タイトル:【京都】尼丹生祭マスター:橘真斗

シナリオ形態: イベント
難易度: 易しい
参加人数: 33 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/05/23 01:40

●オープニング本文


 その昔、この地方で疫病が流行したとき一人の尼が野山から草を集め薬を作り救った。
 人々は拝み、感謝をし彼女を『尼丹生如来』と呼ぶことにしたという。
 
 その地方は丹後と呼ばれる京都の地。
 伝承もあってか薬膳料理や健康食品、有機野菜などが特産品となりつつあった。

●尼丹生祭
「姉上〜」
 平良・磨理那(gz0057)はぴょんと飛び上がり白川仁宇に飛び掛り抱きつく。
「おお、これはこれは磨理那殿。久しぶりですな」
 慎ましい胸と優しい笑顔でもって仁宇は磨理那を抱きとめた。
「約束どおり会いに来たのじゃ。去年はこちらの祭りにはこれなかったからの」
 ぎゅっと抱きしめたあとぴょこと降りた磨理那はにぱっと笑って仁宇を見上げる。
「左様であったな。尼丹生祭は男子の祭りゆえ、あまり気になさらずとも良いぞ」
 尼丹生祭は伝承を元に母が子に向けて健やかに育つよう草もちを作って振舞う祭りなのだ。
 もっとも、近年では女子が男子に向けて愛情を込めて草もちやチマキなどを振舞う方向になってもきている。
「じゃが、ここは妾も交流としての。民草に振舞うのは領主としての勤めじゃ」
「磨理那殿も立派にあらせられたな。仁宇は嬉しいですぞ」
 成長した磨理那の様子に仁宇も微笑ましくなった。
「おお、そういえば今年は別の催しとして鎧姿コンテストも開催することとなりましたぞ」
 ぽんと手をたたいた仁宇が磨理那に見せたのはコンテストの参加用紙である。
 優勝したらその姿の5月人形を作ってもらえるとのことだ。
「楽しい催しになりそうじゃの、折角じゃから傭兵も呼ぶとするのじゃ」
「そうですな、外からの客がくれば祭りもにぎわうことでしょうぞ」
 白川邸の敷地で晴天の下二人は笑いあう。
 本当の姉妹のように微笑ましい姿であった。
 

●参加者一覧

/ ナレイン・フェルド(ga0506) / 鷹代 朋(ga1602) / ファルル・キーリア(ga4815) / クラーク・エアハルト(ga4961) / シーヴ・王(ga5638) / リーゼロッテ・御剣(ga5669) / 風羽・シン(ga8190) / 百地・悠季(ga8270) / 乙(ga8272) / 魔宗・琢磨(ga8475) / フェリア(ga9011) / 絶斗(ga9337) / シュブニグラス(ga9903) / 火絵 楓(gb0095) / 米本 剛(gb0843) / 鬼非鬼 つー(gb0847) / 美環 響(gb2863) / 鷹代 アヤ(gb3437) / 堺・清四郎(gb3564) / 矢神志紀(gb3649) / 矢神小雪(gb3650) / エル・デイビッド(gb4145) / 冴城 アスカ(gb4188) / 美環 玲(gb5471) / ルトリス(gb5547) / 周太郎(gb5584) / 弥谷清音(gb5593) / フィルト=リンク(gb5706) / 千早・K・ラムゼイ(gb5872) / 天原大地(gb5927) / 冴木氷狩(gb6236) / エリシア(gb6405) / ミリア・キャット(gb6408

