タイトル:【Tr】トラック野郎マスター:橘真斗

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/06/16 04:25

●オープニング本文


●メルス・メス本社整備工場
「いやぁ、おやっさん。おめでとう、LBR−44のクローラーがコンペティションにかけられるようになった」
 胡散臭さ漂う白スーツでリカルド・マトゥラーナは帽子を片手であげてゴンザレス・タシロへと挨拶を行う。
「リカルドか‥‥てめぇの腕がなきゃ恐らくお蔵入りのままだったろうよ。もっともフルトラクタータイプに設計変更しなきゃならなかったけどなぁ」
 ゴンザレスはクマのはっきりした目でで出がらしコーヒーに鯵サンドを食べながらリカルドを出迎えた。
「はっはっはっ、それくらいは朝飯前だろう。今丁度朝飯を食べているところだ。日本はいいことわざを持っているもんだ」
「ふざけてるぜ‥‥」
「阿附ふー、ちょうちょがみえるでやんすー」
 お気楽なリカルドを他所に最終調整のために徹夜をしていたJJとマローナ・ドランツは疲労と心労で生死の狭間をさまよっている状態である。
「ギリギリ2台は調整できたぜ。仕様変更もあったが、それでも売れるようにとソッチが注文をつけたからハイリガーファウスト改もつけたしな。ただ、支援機としての性能は大分さげちゃあいる」
「ブラボー! さすがメルス・メス社のおやっさん。そこにしびれる憧れる! これ、ラストホープの流行語だよ」
「わかったから静かにしやがれ‥‥で、場所とかの連絡にきたんじゃねぇのかよ」
 頭痛が来るのを押さえ、ゴンザレスはリカルドに話を進めるようにうながした。
「おおっと、そうだった。そうだった。場所は北米のゴーストタウンを利用するよ。南北に部隊が分かれ、新型を含めた北の人類側が南のバグア側に扮するアグレッサー部隊を倒せればOKだ」
「ほう、なるほどなぁ‥‥」
 二杯目の薄いコーヒーを飲みつつゴンザレスはリカルドの説明を聞く。
「基本的には市街地で隠れる場所も多い。クローラーの輸送能力を試すにもいい場所だろう。ほろをかぶせて荷運びトラックに見せかけることも可能だ」
「クローラーの試験としては丁度いいってぇことか」
 コーヒーを飲みきるとゴンザレスは鈍くなった頭を戻した。
「そういうことさ。現地でお膳立てはしておくので、当日までにクローラーを運び出すのは頼むねぇ〜。アディオス」
 リカルドは帽子をかぶりなおすとひょこひょこ上体を動かしながら整備工場を後にする。
「当日までって‥‥明後日じゃねぇか‥‥おい、JJ! マローナ! あと二日残業延長だ」
 ふわぁと大きく欠伸をしてゴンザレスは次の仕事へと取り掛かるのだった。

●参加者一覧

リチャード・ガーランド(ga1631
10歳・♂・ER
勇姫 凛(ga5063
18歳・♂・BM
天龍寺・修羅(ga8894
20歳・♂・DF
キムム君(gb0512
23歳・♂・FC
鳴風 さらら(gb3539
21歳・♀・EP
エミル・アティット(gb3948
21歳・♀・PN
ミリー(gb4427
15歳・♀・ER
フィー(gb6429
12歳・♀・JG

●リプレイ本文

●対抗意識
「ついにおやっさんの夢が完成したか‥‥けど、人気ないみたいだね?」
 最終チェックを行っているクローラーを眺め、リチャード・ガーランド(ga1631)はゴンザレスに尋ねる。
「うるせぇよ。浪漫なのはわかるぶん諦めきれねぇよ‥‥」
 コンペティションに参加している別の機体の一覧を眺めゴンザレスは息をついた。
「陸戦機っていいわよねぇ。ゼガリアもいいけど、こういう戦闘以外の能力を持ったのもいいと思うわ。たっぷり見させてもらうわよ」
 愛機であるリッジウェイの調整を終えた鳴風 さらら(gb3539)もクローラーの横に立ちディアブロの積み込み作業を眺める。
「さぁ、新型テストを や ら な い か!」
 積み込まれているディアブロのパイロットであるキムム君(gb0512)はツナギにバンダナという格好でゴンザレスへ詰め寄った。
「なんだよ、その格好は! ふざけるのもいい加減にしてくれよ」
「え、だってリカルドさんもニッカポッカに鉢巻じゃなですか」
 キムム君がリカルドを指差すと、そこには言葉どおりの格好で団扇を仰ぐリカルド・マトゥラーナ(gz0245)がいる。
「いやぁ、これが日本の夏を乗り切る格好だと聞いたからねぇ?」
「ここは北米だばっきゃろぅ‥‥」
 深いため息をゴンザレスはつきだした。
「そろそろ作戦を詰めないか? 私にいい考えがある」
 ゴンザレスが呆れていると、ミリー(gb4427)が腕を組み胸を目立たせるような姿でふふんと鼻を鳴らす。
 決まったといった様子のミリーが主導となり、作戦会議に傭兵達は入るのだった。
 
