●リプレイ本文
●新たなる力と力
「イーグル3よりイーグル1、大尉を殴った先輩から伝言っす。以前は済まなかった、だそうっす」
『イーグル1よりイーグル3へ。俺は気にしちゃいない‥‥なので、目の前の敵に集中しろ』
三枝 雄二(
ga9107)からの通信に答えたジェイド大尉は迫り来るレ−ダーの点を見ながら動く。
『新たな翼が空を舞うに、無粋な客じゃのう‥‥わしらが完全に退いたら基地への影響が心配じゃのぅ。イーグルワン、イーグルスリー。軍が参るまで多少退きつつ如何にか凌ぎきろうぞ』
飄々とした口ぶりで演歌を流し秘色(
ga8202)がジェイド機に続いた。
3人が乗っているのはRF−15の試作機であり、複合装甲や試作M3帯電粒子加速砲などの装備が整えられたバグアに対応できるように強化されたF−15なのである。
『性能があがっているとはいえ、お前達の使うKVよりは下になる。油断だけはするなよ』
「イーグル3、了解‥‥反転します」
『ふむ、こういう場合はイーグルツーというべきかの? じゃが、追いつかれてしまいそうじゃ』
行動に移ろうとする3機だったが、音速をだす機影がすぐにその姿を現した。
『仕方ない、お前達はそのまま撤退。俺が多少ひきつける』
一つだけ突出してきた機影に向かいジェイド機が機体を傾けながら飛び上がる。
『無茶をしおる。さすがに3機で4機‥‥しかも噂のラプターが相手じゃとはな』
撤退を指示された秘色は牽制とばかりにホーミングミサイルを発射し、反転行動に移った。
「まずは撤退っすよ、秘色さん」
自分の感覚と違う動きに少し困った雄二ではあったが、生存とまた基地にいる味方への誘導も兼ねて逃げの方向にでる。
グリフォンから遠慮なくバルカン砲が飛び、雄二はGを受けながらもスライスバックにより回避した。
『遅れました、厄介な客人にはご退場願いますば!』
刹那、守原有希(
ga8582)の声と共に8式螺旋弾頭ミサイルが発射される。
先端にドリルのついたミサイルが雄二を追いかけていたグリフォンに喰らいついた。
「味方迎撃部隊の離陸を確認、反転し戦闘に入る」
出撃を確認した雄二は調子を取り戻し逃げの姿勢から攻勢に映る。
『折角もってきましたので、こちらも撃たせてもらいますよ』
続いて到着した白岩 椛(
gb3059)のロジーナからK−02小型ホーミングミサイルが放たれ、空を煙にて覆うのだった。
●戦線復帰
「‥‥まったく、腐れ縁もここまでくると最早呪いの類かと思うぞ、マジで」
『運命とかそういう方面に取ればそれほど恐れることでもない‥‥まっとうに話す機会もなかったから空”ここ”で語り合うのも悪くはない』
『ピンチではなくチャンスです。交戦経験が多くなっていけば、いつかは落とせます。だから行きましょう』
ため息交じりの呟きをするゲック・W・カーン(
ga0078)をジェイドと音影 一葉(
ga9077)は宥めるとラプター目掛けて加速する。
空を翼がきり、雲が浮かび上がった。
『新たなイーグルを生み出したか‥‥目ざわりだ、合わせて潰させてもらう』
”グリフォンライダー”は力強く叫びミサイル群へと突っ込む。
K−02小型ホーミングミサイルをピンポイントで強化されたフォースフィールドで防ぎながら爆発の中を突っ切ってきた。
『真っ直ぐに突っ込んでくるかー。ほな、こっちもグリフォンを散開させよか』
『RF−15の新たなる門出をこれ以上邪魔させる訳にはいきませんから。速やかに退散頂きましょうか』
ラプターに続き、迎撃レーザーで被害を減らしつつ突破してきたグリフォンに三島玲奈(
ga3848)と榊 刑部(
ga7524)がロッテを組み、突破してきた一機のグリフォンを散開させるように喰らい付く。
玲奈の雷電は搭載されたスナイパーライフルD−02とスナイパーライフルRを交互に撃ち、リロードをかけて榊のミカガミが接近する隙を作るべく奇襲をかけた。
だが、グリフォンの表面から迎撃レーザーが飛び艦砲射撃にも匹敵するライフル攻撃を迎撃して被弾を減らす。
『反応が早すぎるのも考えようですよ』
ライフル弾を迎撃していたグリフォンの真横からミカガミがソードウィングで斬りかかり、切り裂いた装甲の中へとR−P1マシンガンを連射して確実にダメージを与えだした。
グリフォンとか何度も戦いあってきている榊ならではの戦いかたでもあった。
しかし、敵は落ちず、迎撃レーザーがすぐさま飛び交い、ミカガミを貫く。
『計器に異常発生。この攻撃もですか』
