タイトル:第七回V1グランプリマスター:橘真斗

シナリオ形態: イベント
難易度: 難しい
参加人数: 25 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/10/15 07:14

●オープニング本文


  〜〜第七回V1グランプリ開催のお知らせ〜〜
  
  定期的に開催してきたV1グランプリが今年の夏開催できなかったことをお詫びします。
  このたび、次回V1グランプリの予定とルールが決まりましたので連絡いたします。
  
  場所:南米アマゾン川流域の競合地帯
  日時:2009年9月29日
  
  ルール:参加者が所持している星をお互いが奪い合い、七つ以上所持した状態でギアナ高地にあるゴールへ到着すること。
      優勝は所持している星の総数によって決まる。
      制限時間は午前0時から昼の12時までの12時間とする。
      KVの種類による制限はなく、また同意の下の星の授与は許可する。
      所持している星が0のとき3時間以上経ったときに失格となるが、それまでは妨害や奪い返す行為は可能である。
      
      実弾の使用の元、実戦形式を兼ねた形態のため各自の負傷等がでる恐れがあるが企画側としては責任を負わないものとする。
      また、野良キメラ等やワームの存在が障害となる場合は排除のこと。
      
  以上を了承の上、参加してください。
  なお、参加者は基本星を一つ所持としますが、参加人数に応じては数を増やすものとする。
  
      UPC軍南北中央軍混成エルドラド駐留部隊総指揮官 伊井木・文蓮

●荒ぶる闘志
「おや、うちの親玉にしちゃあ変わったことを計画したもんさねぇ」
 通達されてきたV1グランプリの開催文書を読んでいたベルディット=カミリア(gz0016)は差出人を見て驚く。
 思えば、第一回の傭兵同士をKVで持って競わせる実戦形式の訓練、V1グランプリは伊井木の立案だった。
 現在所属しているエルドラドの駐留部隊のトップでもあり、融通の利かない考えに何度かぶつかっている。
「まぁ、あたいとしても久しぶりに暴れられそうだから丁度いいさね。静かにしていちゃ、ナパームレディの名前がなくってもんさ」
 過去に南米ゲリラとして暴れて、UPC軍で方々に飛ばされて厄介ごとを負かされてきたベルディットも最近ではエルドラドの姐さん女房のようになっていた。
 以前に比べれば国民から声をかけられることも増えたし、ユイリーをはじめ慕ってくる人物も多い。
 時間は無駄に過ぎていたわけではなく、心象の整理もつき始めたのだろうかとベルディットは思った。
「やめやめ、辛気臭いのはこの辺にして折角だから知り合いも呼んで派手にいこうかねぇ」
 書類をたたむとベルディットは勢いをつけて立ち上がる。
 高級煙草に火を点し、自室からラストホープへ連絡のできる通信しつへと足を向けたのだった。
 

●参加者一覧

/ 花=シルエイト(ga0053) / 如月・由梨(ga1805) / 西島 百白(ga2123) / 宗太郎=シルエイト(ga4261) / UNKNOWN(ga4276) / キョーコ・クルック(ga4770) / 鈴葉・シロウ(ga4772) / クラーク・エアハルト(ga4961) / アルヴァイム(ga5051) / カルマ・シュタット(ga6302) / アンジェリナ・ルヴァン(ga6940) / 井出 一真(ga6977) / 周防 誠(ga7131) / 砕牙 九郎(ga7366) / 百地・悠季(ga8270) / ヴァレス・デュノフガリオ(ga8280) / 白虎(ga9191) / 楓姫(gb0349) / 米本 剛(gb0843) / エリザ(gb3560) / 堺・清四郎(gb3564) / 冴城 アスカ(gb4188) / 鹿島 綾(gb4549) / 天原大地(gb5927) / フィー(gb6429

●リプレイ本文

●Are You Ready
「今回は1人での参加‥‥弱音なんて言ってられない。頑張らなきゃっ!」
 月森 花(ga0053)は宗太郎=シルエイト(ga4261)の不在による不安を振り払うようにコックピットの中で拳をぎゅっとにぎる。
 不在といっても宗太郎は実況中継を担当しているだけでありいつでも声を聞くことはできた。
「‥‥とはいえ、やっぱり1人で動き回るのはちょっと無謀過ぎる‥‥かな?」
 花が気合を入れていると目の前をUNKNOWN(ga4276)の艶消漆黒のK−111改とアルヴァイム(ga5051)のディスタンが鎮座している。
 出発前の打ち合わせ中らしい。
『うわ〜あんのんとアルヴァイムは正直やりあいたくないね。スタート位置を代えるとしようか』
 通りかかったキョーコ・クルック(ga4770)が二機の武装を見て踵を返して去っていった。
「こっそり”おかあさん”の後でもついていこう。これで鬼に金棒♪」
 キョーコの行動を見た花はこばんざめ戦法を使うことに決める。
『そろそろ深夜0時が近づいてきました。皆さん、スタート地点には着きましたか? トイレも済ませて勝利の女神へのお祈りもすませましたか?』
 花が気づかれないように生い茂る木々に身を隠していると宗太郎からの参加者全員に届く実況が届いた。
 優しい口調で語りかける声を聞くと花の寂しさが少し紛れる。
『第7回の今回はぁ! 南米はギアナ高地でのサバイバル!
 星を奪ってテッペン目指す、いたってシンプル!
 最後まで生き残り、勝者の頂に上るつわものは果たして誰なのかぁ!』
 突如、宗太郎が覚醒したテンションの高い状態に入り、音量をMAXにした叫びが響いた。
「まったく煩いな‥‥いつもこうなのか‥‥」
 気合の入った声を聞き頭痛を感じたアンジェリナ(ga6940)はため息をもらす。
『星の張り替え完了しました。俺も今回初めてですが、こんな実況付きは他の報告書でも見てませんよ』
 今回ペアを組むカルマ・シュタット(ga6302)が同じく困ったような声をだした。
「そうか‥‥まあいい。狙うは優勝だ、行くとしよう」
 アンジェリナは愛機のミカガミを屈ませ、カルマはシュテルンを<垂直離着陸能力>での離陸体勢に入る。
『それでは皆さんご一緒にぃ! KVファイト、レディー‥‥‥‥ゴォォォ!!!』
 宗太郎の大きな掛け声が響き、能力者同士のバトルイベントV1グランプリは始まった。

