タイトル:【DR】AirLineWarマスター:橘真斗

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/04/04 01:13

●オープニング本文


 2009年 3月
 
 バグア軍によるラインホールド出撃の知らせはUPC北中央軍を震撼させ、そしてユニバースナイト弐番艦の出撃を決定させた。
 しかし、ロシアまでの道のりは現在駐屯しているロサンゼルスからすればかなり先であり、その間の不安要素は拭えない。
 ゆえに、傭兵に対して進路確保の作戦が提案されたのだ。
 
 作戦名は『AirLineWar』
 
●アラスカ上空
「こちらアンジェリカの桜華さつき、交戦に入りまぁ〜す」
 ピンクを基調したカラーリングの機体がアラスカ上空で華麗に舞う。
 高分子レーザー砲がロシアから飛んでくる敵キメラを貫いていった。
『おい、桜華さつきって元シャイニング娘のさつきかよ?』
『戦闘にも気合入るぜ』
 アイドルとしてアメリカでも人気を博しているさつきの登場に迎撃を担当していたUPC北中央軍の航空機部隊は鼓舞される。
「ボク達の後ろには弐番艦がやってくるんだからね。気合い荒れて突破口を開いちゃおー!」
 さつきはアンジェリカのコックピットから鈴の音のような声をだし、戦場を彩った。
『アラスカ基地より入電、ロシアよりヘルメットワームが多数接近! アメリカより‥‥深紅のワイバーンが移動中とのこと!』
「ワイバーン? 味方なのかな? もうちょっとでラストホープからの援軍もくるからそれまで皆がんばろぉ♪」
 さつきは知らないことだが、あるワイバーンがドミニカ共和国でバグア側に鹵獲されているという事実がある。
 この機体はまさにそれだった。

●参加者一覧

榊 兵衛(ga0388
31歳・♂・PN
ベル(ga0924
18歳・♂・JG
翠の肥満(ga2348
31歳・♂・JG
北柴 航三郎(ga4410
33歳・♂・ER
夜十字・信人(ga8235
25歳・♂・GD
大和・美月姫(ga8994
18歳・♀・BM
火絵 楓(gb0095
20歳・♀・DF
美空(gb1906
13歳・♀・HD

●リプレイ本文

●閃光に戦場は切り裂かれ
『嘘ッ!? 熱源反応っ!』
 桜華さつき機は味方と思われたワイバーンより放たれたプロトン粒子の矢を見て驚きながらも回避する。
 だが、それと同時に訪れた榊兵衛(ga0388)と翠の肥満(ga2348)のKVがすぐさま迎撃に向かった。
「‥‥その機体は! まさか、こんなに早く出会えるとはな。墜とさせて貰うぞ。それはお前らが持っていて良いものではない!」
 榊は前日のドミニカ共和国での戦いを思い返し、操縦桿を強く握る。
『いっぺんやり合ってみたかったんだよ、KVを相手にさ! まずは挨拶代わりの1発ッ!』
 榊機の試作型G放電装置にあわせ、翠機が8式螺旋弾頭ミサイルを放った。
 飛んでくる攻撃を避けるように動いたワイバーンだが、どちらの攻撃も食いつきワイバーンの装甲を抉る。
「やった‥‥いや、何だアレは!」
 手ごたえを感じた榊だったが、ワイバーンの装甲の下からは甲殻のようなものが浮き出ていた。
 