●リプレイ本文

●思ひめぐりて
「コンテスト頑張る為にパワーをちょうだい? 抱きしめさせて♪」
「妾が答える前に抱きしめておるではないか〜むぎゅぅ」
 南丹は白川邸の敷地の一角でナレイン・フェルド(ga0506)は平良・磨理那(gz0056)をぎゅっと抱き上げた。
 鎧姿コンテストの前に気合をいれたいらしい。
「磨理那さんはお久しぶりです。今回はレオノーラさんと一緒にコンテストをがんばります」
「おお、二人の共同作業じゃな。頑張るが良いのじゃ」
 静かに挨拶をしに訪れたクラーク・エアハルト(ga4961)は所属小隊の制服姿で敬礼をしながら挨拶を済ませた。
「二人共コンテストに参加するのか。俺もでることになったから宜しくな」
 ナレインとクラークが磨理那に挨拶していると堺・清四郎(gb3564)が磨理那の頭をなでつつ姿を見せる。
「堺かや、そちとも久しぶりじゃの‥‥あ、頭を簡単になでるでないっ!」
 ぷいっと頬を膨らませて磨理那は挨拶に来た人から離れだした。
 パタパタと夏の近づきを感じる日差しの中を磨理那が走っているとドンとぶつかる。
「お、磨理那さんじゃないか。丁度良かった人気もないしな」
 ぶつかったモノは鬼非鬼 つー(gb0847)だ。
 いつもなら酒を飲んで赤い顔がこの日は白い。
「む、何をする気じゃ? 妾を浚うとかいいだすまいな?」
「磨理那さんを浚いにきたんじゃない。娶りにきたんだ」
 視線を合わせるようにかがんだつーは真っ直ぐに磨理那を見ると静かに口に出す。
「な、何をいうておるのじゃ!」
 急な告白に顔を赤くし、視線をそらす磨理那につーはそのまま言葉を投げかげた。
「私は嘘は吐かない。絶対に、な」
「じゃが、その他の気持ちがうそでないというのもわかる。じゃが、妾は京都市を守らねば成らぬ立場じゃ」
「私が磨理那さんの傍にいて如何なる鬼もくってやる」
「外敵を消すことがその場所の安全を成すことではないのじゃ。妾に許婚の話がきたのじゃ」
 意外な返しに、つーは考えていた展開を置いておき、磨理那の話を聞きだす。
「故にそちとは夫婦という間柄にはなれないのじゃ‥‥すまぬの」
 つーから離れるようにして動き、挨拶に来ていた人達の元へ移動しようとしたとき磨理那はくるりとつーの方へ振り向くと、謡を歌いだした。
『おくと見るほどぞはかなき ともすれば風に乱るる萩の上露』
 源氏物語で使われている一節である。
「磨理那さん、その歌の意味は‥‥」
「知るまでもなく、感じてほしいのじゃ」
 手を伸ばして掴もうとするつーから磨理那は逃れ、戻っていく。
 つーはその小さな背中をただ見送り、和歌について考えをめぐらせるのだった。

●ただいま準備中
「京都に来るのは初めてだわ‥‥ラストホープとは違って歴史の重みを感じるわね」
 冴城 アスカ(gb4188)は目の前の木で作られた白川邸に足を運ぶと思わず声をだす。
「コンテスト前に一服しましょうよ。【子狐屋】さんが出張しているそうですよ。私ミルクティを飲みたいです」
 アスカが答える前に弥谷清音(gb5593)は腕を掴んで進んでいく。
 まだ、準備中なのか小さなオーラによる狐の耳と尻尾を生やしている矢神小雪(gb3650)がスマイル0円を売り出しながらテーブルなどを並べていく。
「こゆきー、いくつか出せるのできたよ。お客さんいるなら出していって」
 調理場ともいえるような狭い場所で矢神志紀(gb3649)が料理をつくっていった。
「お、おいしそうな五目いなりじゃないか。かわせて貰うよ」
「まいど、ありがとうございます」
 お持ち帰りパックで志紀が男に手渡すと冴木氷狩(gb6236)が男を見つけるとかけてくる。
「座長〜。元気してはったん? いつも言っているとことじゃない見たいやけど」
「祭りの余響に呼ばれているのさ。氷狩の方はどうだ?」
「ウチはちょっとだけええことあったな。祭りが終わったらちょっと道場を覗いていくつもりなんよ」
 座長からの言葉に氷狩は静かに答えた。
「あの‥‥次、俺‥‥」
 気がつくと次の客が【子狐屋】の前に来ている。
 客はエル・デイビッド(gb4145)であり、道に迷いそうなところを知り合いを見かけたために参加という流れになっていた。
「えっと、オススメ‥‥もらえる?」
「それなら五目いなり寿司ですよー」
「それ‥‥もらうね‥‥うん、おいしい」
 五目稲荷ずしを食べながらエルはフラフラと消えだした。
「びにゅうさいか! いい響きだな! びにゅうさい! びにゅうさい!」
 静かに準備が進んでいる庭を絶斗(ga9337)が大きな声をだしながら歩き出す。
 集中する視線の中にいるのは絶斗とリーゼロッテ・御剣(ga5669)だ。
「ちょっと絶斗くん恥ずかしくない?」
「そうだった、リーゼ先輩は微乳ではなくまな板だから大丈夫だ!」
 何が大丈夫か良くわからないがすごい自信である。
「微乳といいましたね? 貴方は今、微乳といいましたねぇ? ふふふ、うふふふふ」
 絶斗の背後にいつの間にか近づいていた神代千早(gb5872)が巫女服姿に赤いオーラをまとわせて暴れ始めた。
「もう、何をやっているんだ‥‥」
 暴れだす千早をみた周太郎(gb5584)が急いで千早を追いかけだす。
「周太郎さん‥‥」
 取り残されたフィルト=リンク(gb5706)は藍色に赤い花模様の浴衣に後ろでに纏めた髪を揺らし、一息もらした。
 人のことを気にかける性格はいいのだが、厄介ごとに巻き込まれる性分だなとフィルトは思う。
「むむ、これは一大事。待たれよ、しばし待たれよ! 白川仁宇がこの一件預かる!」
 そんな周太郎やフィルトを仁宇は仕事そっちのけで追いかけ始めた。
「やれやれ、折角の気分が台無しだな。」
 若旦那風の和装をしていた風羽・シン(ga8190)は不肖の弟子の行動に一息つくと、事態の収拾に向けて動き出す。
 日差しは高くなり、尼丹生祭が始まりが近くなっていた。
 
