●リプレイ本文
●最終打ち合わせ
「さすがにいきなりゲリラ過ぎるのは印象悪くしそうなので、タイムスケジュールとか考えてきました!」
フェイト・グラスベル(
gb5417)が束になった企画書を手に米田のいる社長室へと尋ねる。
「おみゃあさんは元気がええね〜。とりゃあず、目を通させてもらうでよ。俺のほうからも口を利いてやらんとな?」
元気一杯なフェイトにご褒美と米田は出来上がったCDを一枚手渡した。
合宿所での集合写真に各自のCDに対する意気込みの落書きが表紙にあり、開けば裏表紙にはパジャマ姿の写真が入っている。
「ついにCD発売‥‥緊張しちゃいますね〜」
「おお、あとこれが去年お世話になった見せの住所だでよ。前もって話しはしておいてあるでよ、最後の詰めはおみゃあさん達に任せるぎゃ」
緊張しているフェイトの肩を米田は叩きながら紙を一枚見せた。
「社長! 数字取れるように皆でがんばりますからTV番組の獲得お願いします!」
「悠ちゃんもいってますけど、あたしからもお願いします! 宣伝としてできるならTVに出てみたいんです!」
篠原 悠(
ga1826)と田中 アヤ(
gb3437)が米田に対して頭を下げてお願いをはじめる。
「おお、それなら二人とも一緒にくるとええがね。収録していた番組の方から出演のオファーが実はあったでよ。でも、ゲリラライブもするならおみゃあさんらのスケジュールが厳しいでよ」
「じゃあ、ライブはDIVAに任せてあたしもTVにでかけます」
お願いに対する米田の返答にアヤは悠と共に米田と出かけた。
「米田社長‥‥あの、予算とかはどうですの? 活動時間とか日数とか活動範囲とかも広くやりたいですの」
一連の話を静かに聞いていた終夜・朔(
ga9003)はおずおずと手を上げて去ろうとする米田に質問をぶつける。
「企画書を見た限りは一箇所のゲリラライブと店でのライブがええとこだがね。ビラ配りもするならますます時間は限られるでよ?」
時間を目一杯使うとしてもどれもこれも中途半端では効果はあがらないし、リハーサルやスタッフの都合もつけなくてはならないのだ。
一つずつできることを手でやるのであればますます時間はなくなるので仕方ない。
「わかりましたの、朔もTVにいきたいけどまずはゲリラライブの許可を貰いにいきますの」
ぺこりと朔は米田に頭を下げると警察の方へ日程調整等に出かけることに決めた。
「あぁ、すみませんっ! 遅れました‥‥別のお仕事が入っていまして‥‥」
ばたばたと社長室に入ってきたのは鬼道・麗那(
gb1939)である。
最近は特撮番組にも出演し、ALPとして売り出し中なのだ。
「麗那かいちょー間に合ってよかった。冥華と一緒にゲリラライブしにいこ?」
慌てて入ってきて息を整える麗那に舞 冥華(
gb4521)がペットボトルの水を手渡す。
「ゲリラライブとか‥‥えっと、事情はなんとか掴みます」
ぐいっと麗那がペットボトルを水を飲み干すと、各自は方々の仕事をするために一度解散したのだった。
●ゲリラライブ
頼み込んで許可の元、公園でのゲリラライブが開催される。
『OK、私は最初からクライマックスだよ!』
遅れてきたこともあり麗那は司会としてゲリラライブは動くことにしていた。
麗那がマイクを持って前に出れば事前にできる限りビラを配って集まったギャラリーがぽつぽつと集まりだす。
『今回は突発的なライブだけれど、皆気合十分よ。今度発売するCD「ALP出陣行進曲」に3人組ユニットDIVAの登場よ』
KV☆(スター)と呼ばれるヒーロー劇の舞台衣装でステージの上を動く麗那が合図を送ると、フェイト、冥華、朔の3人が赤、白、黒のゴスロリ衣装で出てきた。
『はいはーい、初CD記念にこんなライブが出来て嬉しいFateです』
『Mayだよ。すごくきんちょーしているけど、一生懸命歌う』
『聞いてくださいの‥‥DIVAで『幸せな日』なの』
朔がネコミミをピコピコさせながらお辞儀をするとイントロが流れはじめる。
『幸福な日』 作詞:DIVA
♪〜〜
(冥華)
おはよーの一言で
おねむの時間はもうおしまい。
私と一緒に遊ぶため
起き上がってね お兄さま?