●Preempitiv
「今日は、しっかりと対決をするのだー♪」
 白虎(ga9191)は闇夜に浮かぶシュテルンとシラヌイに向かって宣戦布告をする。
『カップルよ、お前達の罪を数えろ!』
 スタート合図と共に白虎と相棒の鈴葉・シロウ(ga4772)は今大会で一番熱いであろうカップルを狙っていた。
『さて、白虎さん‥‥真剣勝負と行きましょう。手加減はしませんからね?』
 シラヌイからクラーク・エアハルト(ga4961)の声が返ってくる。
『結婚を祝ってくれる優しい子だったのに‥‥そんな風に育てた覚えはないわよ』
 シュテルンからはレオノーラ・ハンビー(gz0067)の少し苛立った感じの声が発せられた。
「これが僕の本当の姿にゃ! 桃色の破壊者にして混沌の権化、しっと団総帥白虎ここに推参にゃッ!」
 ドドーンと気合の入った口上に爆発が続く。
 爆風と共に煙が巻き上がり、その間を冴城 アスカ(gb4188)のシュテルンが颯爽と駆け抜けた。
『祝砲一発どうぞ。それじゃ、皆さんお先に♪』
 対戦車砲によるはた迷惑な砲音と共に4機のKVが1対1でぶつかり合う。
『ミセス。しばし私がお相手させていただきます。Sirius! Aigis!』
 シロウが先に動き、武器を構えながら間合いを詰めてレオノーラの星を奪いにかかった。
『もっとスマートに来てほしいわ。だからモテないのよ!』
 奪われまいとレオノーラが抵抗を試みる。
『レオノーラさん!』
「余所見をする悪い子は星を没収なのにゃー!」
 水中機であるビーストソウルを使い白虎が余所見をしたクラークへと掴みかかった。
 今回初めて使う機体ということもあってシラヌイの動きに微妙なブレが見える。
「今回こそは勝てそうにゃ!」
『おっと、勝つのは俺だってばよっ!』
 白虎が勝利を確信したとき、またもや爆発が起きた。
 今度は砕牙 九郎(ga7366)のG−44グレネードランチャーである。
 衝撃と爆風が4人を包むが、そこをクラークが白虎のをシロウがレオノーラの星を奪いばらけた。
『逃したみてぇだな。さって、戦いはこれからってな』
 深追いを避け、九郎は重厚な雷電を茂みに紛れ込ませるように戦場を動きだす。
 夜はこれからだ。

●Secretly
「優勝など‥‥もとより‥‥眼中に無い。面倒だが、我慢してくれ」
 コックピットの中央にあるコンソールを西島 百白(ga2123)は軽く撫でる。
 西島はジャングルの中でも茂みの深い場所へ愛機の阿修羅を姿勢を低くさせて待機していた。
 光源の少ない状況で戦い合うのは分が悪い。
 日が昇り始めてから動く方が攻めるにも守るにも便利という考えから待機を選んでいた。
 西島のように動きを見せないものは他にもいて、エリザ(gb3560)やヴァレス・デュノフガリオ(ga8280)‥‥そしてひっそりと参加した百地・悠季(ga8270)などがいる。
 最も西島はそんなこと知るよしもないのだが‥‥。
「何か反応がある‥‥」
 西島が静かに待機していると設置しておいた地殻変動装置が大きな重量物の動きを2つ知らせた。
 ゆっくりと動き周囲を確認しながら動く井出 一真(ga6977)の阿修羅で、もう一つは如月・由梨(ga1805)のディアブロである。
「まだこちらには気づいていないか‥‥面倒は嫌いなので無視させてもらおう」
 井出機が向かう先はゴールであるギアナ高地ようだが、優勝に興味のない西島にとって余り関係のない話だ。
 狩りの時間まであと3時間‥‥。