●手作りの半分は優しさです
「磨理那さんはお久しぶりです。本日もまた美しい」
 美環 響(gb2863)がレインボーローズを片手に草もちやチマキを作り出している一画へ挨拶に訪れる。
「先ほどはできませんでしたので、今回は抱きしめさせていただきますね」
「にゅあ〜」
 一緒にきていた美環 玲(gb5471)も挨拶がわりにと磨理那をぎゅっと抱きしめた。
 そんな微笑ましい光景を中心に、一般人達は草もちやチマキを作り我が子などにあげている。
「んと、こうやって巻いて‥‥あ。力入れ過ぎたでありやがるです」
「餃子の皮を巻く感じで力加減していけば上手くいくよ。今度春巻も教えるから力加減の応用もできるよ」
 チマキを作ることに四苦八苦するシーヴ・フェルセン(ga5638)の隣で料理の手馴れた恋人のライディ・王(gz0023)が手をとりながら教え始めていた。
「ちまきも笹を巻くのが面倒なぐらいで中身はシンプルなもんさ。よく見るのは団子入り、あとは肉とか茸を入れた中華ちまきってやつだな」
「ふむふむ‥‥」
 同じように鷹代 朋(ga1602)がリードをしながら、田中 アヤ(gb3437)へとチマキの作り方を教授している。
「男子厨房に入らず! でてけでてけ、トァー!」
 また、いちゃつく男女だけではないようでフェリア(ga9011)は先ほどまでおんぶしてもらった魔宗・琢磨(ga8475)の背中から降りると蹴りだしていた。
「他にも男はいるじゃないかっ」
「そんなことはきいていない!」
 琢磨の言葉をフェリアは無茶苦茶な理論で一蹴する。
「騒がしくなってきたの。作り方がわからないものはおらぬか?」
 玲の抱きつきから逃れてきた磨理那はちょこちょこと歩きながら様子を見て回りだした。
「なかなか、上手くいかないの‥‥磨理那さんに教えてもらいたいの」
『形が崩れちゃったね。もっと、力を入れてぎゅっとしたら?』
 両手をあけるために熊のぬいぐるみである癸を背負った乙(ga8272)が近づいてくる磨理那に声をかける。
「炒め方がたらぬようじゃな。煮汁がでているのじゃ吾平、もう少し炒めてやるのじゃ」
 乙がくるもうとしているタネから汁が出ているのを見つけた磨理那は連れてきた従者の吾平に炒めなおしを指示をした。
「ありがとうなの、これでチマキメラが作れるの‥‥」
「何が作れるのじゃ?」
『な、なんでもないよ。できるまで大人しくまっていようよ』
 乙の危険な発言を癸は誤魔化す。
「磨理那お姉さん僕の方も教えてもらえますか? 料理はできるのですけどお菓子は作ったこと無くて‥‥」
「ふむ、男(おのこ)でありながら良い心がけじゃな。草もちから参るぞ?」
 ルトリス(gb5547)に呼び止められた磨理那は草もちの作り方を指導しだす。
 お姉さんといわれてものすごく上機嫌だった。
「うふふ、やっぱりいいわね。表情がころころと変わっていて素敵よ」
 中華ファッションブランド【蓬莱】の衣装で纏めた姿のシュブニグラス(ga9903)は表情を変えながら作業をしている磨理那の姿を心のファインダーにいくつも納めだした。
 準備時間に走り回っていた仁宇の姿ももちろん完全収録である。
(「京都は魔物がすんでいると聞いたけれど‥‥天国よね」)
 彼女の趣味は謎が多かった。
「できたー!」
 シュブニグラスの綺麗な姿とは対象的に着ぐるみ姿で愛らしい火絵 楓(gb0095)が大きな声をあげた。
 楓の作業していた片隅の円形テーブルの上にはドンと存在感をアピールしている草もちの姿がある。
「われながら完璧だな。うん」
 自分の草もちの出来に楓は満足そうに頷いた。
「草もちってああやって作るんだ〜。チマキよりもあちらの方が楽かな〜?」
「そちもチマキを作るのならば今出来上がったもので共に作るのじゃ」
 エリシア(gb6405)が楓と絶斗の様子を見ながら迷っていると、磨理那が調理しなおしたタネを持って越させながら誘いはじめる。
「それじゃあ〜作ります〜」
「もう、エリシアさん早くしないとコンテストのいい席取られちゃ‥‥あ、ごめんなさい主催者さんでしたかっ!」
 エリシアと共に行動していたミリア・キャット(gb6408)はコンテストの方が気になっていたが、磨理那の姿をみると慌ててお辞儀をしはじめた。
「下味はできておるし、蒸すまでじゃからな。すぐに終わる休憩中にまたとりにくればよいのじゃ」
 磨理那はミリアをたしなめると腕まくりをしながら笹でタネをくるみだす。
「へぇ〜、こういう風にやるんだ」
 あまりに見慣れない作業に思わずミリアの視線が集中しはじめた。
 もっとも、乙を入れた4人を少し離れた位置でシュブニグラスが心のファインダーに納めていることは誰も知らない。
 そして、磨理那からの言いつけを終えた吾平からアルバムを受け取っていたことも誰も気づかなかった。

