タイトル:【IMP】For Youマスター:橘真斗

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/03/02 12:25

●オープニング本文


「新米IMPも先月、今月と大分そろいましたね。この辺でお披露目をしたいところですね」
 束になったプロフィール帳を丁寧に眺めて米田時雄はふふふと笑いを漏らす。
 やる気あふれるフレッシュな新人を向かえ、現在活動中のIMP達が刺激を受ければ相乗効果も期待できた。
「近い予定ですと、以前ポスターを頼まれた会社からサプライズ芝居のオファーがありますね。こちらは事務所の舞台役者方面になりますが‥‥そのあとにミニライブをやるということで先方にお伝えしましょうか?」
「ええ、お願いしますね。企画としましては『ForYou』としましょう。バレンタインに向けた新曲を準備してもらうように。年末からのものとあわせてDVD−BOXとして4月より売り出しということで、系列スポンサーとの交渉もお願いしますよ。今までの実績で私が出るまでもなく通るでしょう」
 秘書と話をしつつ、米田は企画書を取り出して秘書に渡す。
「わかりました。社長、これを‥‥」
 企画書を受け取った秘書は代わりに板チョコを返した。
「義理チョコですか‥‥もらえるだけましと思いましょうか」
 米田はチョコの封を開けて一口齧る。
 甘いはずのチョコがほろ苦く感じるひと時だった。

●参加者一覧

篠原 悠(ga1826
20歳・♀・EP
緋霧 絢(ga3668
19歳・♀・SN
加賀 弓(ga8749
31歳・♀・AA
大和・美月姫(ga8994
18歳・♀・BM
祈良(gb1597
15歳・♀・FT
鬼道・麗那(gb1939
16歳・♀・HD
天戸 るみ(gb2004
21歳・♀・ER
鷹代 アヤ(gb3437
17歳・♀・PN

●リプレイ本文

●ALPとIMPの競演
「新人さん達との初仕事ですから、絶対に成功させたいですね」
 控え室の加賀 弓(ga8749)は以前は自分が最終加入メンバーだったのだが、今回は後輩ができてどこか感慨深げである。
「えっとIMP新人の天戸るみですっ。家事全般が得意で、実家が神社で‥‥ってこんなこと聞いていませんよねっ。明るさだけがとりえです。よろしくお願いします!」
 緊張した天戸 るみ(gb2004)はガチガチのまま先輩アイドルたちに向かってお辞儀をした。
「大丈夫ですよ。私も今回が初の新曲ですから」
 大和・美月姫(ga8994)はるみの背中をそっと撫でて緊張を解そうとする。
「あ‥‥は、はい、ありがとうございますっ!」
 余計に緊張しているのか、さきほどよりもるみの顔が赤くなった。
「はじめまして闇の生徒会‥‥いえ、鬼道・麗那です。ステージでは精一杯生意気をやりますが、皆様宜しくお願いしますね」
 るみと同じ兵舎『闇の生徒会』所属であり、その長でもある鬼道・麗那(gb1939)は堂々と挨拶を行う。
「よろしくお願いします。頼まれていた紅いマイクスタンドも用意できていますから、今日のステージはがんばってくださいね。兵舎長でもありますし次期リーダー候補として期待していますよ」
 前日はドッキリお芝居にて死体役をやったIMP専属マネージャーであるライディ・王(gz0023)が笑顔で挨拶を返した。
「至らない点が多いとは思いますが、よろしくお願いしますわ」
 今一度麗那は深く礼をする。
「あと30分後に本番になりから着替えを済ませて準備をしてください。あと、こちらの方がバックコーラスで加わることになりましたのでよろしくお願いします」
 ライディは麗那に会釈を返すと、銀髪の上品そうな少女を紹介した。
「あの‥‥ちょっと音程がずれたりしますけど、歌への熱意はありますの。がんばりますわ」
 ちょっと‥‥いや、かなり不安な協力者である。
「え、ええと一緒にリハーサルを少ししましょうか」
 弓はたらりと流れる汗を感じながら、少女に手を差し伸べるのだった。