●共同戦線
「弐番艦が来ると来ないじゃ大違いですからね。露払いは頑張りますよっ!」
 北柴 航三郎(ga4410)が岩龍を使ってバグアのジャミングを中和しつつプテラノドンのような飛行キメラ達へと向かう。
『こちらドッグ1、協力に感謝する』
 航空機部隊の指揮官機より北柴に手短な通信を入れるとミサイルを駆使して翼竜キメラの迎撃をはじめた。
「いえ、皆さんばかりに苦労させるわけには行きませんから」
『俺達が正面にいきますから‥‥皆さんは左右に分かれて敵をまとめるように動いてください』
 北柴が恐縮しているとベル(ga0924)が2つの航空機部隊へ頼み込む。
『ラジャー。ドッグ1より各機へ、聞いての通りだ。アイドルへいいとこ見せるチャンスを逃すなよ』
 戦闘の緊張がほぐれたのか、先ほどの返事よりも和らいだ口調の指揮官が部下へと指示をだすと数十機に渡る航空機部隊は二手に別れ、翼竜キメラを包囲しようと動いた。
「これだけ固まっていればロケット弾ランチャーでもいけそうですね」
 主に建物などを破壊するために使う127mm2連装ロケット弾ランチャーを翼竜キメラの塊へと発射する。
 炸薬が弾け、炎がキメラ達を包み込む。
 通常のミサイルではフォースフィールドに阻まれるがSESを搭載している武装を持つKVの一撃は強力だった。
『今ですね‥‥撃ちます』
 北柴によるロケット弾ランチャーで翻弄される翼竜キメラに向かってベルはI−01「パンテオン」を放つ。
 100発にも及ぶミサイルが空を覆い、翼竜キメラの群れに突撃していった。
 あるものは翼をもがれ、またあるものは頭を砕かれて大地へと落ちる。
「今です、弱っているのを集中攻撃して倒していきましょう」
 北柴が武装を3.2mm高分子レーザー砲に切り替え、混乱を見せる翼竜キメラ群へと自らの機体を向けた。
『ドック1より各機へ、総攻撃を行う。ミサイルも機銃も撃てるだけ撃ちつくせ!』
 左右に展開していた航空機部隊が旋回して挟み込み、全力で翼竜キメラ迎撃に向かう。
 アラスカ上空を銃声と爆音が埋め尽くした。

●空中セッション
「前回のライヴではありがとうございました。今回は、さつきさんの援護はお任せください。さつきさんに負けない様にがんばります」
『おっけー。僕もがんばるから君もがんばってね♪』
 IMPのイベントで競演をしていた大和・美月姫(ga8994)は恩返しと思い気合が入る。
『元シャイニング娘のさつきちゃん? ‥‥よし! あとでサインとキスして!』
『無事お仕事終わったら考えるよ』
 火絵 楓(gb0095)が荒い鼻息と共にさつきへ要望をぶつけると、一人勢いづいてヘルメットワームへと戦いに向かった。
「すごく‥‥元気ですね」
 楓の破天荒ともいえる行動ぶりに美月姫はあっけにとられる。
『こちらゲシュペンスト。戦闘空域に突入す‥‥桜華さつき? あのアイドルのか‥‥つもり話は敵を倒してからだな』
 夜十字・信人(ga8235)がシュテルンを駆りつつ試作型「スラスターライフル」をヘルメットワームに向けて放った。
『ロングボウも初陣をばっちり決めるでありますよ』
 美空(gb1906)がロングボウの特殊能力である『新型複合式ミサイル誘導システム』を発動させホーミングミサイルD−01にてヘルメットワームを狙う。
 4発のミサイルが二機のヘルメットワームを捕らえて爆破した。
「そうです‥‥お話するのが依頼じゃないですもんね」
 さつきとの挨拶などで一歩出遅れた美月姫は頭を振って気分を入れ替え、ディアブロを飛翔させる。
『そうだよね、小悪魔な美月姫ちゃんと天使な僕で空中セッションを始めよう♪』
 美月姫の後ろをさつきのアンジェリカが追随し、即興のロッテを組んで美月姫のミサイルポッドにあわせてレーザーガドリング砲を撃った。
「1機も抜かせません。藻屑となってください」
『プレゼントフォーユー♪』
 そして、トドメとばかりに二機がそろって高分子レーザーをヘルメットワームへ撃ちこむと一機が沈む。
『お淑やかな友人のアイドルも良いが、桜華嬢のような元気が良いのも素晴らしい‥‥』
 さつきと美月姫のフォーメーション攻撃を見た信人が小さな声で賞賛をたたえた。
 
