●リプレイ本文
●打ち合わせ
「えっと、皆さんからの希望をまとめますと。カレンダー以外は『ボイス入り目覚まし時計』『クリアファイル』『ちびキャラキーホルダー』ですね?」
マネージャーであるライディ・王(gz0023)が事前に集められた意見の書類を手に会議室で話をはじめる。
「アイドルグッズを開発することになるとは‥‥人生何がおきるかわからないですね」
今回集められたIMPメンバーの中、唯一の男性である叢雲(
ga2494)は感慨にふけっていた。
「久しぶりのお仕事ですからがんばりたいですね。ちびキャラキーホルダーはある程度バリエーションが欲しいですね。私服とIMP統一衣装の2種類は必須じゃないかと」
夕凪 春花(
ga3152)は初期メンバーではあるが忙しくて芸能活動はあまりできていない。
その分、今回の依頼への意気込みは他のメンバーよりも数段上だ。
「冥華はきーほるだー体操服にぶるまか着物がいい」
「あー、着物は出来れば私とかぶりそうですから遠慮してもらえると嬉しいですね」
常に着物姿の舞 冥華(
gb4521)と加賀 弓(
ga8749)は年の離れた姉妹にも見える。
弓としては妹の一人がカンパネラ学園に通っているため学生向けのグッズ作成には気合も入っていた。
「目覚まし時計も抽選で名前を呼んでもらえたりすると売れそうですよね」
「下敷きは外れてしまったようですね。クリアファイルは持ち歌の歌詞の一部でも書いてあったりするといいかもしれません」
叢雲や弓も細かいグッズへのアイディアを出す。
自分達が関わった商品が出回るということもあり各自にこだわりがあった。
「グッズについてはそれでいいと思いますが、まずはサンプルをつくり、限定販売でマーケティング調査をしてみませんか?」
IMPの後輩グループでもあるALPのリーダーを自負する鬼道・麗那(
gb1939)がなビシと手を上げてライディへ意見をだす。
「えっと、それもいいのですが‥‥麗那さんだけメインであるカレンダーについての意見等がないようなのですが」
「ああ!? ご、ごめんなさいっ! 忘れていました!」
しっかり決めていたと思った麗那だが、ドジっ娘らしい部分が浮き出て顔を赤くしながらライディに謝った。
「僕の方で振りわけますね。それでは撮影と平行して市場調査の方を有志の方と共に行いたいと思います」
苦笑しながらもライディは麗那の頭を上げさせ、会議を打ち切る。
ライディはマネージャーとしても大きく成長していた。
●個人プロデュースをしよう
別の会議室では個人プロデュースのため
「んで、社長さん。あたしはこういうのを用意したいんだけどさ」
鷹代 由稀(
ga1601)が手持ちのスケッチブックを椅子に座る米田へ手渡す。
そこには黒をベースに銀色でIMPのロゴの入った耳に書けるタイプのヘッドホンの絵があった。
「最初はシャツとかも考えたんだけどさ。『これであたしらのCD聞いてよね』ってメッセージも篭めて‥‥ね。派手さよりも機能性勝負よ」
「これは中々‥‥今回はヘッドホンだけでいきますが、今度メディアプレイヤーのデザインなどもやってみますか? IMPモデルの計画があるにはあるんですよ」
スーツ姿の米田はスケッチブックを受け取りながら真剣な目で由稀を見上げる。
「本当? まぁ、考えておくよ」
少し照れくさそうに由稀は頬を掻いてジーラ(
ga0077)と変わった。
「大規模で忙しいのにこっちの仕事もあるなんてね‥‥来ているボクもボクだけどさ。あ、グッズなんだけど今回選考で落ちちゃったステッカーをボクのプロデュースという形でやりたいなって」
ジーラも自前のイラストを米田の前に広げる。
デフォルメされたIMPメンバーに猫耳や狐耳など動物的要素を織り交ぜたイラストが一枚一枚に描かれていた。
エンブレムやIMPグッズにも広く使えそうなデザインに米田はふむと言葉を漏らす。
「かなりいいセンスですね。そういえばKVのエンブレムも手書きだったとか? この手のポップなデザインはウケもいいですからね。今後の商品展開の統一としても少し考えましょう。まずは試作でステッカーですね」
米田は全てのデザインに目を通し終わると微笑みを浮かべた。
「最後は私のものですね‥‥少し高価になってしまいそうなのですが」
一番最後にアイディアを出してきたのは緋霧 絢(
ga3668)である。
レプリカのハンドガンのデザイン画を持ち出して、米田に見せた。
「モデルガンはさすがに高くなりそうですね」
「ですが、コレクターズアイテムとしてこういうのもいいかなと思いまして‥‥」