●A Fierce
「そこっ、逃がしませんよ」
 周防 誠(ga7131)がD−013ロングレンジライフルの射程内に入った敵機に向かってロックオンアラートを頼りに撃つ。
 放った先にいたベルディット=カミリア(gz0016)のロジーナは動きを抑えて弾丸を回避した。
「まったく、馬鹿な射程を持っているね。だけど、この闇の中射程ギリギリで撃ったってあたりゃしないよ」
 冷静に状況をつかんだベルディットはそのまま射線をから離れるように動く。
 ベルディットが狙撃された地点から少し離れた場所では堺・清四郎(gb3564)のミカガミとヨネモトタケシ(gb0843)のアヌビスが戦い合っていた。
『ジャングルでは長い銃器は扱いにくいはず‥‥そこをつく!』
 どちらも接近戦に重点を置いたKVであり暗がりでの戦いということもあり自然と近づいての斬りあいとなる。
『格闘戦を挑んできますか‥‥喜んで受けさせて頂きますよぉ!』
 ミカガミの機爪「プレスティシモ」が闇夜にビームによる光源を生み出し襲いかかってきた。
 アヌビスは一歩後ろに退いて樹木を立てにその攻撃を避ける。
 ビームによって斬られた樹木は燃焼前に炭となった切り口を残しながら倒れた。
 そして、足のローラーを高速回転させたアヌビスは<フレキシブル・モーション>を使った突進を行いつつ双機刀「臥竜鳳雛」でカウンター気味に斬りつける。
 業を見せられたミカガミは斬られた衝撃と共に地面に向かって仰向けに飛んだ。
 バギバギと木々を折り倒れたミカガミからアヌビスは星を奪う。
『今回は私の勝ちですな。奪いに繰るも自由ですぞ、それではこの場は失礼しますよぉ』
 他との戦闘を避けるようにタケシはアヌビスを走らせ足場のしっかりした姿を眩ませそうな場所へと去っていった。

●A Struggle
「ビーストソウルか‥‥敵は一機、気づかれていないのなら狙い時か」
 楓姫(gb0349)は月明かりにキラキラ輝くトゥインクルブレードを持った天原大地(gb5927)のビーストソウルを見つけていた。
 奇襲をかければ星を奪えるかもしれないが、周囲の再確認を行う。
 敵のいない初期位置を狙ってきたが、一時間半も経過していれば動きがあってもおかしくないからだ。
 聴覚と視覚に神経を集中させると自分の息遣いや鼓動が大きくなる。
「いくよ‥‥Night Hunter」
 愛機の名前を口にして楓姫はスナイパーライフルD−02を構えて大地のビーストソウルを撃った。
 大地のビーストソウルが揺らぎ、地面へと膝を突く。
『ってぇなぁ‥‥やってくれたなぁっ! おぉおおおおおおッ!!』
 大地は膝を着いた姿勢をクラウチングスタートの体勢へとすぐに変えてスラスターや、ブースター、<強装アクチュエータ『サーベイジ』>まで発動させて特攻を仕掛けてきた。
 60mの距離を木々をなぎ倒しながら詰めてきた大地がトゥインクルブレードで斬りかかる。
「一撃でこの威力、そう何度も喰らっていられないか」
 不意をついた豪快な攻めに楓姫のバイパーに傷が入った。
 しかし、大地の勢いは止まっている。
「お返しだ」
 楓姫の機槍「ドミネイター」がビーストソウルの横っ腹を貫き、勢いを持ってして押し倒すとコックピットの前で止まる。
「降参すれば破壊まではしない。三時間の時間があれば復帰のチャンスもあるさ」
『くっそ‥‥わかった。それで手をうつ』
「暗闇の中でキラキラ光る剣を持つのは辞めた方がいい。囮として使うのなら別だけど」
 大地の機体から星を奪うと楓姫は試作型「スラスターライフル」を構えながら闇の中に消えていった。
 一方、潜んで様子を伺っていたフィー(gb6429)と山戸・沖那(gz0217)ペアの【犬猫パンチ】にも動きが見える。
『ペアを攻めるのは例外だけど、手ごろな星持ちだから狙わせてもらうよ』
「奇襲‥‥!?」
 狙撃ポジションにいたフィーのワイバーンに鹿島 綾(gb4549)のディアブロが試作型「スラスターライフルを撃ちながらせめてきた。
『フィー、下がれ! 俺が前に立ってカバーするから自分の間合いへ移動しろ』
 沖那の阿修羅が身を盾にして綾からの攻撃を防ぐ。
『それと、俺の星を念のために持っていけ。もし俺が落ちても最悪フィーだけでも優勝のチャンスはあるからな』
 優勝を目指そうと誓っていたフィーへ沖那が綾に気づかれないように内部通信でフィーに伝えた。
「二人で優勝‥‥できる限り沖那も逃げて‥‥後で合流」
『了解』
 フィーは沖那の気持ちにこたえつつ長距離ショルダーキャノンを地面に向かって撃ちこんで煙を上げると後退していく。
 その煙に紛れるように沖那の阿修羅が綾のディアブロに飛び掛ると<クラッシュテイル>を突きたてた。
『仲間を逃してでもやる気か、そういう奴は嫌いじゃないよ』
『それが男ってものだろう? 時間稼ぎをさせてもらうぜ、先輩!』
 <クラッシュテイル>を受けて破壊されつつも綾は阿修羅を振り払い試作型「スラスターライフル」で対抗を始める。
 暗がりの中で火花が飛び散り星の瞬きのようだった。