●ワイバーン追撃
「バグアとUPCの夢のコラボレーション? 冗談じゃない!」
 甲殻に覆われたボディを見た翠の肥満は唖然とする。
 その下までは攻撃が貫通していないところを見るとかななかの強度を誇っていることが伺えた。
『試作型G放電装置では思ったほどダメージを与えることが出来ないな。どうする?』
 榊機からも手ごたえの無さに次の対処への意見を求める声が聞こえてくる。
 牽制目的ではあったが、未知の技術をみるとさすがに不安になるものだ。
「どうもこうも、あちらの番のようですよ」
 会話を区切り、翠の肥満が敵の反撃に備える。
 真紅のワイバーンはマイクロブーストを使い二人の方へと突撃してきた。
「単調な動きですねっ! 逃げ足で僕に勝てると思っちゃいけませんよっ!」
 翠の肥満はソードウィング類を警戒してワイバーンの突撃をかわす。
 だが、ブーストで飛び去った後に散る小さな粒子が翠の肥満の乗るディアブロを痛めつけた。
「くっ!? なんだよこの攻撃はっ!」
 突如明滅し、機体出力の低下を示し始めた計器類を前に、動揺を隠せない。
『どうした? ‥‥くっ、変わった攻撃をしてくる敵だな』
 蝶のリンプンのようなものを撒き散らして来る攻撃に不意をつかれた形で榊も唸った。
 そのまま反転するとワイバーンは大型プロトン砲を発射する。
 二機をまとめる大きな粒子の束が空へ光の道を作り出した。
「やりたい放題やってくれるっ! だけど、逃げ足で僕に勝てると思うなよっ!」
 翠の肥満はブーストを発動させるとギリギリ光の束を避けきる。
『ちっ‥‥さすがにアクチュエイターを使っていても間に合わんな』
 直撃とまでは行かないが、榊機が光の束を受けて火花を散らした。
『援護します』
 二人が攻撃を受けていたとき、ワイバーンに向かって雷が飛ぶ。
 プロトン砲の射撃で動きの止まっていたワイバーンへベル機からのG放電装置が放たれたのだ。
「敵に近づき過ぎないように気をつけて。計器を直接壊す奇妙な粒子を放ってるからさ」
 間合いを取った翠の肥満はベルへ注意を促がすと共に『アグレッシブ・フォース』を発動させる。
『了解です。キメラを排除してきましたので援護をします』
 ベル機からの力強い味方の援護を受け、翠の肥満も気を取り直して攻撃に移った。
「こいつは痛いぞぉ?」
 榊機の背後に回った形のワイバーンに向かって榊機の準備をさせるためにスナイパーライフルによる攻撃を仕掛ける。
 『アグレッシヴ・フォース』で強化された一撃がワイバーンを捕らえ、甲殻を抉った。
『実弾の方が多少効きやすいか‥‥これでも食らえっ!』
 体勢を取り戻した榊機から8式螺旋弾頭ミサイルが飛び出し、ワイバーンの装甲を剥ぎ、下の甲殻をあらわにさせていく。
 ワイバーンならざるもの‥‥未知の技術が多い相手だが、その動きはどこか単調でありつけいる隙があるとすればそこだった。