●新型進軍、全力突破
「凛のハンドル捌き、見せてやるからっ!」
 勇姫 凛(ga5063)はクローラーを動かし、ビルの谷間を縫ってアグレッサー部隊のいる方へと迫る。
 橋頭堡の確保のため、動きを的確に決めていた。
『クローラーは他の4機と違って輸送性能に可能性を感じるな。ゼガリアと一緒に運用できればいいんだが、評価を得られなければ意味は無いな』
 最新鋭機であるフェニックスに乗った天龍寺・修羅(ga8894)は凛のクローラーを援護するように地を走りガドリングナックルにて牽制の攻撃を行う。
「そうだよ、戦車と比べて素早いところを見せてやるんだから」
 鉄橋などをくぐり、近づいていくとビルの上をジャンプして渡るワイバーンの姿が二機見えた。
『おおーっ、面白いことしてくるんだぜ!』
 エミル・アティット(gb3948)が驚いていると二機のワイバーンがビルの屋上から壁をけり、マイクロブーストにてクローラー目掛けて駆ける。
『おっしゃ、フィー。先に行くぜ! 背中は任せるかんな!』
『任された仕事‥‥きっちり‥‥こなす‥‥』
 迫ってくるワイバーンに向けフィー(gb6429)のナイチンゲールがガドリング砲を発射する。
 ガドリングの弾を避け、回避しようとするワイバーンをエミルの乗る阿修羅がフィンブレードで斬り裂いた。
『翼竜でこの不死鳥が落とせると思うなよ』
 修羅機がストライクシールドでタックルを受け止め凛やペア機へのチャンスを生み出す。
「行くよ、一番星‥‥トランスフォーメーション!」
 凛の叫びと共にクローラーはトラック形態から人型形態へと変形を追え、修羅機が食い止めたワイバーンへとナックル・フットコートのキックをお見舞いした。
 ガギィンと大きな音を立て、蹴りを受けたワイバーンはビルへとぶつかる。
「コンペで勝てるよう応援するために‥‥こいつの空手を見せてやるんだからなっ!」
 凛の思いと同調するかのようにクローラーの目は光り、格闘家のように構えた。

●インファイター
『さららさん、ミリーさん、目が覚めるまで、どうか頼みます』
 ウィンチでキムム君のディアブロが降ろされる中、さららとミリーは周辺の察知を行う。
「待ち伏せも無いのが逆に不安だわ。ここまでは作戦通りね、キムム君の戦闘起動が終わるまで警戒は怠らないで」
 木の多い公園のような場所で3機のKVは隠れて待機していた。
 味方の市街地からトンネルを伝って敵の市街地まで移動したのである。
『敵の機体で足が遅いのはリッジウェイ‥‥それに1機しかいないスカイスクレイパーは前には出ないはずですわ』
「狙いはそのへんあたりね‥‥アヌビスがどう動いてくるか‥‥」
 ミリーはレーダーで敵の位置を確認しながら呟いた。
『5分という時間もこうしていると長いものだわ‥‥来たようね、あと30秒もたせないと』
 ディアブロの再起動をカウントしていながらも警戒していたさらら機が近づくアヌビスを先に見つけヘビーガドリング砲の砲塔を向ける。
 狙いを定め放たれた弾丸が市街地を歩くアヌビスに向かうも、アヌビスはかすりつつも接近し、『フレキシブル・モーション』を使ってランスを使ってきた。
「これくらい受けて見せるさ」
 プロンプトシールドと『アクセルコーティング』を利用して攻撃を受け止め、ミリーはクローラーを駆けさせる。
「喰らえっ、アターック!」
 クローラーの特殊能力『ハイリガーファウスト改』が発動し、ドンドンと炸薬が弾けクローラーの機動力が高まった。
 両手両足のシリンダーに搭載された燃料タンクを瞬間的に爆発させたことで人間の筋肉のようにフレームが動き鋭いパンチを繰り出す。
 コーティングされた拳がアヌビスの胴体を殴り、よろめかせる。
『待たせたな‥‥悪夢、その目で見よ!』
 丁度そのとき、キムム君のディアブロが目覚め、立ち上がった。
『もう一機接近、撹乱作戦上手くいくといいわね』
 機体の向きを変え、クローラーや立ち上がりかけのディアブロを守るように動き、さらら機はもう一機のアヌビスに向かいヘビーガドリングを再び放つ。
『行くといいじゃない、させるのさ! 邪魔だ、散れ!』
 ディアブロからもガドリングナックルが撃ち出され、アヌビスへと追い討ちをかける。
 市街地を巡っての攻防戦が大きく動き出したのだった。
 