●Interval・?
「皆聞いているか? 二時間目のインターバル実況の時間だぜ。開始二時間では交戦するゴールに向かって動く人、待機する人の3タイプに現在分かれているぜ」
 作戦開始から二時間が経過し、日本では草木も眠る丑三つ時とも呼ばれる時間だが宗太郎の熱い実況は続いている。
「星の数は楓姫選手が2つ、フィー選手が2つ、ヨネモト選手が2つ、カルマ選手が2つという状況だ。各自狙いを定めるなら今かもしれないぜ?」
 ジャミング中和装置のあるスカイスクレイパーのレーダーと選手の中でもカメラをつけた有志から送られてくる映像を整理しながら宗太郎は状況を伝えた。
「ワームの反応はないようだが、気をつけろよ! では、次のインターバルまで!」
 ラジオのDJのように軽快なノリのままに実況は終わる。
 次の戦いが始まった。

●A Melee
『さぁ、カップルよ。お前たちの罪を数えろ』
「‥‥残念だけど‥‥そうゆう関係じゃないんだよ‥‥ホントに」
 着陸してアンジェリナに星を渡そうとしていたカルマの前にシロウの雷電が姿を見せる。
 まだ夜は深く、合流の目印に開けた場所を選んだのがネックになった。
『今のところ空を飛んでいるのはお前だけだ、それにあの放送を聴いたのなら警戒されてもしかたない』
「それはそうだけど‥‥」
『立ちはだかるなら相手をするのみ、全力で潰すぞ』
 星をカルマに返したアンジェリナはそのままミカガミを使って白銀の装甲に包まれている雷電へ間合いを詰める。
『少年君、援護を頼む』
『にゃー、こっちはそれどころじゃないにゃ、今アンジェリカn‥‥』
 クールに援護要請をしたシロウだったが、肝心の味方の白虎はキョーコにボコボコにされたようで通信が途絶えた。
『余所見をするとは迂闊だな!』
 ミカガミの手に持つ金属筒から超圧縮されたレーザーブレードが飛び出し雷電の装甲を斬り裂く。
『かなり積極的っ、これが愛なのか!?』
「だから違うといっている‥‥」
 怯む雷電に向かってカルマが47mm対空機関砲「ツングースカ」を続けて放った。
 シロウの雷電はその巨体似合わず複数のブースターを使い攻撃を避けようと動く。
『バレンタインのときといい‥‥同じ男として情けない‥‥滅びろ』
 だが、アンジェリカの練剣による光りを頼りに近づいてきた清四郎が機爪「プレスティシモ」を使ってシロウのブースターを破壊した。
『何とぉ!? その声は独男の清四郎! 同じ”シロウ”と名がつく同志なのに何故!?』
『答える必要はない‥‥貴様の星を奪わせてもらうぞ‥‥俺には時間がない』
 ヨネモトと戦闘をして奪われた清四郎は三時間のタイムリミットを抱えて戦っているのである。
『悪いがこちらもシロウの星が必要だ。渡すわけにはいかない』
 シロウから奪おうとした清四郎にアンジェリカが立ちはだかった。
「大人しくしてくれ、不利な状況であることはわかっているだろう?」
 カルマが狙いを清四郎に変えてツングースカを向ける。
『悪いが最後の笑うのは俺だってな。そーらよっ!』
 清四郎がどこを狙うべきか迷っていたときカルマを覗いた3機を巻き込むG−44グレネードランチャーが放たれた。
 3機が纏めて吹き飛び、煙の中から九郎の雷電がブーストで加速しながら姿を現す。
 倒れているシロウの星を奪おうとするもシロウが抵抗して距離をあけた。
『ちぇっ‥‥簡単にはいかないか。アンジェリナ、おまえとは一度戦って見たかったんだよな。俺と今の星を賭けて勝負しようぜ』
 九郎がアンジェリナに向き直るとシロウと清四郎は場所を変えて決着をつけるべく移動を始める。
「アンジェリナさん、無理をせずにここは退きましょう」
『いや、時間がもう無い‥‥逃げて次を待つよりここで奪う方が得策だ』
 アンジェリナはメアリオンを構えながら九郎の雷電に肉薄した。
『それに‥‥優勝できれば微笑みを見せたいからな』
 アンジェリナの小さな呟きは九郎との鍔迫り合いの音にかき消される。
「今なんと? いや‥‥そんなことより援護します」
 カルマはアンジェリナの呟きを気にしながらも目の前の戦いに集中するのだった。

