タイトル:ALP〜合宿にいこう〜マスター:橘真斗

シナリオ形態: シリーズ
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/04/23 01:43

●オープニング本文


 ――京都市某所。

 緑豊かでのどかというのがふさわしい。
 
 電気も電波も届かず、情報化社会からも隔離され‥‥時折キメラがでるらしい。
 
 近畿UPC軍の演習場としても使われるその場所で一つの伝説が生まれようとしていた。
 
 未来を夢見るアイドル達の登竜門
 
 ALP 正式始動
 
 
●京都市某所
「‥‥というわけで、皆さんには合宿してもらうことになりました」
 目隠しをした上で連れてこられた建物の前で”IMPマネージャー”ライディ・王(gz0023)は連れてこられたアイドル達に説明を行う。
 選抜された8人は駆け出しアイドルをメインに、これから本格的な芸能界修行が必要なものが集められたとのことだ。
「食料はあまりありませんが、食べれる植物や、キメラなんかはいるみたいなので皆さんで集めてください」
 サバイバルをしろとのことである。
 各自にはビデオカメラとバッテリーのまとまりと、日記帳が配られていた。
「皆さんのビデオは自分の動きのチェックや、料理なんかとってちょっとしたムービーなんかにつかったりできます」
 各自に渡されたものの変わりに、財布や貴重品がやアクセサリが預けられていく。
「皆さんにここで三ヶ月の合宿を行っていただきます。ただ、傭兵のお仕事もありますので一週間程度になる短期講習などを月1で行います」
 集められた駆け出しアイドルは期待を胸に話を聞きだす。
「はじめは体力トレーニングやレッスン、協調性の強化のレクリエーションなどをおえ、インディーズCD販売をした後にライヴでデビューという流れになりますね」
 普通には帰れませんから、各自日々の生活の準備で必要なことは何とかしていってください。
 唖然とする一同を前にライディは言うべきことをすますと荷物を部屋に運ぶのだった。
 

●参加者一覧

犬塚 綾音(ga0176
24歳・♀・FT
篠原 悠(ga1826
20歳・♀・EP
如月・菫(gb1886
18歳・♀・HD
鬼道・麗那(gb1939
16歳・♀・HD
鷹代 アヤ(gb3437
17歳・♀・PN
ファーリア・黒金(gb4059
16歳・♀・DG
舞 冥華(gb4521
10歳・♀・HD
フェイト・グラスベル(gb5417
10歳・♀・HD

●リプレイ本文

●食材を探せ!
「待ちに待った合宿! ‥‥ってなんでサバイバルなのさ、ライディさん!」
「修学旅行みたいで楽しいやん、ほらアヤちゃんも魚の罠仕掛けにいこか。その後は山菜探しやね」
 田中 アヤ(gb3437)が山の中で宿舎で待っているマネージャーに突っ込みをいれていると、篠原 悠(ga1826)がアヤの手を引き川のせせらぎの聞こえる方へと連れ出す。
「合宿合宿〜 汗と涙と友情と〜♪ 新車のデビューがオフロードになるとは予想外! でも突っ走って地図を作るぞー!」
「はひぃ‥‥つかれ‥‥そうか! AU−KVを走らせばいいのです。フェイトちゃん、ぐっどあいでぃあ!」
 買ったばかりのAL−011「ミカエル」に跨って野道を駆けるフェイト・グラスベル(gb5417)を如月・菫(gb1886)がDN−01「リンドヴルム」で追いかけた。
 地図の作成も兼ねて走りやすい道を進み、目印になるものをフェイトはメモをし菫はそのフェイトをビデオカメラで撮り続けた。
「あ、アケビがありますね〜。この辺も取っていきましょうか」
 5分ほどバイクを走らせているとフェイトは山の果物を見つけた。
「おぉー、フェイトちゃんすごいねー。あ、おいしそうなキノコ」
 AU−KVをアーマーモードにして高いところになっているアケビを採取しているフェイトを尻目に、菫は派手な色合いをしたキノコをニヤリと笑いながら回収する。
 一つ、二つとキノコを採って野道から茂みの中へと菫が進むと、何か毛の塊とぶつかった。
「にゅ?」
 何かと思ってそちらを向くと熊キメラと目と目が通じあう。
「ぎゃー熊ー!」
『え、菫ちゃん? 熊と会ってるの? うわーい、ガチバトだ〜♪』
 菫が精一杯叫ぶと楽しそうなフェイトの声が返ってきた。
 