●出会い
「尼丹生如来様とはこの土地を救ってくれた人なのですね」
 ヨネモトタケシ(gb0843)は家の仏間というには広いお堂のような場所にある立て札を読みながら像を軽く拝む。
 伝来は古く明治時代にはすでに根付き、尼丹生祭という祭りが開かれていたとされていた。
 また、尼丹生如来とされる女性が作った薬は今では南丹の総合感冒薬として伝えられているらしい。
「帰りにかえって行きましょうか南丹丸‥‥おっと、すみません」
 ついつい立て札を読みふけっていたタケシは詰まってくる人波に押され下がりだした。
「これが尼丹生如来‥‥」
 ”微乳教教祖”いや『胸の大小に対するこだわりを是正する会会長』のファルル・キーリア(ga4815)は目の前の像を見て言葉を失う。
 慎ましい胸と共に微笑んでいる姿はプロテスタントである彼女の心のこだわりさえ消していた。
 もっとも、日本生活が長いためのごった煮宗教観があるのだがそれはそれである。
「胸の大小が存在するのは仕方が無い事。でも、それによる格差だけは是正しなければならない‥‥」
 目の前の尼丹生如来像に向かってファルルは静かに呟き像へと近づいた。
「なんか、妙なところで妙な人にあったわね‥‥知らないフリしてお祈りつづけましょう」
 ヒトリシズカ柄の着物に白地のパーカー羽織った百地・悠季(ga8270)はファルルから目をそらしながら重傷の多い恋人と自分の無事を祈り始める。
 京都には今年に入ってから三度目の訪問であり、来るたびに何か祈っているような気もした。
 恋人も自分もわかってはいながらも危険な戦場にでかけるのだから、神頼みもしたくなる。
「え‥‥これは私?」
 悠季が祈っていると、ファルルの驚きにも似た呟きが聞こえてきた。
 ファルルの視線を追ってみると尼丹生如来像がある。
 慎ましい胸が目立つ如来像だが、顔をよく見てみると細長い目に高い鼻や髪型にいたるまでファルルに良く似ていた。
 気がつけば周囲の祈っているおじいさんおばあさん達にいたってはファルルの方を拝んでいる。
「ちょっと待ちなさい。似ているかもしれないけれど、私は違うわ!」
 PADの胸を突き出してとりあえずファルルはその場を誤魔化して、逃げ出した。
「騒がしい奴らだな‥‥静かに祈れよ。ま、武神でもないのに強くなることを願うのも場違いかもしれねぇけどよ。もう一つももう一つだけどよぉ」
 天原大地(gb5927)は騒がしくでて行ったファルルを見ながら祈っていた顔を上げる。
 もう一つの願い事を胸に秘めつつ、大地はコンテスト会場へと足を運ぶのだった。