接近しすぎては危険と悟った榊機がすぐに距離をとって戦闘を続けだした。
「ただのグリフォンもますます化け物じみてきやがって‥‥大尉、近づきすぎずに戦え‥‥いや、ラプターから来るぞ!」
ゲックが周囲の戦闘を気にしつつ『試作対バグアロックオンキャンセラー』を発動させる。
ラプターの腹部に一瞬だけ空間の歪みが出現したかと思うと歪みが一直線に飛んできた。
ジェイド機と一葉機はゲックの声に合わせて散開し、再び集まる。
『先手を取られはしましたが、こちらからも攻めさせてもらいます。前回は避けなかった乗り手のミスですから‥‥』
静かに一葉は言葉をつむぎ、そしてUK10−AAEMを発射できる限り発射し、ブーストをかけた。
飛んでくるミサイルを受け止めようとしたラプターだったが、爆発したのは火薬ではなく高エネルギー体でありピンポイントで張り出したフィールドを貫いて被弾する。
『くっ‥‥さすがに同じことを何度もする馬鹿ではなかったか‥‥だが、今日の相手は貴様ではない』
一発を受けたラプターは残りを急旋回やアフターバーナーによる加速で回避し、ジェイドの乗るRF−15へと向かっていくのだった。
●光り、煌く‥‥
「魔眼持つ鷹ば侮るな! 三枝さん、そちらに追い込むんでよろしく」
ゲック機との兼ね合いを考え、残練力との調整を考えながら有希はP−115mm高初速滑空砲で分散して攻めて来るグリフォンに攻撃を仕掛ける。
『了解! イーグル3、エンゲイジ!』
下から腹を狙うように放たれた砲弾を避けたところに雄二のRF−15が交戦のために間合いを詰める。
『ビーム砲のコールがないので、仮称でバスターとする。各機注意されたしっ! イーグル3、バスター!』
RF−15の背中に搭載された射程距離の短い二門式の試作M3帯電粒子加速砲が光った。
まばゆい光りが放射され、グリフォンの装甲を焼く。
「ミサイルやバルカンよりかは効果がありそうですな‥‥このままならばやれますぞ、希望有らしめる為生まれ変わったイーグルならば!」
しかし、グリフォンの勢いは緩まずレーザー砲をRF−15に狙いを定めて放った。
多少でも『試作対バグアロックオンキャンセラー』の効果があるからかレーザーの攻撃をすんでのところで雄二はかわす。
『攻撃するのはいいが、基本性能として厳しい‥‥油断はできないですね』
「お互いが支援しあえれば乗り切れるはず。これを受けるがよかっ!」
バグアの手により改造されたF−15にそこそこ追いつき始めているRF−15の性能に雄二は関心しつつもまだまだ改良の余地があることに気づき、気持ちを入れなおした。
雄二が追い込まれ無いように、ここぞとばかりに有希が8式螺旋弾頭ミサイルを放ってグリフォンの気をそらせた。
『わしらも負けてはおられんの。援護を頼むぞ‥‥そーれ、これでもくらうがよい』
『了解です』
椛機によるK−02小型ホーミングミサイルでの弾幕の間に空中でループを描いていた秘色機は降下をしながら試作M3帯電粒子加速砲からバルカンへと攻撃を変えて上から下へと交差する。
迎撃のレーザーも戦闘機パイロット顔負けのブレイクやヨーヨーなどのマニューバでもって全力で回避をし、その間に椛機がMSIバルカンRなどでもって体勢を立て直すための援護を行った。
『もう一発、いきます‥‥ストームブリンガー発動』
『ストームブリンガー』を使って命中精度を上げ、追い討ちをかけるかのごとく飛び回るグリフォンに向けて再びミサイルの雨が放たれる。
対象の余ったミサイルは逃げ道を塞ぐように飛び、迎撃レーザーでも追いつけないほどにグリフォンを包みこんだ。
連続的に爆発が続き、戦闘空域に煙が立ち込める。
『グリフォン硬い硬いというけど根性でカチ割る、併せ技でトドメをさすでー、榊さん』
『バグアの改造機相手に喰らいつけないほど自分のミカガミはやわな鍛え方をしていませんからね‥‥ここらで退場してもらいましょう』
玲奈の合図に合わせて榊が煙の中で動くグリフォンを見据え、仕掛けた。
玲奈の雷電より放たれる試作リニア砲と榊のミカガミから繰り出されるR−P1マシンガンがグリフォンの装甲を穿ち、ついには撃墜へと追い込む。
「一機撃墜のようですな、残り2機‥‥しまっていきましょうぞ」
残り2機の弱ったグリフォンを倒すべく、有希が雄二と共に動いた。
『了解‥‥、イーグル3、FOX2!』
雄二のRF−15はホーミングミサイルを放つと戦闘を続ける。
勝負の行方は能力者側が優勢となっていた。
●威力偵察完了?