「こういう玩具があるのご存知ですか?」
米田が引き出しから出したのは単発式火薬銃のリボルバーである。
子供が遊べる程度の小さなものだ。
「こういうものがあるのですね」
「ええ、これならシリアル入りにしても原価は安くできるでしょう。もっとランクが高いものは売れ行きしだいということで」
パンと音のなる小さな銃を手にしながら絢は米田の言葉に頷く。
「皆さん予想以上にいいアイディアをもっているようですね。スポンサーの配分については任せてください」
集められたデザイン画を今一度見回して米田は微笑むのだった。
●カレンダー作成〜前半戦〜
アイベックス・エンタテイメントの所有するスタジオへ場所を移し各々イメージした衣装やセットを注文して用意していた。
「えっと、トップバッターをやらせていただきます」
年度式カレンダーのため、4月が一番はじめである。
出遅れ気味の春花はその最初を飾って見たいと希望していた。
昨今のIMPの業績向上により撮影スタジオも中々の規模となり、中庭のような場所も作られている。
そこで春花はゴスロリ服でお花畑にペタンと座る格好で写真を撮る。
春の風が頬をなで、髪を揺らし儚げな雰囲気がいっそう強くなった。
「何で私がこんなことをしなければならないんですか! くしゅんっ‥‥ええいっ、はぁぁぁっ!」
5月担当になった麗那は米田の要望により白い胴着をきて瓦割りをさせられている。
空手の実力者とプロフィールには書いたが、アイドル活動としてさせられるとは夢にも思っていなかった。
5枚は重なっている瓦を拳一突きで砕く。
「ソフィリアは普段着のままでお願いしますの」
草原という注文はさすがにクリアできなかったため、合成処理ということでスタジオ内での撮影を行うことになった。
風は大きな扇風機を使って再現するこだわりも忘れない。
「風景が青一色ですけど、いい風ですわ」
気持ちよさそうに目を伏せてソフィリアが座り込み風を受けながら佇む一枚が撮影された。
「一枚くらいセクシーなのがあってもいいわよね? 室内じゃなきゃまだ寒いけど」
7月の担当の由稀は水着姿でセットで用意された浜辺にハンモックを吊るして上で寝そべる。
スタイルのよい肉体が引き立つようなアングルでフレームに由稀が収まった。
「浴衣姿うれしい。冥華似合ってる?」
冥華が浴衣姿でちょこちょことスタジオの方に出てくると周りの空気が和む。
手には花火を持ち、火をつけて走り回った。
8月らしい元気な一枚が仕上がる。
「‥‥うーん、具体的な衣装は考えていませんでしたね。誕生月の3月だったら良かったのですが‥‥」
思い悩んでいた美月姫だが今回着てきたブレザー姿で撮影を行うことにした。
日本の学生にとって9月は長期休暇明けの第二のスタート時期でもある。
ブルーの背景にあとで合成処理ということで紅葉を混ぜる写真とすることになった。
●ワンブレイクタイム
「皆さんお茶ですよー」
フェイトが一休みしている面々へお茶を配る。
「お菓子も用意していますから、どうぞ」
美月姫も今回はサポートのためスタッフ代わりと同期や後輩アイドル達に手作りのお菓子を振舞った。
「そういや、グッズの調査ってどうなったの?」
「そちらはちゃんと調べておきましたわ‥‥ただ、サンプルが間に合わないということでイメージ画像による街頭アンケートになりましたけど」
お茶を飲んでいるジーラが聞き出すと、麗那が空いた時間で集めてきたアンケートの束を持つ。
LH内でざっくり集めたアンケートは今後の販売計画の参考資料となるようだ。
「由稀さんと弓さんはIMPの中でも輝いているデュオだと思いますの。何か秘訣とかありますか?」
麗那が報告を行っているとソフィリアがメモ帳片手に弓に詰め寄る。
「秘訣といいましても特にないと思いますけどね?」
次の撮影のために着物を着て準備をしている弓がソフィリアへ答えた。
「デュオとか私も組みたいですねー! 先輩達のように立派になりたいです」
「新しい人たちとももっと交流していかないといけませんね」
IMPリーダーの絢が今回初めて出会うALPと呼ばれる後輩を見ながら自分に言い聞かせる。
「後半の皆さんは準備してください、フェイトさんが一番手ですね」
「にゃ、にゃ! すぐ行きますー!」
ライディより声をかけられたフェイトはすぐさま休憩室を後にした。
●カレンダー作成〜後半戦〜
「カメラは俯瞰でお願いできますか?」
春ではあるが、撮影月秋のため落ち着いたカラーの服装で整えたフェイトがカメラマンへ上目に見上げる。