●サバイバルクッキング
「宿舎のお掃除も終わりましたし、かまどを作りましょう」
 たゆんたゆんと胸を揺らし、ファーリア・黒金(gb4059)はブルマ姿で作業を始める。
「猪とってきたよ。一応キメラになるんかねぇ? でかいのだし鍋をしても余りそうだよ」
 犬塚 綾音(ga0176)はフォーリアに負けない胸を揺らしながら大きな猪キメラを引きずってきた。
「お二人ともすごいです‥‥えっと、何がとはいいませんが‥‥あ、私も調理の用意をしましょう!」
 二人の立派な姿をみて、鬼道・麗那(gb1939)は半分誤魔化すように包丁や鍋などを宿舎の中から外の炊事場へと持ってくる。
「おぉ、かまど‥‥冥華、野苺と山芋とってきた。でざーとに野苺、きっとおいしい」
 舞 冥華(gb4521)がカンパネラ学園制服のスカートに集めてきたものを入れてとことこと歩いてきた。
「冥華も良くやったね? えらいよ」
 小さい体を泥まみれにしながら食材を集めてきた冥華を綾音が撫でようと近づくと、冥華がビクッとなって離れる。
「いのしし‥‥引きずってる‥‥冥華はひきずらない?」
「引きずらないよ。ほら、山芋とか転がってるじゃないか‥‥」
 お人形さんのような可愛らしい反応をする冥華の姿に綾音の顔もつい綻んだ。
 こぼれた食材をひろい、炊事場へと猪と共に運びこみ、解体が始まる。
「さて、牡丹鍋ですよね? キメラなら包丁よりこっちの方がいいでしょうか」
 かまどを作り終えたファーリアがAU−KVを装着し、槍斧「ドライグ」で猪キメラの頭を切り落とした。
「なんか、すごい映像です‥‥」
 ビデオカメラを回して撮影していたライディ・王(gz0023)は返り血ち染まるAU−KVを見ながら呟く。
 後で編集しないといけないはずだ。
「飯盒でご飯を炊きましょう。鍋にご飯は必要ですよね」
 被写体を動かすと麗那がファーリアの作ったかまどでご飯を炊こうと孤軍奮闘中である。
「かいちょー、冥華火をおこすのてつだうの」
 食材を置いた冥華が手を貸し出し、この日の夕食はちょっと固めのご飯と肉の多い牡丹鍋だった。

●真夜中のレッスン
 熊キメラや猪キメラがいたこともあり、能力者達はかまどに火をくべながら交代の番をしている。
「ねぇねぇ、悠ちゃん。ギター教えてよ」
「アヤちゃん眠れんの? ええよ、隣にきてな」
 二人は夜の肌寒さを火で暖めながら、隣り合って座った。
 悠はギターを組んだ足の上に乗せ軽くならす。
 都会やラストホープでは見られない満天の星空が頭上に広がり、ギターの音色とマッチしてプラネタリウムを見ている気分になった。
「ギターはただ弦を弾くだけやなくて、コードを押さえなあかんのやで?」
「こ、コード?」
 初心者のアヤに利き手による弦の押さえ方を悠は丁寧に教えだす。
 アヤの手にそっと悠の手が伸び、背中に胸をぴったりとくっつけた。
「だ、ダメ‥‥悠ちゃん、これ以上は‥‥」
「まだいけるやろ? ほら、こうやって‥‥」
「あっ‥‥あーッ! 指がつるっ、これ、つるって!」
 ぐいっと普段やらない形に指を曲げさせられ、アヤが悶絶する。
 夜風に乗せてアヤの絶叫がしばらく流れていくのだった。
 
●早朝トレーニング
 二日目の朝、日も昇りかけた頃からトレーニングをしている人影がある。
「正拳突きは脇を閉めて引き手を素早くするの、えい!」
 舞い落ちる花びらを正拳突きでジャージ姿の麗那は打ち抜いた。
「かいちょーすごい‥‥でも、冥華も花びらみたいにならない?」
「なりませんよ。冥華さんに教えたいのは心です。武道に大事なのは力でも技術でもなく心、そして心を強くするのが日頃の鍛練なんですよ」
 がくがくと震えながらビデオを回す同じくジャージ姿の冥華に向かって麗那は微笑むときりっとした表情になって諭す。
「へぇ、あんた達もこんな早くから訓練してるんだ。あたしも日課の素振りをしにね」
 ジャージ姿の綾音が鞘に納まった蛍火を肩でトントンとしながら宿舎から外へでてきた。
 蛍火が竹刀であれば、体育教師という出で立ちである。
「はい、折角ですし一緒に走りましょう! マッピングはしましたし、足で歩いてみましょう、坂道ランニングです」
 少し体を動かしてスイッチが入ったのか麗那は体育会系モード全開だった。
「冥華がんばる」
「しかたないね‥‥折角だから付き合ってやるよ」
 やれやれと思いながらも、綾音は冥華と共に走り出す。
「お、皆さんいってらしゃーい! 私は薪を割って朝ごはんの用意しておきますね〜」
 走っていく3人をフェイトが手を振って見送りだした。

