タイトル:【BT】暴徒鎮圧マスター:橘真斗

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/04/27 07:13

●オープニング本文


●ドミニカ共和国〜カカオ農園〜
「首都陥落まであと少しか‥‥」
「まだ抵抗を見せるものがいますわ」
「安全な懐柔を拒むとは‥‥解せんな」
 カカオ農園にある中央の建物では3人の男女が集まっている。
「すんなり入るヤツラは戦闘員としては腰抜けだ‥‥だが、施設維持するための人員としても必要だ」
 軍服を着こんだ女がアスレード(gz0165)から受けている命令を繰り返した。
 ロシアの前線にでているアスレードはまだ、このドミニカには帰ってきておらず、その留守を3人の幹部が預かっている状態である。
「でも、燻ったままではしかたありませんわ。見せしめ、必要じゃありませんこと?」
 修道衣のような黒いワンピースを身にまとった少女が口元に手をあてクスクスと笑う。
「それもやむなしか‥‥交渉のカードの一つとするしかないな」
 髭を生やしたスーツ姿の男も少女に同意をみせた。
「ならば、私が動きますわ。最近少し物足りなくて‥‥」
 少女の口元が三日月を描きだす。
「私も”ネゴシエイター”も機体待ちだからな、貴様に任せるがやりすぎるなよ?」
 少女に対して軍服の女が忠告をだすが、返事をする前に少女はその場所から姿を消していた。

●ドミニカ共和国〜サント・ドミンゴ〜
「くそっ、バグアにここを明け渡すわけにはいかん」
 ドミニカ共和国の軍事警察の男は机を叩いた。
 バグアの勢力はプエルト・プラタに続き、カカオ農園を越えて首都にまで侵食がすんでいる。
 ”ネゴシエイター”宇佐木・澄元の交渉で無血開場とされた土地も多かった。
「無差別に攻撃するなんてせずに、滞在にあたり向こうの意図に合えばそのままという‥‥統治だ。‥‥暴れるにもあばれられん!」
 階級章を多くつけた男は苦虫を潰したかのような顔になって腕を組む。
「かといってこのまま好きにさせるんですか? この街は独裁者なんか求めてないんですよ」
 男の前に若い男がくってっかかった。
「時期じゃねぇ‥‥今俺らが動いても反乱軍ってことであいつらに攻撃の口実を与えちまう」
 隊長格の男は静かに若い男をいなす。
「じゃあ、このまま手を引くのかよ!」
「手は撃っている‥‥UPC軍の協力は直接えられなかったが、傭兵に直接依頼を行う」
 隊長はそういって通信機の前に立ち依頼をラストホープへ送ろうとしたそのとき、外が騒がしくなる。
「隊長! キメラが‥‥キメラが街に!」
「何処から入ってきた!」
 怒鳴り散らしながら部下が指差す方をみると、食料を運んできたトラックの中からアリのようなキメラがワラワラと溢れ、『食料』を容赦なく食い荒らした。
「くそったれ!」
 魚、肉、猫、犬、人‥‥ナマモノである全てを食べるキメラに戦慄を感じながらも隊長はラストホープへSOSを出すと銃をもって飛び出した。

●参加者一覧

花=シルエイト(ga0053
17歳・♀・PN
御影・朔夜(ga0240
17歳・♂・JG
宗太郎=シルエイト(ga4261
22歳・♂・AA
雑賀 幸輔(ga6073
27歳・♂・JG
ヒューイ・焔(ga8434
28歳・♂・AA
キムム君(gb0512
23歳・♂・FC
紅月・焔(gb1386
27歳・♂・ER
エリザ(gb3560
15歳・♀・HD