●武者光臨!
『あー、これより尼丹生祭恒例の鎧姿コンテストを開会いたす。皆のもの心してその武勇を振舞うのだぞ。今回は特別審査員として仁宇の師である風羽シン殿に来ていただいている』
『押しかけ弟子に多少困っているシンだ。今回は宜しく』
 仁宇の手作り草もちを食べながらシンが挨拶をするとコンテストが始まりだす。
 紅白模様の幕が引かれた和風の舞台の上にはじめの選手が入ってきた。
 舞台の前に引かれた御座の客席より拍手が響き、コンテストは盛り上がりをみせる。
 入ってきたのは一組の男女、レオノーラ・ハンビー(gz0067)とクラークのペアだ。
 【異邦の姫君】【異邦の武人】というテーマに沿って鎧と氷雨まで揃いで整え殺陣を演じる。
 袖にいて着付けを手伝っていた悠季は選手達の活躍をカメラに収めだした。
 もちろん着替え終わった後に一枚お気に入りのポーズでも撮影済みである。
 クラークにいたっては和装の上に更に軍用歩兵外套に兜も自分の家庭用工具セットで事前に改良を加えて、眼帯までつけるというの懲った姿だ。
 キンキンと甲高い音を立てて氷雨がぶつかり合い火花を散らす。
 紅の鉢巻を揺らし、レオノーラの方がリードしつつクラークへと攻めた。
(「綺麗だよな‥‥もったいなかったかなぁ‥‥」)
 レオノーラの姿を見ながらシンは無意識に自嘲めいた笑みを浮かべる。
 キィンと高い音が響き、両者が互いの喉元へ刃の先をつきつけたところでアピールタイムは終了した。
『一番目からすばらしい演舞であった。仁宇は感動している』
 司会の仁宇が纏めていると悠季が着つけ終了の合図を舞台袖からだす。
『では、次の者が登場だ。今回は能力者が多いので皆のもの活目してほしい』
 仁宇がそう区切ると太鼓の音がなり、浴衣「朱紅葉」の上に鎧を着たナレインが姿を見せた。
 化粧を薄めにし、いつもの女性らしさよりは男性らしい姿にナレインをしる能力者達からは驚きの声が上がる。
 手に槍を持ち、太鼓のドンという大きな音と共に突きや払いをくりだすと額に巻いた鉢巻と鎧につけたカプロイア伯爵のマントがふわっと揺れた。
「我が武の前に敵は無し! ‥‥なぁ〜んてね♪」
 最後に頭上で槍を一回転させて、大きく払うと客席側を向いて凛々しくきめる。
 少し小声で愛嬌がでてしまうのはナレインらしさでもあった。
「敵はあちらですか。直ちに殲滅して見せますわ。御主人様」
 続いて登場したのはメイド服の上から武者鎧を着こんだファルルである。
 ネコミミメイドやロボメイドと呼ばれるものがヲタクの中で流行ってはいるが、武者メイドは新たなコラボレーションだ。
「おぉ、尼丹生如来様じゃ」
「ありがたやーありがたやー」
 しかし、PADを鎧で押さえたためかますます彼の偉人ににてしまったらしく、拝むおじいさんおばあさんが数が先ほどより増えた気がする。
『おお、ここでまさかの尼丹生如来様の光臨とは粋な計らいをしてくださるな!』
 仁宇がトドメとばかりに言葉をかけるとファルルは遠い目をしながらアピールを終えてステージから降りていった。
「大うけでよかったわね?」
「今は一人にして頂戴‥‥」
 悠季からの優しい言葉が今のファルルには痛い。
『サプライズゲストの次は凛々しい男子達の出番であるぞ、皆活目するのだ!』
 そんなファルルの気持ちを他所にコンテストは続いていった。
「いざ、参りますよ!」
 ロングコートのような長い陣羽織を羽織、蛍火を二刀構えたタケシが剣舞を綺麗に舞う。
 巨漢ではあるタケシだが、いくつもの修羅場を越えてきたタケシの動きは軽く、キレがあった。
「一度本格的なものを着てみたかったんだよな‥‥」
 タケシの演舞の最中に堺は上機嫌に鎧を着始める。
 能力者であってもずっしりと来る鎧に一般人であった武将達のすごさを感じた。
「着つけ終わりましたよ、いってきてください」
 忙しそうだからと手伝いに来たルトリスに背中を押され堺がタケシと入れ替わって舞台にでる。
「大和魂は今もまだ潰えず‥‥」
 堺が静かに呟くと歌舞伎のような太鼓のリズムに合わせて静かに動いた。
 派手さは無いが、古来よりの武士の生き様を観客に魅せる。
『薩摩示現流が一人‥‥天原 大地‥‥参るッ!!』
 堺が下がるとマイクを使った大きな掛け声と共に武者鎧「富嶽」を装備した大地が舞台に上がった。
 兜はなく、背中に十手刀に少し改良を加えたコンユンクシオを背負った大地が向かったのは悠季が頼まれて用意した武者鎧。
「チェストォッ!」
 一意専心の気構えの元、気迫と怒号と共に対象を脳天から真っ二つに斬って見せた。
 カランと転がる鎧一式に客席から拍手が大きく起こる。
『皆のものすばらしい演技であったな。ここで少しの休憩を設けるので後半の部でも皆宜しく頼むぞ』
 仁宇が締めを行い、コンテストは一時休憩へと入るのだった。
 