●激闘クローラー
「敵発見。牽制する!」
 二機のワイバーンを倒し終えたリチャードはそのまま橋頭堡の確保をしながら正面から敵陣へと攻め込む。
 MSIバルカンRとガドリング砲が互いに道路を飛び交い、進路を塞ぎだした。
 リロードタイミングで傭兵達は間合いをつめ、迎撃に続くアヌビスと肉薄する。
『基本は支援をしていく、トドメを持っていくんだ勇姫さん』
 リチャードとペアを組む修羅がフェニックスのヒートディフェンダーでアヌビスを斬りつけた。
 熱せられた刀身が装甲を抉り腕を落とす。
『任せてっ! 金色の眠りから覚めて、今必殺の‥‥ハイリガーファウスト改、何だからなっ!』
 ドンドンドンドンと連続して炸裂音が響くと一気に出力の高まったクローラーの手刀がアヌビスを頭から砕いた。
「危ないっ! リッジウェイからの砲撃だよ!」
 戦闘しているクローラーに向かって『試作高性能照準装置』を使ったスナイパーライフルD−02による狙撃が仕掛けられる。
 だが、その一撃をもディフェンダーに『アクセルコーティング』を使ったクローラーに阻まれる。
『いっくぜええぇ! ストライクゥ〜、ファアァァングッ!』
 阿修羅がクローラーの活躍を見終えたあとに阿修羅改でコンクリートジャングルを駆けて攻撃を仕掛けた。
 爪の先端の小型ブースターから火が飛び出し、加速度を持った一撃だったがリッジウェイの装甲からでは大きなダメージを与えることはできない。
『援護‥‥する』
 スナイパーライフルG−03を構えたナイチンゲールから砲弾が飛び阿修羅改の攻撃で傷ついた装甲部にあたり大きく機体が揺れた。
『ありがとうだぜっ! あとはクローラーに譲るんだぜ!』
『うん!』
 ディフェンダーを振りかざしたクローラーが袈裟掛けにリッジウェイを斬り無力化する。
 目の前の敵を排除すると手を振るミリーのクローラーの姿が見えた。
「来たな! これでド派手にいくぜ!」
 合流を果たした傭兵達はアグレッサー部隊と戦うために双方が敵機を目指して動き出す。
『おう、どんどんいくぜ〜』
『がんばる‥‥』
 詰めの作戦行動となるが、油断せずにエミル機とフィー機も市街地を動きレーダーの映る敵機に対応するのだった。
 