●リプレイ本文

●サン・ドミンゴ〜郊外〜
「皆さんも、この町も、俺たちが護ります」
 比較的被害の少ない郊外に降り立ったキムム君(gb0512)が逃げてきた人々に声をかける。
「軽傷者は重傷者を運ぶのを手伝ってくれ、医者は呼んである」
 ガスマスク姿の紅月・焔(gb1386)がでてくると一般市民は萎縮した。
 しかし、タンポポを模したエンブレムのついたヘリコプターから出てくると安心して指示にしたがった。
「この人数で遂行しろとは‥‥また笑えない冗談だ」
 ガスマスク姿で治療を受ける人々を眺める焔がため息をもらすと、血に誘われたかアリキメラがぞろぞろと姿を見せる。
「貴様等だけは生かしては置けん! さて、今回も例の『アレ』を試させてもらおう。さぁこい!」
 キムム君が覚醒して前にでて、アリキメラをさばきにかかった。
『キシャァー!』
「遅い‥‥『夢幻踏』」
 アリキメラの一匹をキムム君は避けるが、次々と襲い掛かってきて肩口を噛まれる。
 建物やコートを溶かす強酸が牙から発せられ、体を蝕んだ。
「ぐあぁっ!」
「ちっ、こいつは短期決戦しかねぇな‥‥」
 小銃「スカーレット」を撃っていた焔は効果が薄いことを知ると、アサルトクローとポリカーボネイトシールドに持ち替えて肉薄する。
 焔を見つけたアリキメラはさらに増えて喰らいついてくるのだった。
 
●サン・ドミンゴ〜住宅街〜
「数に惑わされるな。一つずつ処理していけば包囲も崩れる‥‥援護を頼む!」
 雑賀 幸輔(ga6073)にいわれ、自衛していた軍事警察がアサルトライフルでキメラへと攻撃を仕掛ける。
 フォースフィールドによって直撃は阻まれるが、包囲網を崩すには十分だった。
「蜂蜜よりも肉を好むとはこいつらグルメじゃないかっ!」
 忌々しく吐き捨てヒューイ・焔(ga8434)がハミングバードでアリキメラを両断する。
 受けに使ったイリアスは強酸の前には役に立たず、避けて攻めるしかなかった。
 アリキメラといっても一体一体が20cmはあろうかという大型のもで、それが40匹ほど住宅街を闊歩している。
 住宅の一部は穴が開けられ、中には無残な死体も見えた。
「ありったけの鉛玉をプレゼントだ! 全部受け取れ!」
 拳銃「黒猫」をリロードした雑賀が小銃「スパイダー」と共に構えて『二連射』と『影撃ち』による全力攻撃でアリキメラを駆逐する。
 5匹近いキメラが今の攻撃で弾け飛んだ。
「数だけは多いな、おいっ!」
 軍事警察が守る負傷者に近づくアリキメラを中心にヒューイが『両断剣』にて一気にさばく。
 一度負傷したヒューイにアリキメらが群がるように襲いかかり、雑賀がそれを銃で潰した。
 しばらく、そんな戦闘が続き‥‥死屍累々と死体が散らばった住宅街に静寂が訪れる。
「作戦目標の完了を確認‥‥被害状況の確認を。戦力不足の制圧戦なんて楽な仕事じゃねえな、ったくよ」
「負傷者の手当てを行おう。このまま放っておくのも目覚めが悪い」
 30分ほど負傷者の手当てをして、ある程区切りの付いたところでヒューイが無線機で連絡を取り出す。
「駐屯地の方が荒れているようだ。援軍にいってくる」
「ああ、こっちは任せておけ‥‥医者も呼んでいるんだ。何とかしてみせるさ」
 武器をしまうヒューイを雑賀は武器を掲げて見送り、二人はそれぞれの道へと進む。
 