●甘い時間
「周太郎さんに磨理那さんもお一つどうぞ」
 フィルトが自分が作った草もちを磨理那と周太郎に手渡す。
「ありがとう‥‥フィルト」
「ほぅ、かたじけないのじゃ」
 二人は受け取りともに微笑みをフィルトへ返した。
「アスカさん達は休憩を挟んだあとのようですから、食べ終わりましたらいきましょうか?」
 周太郎が仁宇へ確認をしてきたのかフィルトへいうとフィルトはこくりと頷く。
「あ、周太郎殿ー。いつもお世話になっているからフェリアも用意したのですよ。腐モチと血巻きを愛憎込めて作ったのですよ」
「ありが‥‥とう? ‥‥ございます。嬉しいですよ、姫様」
 何か言葉のアクセントに違和感を感じながらも姫と慕うフェリアからのささやかな贈り物に周太郎の顔が更に優しくなった。
「周太郎はモテモテやね。どれボクのチマキも一つあげよか」
 冴木が周太郎のモテぶりを茶化すようにチマキを一つ手渡す。
 女形をしていた歌舞伎一座伝統の本格的なものだ。
「おう、フェリアの出来たのか? 寂しくて先に来たんじゃないんだからな?」
「マスターの分も作ってあげたのですよ。喜んで食べるといいです」
 周太郎のときは違い、ツンとしながらフェリアは琢磨に草もちとチマキを差し出す。
「お、上手に作れたんだな! それじゃ早速、頂くぜ」
 フェリアの態度など気にせず琢磨はできたてのチマキから口に頬張り食べ始めた。
「‥‥美味しいですか?」
 つんとしていたフェリアだったが、琢磨が食べ始めるとちらりと視線を動かし見上げて呟く。
「当然、美味しいぜ。よく作ったな、あんがとな!」
 琢磨はワシワシと頭をなでてフェリアを褒めると、フェリアは照れ隠しに琢磨の背中に回りこんで飛び乗った。
「にゃ、にゃー! 当然なのですよ! だから、マスターがお礼にフェリアを連れまわるのです」
「へいへい‥‥」
 苦笑しながらも楽しそうにおんぶをしなおすと琢磨はフェリアを背負ったまま雑踏の中へと去っていく。
「懇親の草もちが出来たぞ。リーゼロッテ先輩。この微妙なふくらみ具合が先輩で、こっちのバインとしたのが小隊長殿だ」
 わざわざ草もちを二つ横に並べて仕上げた絶斗はさらりと説明をしてリーゼへと見せた。
 何を模しているかはご想像にお任せしたい。
「ほーら磨理那さん、草もちできたよ。はいあーん」
 告白は断られたが、一人の女性と扱おうとつーは磨理那にきな粉をつけた草もちを食べさせた。
「ん、あー!? 不意打ちとは卑怯じゃぞ!」
 思わず食べてしまった磨理那は照れ模様である。
 甘い空気はこの二組だけではなく、カップル達も出来上がったチマキを食べさせあっていた。
「病気とかせずに健康にいてほしいです。あーん、です」
「シーヴも怪我をしないようにね? あーん」
 ライディとシーヴの姿を見たアヤがニヤニヤとしながら近づく。
「二人ともお熱いねぇ‥‥」
「こら、アヤはそうやって弄るのをやめないか。挨拶が送れてすみません、妹やアヤがお世話になっています。由稀の兄の鷹代朋です」
 アヤをたしなめるように来た朋がライディに向けて頭を下げた。
「あ‥‥いえ、こちらこそ恥ずかしいところを見せてすみません。由稀さんにはこちらも助かっていますので、宜しくお伝えください」
「むぅ、ライディ。買い物にいくです」
 仕事の話をしだしたライディにちょっとむくれてシーヴは腕を引っ張り連れ出す。
「磨理那お姉さん‥‥チマキ蒸しあがったの?」
 何か入り込めない雰囲気だったが、ルトリスがコンテスト会場よりやってきてその空気が変った。
「うむ、できているのじゃ」
 磨理那がチマキを蒸している蒸篭の一つを開けるとなぜか、そこは動物園のようになっている。
 足の刺さったチマキや猫の顔の形になったものが入っていたのだ。
「あ、出来上がったんですね〜。休憩中に来てよかったですよ」
 ルトリスと乙による個性的なチマキの動物園蒸篭が置かれ、二人は食べ始める。
 頭からかぶりつくか、お尻から頭付くか相談しあう二人は楽しそうだが、不思議な雰囲気をかもし出していた。