●Interception
「こんなところにも落とし穴が‥‥誰が掘っているのかわかりませんが、シュールな光景が浮かびます」
 如月由梨は落とし穴を避けながら銃声などの騒がしい方向へ進む。
 銃声がしたり火花が聞こえるということは戦闘をしているということであり、敵もそこにいるということだ。
 ただ、入り組んだ地形でもあり川を避けていると右往左往と方向が定まらないでいた。
 不意にアラート音が響き、機体に衝撃が走る。
「くっ、何事ですか? ロングレンジ攻撃‥‥損傷は軽微ですか」
 すぐ様機体の状況を確認した由梨は一息ついた。
 だが、このままでは蜂の巣にされるのは眼に見えている。被害を受けた場所から狙撃地点を割り出し、近づく。
 隠れることなどしない、正々堂々真っ向からぶつかりにいった。
 近づいて行くと今度は二発別々の方向からスナイパーライフルの弾丸が由梨に襲い掛かってくる。
「どこからでも、何機でも、かかってきなさい。お相手しましょう」
 由梨が自らを鼓舞するように言った。
『ふむ、その強い気持ちは中々いいものだ。しかし、勝負は気合ではどうにもならないこともある』
 声に驚き振り向けば艶消漆黒のK−111改が背後に立っている。
 機槍「グングニル」が容赦なくディアブロに突き刺さり爆ぜた。
「まさか、あなただっとは‥‥ですが、退くつもりもないですよ」
 急所を狙っていた一撃を辛うじて避けた由梨は丁寧な口調ながらも不敵に笑い機刀「獅子王」を振りかざして斬る。
 由梨に厳しい一撃のお返しとばかりにUNKOWNの機体にも大きな一撃が代える。
『中々に楽しめそうだ‥‥』
 UNKNOWNが言葉尻を弾ませていると、雨が降ってきた。
 雨期である南米では昼夜問わずスコールは定期的に降ることがある。
「ここで、雨ですか‥‥」
 より不利になったことを悟った由梨だが、雨の中でも動いてくる機影があった。
『皆さん、ワームが来ました戦闘を中止して迎撃してください』
 駆けてきたのは井出の阿修羅であり、彼の言うように雨と共に物々しい音が聞こえてくる。
『一時休戦。ワーム狩りをするとしましょうか』
 悠季の声が由梨の耳に届くと銃声が響き爆発が起きた。
『仕方がないな。やるとしよう。まだ当たりは暗いから全方位に警戒を』
 アルヴァイムの声が続き、波長の届く範囲で味方に呼びかけを行う。
『戦闘をすれば敵が集まる‥‥だから、場所を選んだ方がいいといったのだがね‥‥未来残すべきテーブルマウンテンを守る方が個々の戦いより重要だ』
 UNKNOWNは言葉の端々に何かを含ませながら蛇行移動と共にワームへMSIマシンガンRをばら撒いた。
『勝負も面白いですが、こうして協力する方がらしいような気もしますね。如月さんも行きましょう』
 井出が由梨の損傷を確認すると共に戦うように呼びかけ、獲物を見つけた肉食獣のようにワームへ飛び掛っていく。
「足元に気をつけながらいきませんと‥‥」
 獅子王を杖のようにして立ち上がった由梨のディアブロは集まってくる敵機に向かうのだった。

●Hunting
「はぁ‥‥はぁ‥‥やはり無謀すぎましたわね」
 雨の振る中、レインコートを着こんだエリザはワームを竜斬斧「ベオウルフ」で斬ろうとするも相手はフォースフィールドを広げた体当たりをしてくるため逆に弾き飛ばされてしまっている。
 暗視スコープで相手が見えるといっても数を相手するには一人では無謀すぎた。
 エリザが戦うほどに敵の注意が注がれ、KVを守るために自らが無茶とも言える戦いに出なければならない。
 一頻り敵を追いかえすと雲上が少し明るくなってきたため、エリザは予定よりも早くシラヌイに乗り込んだ。
「逆襲いきますわよ。はぢめてのKV戦ですけど‥‥」
 シラヌイに乗り込んだエリザは血を流すエリザによってきた野良キメラに向かって7.65mm多連装機関砲をばら撒き駆逐する。
 団子虫のように転がってエリザを苦しめたワームも火之迦具鎚でぶん殴った。
 安定感のある使い心地に思わず笑みがこぼれる。
 ワームを片付け終えたとき、綾のディアブロが音を聞きつけて来たのか姿を見せる。
『さぁ、前座が終わったのならメインディッシュといこうか?』
「ワームよりは‥‥いい訓練になりそうですわね。いきますわよ」
 小細工無用とばかりにエリザは操縦桿を握ってシラヌイをディアブロへと突撃させた。
『こっちへこいよ、相手になるさ』
 試作型「スラスターライフル」を撃ちながらディアブロはキメラやワームがなぎ倒した場所から密林地帯へとエリザを誘う。
 視界が塞がっていくがエリザは高電磁マニピュレーターや火之迦具鎚でもってなぎ払っていった。
「直球勝負ですわよ。どんな障害とて叩き潰すのみですわ」
『即効でカタをつけなきゃならないか、いくよっ!』
 木々を払うことで動きの鈍ったエリザのシラヌイに向かって練剣「雪村」を抜き放ち二連撃で斬りかえす。
 腕と脚部を斬り払いシラヌイの動きを失わせた。
「お見事ですわ‥‥ワームとはやはり違いますわね」
『じゃあ、こいつは頂くよ』
 エリザの機体から星を獲得した綾がその場を離れようとするとセミーサキュアラーを持ったベルディットのロジーナが立つ。
『次の戦いに行きたきゃあたいを倒していきなってね?』
『ナパームレディか‥‥アンタとは一度ガチでやってみたかったんだ。』
 目の前の強敵に対して、綾は弾みをもった声で答えた。
『じゃあ、いっちょ死合おうかっ!』
 ベルディットのロジーナがセミーサキュアラーを盾にしながらタックルをしかける。
「元気ですわね‥‥折角ですから、一休みにいたしましょう」
 もはや動けないと悟ったエリザは観戦モードに入り、コックピットに入れておいたお茶とお菓子を食べ始めるのだった。
 