●ALPパート〜ユニット〜
『皆様、IMPのミニライヴに来ていただきありがとうございます』
 緋霧 絢(ga3668)は黒を基調とした赤の入ったゴシック服姿でパーティ会場のステージに上がり、挨拶をする。
『今日は私達の第2期メンバーであるALPのメンバーから紹介します』
 マイクを片手に簡単な自己紹介を済ませた。
『一曲目はインディーズでは有名かもしれません、篠原悠と田中アヤによるユニット『Break Bit’s』』
 照明が一度落ち、ライトアップされた大き目のニット帽にモニター用の赤いヘッドフォンを装着した篠原 悠(ga1826)と白に黒のメッシュが入ったキャップを被った田中 アヤ(gb3437)が出てくる。
 アイドルの登場を観客と次の出番の祈良(gb1597)が拍手で二人を出迎えた。
 前日のイベントの能力者とミニライヴとチョコレート販売会のためにやってきた一般客合わせて百数十人の客がパーティ会場を埋めている。
 二人のキャップにはIMPのロゴ入りカンバッチやピンズの類を2,3ついており、またお揃いのブラックカラーのツナギには白のカラースプレーで『IMP』のロゴが描かれていた。
『うちら二人が今までのアイドル感をぶち壊していくんでよろしくな!』
『デビュー曲になります。『Chocolate Panic!』』
 二人のマイクパフォーマンスに続き、少しスピードの速いドラムンベースに合わせた本格的なヒップホップのリズムが流れ出した。

 ―Chocolate Panic!― 作詞:篠原 悠
 
 ♪〜〜
 
 アヤ『V A L E N T I N E (09)』
 悠『ahah─3.2.1 RockON』


 ♪Rap♪
 
 アヤ『無意識に追う君の視線
    不意に重なる私との視線
    beamを浴び 無意識に高鳴る私の鼓動』

 悠『解ってるきっと伝えてない
   気持ちなんてまだまだ通じちゃない
   この鼓動と気持ち抑え
   昨日必死で作ったchoco&Message ah...』
  
  『携帯を開き彼にmail
   ”いつもの場所で待ってるから”
   ずっと待ってる、きっと来てくれる
   雨が降っても日が沈んでも』

  ♪〜〜
  
 二人の個別パートとラップが歌い終わり、間奏が挟まれる。
『Everybody, Put your hands up!』
 アヤが客席を英語で呼びかけ、煽った。
 ノリのいいリズムと空気に客席も答える。
 
 『
  君を待ってる 間ハートの中身はもうpanic
  君を待ってる 間ハートに流れるpop tune
  酷い結末 なんて考えるだけ それnansence
  空を見上げて思う
  ───君の事
 』
 
 ♪Rap♪
 
 アヤ『このHotNumber for Valentine
    Represented by A&U!
    そのChocolate to whom from you?
    Let us Be で We 驀進中!
    OFF/ONbeatで回せ 回せ
    ultra speedで円盤回せ!』

 悠『ゆるいrhyme 一括りにして
   思い付きのlyric リズムに乗せ
   思い伝える乙女の歌
   愛を伝える為の応援歌』
  
  〜〜♪
  
 ラストに再びラップを挟んで個別のパートを歌いきり、二人は前座を見事こなしたのだった。
 
●ALPパート〜ソロ〜
『祈良、だよ。皆の心に響く歌、歌えるように、頑張るね』
 息のあった悠とアヤのあとに続く祈良は緊張しながらもふんわりとした微笑を浮かべる。
 笑顔の源はカリンの花が付いた髪飾り‥‥今は亡き大切な人からの贈りものだ。
(「いつも一緒だもんね‥‥この歌、届くといいな」)
 無意識に髪飾りを一撫でするとイントロが終わり、しんみりとしたバラードが流れ出す。

 ―大切な貴方へ‥‥― 作詞:祈良
 
 
 ♪〜〜
 
 一緒に笑って 泣いて ちょっと喧嘩して
 当たり前の様に 一緒に居てくれた貴方
 それが何より 幸せだって気付いたの
 失くしてから気付く 馬鹿な私でごめんね

 きっと 貴方は怒るから
 貴方のところには まだいけないけど
 貴方の分まで 頑張るから
 いつかまた出会ったら 優しく抱きしめてくれるかな?
 ずっと大好きだよ

