収集だが、他人に知られないようにしている。
●VM設定
シックスセンス
■スペック
電源容量の多くを通信機器や解析用CPUに割いている為、レーザー系の兵装が運用出来ない。
重量のある通信機器、索敵機器を多数装備しているため、機動性は低く、積載量の関係から装甲も薄い。
兵装には長距離ミサイル、中距離ミサイルを搭載。
〜〜
「戦闘には向いていないが、戦域に居ると様々な情報を提供しつつ、支援射撃してくれるタイプです。敵に接近されると撃墜されるので、敵を近づけないようにする必要がある‥‥といった具合です」
「せやね〜、この設定はいっそ導入予定のVF(バーチャロイドフォートレス)導入も兼ねて戦艦にでもせぇへん? 通常のKVデータを戦艦や要塞仕様にコンバートできるシステムを考えとるんよ」
「その方が良いかもしれません。副官ポジジョンを考えていましたので、戦闘で前に出るよりは艦長という方がしっくりきます」
予想外のシステム追加に驚いているようだが、表情はそのままに絢は明美に任せて席に戻った。
「次はボクがいきまーす! あ、自分の名前とVM名を忘れてました‥‥えーと、絢さんみたいに余り弄らない方向で考えます‥‥」
席順に回ってきた紹介手番でのぞみは気合を入れていたが、慌てて忘れていた項目を考えはじめる。
〜〜
●キャラ設定
柏野 望
■性格等
誰とも仲良くなれる元気な笑顔が似合う女の子。
家事全般も得意でいつも小隊内で料理や家事を一手に引受る。
ただ笑顔の裏で心の傷があり。そのことで少し暗くなる時がある。
●VM設定
R−01改 ダブルフェイス
■スペック
攻撃と回避にかなりのレベルで特化。
ほかの能力は平均的に強化。
ロートルといわれてしまう機体だけど、乗り換えるつもりは無いようだ。
〜〜
「キャラクターとしてはフラグ次第で敵に回ったり心の傷が原因と考えてます。あとVMの攻撃と回避はボクの願望も含めて魔改造レベルでお願いしたいです」
最後のほうは照れくさそうにのぞみは頭をかきながら言った。
「次は舞奈だね。ビシっと決めるよ」
自前のチョコレートをハムハムと口に入れながら舞奈が自分の設定を公開する。
〜〜
●キャラ設定
マイナ・クロード
■性格等
兄のようなエースになるように周囲からプレッシャーを掛けられ、兄のようになれるようにと自分でも気負い過ぎている。
その為、軍人らしくあろうと本来の自分を押し殺している。兄を目標に無理をし続けて無茶もよくやる。
●VM設定
ウーフー
■スペック
やや防御・抵抗重視だが比較的バランスよくカスタマイズされているが、カスタマイズの度合いはそれ程ではない。
〜〜
「戦死した有名エースパイロットの兄を持つ、主人公と同時期配属の新任パイロット。兄に関する問題を解決できれば、本来の明るい性格が前面に出て無理も無茶もしなくなるが、締めるべきところは以前のように軍人らしくする感じだよー」
重要だよと舞奈は付け加えた。
「味方側最後はミルルだね。いってみよー! ミルルのも分岐次第で死ぬ展開が欲しいかなー」
決めポーズらしいウィンクとピースをミルフィーユは決めると自分の設定を始める。
〜〜
●キャラ設定
ミル・フューズ
■性格等
VVの操縦が苦手なことにコンプレックスを抱く少女。
性格そのものは明るく、主人公に対して無邪気に絡む。
天真爛漫な性格で周囲にも可愛がられる。
戦地での混乱の中で生まれ、父親は不明。
●VM設定
ヴァレンタイン
■スペック
ナイチンゲールをベースに、バランス型だが攻撃力よりも機動力に比重が置かれた機体を使用。
〜〜
「原案にある従軍慰安婦という設定はアイドルがモデルだと厳しいかもしれません。イメージの問題もありますし‥‥それに、娯楽ゲームの設定としては不適切でしょう」
ライディが不安げに米田の方を見る。米田も難しい表情で頷いた。
「まぁ、色んな見方をする人がおるし、しゃあないんやないかと。これで小隊はそろったやね」
「小隊名はどうしましょう‥‥」
「インパルス小隊ってのが俺はええと思うがね。コラボするにも丁度ええでよ」
集まってきた意見の中の一つを米田が選ぶことで確定した。
「じゃあ、俺様たちのほうだな? 名前はお任せするぜ」
待ちかねたとばかりにテトが立ち上がって語りだす。
〜〜
●キャラ設定
未定
■性格等
我が強い俺様系キャラで、他者、特に敵を見下す傾向がある。
所謂一つの理論派。頭の回転が速く、対応力に優れる。
表には出さないが、仲間を大事にするタイプ。孤児院育ちである経緯が影響している。
孤児院出という経歴にコンプレックスがあり、その影響で強い出世欲を持つ。、
強烈な上昇志向の持ち主。
●VM設定
デイ・クレイン
■スペック
機動性重視のフェニックス。
青をベースカラーとし、所々に白色が入る。
兵装は弾幕系・砲撃系・ミサイル系・練剣系とバランスよく装備。
主人公との戦闘を重ねる度に、武装と機体が徐々に強くなり機体はより高機動化。
〜〜
「テトのキャラの名前が決まってないならあたしのと姉妹系にしないか?」
「そういや、姐さん呼ぶっていったてな。俺様はいいぜ」
話を聞いたエイラがテトと話をあわせてキャラ設定を詰めだした。
〜〜
●キャラ設定
オルガ・ユーティライネン
■性格等
男勝りで男嫌い生意気だけど寂しがり屋なツンデレ。
孤児院育ちの為孤独を恐れている。
趣味は機体整備やガレキ作成。
小さい身長と胸がないことを実は気にしているため子供扱いされるとキレる。
僚機仲間の為なら自分の命など省みない。
仲間にすれば心強いが敵に回すと危険。
●VM設定
ヘルヘブン750カスタム「ヘルヘイム」
■スペック
深紅に塗装され、悪魔のような外見をした。
陸戦特化重武装型回を増すごとに装甲が薄くなりスピードと攻撃力を増していく。
飛行形態は闘争時のみ。
〜〜
「じゃあ、テトちゃんとキャラ名はティーダ・ユーティライネンってことでええね?」
米田がテトのキャラに名前をつけ、一通りの設定公開が終了する。
「いやー、ええ時間でしたわぁ。BGMとか主人公機のアイディアも目を通したけどええセンスしてます。選べる機種はこれからこっちで組みますわ、ほんにおおきにな」
聞いたものを打ち込み、またもらえる資料を一杯抱えた明美はルンルン気分でアイドル達に頭を下げた。
「となると今後のメディアミックス展開とか期待するわよ?」
由稀が明美の言葉に手ごたえを感じたのかニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
「来年のコミレザには間に合わしたいとこやわ。そのときはまた頼みます」
「期待してるぜ、発売されたら絶対買うからな」
アイドル達がゲームの中で活躍する日がこのとき近づきだした‥‥。