一緒に仕度を整えて 朝を元気に飛び出そう
(フェイト)
明るい日差しの中 さあ走り出そう
風を切って何処までも 速く速く
アナタと一緒ならずっと遠くまで
きっとあの空の向こうまで行ける筈
だからその手を繋がせていてね?
(朔)
星空を眺め横たわる
聞えるのは世界の鼓動
私は眠るの
開いた扉は夢の世界
其れが私の幸福
〜〜♪
個別パートメインの歌のため許可の交渉や打ち合せの合間を使った個人練習で仕上がった歌に拍手が贈られた。
贅沢をいうのであれば、もっと合わせた練習をしておけばよりいいものに仕上がるだろう。
『聞いてくれてありがとうなの。応援しだいで正式なライブが開けると思うの、だからCDを買って欲しいですの』
『こちらのお店で他のメンバーも含めたミニライブをやるから来てねー』
朔が頭を下げるとフェイトと冥華が手書きのビラを配りアピールを続けた。
「あとで、皆さんの肩をも見ましょうか」
ステージから降りてチラシを笑顔で手渡していく3人を麗那は微笑ましく眺める。
ゲリラライブはまずまずの出来だった。
●ラジオで宣伝っ
「ライディ・王(gz0023)の『Wind Of Hope!』 今日もこの番組がやってきました。今回はCD宣伝のためにALPの『Break Bit’s』のお二人に来てもらっています」
「ご紹介にあがったBreak Bit’sの悠でーす。長い合宿の末にプレスCDやけどCDも売り出されるようになってめっちゃ嬉しいです」
「『Wind OF Hope!』をお聞きの皆さん、こんにちは! ALPから来ましたアヤです。あたしたちALPのCD【ALP出陣行進曲】が今日発売! ALPを知ってる人も知らない人も、ぜひ一度聞いてみて下さいね! そして、なんと! CD発売に合わせて、同じくALP所属のユニット【DIVA】がゲリラライブやっちゃってます」
出だしから二人の勢いのある挨拶から番組はスタートする。
「お二人は以前にもバレンタインイベントにて歌を発表していましたね。そちらはDVD−BOXに収録されていますね?」
「さすがマネージャーですね。DVDの方はまだ販売されているの見たことないですけど‥‥」
マネージャーとしてではなく、パーソナリティとしてライディは二人とスタジオの中で会話をもちかけた。
「せやねー。ALPとしては初のオンリーCDになるんよね。インディーズみたいなプレスモノとはおもっとらんかったけど、やっぱりええよね〜」
インディーズとして活動していた悠はCD販売について思い方が少し違っている。
「悠ちゃんとアイドルとしてCD出せるなんて思っても見なかったですよっ! CD発売といえば、店頭ミニライブでも歌えることになったんですよね。あとは最近舞台で売り出し中のカラテガールズの麗那さんもいますよ」
「う〜ん、そこなんやけど、ライディマネージャーは今までとこれからのALPに思うことってなんかあるん?」
アヤが明るく宣伝をしていると、悠は静かに質問を投げかけた。
「どうなんでしょう? 個性が強いといいますかIMPよりも歌いたい人ばかりではないというのが感じましたね。あとは悠さんになんだかんだで負担がかかっているような気もします。一番芸能活動が長いというのもあるんでしょうけど」
「確かにちょっと甘えちゃっている部分は大きいかもしれない‥‥」
「自由度が高すぎて、やりたいことよりやらなきゃいけないことが多い気はするんよね。だから、相談とかサポートしなきゃとはうちは考えてそっちにまわっとるんよ」
「そうですね、そのあたりは社長と相談して仕事の具合を調整しようとは思います。今後としては8月のコミックレザレクションを終えたあとに9月から新体制で動こうとは計画中です。積極的に個人個人が動けると一番いいですね」
「なんか、どっちがゲストかわかんない感じになってきちゃったね」
悠とライディの会話を聞いていたアヤがぽそりとつぶやく。
「思わずマネージャーとしてまじめに答えてしまいました‥‥気分を切り替えてここで一曲、Break Bit’sで『Wish』をどうぞ」
イントロをBGMに流しつつ静かに曲は始まった。
『Wish』 作詞:悠
♪〜〜
(アヤ)
言葉の雨降り続く毎日
傘も忘れ濡れ歩くこの道
仲間と出会い笑顔を交わすDelight
全力疾走 坂を駆け上がれ
(悠)
その先にある景色はdazzling
手を伸ばせ 遠く見えるそれも
飛び上がればきっと掴めるさ
(二人)
この大空の下 身を寄せ合って
回り逢えた奇跡はきっと素敵