●京娘ランチ
「さぁ、に菫さん。魚の内臓を抜くよー」
「韮といいかけましたね? 韮といいかけまーしーたーねぇ?」
 思わず菫の名前を間違えかけた悠をジト目で菫が詰め寄る。
 口元は笑っているが、目は笑っていなかった。
「悠ちゃん味噌汁はふきのとうだけでいいかな?」
「豆腐もないし、仕方ないやね。変わりにつくしのお浸しと山うどの金平でお仲を満たそうか」
 同じ作業をしているアヤの問いかけに悠は答えながら包丁で魚の腹を開いて内臓を取り出す。
「うわ、ぐろい‥‥気持ちが‥‥」
「何ゆうとんのん‥‥昨日熊をフェイトちゃんと一緒に半殺しにしたって聞いてるで?」
 魚の内臓から目をそらして誤魔化そうとする菫を悠は突っ込みで返した。
「それはそれ、あ、味噌汁の具にはキノコがありますよ! キノコ!」
「キノコはまずいよ。に‥‥じゃない菫ちゃん」
「また韮といいかけたー! キノコいれるぞ! キノコいれちゃうぞ!」
 女3人そろえばかしましいというが、内容は実に死活問題に貧している。
「えっと、薪が勿体無いんで早くやってください」
「「「すみません」」」
 Tシャツブルマ姿のファーリアによる鋭い突っ込みに3人は一斉に頭を下げ、まっとうなランチのために頑張るのだった。

●お風呂を求めて‥‥
「食事のときの燃料として使い続けるとあっという間になくなりますし‥‥あと、そろそろお風呂に入りたいですね」
 四日目ともなり、さすがに井戸水の沐浴も限界にきているのか、アヤは呟く。
 そろそろ暖かいお風呂に入りたいと誰もが思っていた。
「歩く範囲ももう少し広げるとしまするかね?」
 綾音もそれに同意し、目印の吊るされたぬいぐるみを探す。
 ぷらーんと何故か首を括った姿でぶら下がるぬいぐるみを見つけ、なんともいえない気分になった。
「どうですか、私の力作ですよ。この手と首の角度が難しくてですねぇ」
 顎に手をあてながら菫はぶら下げた人形の芸術性について語りした‥‥ビデオカメラでぬいぐるみを撮影しつつである。
「菫ちゃんが昨日の夜に話していた面白いことってこの事だったんだね? ドラム缶はこの当たりではみませんでしたよ〜」
 昨夜の見張りでフェイトは菫と話し込んでいたためか反応はドライだ。
 兵(つわもの)の予感がする。
「池の方にいってみましょうか、魚のことばっかり考えていて捜索してないですし」
 そういうアヤの意見もあり、一同は魚を取るための罠を仕掛けた池へと回った。
 餌は魚の内臓から、猪の内臓など出てきたものをフル活用している。
「あの池の奥の方‥‥水草に隠れているけどそれっぽいのがあるね」
 綾音が指差す方向にドラム缶の一部が水草にかくれながらも見えた。
 問題はどうやってとるかである。
「AU−KVならいけそうだけど‥‥」
 フェイトが菫の方をみた。
「私は‥‥お、おなかがっ!」
 案の定、菫は急におなかを押さえて蹲り出す。
 この四日間で計100回は越えるであろう持病の癪だ。
 もっとも、水草漂う川にAU−KVで降りたくない気持ちはドラグーンとしては当然かもしれない。
「じゃ、じゃあ、あたしがいくよ」
「いや、ここは最年少の私がっ!」
 アヤが挙手しフェイトが次に手を上げた。
「おなかが痛いけど、ここは私が頑張るよ。これ以上迷惑かけられないし」
「「どうぞどうぞ」」
 菫が遠慮気味に手を上げるとアヤとフェイトは掌を返して菫に譲る。
「は、ハカッタナー!」
「コントやってないで、さっさといきな。カメラは預かっておいてやるからさ」
 綾音はすかさず菫からビデオカメラを取り合あげ、AU−KVに乗せさせた。
 教訓、仮病はいけません。
 
