タイトル:【DR】AC研の窮地マスター:橘真斗

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/05/02 13:37

●オープニング本文


「試作M3帯電加速粒子砲は何とか形にはなったのである」
「本当に試作中の試作ですけどね、これ一機しかありませんし‥‥でも、これを使いこなすためのRF−15の方が用意できていませんよ?」
「試射テストをするのであれば、従来機でも問題ないのである。パイロットも呼んでいる」
 完成した試作M3帯電加速粒子砲はコバンザメを逆さにしたような形で戦闘機の背中についていた。
 廃熱機構とジェネレーターも兼ねたブースターでもあり、短い砲塔からは散発的ではあるが二連の粒子砲が放てる。
 カードリッジ式のために、一回の作戦で使える回数は2回程度だ。
「なんだかな‥‥こんなものをつけて空を飛ばなければならないというのは妙な気分だ」
 八之宮忠次とアルパンサ・ロレンタが話し合っているところに、フライトスーツを着込み、ヘルメットを小脇に抱えたジェイド・ホークアイ大尉が姿を見せる。
「ジェイド大尉がテストパイロットですか」
「ああ、軍曹経由でな‥‥本来ならロシアで他が出払っている間のアメリカ上空防衛が任務なんだが、命令なら仕方ない」
 可愛そうにというニュアンスを含んだロレンタの言葉にジェイドは肩をすくめながら答えた。
「まずは既存機での実働データが欲しいのである。RF−15‥‥ガンマイーグルにするとしても改良の方向性をもっと見定めたい」
 カイゼル髭を指で整えながら八之宮忠次はジェイドに要望をだす。
「この辺を軽く飛んで試射して帰ってくるさ。カードリッジチャージの用意しておいてくれ」
 ヘルメットを被るとジェイドは試作M3帯電加速粒子砲の取り付いたF−15へ乗り込むべく進んでいくのだった。
 
●窮地
「え!? 戦闘警報? ちょっと今ですか!」
 突如なった内線に応答したロレンタの顔が青ざめる。
 二人のいる地方にUPC軍から敵の接近による避難指示が出されたのだ。
 つまりは、ジェイドにいたっても同じである。
 無論‥‥ジャミングされずに通じていればの話だが‥‥。
「これはまずいのである‥‥一機しかない試作M3帯電りゅうs‥‥」
「ジェイド大尉の方が大変でしょう! 早いところラストホープに救援を求めないと」
「彼とて歴戦の猛者、そう簡単にはやられはしないのである」
 慌てふためくロレンタに大して忠次はいつになく落ち着いた様子だった。
 それは信頼の証、彼の友人でもある軍曹の推薦した人物なのだから‥‥。

●参加者一覧

ゲック・W・カーン(ga0078
30歳・♂・GP
ジロー(ga3426
25歳・♂・AA
ソード(ga6675
20歳・♂・JG
アセット・アナスタシア(gb0694
15歳・♀・AA
フィオナ・シュトリエ(gb0790
19歳・♀・GD
狐月 銀子(gb2552
20歳・♀・HD
白岩 椛(gb3059
13歳・♀・EP
キャプテン・エミター(gb5340
14歳・♀・DG

●リプレイ本文

●Take Off!
「なんというか‥‥間が悪いとはこの事だな。ホントに‥‥」
 事情を詳しく聞くために忠次やロレンタのいる基地を訪れたキャプテン・エミター(gb5340)は遠くを見つめる。
「AC研のために頼んだぞ諸君」
 スクランブル体勢のため、長居はできない忠次はそれだけ告げるとシェルターの方へ移動していった。
「AC研の危機というよりはM3帯電加速粒子砲と、試運転しているパイロットのジェイドさんが危ないですね」
 白岩 椛(gb3059)は事情をメモで残し、後のメンバーに伝えようと控える。
「それでは出発しよう‥‥ここにいても敵は逃がしてはくれない」
 キャプテンは窓から飛び出し、外においてあるDN−01「リンドヴルム」に飛び乗った。
「アーマーオン!」
 わざわざ掛け声を出して変形しガションガションと走り始める。
 向かう先は愛機の翔幻だ。
『エミタークロース!』
 良くわからない叫びを出して飛び上がったキャプテンの体が翔幻の開かれた胴体に入り込むと各部が接続されハッチが閉まる。
 ブィンと翔幻の目が光り、立ち上がった。
『おいおい、待たせすぎだぞ。格好つけてないで早く援護に行こう。椛はどうした?』
 ジロー(ga3426)から呆れ気味の声がキャプテンに届く。
「しまった‥‥一緒に連れてこればよかったな」
『基地の軍人の方に送ってもらいましたので大丈夫です。いきましょう』
 椛がロジーナから準備完了の合図をだした。
『なるべくなら早くみつけたいよね‥‥どっちが見つかるにしてもさ』
 雷電を起動させ前に出てきたフィオナ・シュトリエ(gb0790)が椛から情報を得て静かに呟く。
「ああ、そうだな。行こう、皆! エミターファイヴ、ア・ゴー!」
 フィオナの言葉に頷くとキャプテンは一人気合を別の方向に持っていって叫んで駆け出した。
 だが、このあと心配は杞憂に終わりすぐさまキメラと遭遇する。
 そのことを彼らはまだ知らない‥‥。