●Sniper
「たまには姑息な手段を‥‥な」
 午前三時を越えた頃、8.8cm高分子レーザーライフル――通称アハトアハトを使いヴァレスは狙撃している。
 振っていた雨も収まりうっすらと空の色が黒から変わってきていた。
 視界の先では大地のビーストソウルがいるのだが、レーザー光は明後日の方向にばかり飛んであたらない。
『ハァイ、この子の相手をしてもらえるかしら?』
 ヴァレスの放ったアハトアハトの光りを頼りにしてきたアスカの迷彩塗装のシュテルンが背後から試作機槍ガンランスで貫きに出た。
「撃ちすぎだったか‥‥すぐに場所を変えればよかったな」
 迂闊と己をせめても仕方なく、攻撃を受けたヴァレスのシュテルンが体勢をゆるがせる。
 刺突に続いた砲撃でよろけたヴァレスのシュテルンから目的の星だけを奪おうとしたアスカだがヴァレスの方が逆に星を奪いとった。
「こんなところで負けられないからな‥‥」
 ヴァレスが奪いとりながら、立ち上がると周囲の物音が激しくなる。
『狩りの時間だ‥‥見つけたぞ』
『耳とカンを頼りにきて正解でしたね』
 西島の阿修羅やクラークとレオノーラのペア機がヴァレスを囲みだした。
「‥‥ここは一度逃げさせてもらうか。決戦までは落ちるわけにもいかないからな」
 <垂直離着陸システム>を使ったヴァレスのシュテルンは空へと上がり薄明かりの中を飛んでいく。
『待ちなさいよ、私の星は返してもらうわよ』
『あちらは逃げたようだが‥‥』
『俺たちはぶつかるのみだな‥‥』
 ヴァレスを追いかけるアスカを見送った西島と楓姫は互いに向かい合って攻撃態勢をとった。
『面倒でない戦いは‥‥好きだ』
 西島の阿修羅はストライクファングの小型ブースターを発動させながら楓姫に飛び掛る。
『負けられないさ、こっちもな』
 腕試しを決めている楓姫は全力で迎撃するのだった。
 
●Interval・?
「グッドモーニングだ。ただいま南米の夜が明けた六時の報告をするぜ! この時点で動きが大きくあった」
 宗太郎のレポートが入る。
 戦闘の激化は展開の速さを示し、昼の12時より決着は早く着くのかもしれなかった。
「まずは残念ながら失格者の発表だ。清四郎選手、大地選手、沖那選手とフィー選手、アンジェリナ選手、ベルディット選手、エリザ選手、由梨選手の失格が確定した。残念だが、勝負の世界は非情ってことだな」
 星の喪失による時間切れや機体に再起不能などにより動けなくなったのである。
「現在の星は綾選手が5つと一番獲得しているぜ。花選手、九郎選手、ヨネモト選手、カルマ選手、ヴァレス選手、楓姫選手、クラーク選手が2つずつだ。最後の大掛けに出るかどうかはお任せだが積極的に動かないと勝ち目はないかもな?」
 参加者を煽るような言葉で宗太郎は実況を続け、試合の盛り上げに貢献した。
「今後の天気はまず晴れ、ワームの反応は前回の襲撃から反応はとき折りきているぜ。何があるかわからないが各自気をつけて試合を続けてくれ!」
 最後に一まとめで現状報告を済ませると宗太郎はボリュームを落とす。
 制限時間の半分を超えた戦いは最終局面へと傾きだしていた。
 
●MorningStar
「お腹が減ってちゃ力でないからね〜♪」
 やってきた白虎を迎撃したが、メインは競合地域のキメラやワーム狩りとしているキョーコはジャングルの朝をレーションと緑茶の朝食で過ごす。
 白虎の星は奪わず、落とし穴にそのまま埋めてきたので気づく人は気づくはずだ。
「さて、食後の運動といこうかな」
 キョーコは一息ついて機体を機動させて水中を歩き始める。
 ワームの襲撃があったのはゴール付近と中腹の森林地帯だ。
 ゴール付近の方が川が繋がっているためにそちらを目指して進むことにした。
 しばらく進むとゴール方面から銃弾が飛んでくる。
「っと、何だい!?」
 飛んできた銃弾はそれるが狙っている相手がいるのは確かだ。
 開けた場所であり、狙いやすい場所にいるのは仕方ないが御免蒙りたい。
「狙いはワームの排除なのにさ、邪魔だけはしてもらいたくないもんだよ」
 キョーコが水中に身を沈めながら銃弾から身を避けていると水中で鈍く光るものを見つけた。
「ワーム? ‥‥いや、何だあれは!」
 キョーコが驚くのも無理は無い、光るものは巨大な目であり、その目はKVの胴体についたものである。
『オマエハ‥‥ハヤイノカ?』
 低く沈む声が目の着いたKV―外観からすればイビルアイズだが、生体を思わすパーツが多く異様なもの―から聞こえてきた。
「早い? 何をいってるんだい、だけど‥‥鹵獲KVだってんなら容赦しないよ!」
 高分子レーザークローを発生させたキョーコはそのまま目の前のイビルアイズへ戦いを挑む。
 黒い悪魔のような姿へと生まれ変わったイビルアイズの目からレーザーが迸った。