●突撃朝ごはん前
「おはよーございまーす」
 ウィスパー(囁き)ボイスで挨拶をする悠が画面に映った。
 日付は5日目の朝である。
 前日は夕食時に温めた石によって沸かしたドラム缶風呂に入って気分すっきりだった。
「今から、合宿にもなれて油断している人の寝起きを狙おうとおもいまーす」
 ウィスパーボイスを続けながらごろ寝をしている部屋へ悠は忍び足で進む。
 まずは唯一の男性であるライディの部屋からだ。
 油断している人といえば、ここははずせない。
「おーしっかり寝ておるわ。薄紫のパジャマをきているようやね」
 口調をいつもの緩んだ関西弁に戻し、ライディの寝姿をとった。
 寝苦しかったのか多少布団をがずれ、パジャマやおなかが出ている。
 寝顔は綺麗なものであり、女装が似合うというのも頷けた。
「綺麗な寝顔でーす。女装をいくらか経験しているだけはあります、今後の展開に皆さんきたいですよー」
 再びカメラを自分の方に向けてコメントを述べた悠はライディの足をくすぐりだす。
「ふぁ‥‥んゅ‥‥」
 なんとも悩ましげな声を上げて、ライディは再び眠りについた。
 手ごわい。
「では、これでどうやろ?」
 手に持っていた黒いリボンをライディの髪に悠は結びだす。
 しかし、ライディは起きなかった。
「ふふ、これは自分で起きた時のほうが楽しみやね。次ぎいってみよー」
 次に訪れた部屋はファーリアと麗那、冥華が寝ている部屋である。
 麗那と冥華は朝の訓練に出かけていて布団がたたまれていた。
 布団のもっこりしているところへ、そーっと悠は近づく。
 わざわざ『隠密潜行』を使ってまでだ。
「おはよーございまーす」
 もっこりしている毛布を捲ると、ぽよんと二つの山がカメラの目の前に現れ揺れる。
 しばし絶句する悠。
 年齢、音楽経験、傭兵のキャリアでファーリアに勝っていても越えられない何かを見せ付けられた気がした。
「もう食べれません〜」
 ごろりとファーリアが寝返りをうつと二つの山は狭苦しそうにベッドと腕に挟まれて形が歪む。
 もう一度絶句。
 シャツにブルマというスタイルを崩さないファーリアの寝姿をそっと毛布で隠すと悠は静かに寝室を後にするのだった。
 
●ラストはバーベキュー
「余った食材は一気に焼いてしまいましょう。炊き込みご飯も作れば調味料も使い切れますよね?」
 麗那がリーダーシップを見せて、いろいろと意見をだしつつ最後の昼食の用意を始める。
 ALPのリーダーを目指す彼女にとってこういう機会は見過ごせないのだ。
「冥華も手伝いする。おこめあらえばいい?」
「そうですね。お米を洗ってもらいましょうか」
「肉がないのが残念だねぇ‥‥ちょっと保存方法も次は考えておいた方がいいかもしれないね」
 魚をメインとしたバーベキューメニューを焼きつつ綾音は少し残念そうに呟く。
「次回への課題も出来きましたね。でも、ドラム缶風呂とかマップとか大分整ってはきましたし、次来るときはきっと楽ですよ」
 麗那が綾音を元気付けるかのようにぐっとガッツポーズで声をかけた。
「きっと、次も楽しい。冥華もちょっと空手できるようになった」
 米を洗い終えた手で、あちょーと突きをしだす冥華の姿は微笑ましい。
「そうだね、あたしも‥‥ちょっとは歌の練習できたしね」
 ぽそっと二人に聞こえない小さな声で綾音は呟き、火の様子を見続けた。
 その様子をビデオカメラにライディは収めながら7日間に渡る合宿ドキュメントの終了が近いことを感じる。
 楽しく歓談をし、食事を共にするアイドルをカメラ越しに眺め、ライディは微笑んだ。
 たとえ、寝ている間にリボンをつけられて恥ずかしい思いをしても、涙を呑んで応援しよう。
 心の中でそんなことを考えながら、ライディはアイドル達の様子をカメラに収め続けるのだった。