 〜〜♪
 
 短いながらも気持ちを込めた歌を祈良は歌い、シンプルな白いドレスのスカートを摘んで礼をして締めた。
『麗那です。皆よろしく』
 清楚な雰囲気の祈良と入れ替わりに入ってきたのは麗那である。
 自前の黒いカンパネラ学生服に紅いハイソックスに黒のショートブーツを履いた姿で生意気っぽさを強くだしていた。
『みんな用意はいい? 麗那は最初からクライマックスよぉぉ!』
 ギターで始まるポップなメロディが流れると、キメ台詞を叫び自らを鼓舞するかのようにテンションを麗那は上げる。
 胸には北極星を模した光るブローチが付いている。これは兵舎仲間からの意見から作り出されたアクセサリーだ。
 自分は人に支えられてきているから、このときだけは人を元気付ける存在でありたいと麗那は思う。
 
 ―チョコっとハート― 作詞:鬼道麗那
 
 
 ♪〜〜
 
 たまたま
 あげるチョコだから
 絶対絶対
 勘違いしちゃダメよ

 もぉ鈍感ね
 徹夜で作ってあげたのよ
 もぉ鈍感ね
 もっと感謝したらどう?

 send my heart
 乙女の心は
 just my love
 とても複雑なの

 恋のスキルが
 足りないんじゃない?
 でもそんなトコも‥‥
 イイかも
 
 
 〜〜♪
 
 
『Ciao! 次は麗那の先輩でカンパネラ学園アイドルを目指している天戸 るみさんよ』
 マイクスタンドをもったままウィンクと共にびっと客席にいる赤髪のツインテール少女へ指差してから麗那は袖へと消えていく。
「か、会長〜ハードル上げすぎですよ〜」
 麗那の紹介にたじろぎながら、るみは白を基調に所々に黄色いアクセントを加えたワンピース姿で出てきた。
 ワンピースと同じ配色のロングタイプの手袋にハイソックス、やや厚底のブーツという自分の黒髪を引き立たせる組み合わせをしている。
 胸には同じく北極星を模したブローチをつけていた。
『わ、私の曲は‥‥バレンタインに向けて不安もあるけど‥‥それ以上に希望で、いっぱい‥‥そんな、バレンタイン前夜の、女の、子の、曲ですっ!』
 緊張で震えながらもるみはお辞儀をする。
 アップテンポの曲調のメロディが流れ始めた。
 深呼吸一つして、るみは歌いだす。

 ―SWEET☆スウィーツ― 作詞:天戸 るみ

 ♪〜〜
 
 
 いよいよ来ましたバレンタイン・イヴ
 買い物OK 準備よし
 料理なんてめったにしないけど
 今日はトクベツ

 型は勿論おっきなハート
 ありきたり? でもそれが一番っ
 分かりやすい方がきっと伝わるの


 失敗なんてDon’t mind(どんまい)!
 彼の事を想えば凹んでいるヒマなんて無いのです
 時間はある だから焦らずにゆっくり作ろうよ
 トッピングはお好みで

 あの人に 届くかな?
 ううん 届けたい!

 想いを載せて SWEET☆スウィーツ
 
 
 〜〜♪
 
『皆さん、最後まで聞いていただきありがとうございました』
 曲が終わると共に贈られた拍手に対してるみは精一杯の感謝を述べ、お辞儀をすると共に袖へそそくさと戻るのだった。
 
●IMPパート
 前半の新人が終わったあとは本家IMP達の出番である。
『新人さんのパワーに負けずに私たちもがんばります。やっと新曲を皆さんに披露できます、私の歌を聞いてください』
 先陣を切ったのはパステル調のセミロング系ドレスを着た美月姫だ。
 お嬢様結びにした髪にハートを模したバレッタをつけて、肘部にリボンのアクセントをつけたサテン系のロンググローブをつけている。
 新曲にあわせ、またバレンタインをイメージしたチョイスの元、癒し系をイメージした歌を歌いだした。
 清んだクリスタルボイスが会場に広がる。
 
 ―あ・り・が・と・う― 作詞:大和・美月姫
 
 
 ♪〜〜
 
 憶えていますか あの日を
 ふと感じた ときめきを

 明るい日差しの中
 子供の様に夢中な横顔に
 見とれてると 目が合って
 照れた笑顔こぼれた。
 色鮮やかな想い出

 ありがとう この想いをくれて
 どれだけ離れていても いつでも
 ”Grazie di cuore(グラッチェ ディ クオーレ)”
 あたたかな 毎日を重ねたら
 いつの間にか すぐ近くに
 だから 「ありがとう」