●A Duelist
「さぁてと、そろそろ本腰を詰めて相手をしてもらうとするか」
 7時間という試合時間を経過してきて、疲労が九郎を襲いはじめている。
 身を隠して期を見て攻める戦法をとっているため多少は押さえられているとしても、残り5時間を戦い続けるには厳しさがあった。
 ならばと狙いは戦いたい相手‥‥アルヴァイムに絞り九郎は動く。
 だが、その前にやらなければならない相手がいるようだ。
『こちらとしてもそろそろ本腰入れないと優勝が厳しいからね』
 狙撃で美味しいところを狙おうとしていた周防が戦いで被害の多い九郎へ接近しての星の確保を狙ってくる。
「そうはいかないなっ!」
 対抗しようとした九郎だが、足場の悪さにバランスを崩し折角確保した二つの星を奪われる結果となった。
『ご馳走様っと』
「っつぅ‥‥やられたな。だが、お互い危険なポジションに来たことになるぜ?」
 九郎が苦笑をするとゴール地点付近から銃弾の雨が飛んでくる。
『まいったね、やりたくない相手から攻撃されているみたいだ』
「そうか? 俺はどちらかといえばやりたい相手だよっと」
 雷電を起き上がらせた九郎はセミーサキュアラーを盾のようにして狙いの相手であるアルヴァイムに向かってブーストを使っての突撃をしにいった。
『それじゃあ、星をご馳走になったお礼にこっちもちょっと相手をしにいきますかね』
 周防はIRSTに反応している機体のうち、花のものを察知すると煙幕を放ちジャングルの中を走らせる。
 シールドで身を隠していた花のウーフーへ周防のワイバーンが迫った。
 自動攻撃バルカンでもあるファランクス・アテナイが作動し、5.26mm弾が750発放たれる。
『マイクロ・ブースト作動!』
 ワイバーンの<マイクロブースト>による小型ブースターが作動し、一気に加速しながら銃弾を弾きながら剣翼で斬り込んだ。
 ストライクシールドが一撃で亀裂が入り、花はいきなりピンチに立たされる。
『え、えっと〜おかあさ〜〜ん!』
 花が大きな声で叫ぶと艶消漆黒のK−111改がものすごく速度で周防の方へと迫ってきた。
『星を奪っておきたかったけど、逃げるとしますかね。いや、ホントにまいったね』
 分が悪いと感じた周防は更にブーストをかけて漆黒の悪魔から尻尾を巻いて逃げ出す。
 時には逃げることも生き延びるために必要なのだ。
 
●Climax
『さぁて、朝の9時だ。二時間ごとではないが今回の実況は決戦宣言のためにさせてもらうぜ。現在のトップは鹿島選手で6つだ。7つ目のリーチもかかったので他の選手への逆転を兼ねて俺から宣言させてもらうぜ』
 作戦開始から9時間がたったところで宗太郎の実況が割り込んでくる。
 ルールでは決められていないのだが、参加者による協定で星を全てかけての最後の大勝負をしようと打ち合わせをしていたのだ。
『最後の大勝負といきましょうか。レオノーラ』
『二人で合計3つなら、やらないと損ね』
 通信を聞いていたクラークは相方に声をかけながらゴール前の開けた戦場へ向かう。
 近づくものへの狙撃は無く、漆黒のK−111待つだけだ。
『でははじめようか、最後の戦いを』
 ホストのように出迎えたK−111がMSIマシンガンRをばら撒く。
「先に切り込みますから、援護を頼みます」
 クラークが照明銃をあえて撃ちこんで目くらましのようにすると、加速した。
 ガドリング砲「嵐」を撃ち込み、チャンスを狙う。
『おっと、奥様の方は私が相手になりますよ〜』
 動き出そうとしたレオノーラ機の脚部に向かってヨネモト機の試作「スラスターライフル」が撃ち込まれた。
『横からっ、援護はちょっと厳しいわね。アッチの相手をしてくるわ』
 脚部への被弾をものともせずレオノーラ機は<PRMシステム>を起動させ知覚を高めながらレーザーガドリングでもって反撃を行う。
 クラークのほうはUNKNOWN機へ不意を着いた一撃を見舞うものの次へと繋げることが出来ずにいた。
『派手に皆やっているようだ』
『ですから、お互いやりあいましょうか』
 立ち回りが上手くいっているのか順調に星を獲得してきた楓姫のバイパーが戦場へ来ると井出の阿修羅が相手どる。
『相手にとって不足はないな‥‥勝負』
 楓姫のバイパーが<ブースト空戦スタビライザー>を使って井出機へとドミネイターを繰り出した。
 瞬発力とブースターをたくみに使い、井出機は攻撃を避け、カウンターとばかりにMSIバルカンRを返す。
 空中ではヴァレスとカルマのシュテルン二機が地上の疲弊を狙いながら空中戦を仕掛けていた。
『ペアのアンジェリナさんの分まで俺ががんばらないといけないからな』
『最後の勝負、全賭けで行かせてもらう!』
 一気に攻めにでるヴァレス機だったが、カルマ機に装備されていたファランクス・アテナイの攻撃で自慢のソードウィングで踏み込むチャンスを逃しがちになっている。
『止まっていたら当たるぞ』
 カルマ機から多目的誘導弾が発射され、ヴァレス機に直撃した。
『まだまだっ!』
 ヴァレス機はバランスを崩すも持ち直し、ソードウィングをカルマ機への胴体にねじ込む。
 機体性能はほぼ同じため、動きの一つ一つで勝負が決まる状況だ。
『くっ、ミスったか‥‥しかし、ただではやられない』
 ソードウィングが刺さったままカルマ機は無理やり着陸態勢にもっていきながらヴァレス機に大してツングースカを近距離で叩き込み続ける。
『少年君の姿は見えないが‥‥それでもこちらの動きはかわらないか』
 シロウは戦場の手前で白虎の姿を探すが見えないところを見ると失格になったのだと悟った。
『友情は!』
 大きく合言葉を叫ぶも、どこからも返事は来ない。
『絶望した! 今の傭兵に絶望した!』
 シロウは孤独な独身男としての戦いを大きな叫びと共に宣言するのだった。
 