「自分で獲物としておいて、ここでスルーするなんて釣れないですね」
『慣性制御』による変則的な軌道を描いてジェイド機と交戦を開始するラプターに少々苛立ちを感じながらも一葉は予定通りゲックと共に交戦を開始した。
かなりの経験をつんだ能力者と改造されたKVでも苦戦する相手の攻撃をジェイドは一歩先を読むようにして避け、後ろを取っては試作M3帯電粒子砲の一撃を当てて離脱という流れを繰り返す。
『長年連れ添ったパートナーだから動きが読めるのか、さすが戦闘機だけで今まで生き残った人だぜ‥‥』
「悠長なことを言っていないで援護をしましょう。こちらが癖を読めるのならば、グリフォンライダーとて大尉の動きを知っているはずです」
それでもあえて攻撃を受けるには何か理由があるのか一葉は考えたが頭を振って消す。
余計な事を考えている時間はないのだ。
ローリングをしてラプターとの距離を考えながらG放電装置の射程圏内に敵機を捕らえた一葉はトリガーを引いた。
眩い光りがラプターを包み込んで被害を与える。
『そら、こいつも喰らえ』
一歩遅れてゲック機から放たれたミサイルがラプターに続けて叩き込まれ、動きが固まった。
「貴方の動き‥‥見切らせてもらいましたよ」
『これでどうだっ!』
そのまま追い討ちをかけるかのように2機がスナイパーライフルやM−12強化型帯電粒子加速砲 で攻撃をする。
空中で動きの止まっていたラプターはどちらも受けて機体のところどころから煙を出しながらも反転した。
『目的は達成した‥‥いずれ、その翼を奪いにくるからそれまで覚悟しておくのだな』
グリフォンライダーはそういい残して空域を離れ始める。
残りの敵機は味方によって撃墜されたため、撤退したのはラプターだけだ。
「ここで勝負が付けられるとは思っていません。所詮今日は実験‥‥次は戦場でお逢いしましょう」
去り行くラプターを目でおいながら一葉は呟く。
『大尉も無事で何よりだぜ。一機も落ちずにすんだのなら性能としてはいいんじゃないのか?』
『いや、ジェニスは俺を試していたんだろうな‥‥落とそうと思えばいつでも落とせたがあえてそうしなかった気がする』
『機体も中身も無事であるならそれでいいじゃないか。元々テスト飛行だろ?』
『そうだな、各自周囲を警戒したまま軽く飛ぶぞ』
ゲックとジェイドは言葉を交し合い、そのまま本来の目的に戻りはじめるのだった。
●飛行試験
「スリリングな初フライトじゃったが、仕切り直しじゃな」
秘色はジェイドの後ろに付きバレルロールやループなどのマニューバを試しながら、気持ちよさそうに空を舞う。
ついさっきまで戦闘があったとは思えないほどに空は青く、そして広かった。
『グリフォンに対しての戦闘記録は貴重です。できれば、コピーをUPC北中央軍にも提出したいですけど‥‥』
戦闘中メモを取る余裕のなかった椛は覚えている限りのことをフライトレコードに音声として記録しなおす。
RF−15もバグアの改造兵器相手にそこそこ戦い続けられることが証明された。
「実戦データの方が普通の飛行記録よりおおそうじゃの。これからの量産や改良に使って欲しいものじゃ」
お気に入りの演歌を流し、口ずさむ秘色は被弾箇所のチェックや残燃料などを確認しだす。
『イーグルをここまでよく改良してくれたっすね。こいつが10年前あれば‥‥』
『10年前あったとしても、人間が機械に使われているようじゃ結局勝てる相手ではない。どこまで腕とかでカバーできるかだが‥‥くっ』
雄二の呟きに大して答えようとしたジェイドが突如痛みを声に変えた。
「大丈夫かの?」
『どうやらアバラをやったようだ‥‥能力者なら耐えれるかもしれないが、一般人ではこいつのポテンシャル全てを発揮させるのは厳しいな』
『まだ、改良する必要はありそうすな。乗れるものが少ない機体では量産する意味がなかとです‥‥』
バランスを崩すジェイド機を守るように有希機が付いて基地まで共に飛行する。
「能力者は1000人に1人の逸材じゃ、まだまだおぬし達一般人の力が必要になってくるのじゃな」
秘色がジェイドを心配しながらもRF−15の今後に期待をした。
青く広がるアメリカの空で新たなイーグルが飛び立つ。
今は静かなこの空が嵐の前触れのようだった。