1mもきる身長のフェイトは子役タレントといえるほど幼い魅力に溢れていた。
合成処理を行うスタジオで高台に立たったカメラマンは上から見下ろすようにしてフェイトの秋らしい落ち着いた姿を写真でとる。
「焼き芋もわざわざ用意してもらえるとは‥‥これも有名特権なのでしょうか」
ホクホクの焼き芋を袋に抱えながら11月の撮影を絢は始めた。
ベルトの多数ついた拘束具にも思える黒のロングコートに首輪、手枷、足枷を身に着けて散っている落ち葉を見るように歩く。
「や、やっぱりミニスカなんだね‥‥」
12月はクリスマスということでサンタ衣装を希望していたジーラに渡されたのはミニスカサンタだった。
時期外れでこれしかなかったというスタッフだが、何か別の意志を感じる。
ミニスカサンタでプレゼント用の服を背負った一枚がファインダーに収まった。
「1月は集合絵よね。折角空いてるし‥‥IMPの結成も1月だったもんね」
そんな由稀のアイディアにより、全員が一同に介しての一枚が撮られることになる。
背景は合成ではなく、アイベックス・エンタテイメントのスタジオ前での撮影だった。
美女だらけの素敵な一枚であり、完成するのものには『IMP 2nd アニバーサリー』という文字が入る。
「2月担当の蓮華(れんか)よ。よろしくね」
服装は黒い革パンツに白Yシャツ、紅いネクタイを緩く締めたものに黒いベストを着た細い腰のディーラー女性が姿を見せた。
「叢雲さんすごく素敵ですよー」
フェイトが思わず拍手を送る。
髪をすらっとおろし、不敵に笑う蓮華を俯瞰でカメラマンはファインダー内に収めた。
「なんだかんだでトリとなってしまいましたね。おこがましいかとは思いますが、折角のチャンスを生かしたいものです」
弓が常の着物姿で中庭となった場所を歩く景色で一枚撮る。
運よく何処からか飛んできた桜の花びらがフレームの中に一緒に収まっていた。
あらかじめIMP登録アイドルそれぞれの誕生日にチェックが入るなどのオマケ要素も付与される。
全国の書店に並び、学生の机の上にアイドルの姿が飾られる日が見えてきた。
●ボイス収録
『ほら、起きろー。この由稀さんが直々に起こしてるんだから、起きないとバチ当たるわよー』
『ったく、いつまで寝てるかなー。とっと起きないと叩き起こすわよー』
撮影スタジオから収録スタジオへ場所を移すと、由稀がマイクに向かって台詞をいれている。
かなりの上から目線のメッセージだが、由稀らしいともいえた。
『もぉ、起きてよ! ‥‥‥‥もう、ほんとに知らないよ! ‥‥‥‥べ、別に‥‥アナタの為に起こしてるんじゃないんですからね!』
ツンデレ路線で麗那が時間を30秒と一分くらいあけつつボイスを録音している。
『時間だよ、早く起きなよ。別に君が遅刻するのは勝手だけど、ボクが遅刻したくないから起こすだけなんだからね!』
ジーラもまた同じようなツンデレボイスを収録していた。
『おきてください〜』
『にいさまおきてー、めいかと今日はがっこいくひだよー。はやくおきないと、ふらいんぐぼでぃぷれすのけいだよ』
春花と冥華は妹キャラを前面にだしたボイスをいれていく。
『朝です、起きてください』
ラストに絢が実に事務的なメッセージを録って収録は終わった。
希望者のみの収録で、ウケがいいなら第二弾、三弾という計画となる。
なお、絢が希望した真鍮製だがコストパフォーマンスにあわないということで今回は断念せざるをえなかった。
●最後の詰め
「出来れば集める楽しさも欲しいですから春花さんが言ったように2,3種類はバージョン欲しいです」
「今までのライヴ衣装をコンプリートしてもいいかもしれませんね」
アイベックスの専属デザイナーを交えて蓮華こと叢雲と弓をメインに最終の詰めをしている。
「キーホルダーのシークレットの有無はどうします?」
さりげないデザイナーの一言にアイドル達の視線は様子を見ていたライディに注がれた。
「え、ぼ、僕ですか?」
「シークレットですしね」
「シークレットだから」
「わー、女装がんばってね」
最後は棒読みでライディの疑問への回答がなされる。
コンビニ販売のキーホルダーには謎の美女アイドルのちびキャラが混入されることとなった。
クリアファイルは書店にて並ぶこととなり、買い物によって1つサービスで付く試供販売もされる。
目覚まし時計もまずは景品からの少数販売から動くことなった。
すべてにいえることは『いつも君の傍に‥‥』であり、アイドルを身近に感じる商品へと形作られる。
これからもがんばれIMP。