●Finish
「新型? こんな相手が来るなんて予想外ね。予定通り集中攻撃に移るわね」
 悠季が愚痴ったのはキョーコが戦っていたイビルアイズが迫ってきていたからである。
 狙撃を避けて水中から巨大な目を光らせながら中距離ラインへ入った。
 水中用ガウスガンを牽制射撃で撃ち出すがまったく効いていない。
 胸部の目が一瞬光ったかと思うと水流が起こり悠季のアルバトロスを押し潰そうと襲い掛かった。
「アル、援護の用意をお願い。地上に出るわ」
『そうもいってらないな‥‥どうも離してくれそうな相手ではない』
 悠季がアルヴァイムに援護要請をするも、アルヴァイムは目の前の九郎相手に苦戦している。
 装甲の硬さに自信があるものの決定打が無いため、引っ付かれては援護に出ることもままならない状況だ。
『私が行こう、どれほどの相手がいようとも優先順位があるからね』
 戦っている最中だというのに、自らのペースでUNKNOWNは動き、悠季の援護に回った。
 漆黒のK−111と悪魔のようなイビルアイズがぶつかりだす。
『悪いけど、最後に笑うのは俺だ‥‥』
 星を9つ集めた綾が煙幕とブーストを使って空を飛んでゴールポイントへと向かった。
 着陸態勢時に変形して滑り込むようにして綾が着陸する。
『綾選手、一着でゴールイン! だが、まだ試合はわからないぜ!』
 着地と共に宗太郎が大きく宣言をしたとき、悪魔のようなイビルアイズは戦闘をやめて後退した。
『ソウカ‥‥ハヤサデマケタカ‥‥』
「何なの?」
 悠季の疑問に答えず、低く沈む声を残して悪魔のようなイビルアイズは水中へと潜り姿をくらましていく。
 波乱の試合に一つの決着が着いた瞬間だった。
 
●The Winner
『優勝は鹿島綾選手だ。一人でよく戦ったぜ、おめでとう!』
 KVの実況を終えたのだが、ヒートアップの続く宗太郎はマイクを持ちながら司会進行まで買って出ている。
「お疲れだ、映像を見ていたがいい試合だったぞ」
「ん‥‥やっぱり強かった‥‥負けても、楽しかった」
 試合を見ていた清四郎やフィーが拍手で鹿島の勝利を祝った。
 途中敗退ではあったがやれる限りやった戦いに満足そうである。
『本当におめでとう。ところで、ベルディットさんよ。バイト代ってないのか?』
 拍手を贈られる綾に再度祝辞を贈った宗太郎は話をかえるように顔をベルディットの方へ向けた。
「なんだい、バイト代が欲しいのかい? 仕方ないねぇ‥‥」
 ベルディットはにやけながら宗太郎の隣まで行くと突如宗太郎をハグして唇に熱いキスをする。
「うわっ! 何やってるんだよー! ボクの宗太郎君をカエセー」
 熱いキスを受けて顔が青ざめる宗太郎を救おうと花がベルディットをバシバシ叩いた。
「そうだな、息子にキスをするのは母親の役目だ。赤いの私に変わりたまえ」
 UNKNOWNが冗談とも本気ともいえない顔で3人の傍に近づく。
(「どうでもいいけど‥‥はやく、たすけ‥‥て‥‥」)
 遠のく意識の中、宗太郎は助けを呼ぶのだった。