●Contact
「回線が急に悪くなった‥‥バグアが来たのか、あの爺さんに一杯食わされたか?」
 ジェイドは映らなくなったレーダーとノイズばかり走る通信機にため息を漏らした。
 試作機の運用中でアクシデントに見舞われるのは仕方のないことだが、今回ばかりは手札が悪すぎだ。
『ジェイド大尉、聞こえるか? 俺だ‥‥TACネームGutsだ』
 ゲック・W・カーン(ga0078)の声を聞き、ジェイドは安心する。
 気づけばレーダーも通信機も回復していた。
「こちらShadowことジェイドだ。お前とはどうも縁があるようだな?」
『今、そらからこっちの味方が向かっている。少し戻ってく‥‥うっ!?』
「了解した‥‥どうした?」
 キーンと耳鳴りのような音が響き、ゲックを頭痛が襲った。何も感じないジェイドは、彼の指示に頷きながらも不審気に問う。
『キューブワームよ‥‥頭痛には、ノー‥‥ってこれは不味いわね。色々大人の事情で、さ♪ ともかく危険だわ。下がって』
 狐月 銀子(gb2552)が軽くリズムを取り始めてから慌てて訂正し、アドバイスをしてくる。
「いや、回避くらいは何とかなる‥‥今後こういう相手をしなければならないなら共に飛行だけでもさせてくれ」
 動きが鈍った能力者たちの機体を一瞥し、ジェイドは操縦桿を握り直して答える。
『‥‥俺達が向かうまで無事でいてくださってよかったですよ』
「まだまだ‥‥腕ではお前達傭兵に負けているつもりはないさ」
 頭痛をこらえるソード(ga6675)の声に同じくジェイドも答えた。
『厄介な敵を先に叩く‥‥アセット機、先攻する!』
 レーダーを見れば三つ散らばる点がありその一つに向かってアセット・アナスタシア(gb0694)のシュテルンが向かい撃墜する。
 頭痛が和らぎ、本来の動きを少し取り戻した能力者たちの機体を見て、ジェイドは息をついた。
 声からすればまだ若い少女のようではあるが、操縦センスはいい。
(「うかうかしていると追い抜かれるな‥‥」)
 ジェイドは内心恐ろしさを感じ周囲を警戒して飛び続けた。
『まずい、目の前のゴーレムがソッチに気づきやがった。下から砲撃がくるぞ! 気をつけろ!』
 ゲックの舌打ちをしながらの叫び声と共に下から砲弾が散発的に撃ち込まれてくる。
「こいつは厳しいな‥‥しかし、イーグルドライバーを舐めてもらっては困るっ!」
 砲弾をなんとかかわしながらジェイドは能力者に追いつこうと必死になるのだった。
 