 〜〜♪
 
 
『Grazie di cuoreは心よりありがとうという意味のイタリア語です。欧州でモデルをやっていた頃に感謝をする意味も込めて歌詞にいれてみました』
 歌い終わった美月姫は次の準備への時間作りのために少しだけトークをはじめた。
『私がIMPに入ったのは5月でした。もうすぐ一年立つ前に新曲が出せてよかったです。次は私と同期ですが曲を多く発表されている弓さんです』
 美月姫が袖にいるライディのOKサインを確認すると弓へと交代する。
『歌は多くだしていますが、知名度では美月姫さんに負けますよ‥‥。私の曲はバレンタインということでラブソングにしてみました』
 入れ替わるように弓が現れた。
 弓らしい着物のようなデザインに花柄の生地をさりげなくあしらった、黒を基調とする落ち着いた『和』の雰囲気を感じるカシュクールワンピース姿である。
『皆さんにも私から歌と、そしてチョコレートのプレゼントがあります。受け取ってくださいね』
 優美に弓が微笑むと曲が流れる。
 
 ―Invisible String― 作詞:加賀弓
 
 
 ♪〜〜
 
 見えない糸で結ばれた 貴方の隣に立つ

 何時からこの胸の内に 貴方は居たのだろう?

 言葉で伝えきれない この想いと共に

 手垢のついた言葉では 伝えたくはない

 それでも他に言葉はなく 私は言うだろう

 I Love You.

 見えない糸に導かれて 私は貴方に出会った

 この胸に宿った想いを そっと抱きしめて

 見えない糸で繋がった 貴方へと送ろう

 I Love You.
 
 
 〜〜♪
 
 歌い終わった弓は客席へと降りていき、パッと目に付いた人たちへとチョコを配る。
 チョコが欲しいと両手を上げて自己アピールをした銀髪の青年へと弓は近づくも丁度そこでチョコが切れてしまった。
『ごめんなさい、また次の機会ということで、よろしくお願いします』
 苦笑しつつ弓は下がり、大トリであるIMPリーダーの絢へとバトンタッチをした。
『最後に私の歌を皆様お聞きください』
 絢が一礼をするとメロディが流れる。
 バックにはコーラスの少女が歌詞を思い出しつつ、失敗させないよう緊張した面持ちで立っていた。

 ―I Love You― 作詞:Aya
 
 
 ♪〜〜
 
 My Heart ココロ アナタに伝えたい I Love You
 My Heart オモイ アナタに伝えたい I Love You

 高鳴る 鼓動 アナタへの想い コトバにしたい
  
 ワタシのココロ アナタに優しく抱いて欲しい
 ワタシのカラダ タナタに優しく抱いて欲しい

 My Heart ココロ アナタに伝えたい I Love You
 My Heart オモイ アナタに伝えたい I Love You

 高鳴る鼓動 貴方への言葉 I Love You
 
 〜〜♪
 
 
 曲の終了と共に二人は拍手と歓声によって絢は迎えられた。
 そして、アンコールの声が響く。
 絢が袖のライディに確認するとライディは首を縦に振った。
『予定では、各自ソロだけでしたがアンコールもありましたので全員でIMPの曲を歌いたいと思います』
 袖から控えていたメンバーが集まり、IMPのデビューシングルでもある『Catch The Hope』のメロディが流れ始める。
 こうしてミニライヴは無事成功を収めたのだった。
 
●控え室で
「トップバッターでめっちゃ緊張したー」
 ライヴも終わり、控え室に戻るとぐでーとアヤは机に突っ伏する。
「悠ちゃんは緊張したときどうやってるの?」
「うち? うちは‥‥自分を信じるだけやから」
 アヤに聞かれて思い返すも、悠はイマイチ言葉がでてこなかった。
「自分を信じるかー」
「そやね。自信をもてないから緊張すると思うんよ。大丈夫って信じることが一番やないかな? それにアヤちゃんにはうちが一緒やよ」
「今日は音程をはずせずに歌えましたわ。私も少し自信がつきましたの」
 バックコーラスをしていた少女がつき物が落ちたような顔で悠とアヤに笑顔を向ける。
 成功という経験は次への活力へとなる。
 それを積み重ね、人は成長していくのだ。
 
 がんばれ、IMP。