●追い込み作戦開始
「さて、と。テストだからって手は抜かないわよ!」
 さららが残りの敵機を確認して、合流を果たした味方機と共に確実に数を減らしに向かう。
 しかし、ワイバーンの2機が撤退の姿勢をとり始めていた。
 退路を援護するようにスカイスクレイパーが走りこみ20mmバルカンを確実に叩き込んでくる。
 さしたる威力は無いものの、牽制攻撃としては十分な効果をみせ、残ったリッジウェイ2機とアヌビス2機も固まりだして反撃の姿勢を強くみせだした。
『こうなったら総力戦ね。面白いじゃないのよ』
 橋頭堡の侵略を気にすることは無くなったため、敵地である市街地を制圧するだけでいいのならとミリーのクローラーが『ハイリガーファウスト改』で機動力をあげながら動きの遅いリッジウェイを狙っていく。
 凛のクローラーもリッジウェイを狙いにいき、アヌビスは他の味方で食い止める形となった。
『見えた‥‥そこだッ!』
 ディアブロがアヌビスに向かってディフェンダーを振るう。
 KVランスをもったアヌビスはそれを受け止め、もう一機のアヌビスが『ラージフレア・鬼火』によって傭兵達の攻撃をかわしやすくした。
『く‥‥厳しいな』
「それでも、確実に決めれるチャンスは逃さないわ」
『わかった!』
 ディフェンダーでディアブロの攻撃を受けているアヌビスにさららは機槌「明けの明星」を『試作高性能照準装置』で狙いをつけて大きく振りかぶりぶつける。
 ガィンと棘突きのメイスがアヌビスに食い込み衝撃でフレームが拉げた。
『待っていた‥‥この一瞬! 夢幻踏、見切れるか』
 拉げて動きの弱まったアヌビスに向かいそのままディアブロがフェイントを加えた動きで間合いを詰め、『アグレッシヴ・フォース』を発動させる。
 瞬時に機体が光り、よろめくアヌビスにディフェンダーが狙い定めた。
『悪夢に呑まれろッ!』
 咆哮と共に一閃され、アヌビスが動きを止める。
「残りのアヌビスもこのままやっちゃうわよ」
『ああ、リッジウェイはクローラーに任せられる‥‥だが、先にスカイスクレイパーだ』
 回避の低いリッジウェイでは間合いを詰めれば格闘戦能力の高いクローラーに大きなアドバンテージがあった。
 窮地を感じたスカイスクレイパーも逃げの姿勢を取り出すが、修羅が追撃にとガドリングナックルを放ち逃走を妨害する。
 リチャードのミカガミが食い止めたスカイスクレイパーをブーストで追いかけ、内臓雪村にて沈黙させた。
「そうだったわね、ありがとう」
 さららが修羅に感謝しているともう一機のアヌビスも阿修羅とナイチンゲールによって沈む。
 装甲を貫いていた『クラッシュテイル』を阿修羅は引き抜き吼えた。
『こっちもラストの一撃なんだよ! とどめっ!』
 凛のクローラーが踵落しをリッジウェイにくわえるとそこで模擬戦は終了する。
「レーダーに敵機はなし、2機逃したけれどこんなところじゃないかしらね?」
 さららが一息ついていると、ディスプレイにラストホープの広場で見かけるスーツ姿のリカルドが映った。
『お疲れさん、全過程終了だ。クローラーの活躍シーンもしっかり映像で残せたもんだから、評価試験としては上々だ。戻ってきて休憩と機体の補修を行って頂戴なと』
「了解、今から撤収するわ」
『本当にお疲れ様だわ。これで少しはクローラーの株があがればいいんだけどね』
 ミリーのクローラーから吐息交じりの声が響く。
『いい機体だから、皆わかってもらえると思う‥‥凛は信じるよ』
「そうね、陸戦機だけでなく支援機としても可能性広がるからできる限り採用はされて欲しいわ」
 凛の呟きに対し、さららは静かに答えたのだった。
 
●その後の話
「はぁ〜‥‥終わったぜ。‥‥腹へったぜぇ‥‥」
 へなへなとエミルはフィーにもたれかかる。
「にゅ‥‥眠い‥‥」
 もたれかかられたフィーも疲労が募っているのかそのままゆらぁと傾き、一緒に休憩室のソファーに倒れこんだ。
「ご苦労さん。おめぇらの分もホットドッグを買っといたぜ」
 ゴンザレスが疲れて倒れこむ二人を見ながらテーブルの上にピラミッド上に詰まれたホットドッグを置く。
「おっちゃんから見て今日の模擬戦はどうだった? コンペでも勝てそう?」
「さぁな、俺にゃ投票することはできねぇし使うのは少なくともおめぇらだ。技術者としての意見でいくなら、上手く魅せるに戦ってくれたよ」
 リチャードが搬入されてくるクローラーを見てゴンザレスに尋ねると珍しく高評価でゴンザレスは答えた。
「すぅ‥‥すぅ‥‥」
「もう食べれナイン‥‥だぜ〜」
 エミルとフィーは目の前にホットドッグが置かれながらも疲れが先にでているのか静かに寝息を立てている。
「おめぇらみたいなガキどもにこんなことをさせてかなきゃならないのは悔しいというか、情けなくなってくるぜ」
「しょうがないって、こればっかりはさ‥‥でも、おっちゃんには俺達が生き延びれるようなものを作れるじゃないか。それで十分だよ」
「いってくれるじゃねぇか、こいつ」
 10代もそこそこの面子が多い今回の模擬戦に何かを感じたのかゴンザレスは少し黄昏た。
 だが、小生意気なリチャードの言葉にいつもの調子を見せて頭をぐりぐりと拳を突きつける。
 次期開発コンペティションの結果はどうあれ、今回の模擬戦で得られたものは傭兵も技術者もあったようだ。