●サン・ドミンゴ〜駅〜
「この街は放棄させない。皆がまた戻って来れるよう‥‥ボク達が守り抜く!」
 駅に到着した月森 花(ga0053)が決意を新たに駅を走った。
 交通機関の心臓でもである駅はアリキメラの襲撃を受け、混乱の形相を見せている。
「余所見してんじゃねぇよ。てめぇらの相手は俺だ!」
 サラリーマンだろうか、スーツ姿の男が襲われるところに宗太郎=シルエイト(ga4261)が空から降りてきてアリキメラを串刺しにした。
「おい、こいつらの相手は俺らに任せて郊外に人を逃がせよ。ここなら移動手段はあるだろ?」
 近くにいる軍事警察に向かって宗太郎は視線をキメラから離さず、ランス「エクスプロード」を振り回して次のキメラへと向かう。
「わ、わかった‥‥傭兵だな? だが負傷者が多い‥‥手当てを先にさせてくれ」
 荒っぽい宗太郎の口ぶりに怯えを感じながらも、負傷者が多数出ている状況のためまずは避難と手当てを同時に行いだした。
 敵も負傷者も軍事警察も多い駅は半ばパニック状態であり、二次災害のほうが大きい。
「慌てないで! 怪我の浅い人は、助け合って避難を開始してっ」
 花が喧騒に飲まれないように大きく声をだして一箇所へ人を集めだした。
「‥‥すげぇ数だ。一般人を巻き込むな‥‥くそっ!」
 人通りがひかず、スブロフを投げて火をつけるという作戦がとりづらく、また建物に逃げようとアリキメラは強酸でもって建物を食い荒らして人々に襲い掛かりだす。
「早く逃げろっ!」
 溶け出した酸を被りそうになった子供を身をもって宗太郎は庇い、その間に花が上にいるアリキメラを迎撃した。
「キメラごときに‥‥っ!」
 追い込まれている自分達への戒めか、それともこのキメラを放った敵に対する怒り‥‥花は静かに怒りながらドローム社製SMGをばら撒きはじめる。
 いつでもにぎわうであろう駅前の広場にはキメラの死体が転がり、負傷者の悲痛な叫びが響く。
 それをかき消すように宗太郎のエクスプロードの炸裂音と花のSMGから吐き出される空薬莢が覆いかぶさった。
『こちら駐屯地‥‥怪しい人影をみつけた、手が空いていたら来てくれ』
 仲間の持つ無線から応援要請が聞こえてくる。
「まさか‥‥やつか!」
「宗太郎君、こっちは任せて‥‥早く駐屯地の方へいって」
 覚醒を維持したままの花が宗太郎へと背を向け、残存する敵を探し始めた。
「ああ、いってくる‥‥こんなこと続けさせねぇ!」
 宗太郎は歯を食いしばり、アリキメラの死体を踏みつけながら痛む体に鞭打って走り出した。
 
●サン・ドミンゴ〜軍事警察駐屯地〜
「郊外へ医者は到着したか‥‥連絡ありがとう」
 煙草の煙をくゆらながら御影・朔夜(ga0240)は無線の通信をきる。
 その間にも右手に持った真デヴァステイターはアリキメラをやすやすと駆逐していった。
 味方の戦力も多い駐屯地での戦いは広い場所へ敵を誘うことから始まっている。
 敵は障害物を溶かしてくるが、こちらの射線は障害物を避けれはしないのだ。
「でやぁぁぁっ!」
 竜斬斧を振り、エリザ(gb3560)がアリキメラを斬るも次々と来るアリキメラに体が埋まりだす。
 AU−KVの中でも重装甲といわれるBM−049「バハムート」でさえも強酸は溶かし、エリザの肉体を蝕んだ。
 それでも、戦乙女たるエリザはアリキメラを弾き飛ばし、複数体まとめて蹴散らす。
 40匹はあろうかというアリキメラの群れは傷を負ったものを餌とみてギチギチと鳴いた。
「はぁ‥‥はぁ‥‥さすがに私向きの相手ではないようですわね」
「無理はするな、こちらの射程に引き寄せてくれればそれでいい」
 息を切らせながらも戦うエリザに御影は周りのアリキメラを潰しながら、自分の近くによるものから距離をとり撃ち殺す。
「いうほど簡単では‥‥ありませんよ?」
 20匹ほどのキメラを蹴散らしきったエリザは次々と食いつくアリキメラを牽制しながらも一般人に被害が出ないよう身をもって囮を努めた。
 その姿に勇気付けられたか軍事警察たちも弱ったアリキメラを追撃して駆除を始める。
 中には戦いで傷つき、食われるものもいた。
 だが、少しずつではあるが確実に敵が減っていることに希望を皆もっている。
「これで、ラストだ」
 タンタンタンとヘリポートに集めていた負傷者に近寄ってきたアリキメラを御影は何なく潰した。
 風が吹き、硝煙と煙草の煙が流れる。
「無事、すみました‥‥わ」
 穴だらけとなった金網にAU−KVが溶解され、血まみれになったエリザががっくりと倒れこんだ。
「ああ‥‥良くやった。少し休んでいろ」
 御影はエリザに近づき、労う。
 傷はひどいが、脅威は見つからず味方の戦力も残っている状況だから多少の休養程度なら大丈夫だろうという判断だ。
「それ‥‥よりも、こちらに人を集めるように‥‥手配‥‥を」
「ああ、それはやって‥‥」
 自分の怪我を放っておいて人々のことを考えるエリザに『ノブレス・オブリージュ(貴族の義務)』の精神を感じた御影は薄く微笑む。
 しかし、御影の視線の端にニヤリと笑う少女の姿が見えた。
 間髪いれずにそちらへ銃弾を放つ。
 少女はヒラリと銃弾を避け、誘うように黒いワンピースを翻して駐屯地から離れだした。
「駐屯地の制圧は完了した。郊外も安全ならこちらに人を送ってくれ」
 エリザの様子を見に来た軍事警察の男にそういうと御影は少女を追いかける。
「この状況下であんな格好の子供が平然と銃弾を避けるはずなどない」
 御影は確信を感じながら静かに呟いた。
 