●Over Run
「SESエンハンサー起動! いくぞ! アンジェリカ!」
 地上を走るトリケラトプスのような大型キメラはジローのアンジェリカに向かって体をぶつけにいく。
 トリケラトプスの体当たりをジローは試作型ビームシールドにエネルギーを注ぎ受け止めた。
 三本の角がビームとぶつかって弾ける。
 じりじりとトリケラトプスキメラが後ずさりをした。
「反撃だっ!」
 ジローは操縦桿を握りなおし、アンジェリカを攻撃態勢に移す。
 シャープなフレームに似合わない無骨なビームコーティングアクスを振り上げるとアンジェリカはトリケラトプスキメラの首を斬り落とした。
 ジュゥと肉のこげる音がして、傷口を焦がし血を出さずに仕留める。
『これを受け取れっ! キャプテン・ダイナマイトッ!』
 翔幻が奥の方に固まるトリケラトプスキメラに向かってグレネードを放ち纏めて攻撃を始めた。
 球体のように広がる爆炎がキメラを包みこむが、中からキメラは炎を抜けて突撃を続けてくる。
『非物理の方が有効そうか? 高分子レーザーで支援するぜ』
 ゲックのスカイスクレイパーが3.2cm高分子レーザー砲を続けざまに放ち、トリケラトプスの群れを分断した。
『キューブワームは皆、空だからゴーレムを先に落とそう!』
 ゴーレムの気を少しでも引こうとフィオナがガドリング砲を撃ち込んで対空砲火をやめさせる。
「高エネルギー反応! 何か来るぜ!」
 前線のジローが叫ぶと、ゴーレムの一機が胸部装甲を開きプロトン砲を撃ちだした。
 地面をえぐりながらKVを包み込むような光の槍が真っ直ぐにKVに向かう。
『うわっ!? 危ないよっ!』
 回避しきれず、装甲を溶解させた雷電からフィオナがありったけの声で叫んだ。
『当たらなければ、どうと言う事はないっ!』
 一方余裕を見せるような言葉ではあるが、キャプテンの翔幻はフレーム「オセロ」で肉抜きををかなりしているため本当に直撃をすれば終わりである。
 避けれたのは幸運と見るべきだ。
『雷電ほどではありませんが、硬さにはそれなりに自信があります‥‥私が引き寄せますから皆さんは迂回して攻撃を』
 椛のロジーナもプロトン砲の一撃を機盾「アイギス」を構えて耐え抜き、MSIバルカンRでゴーレムとトリケラトプスキメラを掃射する。
 雷電も負けじとセミーサキュアラーをもって一機のゴーレムへと肉薄した。
 搭載されたファランクス・アテナイが近くにいるトリケラトプスキメラを自動的に攻撃し、さらに一歩踏み込んで雷電はゴーレムへ巨大な半月刀を斬りつける。
 巨体の持つ高い出力に見合った一撃がゴーレムを狙うも、盾に阻まれ本体へのダメージを軽減された。
『キメラのように簡単にはいかないかっ!』
「だが、上を助けるためには手早く潰さないとな」
 ジローがアンジェリカでもってトリケラトプスキメラを3.2cm高分子レーザー砲で牽制しつつも援護に回ってくる。
 再び『SESエンハンサー』を起動させ、ビームコーティングアクスでゴーレムを斬る。
 ゴーレムの動きが鈍くなり、弱っていることが目に見えてわかり始めた。
『おいっ! もう一機に熱源! 味方もろとも纏めるつもりだ!』
 ゲックが遠くにいるもう一機が攻撃態勢に入っていることを告げる。
 その言葉が示すかのように弱ったゴーレムがアンジェリカと雷電を掴みだした。
 
●Shooting Star
 第二陣ともいえる離れた場所にまとまったゴーレムとトリケラトプスキメラのいる場所へ3機のシュテルンは煙幕と共に『垂直離着陸能力』をいかして降り立つ。
 すぐさま変形し、各自が対応に回った。
「さて、新たに考えた必殺技を食らって頂きましょうか。シャイニング・ペンタグラム!」
 エネルギーをチャージしていたゴーレムの前に来たソードは練剣「雪村」を抜き放つと『PRMシステム』で出力を増加させる。
 胸部装甲を開いたまま、そのまま放とうとするゴーレムへ5本の軌跡を刻みつけた。
 あたかもそれは五芒星のようであり、『PRMシステム』が停止すると共にゴーレムは爆破する。
 貯めていたプロトン粒子が空へ舞い上がりキラキラと散った。
『すごいわね‥‥カッコつけてくれるじゃない。出番だ、あたしのシュテルン君。豪勢に行きなさいっ♪』
 試作型スラスターライフルでもって銀子のシュテルンは周りのトリケラトプスキメラを撃ち抜く。
「ええ、でもお陰でかなりの練力を使いましたよ。残る限り戦いますがね」
 銀子の軽口にソードは答えながらエネルギーの残りを気にしつつトリケラトプスキメラを斬った。
『怖いなら‥‥私に祈るといいよ! ガトリングナックルッ!』
 アセットのシュテルンもガドリングナックルにてトリケラトプスキメラを攻撃しだす。
 シュテルンの握り拳の中心から掛け声と共に放たれる弾丸はキメラの皮膚を貫いた。
『トドメは貰いってね♪』
 弱ったキメラを銀子のシュテルンが試作スラスターライフルで撃ち抜きトドメをさす。
 流星のごとく現れたであろう3機によって第二陣は瞬く間に壊滅した。
『すごいな‥‥実戦を多く積んだもののなせる業か』
 キャプテンはトリケラトプスキメラと戦いながら、3機の動きをモニターで眺め驚く。
 それと共に負けられないという思いが高まり始める。
『ゆくぞっ! GFソード唐竹割りっ!』
 翔幻特有の幻霧発生装置で回避性能を高め、エネルギーを付与させたソードでトリケラトプスキメラを放浪しながら斬り裂いた。
 キャプテンが倒した一体でキメラは全滅し、肉の破片が飛び散る戦場だけがのこった。
『こちらTACネームShadowだ。ナイスキル‥‥助かった。任務を継続し、帰還するためここでお別れだ』
「いえ、俺たちも一度補給のために基地にいきますからそちらで会いましょう」
 ソードが大尉に再会を約束しだす。 
『それに、他の敵機がいないとも限らないから護衛につきます‥‥』
『シュテルンならすぐに上がれるから追いつくわ』
 ソードは残り練力が厳しかったが、アセットと銀子が『垂直離着陸能力』を使って空へと上がりなおした。
『作戦終了だ。俺たちは帰るぞ』
 ゲックのスカイスクレイパーより撤退に指示がでると残りのメンバーは基地へと撤収を始める。
 AC研の窮地も大尉の身の安全も無事確保できたのだった。
 