遠く離れた空 星に祈っている
I wish We Wish upon a Star
〜〜♪
●ミニライブショー
「今日はみんな集まってくれてありがとー。冥華とってもうれしい。MCってよくわかんないけど、司会進行をがんばる」
CDショップのイベントスペースにて準備されたステージにたった冥華は白い着物姿でマイクを持って司会を務める。
ビラ配りや事前のゲリラライブの効果もありイベントスペースには500人を超える人が集まっていた。
狭いイベントスペースに人がたまり、ライブの開始を今か今かと待っている。
「げりららいぶよりすごい人で冥華、きんちょーしてくる。それじゃあ、準備してくるから少し待っててね」
冥華が着替えのために一度下がると、ステージのディスプレイに悠とアヤが出演した深夜の音楽番組が映った。
【Another Legend Projec〜ALP出陣行進曲〜】というテロップと共に合宿時放送で使われなかった未公開映像やラジオ放送中にとっていた映像などが流れる。
『最初はちょっと面白そうかもって思って参加したんですけど、今では自分の歌をもっと聞いてもらいたいという風になりましたね〜』
学生服姿でハンディカメラの前で挨拶をしているフェイト。
『貴方の心に響く歌を届けます』と大きな夢を語る朔や舞台衣装でアピールをする麗那などがVTRとして紹介されていった。
『ALPのメンバーはもっといますけど、今回はCDに関係するメンバーだけの紹介でごめんなさい。合宿で特訓や製作をしたアルバムCD「ALP出陣行進曲」が気になった人はCheck It!』
『PVも現在編集中やから、そちらもこの番組で放送できたらと思っとります。また呼んでくれたら嬉しいな』
軽い乗りで司会者と共に話をする二人の姿と編集し終えたプロモーションビデオが流れ終わると、イントロが流れる。
KV☆の公式挿入歌『恋の正拳突き』だ。
『恋の正拳突き』作詞:鬼道麗那
♪〜〜
ずっと私を見てたでしょアナタ
ちゃんと全部知ってるわ
草食系って何かしら?
臆病の言い訳ならいらないの
そうよ私は高嶺の花
誰もが振り向く学園アイドル
そうよ私は高嶺の花
ちゃんとハートを見せなさい
恋の正拳突き
セイヤァ!
〜〜♪
小さな子供達や大きなお友達にその存在感をアピールして会場を暖める前座として動く。
残念なのはCDでは共に歌っているカラテガールズのメンバーがいないことだった。
「みんな、聞いてくれてありがとう。この後のサイン会も楽しんでいってね、レイナからの一般庶民の皆さんへお願いよぉ」
ウィンクひとつで正拳突きを放つと次のDIVAや、Break Bit’sと交代していく。
場が盛り上がったイベントスペースは拍手と声援によって埋め尽くされるのだった。
●サイン会の末に‥‥
「ライブ聞いてくれてありがと〜。これからも応援よろしくやね」
訪れたファンに握手と笑顔で悠は答える。
「インディーズ時代から聞いてます。これからもがんばってください!」
緊張した様子で握手を終えた女性ファンは勢いよく頭を下げるとサインの描かれたCDを大事そうに抱えて去った。
「CDお買い上げありがとうございまーす。挨拶周りで使った名刺が余っていたので一緒につけますね〜」
カラフルな色でデザインされ、Fateという芸名とフェイト・グラスベルの2つの名前の書かれた名刺をサインしたCDと共に訪れたファンへとフェイトは手渡す。
貰ったファンは嬉しそうに顔を綻ばせた。
「ちらしもってきてくれたの? じゃあ、冥華すまいるサービスする。お買い上げありがとーございます」
冥華もゲリラライブにて配ったチラシをもって来ているお客ににっこり笑顔で感謝をあらわす。
麗那やアヤ、朔もそれぞれ丁寧に対応をしていると、ライディがマイクを片手に6人が並んだ机の後ろに立ちだした。
『えー、サイン会も中盤ですが皆さんにご報告があります。今回のCD売り上げや反響の多さを考えてアイベックス・エンタテイメント社長の米田からALPのライブが決定しました。詳細はおって発表しますので続報をお待ちください』
「マネージャー、今の本当ですか!」
「大きなオンリーライブ嬉しいですの」
ライディのサプライズ報告にアヤと朔が大きく反応する。
『皆さんは落ちついてそのままサイン会続けてくださいね』
「はい、皆さんも残りを頑張りましょう。時間一杯までサインを書き続けましょう」
苦笑しながらライディが注意していると麗那がメンバーに発破をかけてサイン会を終わりまで続けたのだった。