●転換
「紅月、合わせろ! 『双夢閃撃』!」
「おう、くらいやがれっ!」
 キムム君と紅月はボロボロになりながらも最後のアリキメラを同時攻撃において排除しきる。
「お疲れさま」
「そっちもな」
 二人で何とかできたことを互いに喜び、ハイタッチを交わした。
『こちら住宅街の雑賀だ。制圧は完了したので負傷者を手当てしている。終わり次第そちらに避難させるから受け入れ準備を頼む』
『駅担当の花だよ。こっちも負傷者の手当て中。終わり次第そっちに向かうよ』
 喜びもつかの間、二つの地域より制圧完了の報告が続く。
「つつっ‥‥のんびりとしているわけにもいきそうもないですね」
 覚醒をといたキムム君が傷を押さえつつ、郊外の人員整理に動き出した。
『こちら駐屯地にいる軍事警察だ。傭兵から頼まれて連絡をしている。駐屯地の制圧が完了したのでこちらから迎えの車をだす』
 軍事警察から避難民の救助の連絡が届きだす。
「本当に忙しいな」
「ええ、でも、いい方向です‥‥合流しだいいきましょう。今いきなりというのも問題ですしね」
 このとき、二人は気づかないがこの選択はいい方向に転んでいた。
 
●女王蜂
「子供の遊びと呼ぶには始末が悪いが‥‥付き合ってやるよ。――何、退屈はさせん」
 『隠密潜行』で近づいていた御影が『強弾撃』と『速射』を合わせた連続射撃が少女に放たれた。
「無粋なことをっ!」
 フォースフィールドでも防ぎきれない攻撃を受け止めた。
 煙が辺りを包み、影すら見えなくなる。
 だが、追いついてきた宗太郎がその煙の中へと進み攻撃を仕掛けた。
「我流・鳳凰衝!」
 『流し斬り』で足払いをした後に『流し斬り』において胴薙の一撃を当てる。
「やったか?」
 御影が様子を煙を見ながら確認するが、上から歌声が答えた。
「ラァァァァラァァァ」
 甲高い声が建物を震わせ御影と宗太郎へと伝わり衝撃を与える。
 内臓を直接つかまれるような痛みが体を伝わり、二人は口から血を吐き出した。
「‥‥ふふ、久しぶりに手痛い攻撃をいただきましたわ。私の名前を教えましょう、私の名前は”クインビー”以後お見知りおきを」
 敗れたワンピースから白く美しい肌を覗かせてクインビーはスカートを摘んで礼をする。
「くっ‥‥さっきのダメージが聞きすぎてる、追えそうににない‥‥ぜ」
 宗太郎の体は血まみれであり、動けないほどに弱っていた。
「無理をするな‥‥今回限りは本当に無理をするな」
 宗太郎に向けて御影の優しさが見える。
「敵は私が追おう。軍人を手配しておくからおまえは駐屯地でエリザと手当てを受けてくれ」
「わかった。‥‥けど、頼んだぜ」
 そういい終えて宗太郎はゆっくりと目を閉じた。