●決戦!
「前半最後の人かっこよかったな〜」
「鎧を一刀両断するってすごかったね。いい席じゃなかったけど迫力が伝わってきたよ」
 エリシアとミリアは自分たちで作ったチマキをコンテストの客席で食べつつ感想を話し合う。
 コンテストなどの催しの醍醐味だ。
『おほん、それでは後半の部を始めるぞ。活目せよ!』
 仁宇が司会ようのマイクスタンドの前に立つとコンテストが再開しだす。
「皆さんに一味変ったものをお披露目しましょう」
 落ち着いた色合いの鎧装束を着こんだ響が槍を振り回してアピールを行った。
 普通の演舞と思いきや刀から花を手品のように出して客席を盛り上げる。
 更に紙吹雪を舞わせると一礼と共に響は壇上から下がった。
「鎧コンテストは見るだけのほうがいいね‥‥似合わないのわかってるし」
「えー、朋も似合うよー。一度着てみてよ」
 響の姿を見ながら朋が呟くと、アヤが腕に抱きつきながら上目遣いでおねだりをしだす。
「う‥‥考えておく」
 恋人のドキッとするしぐさに戸惑いながら朋は眼鏡を上げて答えた。
『次がラストとなる。最後は女性同士のペアの登場であるぞ』
 朋がアヤと話している間に巫女服に胴着をきた千早の薙刀による演技が終わり、最終組の登場となる。
 知り合いが多いのか拍手による出迎えが大きくなった。
 カンカンカンカンと拍子木によるリズムが刻まれ、弁慶役の清音が用意できる限りの装備で登場する。
『一人佇む僧兵、武蔵坊弁慶。そこへどこからともなく牛若丸が現れる』
 仁宇のナレーションが入り、場が静まった。
「貴様、命惜しければ刀を置いてゆけ」
 声をできる限り低くして、清音がアスカの扮する牛若丸を一瞥する。
 アスカは白地に花柄の着物に刀を差して清音に向き合った。
「‥‥お前が巷を騒がす無法者、武蔵坊弁慶か」
 芝居がかった口ぶりでアスカは清音の周りを大きく一回転すると清音を見る。
「ならば何だというのだ! そちらが行かぬならこちらから参るぞ!」
 激昂したかとみせて清音は薙刀でもってアスカへと斬りかかった。
 『旋風脚』を使い身軽になったアスカは清音の攻撃を軽々と避ける。
 舞台の上をヒュンヒュンと飛び回る姿はその度におーっという声がでた。
 そして、舞台の中央で客席の方へ斬りかかった清音を飛び越えたアスカは後ろへ回り込んで刀を首に突きつける。
「く‥‥負けだ‥‥」
 観念した清音は薙刀を落としてがっくりと膝を突いた。
「命を奪うには惜しい‥‥私の家来にならぬか? 弁慶」
 ヒュンヒュンと刀を回した後腰の鞘に収めながらアスカは清音に対して優しく声をかける。
『こうして弁慶は義経の家来になり、数々の武功を立てたという‥‥完』
 仁宇のナレーションにおいて締められると大きな拍手と歓声で二人は迎えられた。
『トリを飾った冴城アスカよ。演武は楽しんでいただけたかしら?』
『弥谷清音です。アスカさんい引っ張ってもらってばかりでしたが最後まで見ていただきありがとうございます』
 二人が礼をして下がると採点時間にしばし間がとられる。
 そして、特別審査員のシンが仁宇にかわってマイクの前に立った。
『集計結果を発表する。今回の鎧姿コンテストの優勝者は‥‥ラストの【五条橋の戦い】を行った冴城アスカと弥谷清音のペアだ』
 シンの発表により下がったばかりの二人が再びステージへと呼び出される。
「最大のポイントはストーリー仕立てであったことと京都にあわせた演出である部分が評価された。二人の姿は南丹の人形屋で再現され、飾られるので遊びに来たときにでも見に来て欲しい」
 仁宇が賞状を渡しながら二人を祝した。
「二人ともおめでとう、クラークちゃんたちも大地ちゃんも良かったわよ♪」
 優勝は逃したがナレインも二人を祝してハグをしていく。
「私が優勝するなんて想定外よ。投票してくれたみんな、ありがとう。清音もいい動きだったわよ。お疲れ様」
「はい、みんな。折角だから記念写真一枚いくわよ」
 アスカが相方を労っていると悠季が参加選手の集合写真を一枚、カメラに収めた。
 競技で競い合ったライバルも終われば最大の友である。
 京都での思い出がシャッターと共に増えた。
 
●子狐屋大繁盛
「いらっしゃいませー。周太郎さんにはご予約の五目稲荷寿司ですよ」
「ありがとう。フィルト?」
「んぅー‥‥」
 周太郎が頼んでいた五目稲荷寿司を受け取っていると、隣で歩いていたフィルトが急にもたれかかってくる。
 手に持ったコップからはアルコールのにおいがして、酒を飲んだことがはっきりとわかった。
「弱いのに飲むから‥‥」
 注意をしようとするが、眠りかけているフィルトの顔を見ていると何もいえなくなり周太郎は場所を移す。
「リーゼ先輩、何か飲み物のもうか! まな板娘、何か頼む」
 草もちを一緒に作り、それなりにデートを頑張っている絶斗は子狐屋で飲み物を頼みだした。
「いらっしゃいませ。今度セクハラ発言をしたらフライパンで叩きますからね〜?」
 スマイルを浮かべながらもフライパンを振り上げて志紀は絶斗をにらむが、絶斗はわかっていないようで首を傾げるだけである。
 コーラを貰った二人は飲みながら静かに歩く。
「なぁ、リーゼロッテ先輩‥‥これからも一緒に頑張ろう」
「その話なんだけどね‥‥妹の事や夢の事で手一杯の私は絶斗君の気持ちを受ける事なんて出来ないの‥‥ごめんなさい」
 気合を入れた絶斗の言葉に対して、リーゼの冷たい言葉が返ってきた。
 そのまま何も言わなくなった二人は喧騒へと消えていく。
「こ〜ゆ〜き〜ん♪」
 着ぐるみ姿のままで楓が子狐屋までやってきた。
「いらっしゃいませ〜、ご注文をどうぞ〜」
 小雪が接客をするが、その微笑は黒雪と呼ばれる裏人格だと楓はまだ気づいていない。
「これ、あるだけ頂戴! これ!」
 サルミアッキと呼ばれる世界一まずい飴を楓は所望した。
「はい、焼き鳥ですね〜。今から調理しますからお待ちを〜」
「違うからっ! 焼き鳥いらない! これだけでいいからっ!」
 きらんと目を光らせながら包丁を持ち出す小雪‥‥いや、黒雪に恐怖を感じながらも楓はサルミアッキを頼み続ける。
「こんにちわ、遊んでいるところ悪いのだけれど。五目稲荷寿司とオレンジジュースもらえない?」
「は〜い、畏まりましたよ〜」
 楓を不憫に思ったのか悠季が割り込んで注文をすると黒雪は下がり、小雪が前に出てくるのだった。
 