●ミサイルパーティ
『コンビネーションで攻めるぞ。先に仕掛ける!』
「ういうい、さっさと片付けてさつきちゃんのキスとサインを貰うのだ!」
 信人機の先手を取った短距離高速型AAMにあわせ楓が短距離高速型AAMを発射する。
 戦闘そのものよりもその後のご褒美に心を躍らせ、血圧が高くなっていた。
 ヘルメットワームにミサイルが着弾すると共に、楓はそのまま距離を詰めてソードウィングによる斬りつけを狙う。
「火絵 楓‥‥突貫しま‥‥あっ、鼻血がっ」
 あまりの興奮のためか、楓の鼻からドバっと血が溢れ出した。
 機体の勢いは止まらず、ヘルメットワームをすれ違いざまに一閃する。
『何ということだ‥‥この俺が押されている』
 通信機ごしに鼻血の吹き出る音まで聞いていた信人から呆れ気味の呟きが聞こえてきた。
 信人は信人で動きを予測しての試作「スラスターライフル」を撃ち込み楓と共に攻撃をしたヘルメットワームを一機片付ける。
『ナイスキル‥‥いい腕だ、バディ』
「略せばナイスバディ? いやー照れるなー。でも、あたしの体は女の子のもの。男はノーサンキュー!」
 賞賛を勝手に解釈をして楓は盛り上がった。
 完全に楓のペースに飲まれながらも信人はそのまま交戦を続ける。
『残りあと4機でありますよ。狙って狙って撃つでありますよーっ!』
 一歩離れたラインよりミサイルによる支援を行う美空が敵機の数を確認しながら連絡を行ってきた。
 ロングボウより放たれたミサイルが次々とヘルメットワームを捕らえては爆破していく。
「半分いったね〜。 よーし、このまま突撃オトナリサン! お邪魔しまーす」
 美空の支援を受けて弱った敵機に向かって楓が更に空戦専用長距離砲【グリフォン】を発射した。
『さつきさん、こちらもフィニッシュをかけていきましょう』
『おっけー♪ フィナーレを派手に飾るんだよ♪』
 美月姫が共に戦うさつきに声をかけ、赤いディアブロとピンクのアンジェリカが上空へ一度上がる。
 そして、ダイブすると共に両者は『アグレッシブ・フォース』と『SESハンエンサー』を発動させ、出力を高めた攻撃が弱ったヘルメットワームを一機ずつ確実に落とした。
『すばらしい腕だ、さつき嬢‥‥危うくファンになりそうだったよ』
「アイドルの戦いを見れて嬉しいなぁー。さー帰ってサインだよ、キスだよ! あ、また鼻血がっ!」
 フンフンとさつきと美月姫の戦いに鼻息を荒くした楓の鼻から再び鼻血が噴出しはじめる。
『皆さーん、無事クリアですか? まだ、ワーバーンの方はてこずっているようですから、手の空いた人は援軍にいってください』
 北柴機からおっとり気味の通信が届き、余裕のあるものは援護に出向いた。
 決着の時は近い‥‥。

●戦闘終了
「敵は‥‥無人機だったようです」
 補給のために降り立ったアラスカにあるUPC軍基地でベルは飲み物を飲みつつワイバーンとの戦いを思い返す。
 硬かったが援軍もあったために撃墜までに押し込めたのだ。
「憂いは去ったが‥‥アスレードでなかったことが気になるな」
 撃墜した機の識別コードから先の依頼で奪われた味方のものであることがわかり、ケジメをつけれたことを喜びながらもしてやられた感を兵衛は気にしている。
「まま、きっちり仕事こなせたんだからよしとしましょうや。バグア側にも奇妙な技術がありましたね。内部から壊されるのは正直キツイ」
 仕事あとの牛乳をグビグビとのみつつ翠の肥満も戦闘のことを振り返った。
 3人が重く回想していると、外が騒がしくなる。
 窓から外を覗いてみれば、滑走路でさつきと美月姫が戦闘機乗りからサインや握手を求められたりしていた。
 視界の端では楓がサイン色紙を抱きしめて血まみれで倒れいるところを担架で運ばれている。
『皆、今日はありがとう! 誰一人欠けることなく戻ってこれて僕も嬉しいよ♪』
 さつきのお礼だけでウオーと野太い声援があがった。
『えっと、IMPの私を知っている方がいて嬉しいです。サインとか握手とかで喜んでもらえて本当にありがとうございます』
 美月姫もマイクをさつきから受け取り、戦闘機乗りに向かって一礼をする。
『それじゃあ、予定には無かったけれど突発で一曲歌っちゃうよ。曲は美月姫ちゃんのいるIMPの曲で『Catch The Hope』だよ♪』
 アカペラではあるが、リズムを取り出しさつきが歌いだした。
 美月姫は驚きながらもすぐについていき、澄んだ歌声で滑走路を埋めていく。
 歌っているとき、小さなライブ会場となった基地の上空を弐番艦が通りすぎた。
 遥か空の向こう、ロシアの大地での戦いは近い‥‥。