●警告
「ボクは二番目かな‥‥?」
 ぞろぞろと人を引き連れてきた花は整然と手当てを受ける人の纏まりを見て呟く。
 2人の能力者と医者の姿しか見えず、人の数もそれほど多くはなかった。
 だが、その手当てを受けようとしている人の中に花は知っている人影を見る。
「お前は‥‥”ネゴシエイター”どうしてここにいるの?」
 花は覚醒し、アラスカとS−01の二丁へと持ち替えた。
「そうか‥‥お前がいたのか‥‥多少誤算だったな」
 ネゴシエイターと花が呼んだスーツ姿の壮年の男は静かに花の方へ向き直る。
「キミの主に伝えて‥‥いつでも、ボク達月狼の牙がおまえの喉元を狙っているって」
「ほう?」
「尤も‥‥伝える事が出来るなら‥‥ね」
 壮年の男が返事を返すと共に『二連射』と『強弾撃』でネゴシエイターを狙った。
「そうだな、伝えておこう‥‥」
 だが、男は花の真後ろへ一瞬で移動して首を掴んでいる。
 ぐぐっと力が込められ華奢な花の体が浮き出した。
「それと貴様らの手によって反逆の意志を見せたとする。この国全ての責任を貴様ら傭兵でまっとうできるのか、考えるがいい」
 花の首を掴んでいるネゴシエイターの頬を後頭部側から銃弾が掠める。
「ちぃっ、こんなところにも入り込んでやがるのか!」
 雑賀が銃を構えながら駆けてきた。
「邪魔が入ったな、こちらは言伝をしにきただけだ‥‥いずれまた、会おう」
 次の攻撃をする前にビュゥッと風がおきて花がどさっと地面に崩れた。

●逆転
「悪い予感が当たるってのは嫌なもんだなっ!」
 ヒューイがジャンプをしながらハミングバードでクインビーに『流し斬り』で斬りかかる。
 御影から逃げ出すクインビーを待ち構える形でヒューイが迎撃をしたのだ。
「本当にしつこいですわね‥‥でも、そろそろ時間かしら」
 ヒューイの攻撃を素手で受け流し、服が破れ体が傷つきながらもクインビーは微笑む。
「時間ってどういうことだ!」
「私の可愛い子供が生まれますの‥‥私の名前はクインビー、女王蜂なのですよ?」
 キィンとはじき出されたヒューイは胸元に持つ無線機を持った。
『こちら、駐屯地! 負傷者からキメラが!? うわ、わぁぁぁっ!』
 グシャッという生々しい音と共に通信が途絶える。
「てめぇ‥‥こんな仕掛けしやがって!」
「私と戦うのも結構ですが、貴方達が助けたい人‥‥救えなくなりますわよ?」
 ヒューイの怒りに満ちた顔を楽しそうに眺め、クインビーは高く笑った。
「それでは、ご機嫌よう‥‥またお会いするときを楽しみにさせていただきますわ」
 駐屯地へ駆け出すヒューイに向け、クインビーは笑い、逃げる。
 おいついた御影も事情を聞くと駐屯地へと戻らざるをえなかった。
 駐屯地では負傷したエリザと宗太郎だけでは対処しきれないほどに負傷者の体内からキメラが溢れている。
 苦しむ人を助けるためにキメラと共に人を殺さねばならないのだ。
 サン・ドミンゴのキメラの排除は完了したが、夢にでそうな依頼となる。
 アスレードとの本格的な戦いが始まろうとしていた。