●After War
「今日は俺の奢りだ‥‥って、お前らも聞いていたのかよ」
 ゲックが基地の食堂でジェイドを迎えると椛やジロー銀子に忠次、ロレンタらまでも集まっている。
「旅は道ずれというじゃろう? 我輩たちにもおごるのである」
「いいじゃないか、足りないようなら俺が割カンするさ」
 ふんぞり返る忠次と肩を落とすゲックをみてジェイドは笑いながら席に着いた。
「あの‥‥教えてもらえるかわかりませんがグリフォンの研究結果はどうなのでしょう?」
 椛は今回聞きたかったことを率直に忠治達にぶつけだす。
「詳細についてはいえないというよりわからないといった方がいいですね。今までの人類の科学より数段先をいっていました」
「たとえるならば、猿にパソコンを解析しろといっているようなものであるな」
 おごりの特大ステーキを喰らいながら忠次は簡単に話を纏めた。
「じゃあ、無駄だったということでしょうか?」
「いえ、そうではありません。パソコンを解析することはできませんがインターネット検索くらいはできますし、アプリケーションの使い方とかも覚えればなんとかといったところですね」
 ロレンタが忠次のたとえを使って説明を続ける。
 技術そのものはわからなくても使い方を見つけれればデータ取りはできそうだということだ。
「結構いろいろやっているのね。大尉さんは今回のアレ‥‥使ってみてどうだったの?」
 銀子が身を乗り出して聞き始める。
「実戦に耐えうるかわからないが、威力としては恐らく今までの実弾兵器よりは十分使える。数で押すならば十分かもしれないな」
 現状のF−15では持久戦には乏しく、一撃必殺とまではいかなくても多少なりとも命中させてダメージを与えられれば役割として十分だ。
「非物理兵器となるとKVへの対応も期待したいな。アンジェリカに乗っていると特に」
 ジローがジェイドの話を聞きながら試作M3帯電加速粒子砲に対して興味をみせる。
「戦艦規模でなければ使えないものをかなり小型化しましたから、連射などは無理でしょうね。その分ブースターと兼任することで補給しやすくしましたので生存率は上がっていると思います」
「あとは複合装甲でそれなりに耐えうるようにするくらいであるかな?」
 髭を弄り、忠次は今後の目処を立て始めた。
「そういうのもいいが、今回みたいなことはやめてくれよ。大尉がやられたら軍曹に顔向けできやしねぇ」
 ビールをぐいっと飲みつつゲックは忠次を睨む。
「これくらいは慣れている‥‥無茶は軍曹にもいわれるくらいだ、あまり気にするな」
 苦笑しながらジェイドはゲックの肩を叩いた。
「また、次の依頼があるときも宜しくお願いします。今回は助かりました‥‥ありがとうございます」
 ロレンタが黙り込む忠次に変わって頭を下げ、ゲックとジェイドの割り勘による食事会は終了する。
 ドライ・イーグル計画はまた一歩、踏み出した。