●買い物‥‥そして‥‥
「レオノーラさん、これをどうぞ」
 クラークが露天で買った百合の髪飾りをレオノーラに刺す。
「ふふ、ありがとう。また贈り物してもらったわね」
 そのときのレオノーラの笑顔は普段のものよりも柔らかいものだったと彼女を知る人物は口を揃えていった。
 祭りも終盤に来て、皆お土産を買ったりして帰り支度を始めている。
「もう‥‥日が暮れちゃうな‥‥一杯買ったけど、あんまり食べれなかったかも‥‥」
 手に荷物を多く抱えたエルは傾いた太陽を見ながら呟いた。
「京都は割りと依頼で来るときも多い、次に食べればいいだろう」
 呟くエルの隣では磨理那や仁宇が配っているチマキと草もちを手にした堺の姿がある。
 戦い以外で訪れたことを喜んでいるようだ。
「お土産ライディとお揃いです」
 シーヴはライディと手をつなぎながら、京縮緬で作られたストラップを携帯につけてにっこりと笑っている。
 縮緬を食べる「麺」だと思っていたことは記憶の彼方に消していた。
「はぁ、終わった終わった。八橋とか買えてよかったなぁ? ボクはこれからちょっと寄り道して帰るからこの辺でな」
 一緒に見回っていたアスカたちと別れ、冴木は一人別の場所へと向かう。
(「妹が見つかったこと、師匠にだけは伝えんと‥‥」)
 南丹では無かったため多少強行軍にはなるが、それでも大切なことは直接伝えたかった。
「まだ時間もあるんだから、グラスちゃんブラブラしましょー?」
「ええ、いいわよ。手土産はできたしもう思い残すことは何も無いわ」
 着替えの済ませたナレインと共にシュブニグラスは出店をブラブラと回りだす。
 その途中でつーと磨理那へと出会う。
「磨理那ちゃんはデート? お邪魔しちゃいけないわね」
「そ、そんなものではないのじゃ! つーとは何にもないのじゃ」
「つれないなぁ、今日だけでもいいからデートということにしようじゃないか」
 二人して綿飴を舐めて弄るナレインへと答えた。
 軽口を叩くつーだが、元気が多少ない。
「平良さんもお嫁にいったりするのよね‥‥なんか考えると寂しいわ」
 シュブニグラスはふっと遠い目をしながらナレインと共にその場から離れていった。
「おっちゃん、タコヤキ5パック頼むッス」
 ナレイン達が歩き去る出店の前では着替え終わった大地がたこ焼きを買っている。
「あの、私も二つ‥‥」
「すまないねぇ、お嬢チャン。今、こっちのお兄さんの分で終わっちゃたんだよ」
 少し遅れてきたミリアが注文をするが、終盤ということもあり材料が切れたようだ。
「そうですか‥‥食べたかったんですが‥‥」
「‥‥おっちゃん、俺の分は3つでいいからこっちの子にたこ焼きあげて欲しいッス」
 シュンとうなだれるミリアを見た大地はおっちゃんに向かってそれだけ言うと、出来上がっていた3つを受け取り何も言わずにさっていく。
「ミリアさん、たこ焼き買えた?」
「うん、あの鎧のお兄さんに譲ってもらっちゃった」
 子狐屋でジュースを買ってきたエリシアがミリアの前に来ると、ミリアは走っていった大地の背中をじっと見ていた。
「私より先にミリアさんの方が未来の殿方できちゃったりして?」
「違うよぉ〜。そういうのじゃないよ〜」
 エリシアに突っつかれてミリアは顔を赤くして否定する。
 夏に向かおうとする京都で、いくつもの物語が動き始めた。